末梢動脈疾患(PAD)の発症リスクについて、男性で一般的によくみられる4つの因子(喫煙、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病)について検討した結果、各因子が独立した高リスク因子であり、また因子が併存するほど発症リスクが増大すること(因子が1つ増えるごとに発症リスクは2.06倍)が明らかになった。米国・ハーバードメディカルスクールのMichel M. Joosten氏らが米国男性約4万5千人を25年間追跡した前向き研究の結果、報告した。先行研究においてリスク因子個々とPAD発症との関連は明らかにされていたが、因子が併存している場合の発症との関連は検討されていなかった。JAMA誌2012年10月24・30日号掲載より。
10万人・年当たりでみた発症率、因子0では9例、1つでは23例、4つある場合は186例
研究グループは、1986年時点で心血管疾患の既往がない米国男性4万4,985例(Health Professionals Follow-up Studyの参加者)を、2011年まで25年間前向きに追跡した。
追跡期間中2年ごとに、リスク因子の発現について更新し、臨床的に有意なPAD発症(肢切断、血管再生、血管造影で50%以上の狭窄、ABI指標0.90未満、または医師がPADと診断)を主要評価項目とした。
追跡期間中央値24.2年(範囲:20.8~24.7)で、PAD発症は537例であった。
各因子についてその他3つの因子や交絡因子で補正後、独立したPAD発症のリスク因子であることが確認された。
リスク因子の併存数別にみた年齢補正後PAD発症率(10万人・年当たり)は、0の場合は9例(95%信頼区間:6~14)、1つの場合は23例(同:18~28)、2つの場合は47例(同:39~56)、3つの場合は92例(同:76~111)、4つの場合は186例(同:141~246)であった。
4つのリスク因子を有する男性の絶対発症率は3.5/1,000人・年
リスク因子が1つ加わることに関する多変量補正後ハザード比は、2.06(95%信頼区間:1.88~2.26、線形傾向p<0.001)であった。
また、4つのリスク因子をいずれも有していない男性のPAD発症に関するハザード比は、4つすべてを有している男性との比較で、0.23(同:0.14~0.36)であった。
96%(95%信頼区間:94~98)のPAD症例で、診断時に4つのリスク因子のうち少なくとも1つの因子を有していた。これら4つのリスク因子の集団寄与危険度は75%(同:64~87)であり、4つのリスク因子すべてを有する男性のPAD絶対発症率は、3.5/1,000人・年であった。
(武藤まき:医療ライター)