経口ステロイド薬は、椎間板ヘルニアによる急性神経根障害に起因する坐骨神経痛の治療に一般的に用いられるが、適切な統計学的パワーを備えた臨床試験による評価は行われていないという。米国カイザー・パーマネンテ北カルフォルニアのHarley Goldberg氏らは、今回、プレドニゾンの短期投与により身体的な機能障害はある程度改善されるが、疼痛には効果がないことを確認した。JAMA誌2015年5月19日号掲載の報告。
15日間漸減投与法をプラセボ対照無作為化試験で評価
本研究は、急性坐骨神経痛に対する経口プレドニゾン投与の有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験。対象は、年齢18~70歳、割り付け前の3ヵ月以内に神経根痛がみられ、オスウェストリー障害指数(Oswestry Disability Index:ODI、0~100点、点数が高いほど機能障害が重度)スコアが30点以上であり、MRIで椎間板ヘルニアが確認された患者であった。
患者登録は、カイザー・パーマネンテ北カルフォルニアの3つの関連施設で行った。被験者は、経口プレドニゾンを15日間漸減投与する群またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。プレドニゾンは、60mg/日、40mg/日、20mg/日の順に各5日間投与した(総投与量:600mg)。
主要評価項目は割り付け後3週時の患者の自己申告によるODIスコアとした。副次評価項目は、1年(52週)時のODI、下肢疼痛スコア(0~10点、点が高いほど疼痛が重度)、脊椎手術、SF-36の身体的側面のサマリースコア(PCS)と精神的側面のサマリースコア(MCS)(いずれも0~100点、点が高いほどQOLが良好)であった。
試験期間は2008年11月~2013年8月であった。269例が登録され、プレドニゾン群に181例、プラセボ群には88例が割り付けられた。平均年齢はプレドニゾン群が45.6歳、プラセボ群は46.7歳、男性がそれぞれ54.1%、58.0%だった。
導入の可否は個々の患者の病態を考慮して決める
平均ODIスコアは、プレドニゾン群がベースラインの51.2点から3週時には32.2点に、プラセボ群は51.1点から37.5点に改善した。補正後の平均ODIスコアの両群間の差は6.4点(95%信頼区間[CI]:1.9~10.9、p=0.006)であり、プレドニゾン群がプラセボ群に比べ有意に良好だった。また、52週時の補正後の平均ODIスコアの差は7.4点(95%CI:2.2~12.5、p=0.005)であり、プレドニゾン群で有意に優れた。
補正後の平均下肢疼痛スコアは、プレドニゾン群がプラセボ群に比べ、3週時は0.3点(95%CI:-0.4~1.0、p=0.34)、52週時は0.6点(-0.2~1.3、p=0.15)優れたが、いずれも有意な差はみられなかった。
補正後の平均SF-36 PCSスコアは、プレドニゾン群が3週時は3.3点(95%CI:1.3~5.2、p=0.001)改善され有意差がみられたが、52週時は2.5点(-0.3~5.4、p=0.08)の改善であり有意差はなかった。
また、補正後の平均SF-36 PCSスコアは、プレドニゾン群が3週時は2.2点(95%CI:-0.4~4.8、p=0.10)の改善で有意な差は認めなかったが、52週時は3.6点(0.6~6.7、p=0.02)優れ、有意差がみられた。
52週時の脊椎手術の施行率は、プレドニゾン群が9.9%、プラセボ群は9.1%であり、両群間に有意な差はなかった(相対リスク:1.2、95%CI:0.5~2.6、p=0.68)。
1つ以上の有害事象を発現した患者は、3週時にはプレドニゾン群で有意に多かった(49.2 vs. 23.9%、p<0.001)が、多くが一過性であり、1年後には差はなくなった。治療関連の重篤な有害事象は認めなかった。
著者は、「これまでの検討では、臨床的に意味のある最小限のODIスコアの差は5~15点とされることから、今回の6.4点の改善を根拠にプレドニゾンの使用を決定するのは困難かもしれない。最終的には、個々の患者の病態を考慮して決めることになるだろう」とし、「経口ステロイド薬使用の論拠は、より侵襲的な介入の必要性を低減することであるが、手術施行率も改善しなかった。また、用量が十分でない可能性も残る」と考察している。
(菅野守:医学ライター)