積極的なアトピー性皮膚炎治療と併用し、離乳期早期から加熱した卵を少量ずつ段階的に摂取することで、ハイリスク乳児の鶏卵アレルギーを安全に予防できることが明らかとなった。国立成育医療研究センターの夏目統氏らが、アトピー性皮膚炎の乳児を対象に行った無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「卵アレルギーの発症予防研究(Prevention of Egg Allergy with Tiny Amount Intake:PETIT研究)」の結果を報告した。近年、食物アレルギーの予防戦略として、摂取を遅らせるより早期摂取のほうが有効であるとのエビデンスが増えてきている。このような固形食物の早期摂取によりアレルギー反応が引き起こされることもあったが、著者は、「今回の研究で、食物アレルギーによって引き起こされるアレルギー発症の第二の波を克服する実用的な方法が開発された」とまとめている。Lancet誌オンライン版、2016年12月8日号掲載の報告。
生後6ヵ月から、加熱卵粉末 vs.プラセボ(カボチャ粉末)摂取で検討
PETIT試験は国内の2施設で、アトピー性皮膚炎を有する生後4~5ヵ月の乳児を対象に実施された。在胎37週未満の出生児、鶏卵・卵製品の摂取歴、鶏卵に対する即時型アレルギーの既往歴、特定の食物に対する非即時型アレルギーの既往歴、重篤な併存疾患のある乳児は除外した。
対象乳児を生後6ヵ月から、加熱全卵粉末を含むカボチャ粉末を摂取する「卵群」と、カボチャ粉末のみの「プラセボ群」に1対1の割合で、二重盲検法により割り付けた(4ブロックのブロックランダム化:施設および性別で層別化)。卵群は、加熱全卵粉末50mg/日(ゆで卵0.2g相当)から開始し、生後9ヵ月以降は加熱全卵粉末250mg/日(ゆで卵1.1g相当)を摂取した。なお、全例、登録時および介入期間中、積極的にアトピー性皮膚炎の治療を行い、増悪することなくコントロールされた。
主要評価項目は、生後12ヵ月時点における経口負荷試験(加熱全卵粉末7g:ゆで卵32g相当)で確認した卵アレルギー発症率であった。
生後12ヵ月時点、卵群の卵アレルギー発症率は約80%減少
2012年9月18日~2015年2月13日に、乳児147例が割り付けられた(卵群73例、プラセボ群74例)。
本試験は、100例の中間解析において2群間に有意差が確認されたため、早期終了となった。卵アレルギー発症率は、卵群9%(4/47例)に対し、プラセボ群38%(18/47例)で、リスク比は0.222(95%信頼区間[CI]:0.081~0.607、p=0.0012)であった。
主要評価項目解析対象集団(試験終了による中止例と介入を実施できなかった症例を除く)において、卵アレルギー発症率は、プラセボ群38%(23/61例)に対して卵群8%(5/60例)であった(リスク比:0.221、95%CI:0.090~0.543、p=0.0001)。
有害事象については、入院率について両群に差が認められた(卵群10%[6/60例]vs.プラセボ群0例、p=0.022)。試験粉末摂取後に急性イベントが、卵群9例(15%)において19件、プラセボ群11例(18%)において14件発生したが、急性のアレルギー反応は認められなかった。
(医療ライター 吉尾 幸恵)