米国の病院に入院した高齢のメディケア受給患者のデータから、海外医学部出身医師の治療を受けた患者の死亡率は、米国内の医学部出身医師が治療した患者より低いことが明らかとなった。ハーバード公衆衛生大学院の津川 友介氏らが、治療した一般内科医が海外医学部卒業生か米国内医学部卒業生かで患者のアウトカムに違いがあるかどうかを観察研究で検証し、報告した。これまで、小規模な検討ではさまざまな結果が示されていたが、全国的なデータを用いた研究はなかった。BMJ誌2017年2月3日号掲載の報告。
65歳以上の入院患者約122万人とその担当医約4万人のデータを解析
研究グループは、Medicare Inpatient Files、Medicare Carrier Files、米国病院協会年次調査、およびDoximity(医師専用SNS)によって収集された医師データベースの4つのデータベースを用い、2011年1月1日~2014年12月31日に内科疾患で急性期病院に入院した65歳以上のメディケア出来高払い受給者121万5,490人、ならびにその患者を治療した医師4万4,227人のデータを解析した。
主要評価項目は、患者の30日死亡率、退院後30日再入院率、および入院当たりの治療費用であった。患者特性(年齢、性別、人種、主要診断、重症度など)、医師特性(年齢、性別、治療した患者数など)、ならびに病院を固定効果(同一病院内の医師同士を比較)として補正した。また、感度解析として、入院患者の治療に特化した総合診療医(ホスピタリスト:主に交代制で働き、勤務予定に基づいて見かけ上無作為に患者を診療する)に絞った解析も行った。
米国外医学部出身医師が治療した患者の死亡率が有意に低い
海外医学部出身医師が治療した患者は、米国内医学部出身医師が治療した患者と比較して、わずかに慢性疾患が多く、入院当たりの治療費(補正後)がわずかに高かった(1,145 vs.1,098ドル、差:47ドル、95%信頼区間[CI]:39~55ドル、p<0.001)、しかし、補正後30日死亡率は低かった(11.2 vs.11.6%、補正後オッズ比:0.95、95%CI:0.93~0.96、p<0.001)。再入院率は両群間で差はなかった。
患者アウトカムの違いは、ホスピタリストに限ってみた場合も同様であることが確認された。死亡率の差は、在院期間、支出費用、転院/退院先の場所の違いでは説明されなかった。
なお、著者は、米国外で出生した海外医学部卒業生と海外医学部に留学した米国市民を区別できなかったことや、30日死亡率と再入院率が必ずしも包括的に治療の質を評価できるわけではないことを研究の限界として挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)