MRIは、X線検査では変形性膝関節症の所見がみられない中年~高齢者において、脛骨大腿骨関節の病変を高率に描出することが、米国・ボストン大学医学部のAli Guermazi氏らの検討で示された。変形性膝関節症は、治療対象となる頻度が世界的に最も高い関節症で、生涯リスクは加齢とともに増大し、高リスク因子として肥満が挙げられる。診断は臨床検査やX線検査に基づくが、膝の痛みを訴える患者の約半数がX線画像では異常を認めないという。MRIは従来のX線画像では可視化されない変形性膝関節症の所見を検出可能なことが示されている。BMJ誌2012年9月14日号(オンライン版2012年8月29日号)掲載の報告。
MRI検査の有用性を観察試験で評価
フラミンガム変形性関節症研究は、変形性膝関節症による構造的病変の評価におけるMRI検査の有用性を検討する地域住民ベースの観察試験。
対象は、X線検査では変形性膝関節症の所見がみられず(Kellgren-Lawrence分類:グレード0)、膝のMRI検査を受けた50歳以上の住民とした。
膝痛は3つの質問(「この1ヵ月以内に何らかの膝の痛み、うずき、こわばりがありましたか」「この1年以内に1ヵ月以上持続する膝の痛みがありましたか」「膝の痛みはほぼ毎日ですか」)およびWOMAC(Western Ontario McMaster University arthritis index)質問票で評価した。
主要評価項目は、変形性膝関節症を示唆するMRI所見(骨棘、軟骨損傷、骨髄病変、軟骨下嚢胞、半月板障害、滑膜炎、磨耗、靱帯障害)の有病率とし、年齢、性別、体格指数(BMI)、膝痛の有無で層別化した。
89%に何らかの異常所見が
2002~2005年の間に710人について調査した。女性が393人(55%)、白人が660人(93%)で、1ヵ月以内に膝痛を認めたのは206人(29%)だった。平均年齢は62.3歳、平均BMIは27.9kg/m
2。
89%(631/710人)に何らかの異常所見が認められた。最も多い所見は骨棘(74%、524/710人)で、次いで軟骨損傷(69%、492/710人)、骨髄病変(52%、371/710人)の順であった。
MRIで検出可能な異常所見の有病率は加齢とともに増加した。BMI別(<25.0、25~29.9、≧30kg/m
2)の異常所見の頻度に有意な差は認めなかった。男性は女性に比べ半月板障害(p<0.001)と靱帯障害(p=0.005)の頻度が高かった。
膝痛(標準的定義)の有無別の何らかの異常所見の頻度は、膝痛あり群が91%、膝痛なし群も88%といずれも高率で、両群間に有意な差はなかった。膝痛の標準的定義と厳格な定義の違いを問わない場合でも、異常所見の頻度は膝痛あり群が90~97%、膝痛なし群は86~88%に達していた。
著者は、「MRIは、X線検査では変形性膝関節症の所見がみられない中年~高齢者において、膝痛の有無にかかわらず脛骨大腿骨関節の病変を高率に描出した」と結論し、「これらの異常所見はX線画像で可視化される以前の、早期の変形性膝関節症を示す可能性がある。X線検査では描出されないMRIの異常所見のうちどの程度の病変が、その後X線画像で変形性膝関節症として描出されるようになるかは、縦断的研究で検討する必要がある」と指摘する。
(菅野守:医学ライター)