センチネルリンパ節転移が認められる浸潤性乳がんに対し、ランペクトミー後に腋窩郭清を実施しなくても、実施した場合に比べて全生存に関して非劣性であることが示された。米国Saint John’sヘルスセンターJohn Wayneがん研究所のArmando E. Giuliano氏らが、約900人について行った無作為化試験の結果から明らかにしたもので、JAMA誌2011年2月9日号で発表した。
T1~T2の浸潤性乳がん患者を2群に分け、約6年追跡
同研究グループは1999年5月~2004年12月にかけて、115ヵ所の医療機関を通じ、891人の乳がん患者を集め、第3相非劣性試験「ACOSOG(American College of Surgeons Oncology Group)Z0011」を実施した。被験者は女性で、T1~T2に分類される浸潤性乳がんで、触知可能なアデノパシーはなかった。またセンチネルリンパ節転移について、凍結切片、捺印細胞診またはヘマトキシリン・エオジン染色の永久標本により特定が行われ、1~2ヵ所が認められていた。
被験者は全員、ランペクトミーと乳房全体への接線照射法を受けた。研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方の群には腋窩郭清を実施し(腋窩郭清群)、もう一方の群には実施しなかった(非腋窩郭清群)。腋窩郭清群には、10ヵ所以上のリンパ精検が行われた。
全身投与療法の有無は、各主治医の裁量に一任された。
主要エンドポイントは全生存とし、非腋窩郭清群の腋窩郭清群に対する非劣性マージンは、ハザード比1.3以下を示した場合とした。副次エンドポイントは、無病生存期間とした。
なお本試験は、死亡500例後最終解析時の被験者登録数を1,900例とし開始されたが、予想されたよりも死亡率が低く早期に打ち切りとなった。
5年生存率、5年無病生存期間ともに、両群で同等
追跡期間の中央値は6.3年(最終追跡2010年3月4日)だった。
無作為化追跡されたのは、腋窩郭清群445人、非腋窩郭清群446人だった。両群とも臨床所見や腫瘍の状態は同等だったが、切除したリンパ節数の中央値は、腋窩郭清群が17に対し、非腋窩郭清群は2だった。
5年生存率は、腋窩郭清群が91.8%(95%信頼区間:89.1~94.5)に対し、非腋窩郭清群は92.5%(同:90.0~95.1)と、両群に有意差は認められなかった。
また5年無病生存期間も、腋窩郭清群が82.2%(95%信頼区間:78.3~86.3)に対し、非腋窩郭清群は83.9%(同:80.2~87.9)と、両群で有意差は認められなかった。
非腋窩郭清群の腋窩郭清群に対する全生存のハザード比は、補正前が0.79(90%信頼区間:0.56~1.11)、補正後が0.87(同:0.62~1.23)であり、非腋窩郭清群の非劣性が証明された。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)