中等度の虚血性僧帽弁閉鎖不全症について、冠動脈バイパス移植術(CABG)単独手術群とCABG+僧帽弁形成術の併用手術群を比較した結果、僧帽弁形成術の併用処置を行っても高度の左室逆リモデリングに至らなかったことが、米国・マウントサイナイ医科大学のPeter K. Smith氏らによる検討の結果、示された。むしろ併用手術により、有害イベントが有意に増大することも判明した。NEJM誌オンライン版2014年11月18日号掲載の報告より。
中等度の虚血性僧帽弁閉鎖不全症301例を無作為化
虚血性僧帽弁閉鎖不全症は、死亡率および罹患率の増大と関連しているが、中等度患者への手術手技について、これまでCABG+僧帽弁形成術の有用性については明らかにされていなかった。
研究グループによる検討は、中等度の虚血性僧帽弁閉鎖不全症301例を、CABG単独群(150例)と併用手術群(151例)に無作為化して行われた。
主要エンドポイントは、1年時点で評価した左室収縮終末期容積係数(LVESVI)、左室リモデリングの程度であった。エンドポイントの評価は、Wilcoxon順位和検定を用いて、死亡を最低LVESVIランクで分類して行った。ベースラインでの両群の特性は類似していた。
1年時点で、死亡率に有意差なし、閉鎖不全あり生存率は単独群が有意に高い
1年時点で、平均(±SD)LVESVI値は、単独群46.1±22.4mL/m
2、併用手術群49.6±31.5mL/m
2。ベースラインからの変化の平均値は、それぞれ-9.4mL/m
2、-9.3mL/m
2であった。
死亡率は、併用手術群6.7%に対し、単独群は7.3%であった(併用手術群のハザード比:0.90、95%信頼区間[CI]:0.38~2.12、p=0.81)。LVESVIランクベースの評価の結果、両群間の有意な差は認められなかった(zスコア:0.50、p=0.61)。
1年時点の平均左室駆出率は、単独群45.1±10.2%、併用手術群43.9±11.2%であった。
1年時点で、僧帽弁閉鎖不全(中等度または重度)があり生存していた患者の割合は、併用手術群よりも単独群のほうが有意に高率であった(31.0%[中等度25.9%、重度5.2%] vs. 11.2%[10.4%、0.8%]、p<0.001)。
このほか、重大有害心イベントまたは脳血管イベント、死亡、再入院、機能状態、QOLについても両群間で有意な差は認められなかったが、脳卒中、一過性虚血性脳卒中、代謝性脳症、上室性不整脈の発生が併用手術群で有意に高かった(p=0.03)。
これらの結果について著者は、「1年時点では、CABG+僧帽弁形成術の併用手術について臨床的に優越性が認められる所見は示されなかった」としたうえで、「より長期の追跡を行い、1年時点で観察された僧帽弁閉鎖不全(中等度または重度)を有する患者における差が変化し、併用手術を受けることの臨床的ベネフィットが増しているかどうかを確認する必要があるだろう」とまとめている。