若年期から肥満がみられ肥満期間が長いほど、冠動脈石灰化(CAC)が促進され、中年期の冠動脈心疾患リスクの増大につながることが、米国・国立心肺血液研究所(NHLBI)のJared P Reis氏らの検討で示された。米国では過去30年間に肥満率が成人で2倍、青少年では3倍に上昇しており、若年の肥満者ほど生涯を通じて過剰な脂肪蓄積の累積量が多く、肥満期間が長くなるが、肥満の長期的な転帰に関する研究は少ないという。また、脂肪の蓄積量にかかわらず、全身肥満の期間が長期化するほど糖尿病罹患率や死亡率が上昇することが示されているが、肥満期間が動脈硬化の発症や進展に及ぼす影響については、これまで検討されていなかった。JAMA誌2013年7月17日号掲載の報告。
大規模な長期の前向きコホート試験のデータを使用
研究グループは、全身および腹部肥満の期間と、冠動脈心疾患の予測因子であるCACの進行との関連をプロスペクティブに検討した。
米国の4都市(バーミンガム、シカゴ、ミネアポリス、オークランド)で行われた地域住民ベースの縦断的コホート試験(CARDIA試験)の参加者のうち、1985~1986年に登録された当時18~30歳の非肥満の黒人および白人を対象とした。全身肥満はBMI≧30、腹部肥満はウエスト周囲長(WC)が男性>102cm、女性>88cmと定義した。
CACは15、20、25年後にCT検査で評価し、肥満の評価は2、5、7、10、15、20、25年後に行った。CACの進行は、15年後(2000~2001年)から25年後(2010~2011年)の10年間におけるCACの増加またはAgatston法によるCACスコアの20点以上の上昇とした。
肥満期間が延長するに従いCACの発症、進行が増加
解析の対象となった3,275例のうち、黒人が45.7%、女性は50.6%であった。フォローアップ期間中に40.4%が全身肥満、41.0%が腹部肥満をきたし、平均肥満期間はそれぞれ13.3年、12.2年、初回肥満発症年齢は35.4歳、37.7歳だった。
1,000人年当たりのCACの発症率は、全身肥満がない場合の11.0に比べ全身肥満が20年以上に及ぶ場合は16.0(調整ハザード比[HR]:1.84、95%信頼区間[CI]:1.25~2.70、p=0.001)、腹部肥満はそれがない場合の11.0に比し20年以上継続する場合は16.7(同:2.48、1.53~4.01、p<0.001)であり、いずれも有意に増加した。
15年後から25年後の10年間に、21.6%でCACの進行が認められた。CAC進行は、非全身肥満の20.2%から全身肥満20年以上では約25.2%へ、非腹部肥満の19.5%から腹部肥満20年以上では約27.7%へ上昇した。
肥満期間5年延長ごとのCAC発症の調整HRは全身肥満が1.02(95%CI:1.01~1.03)、腹部肥満は1.03(同:1.02~1.05)であり、同様にCAC進行の調整オッズ比(OR)は全身肥満が1.04(同:1.01~1.06)、腹部肥満が1.04(同:1.01~1.07)であった。これらの有意な関連性は、中等度の影響を及ぼす可能性のある因子(血圧、糖尿病、降圧薬、脂質低下薬など)でさらなる調整を行っても、わずかに減弱はするものの、ほぼ保持されていた。
著者は、「若年成人期の肥満を予防あるいは少なくとも遅延できれば、中年期の動脈硬化発症リスクが低減すると考えられる」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)