1回の軟性S状結腸鏡検査で、大腸がんの発症や死亡が抑制され、その有効性は17年以上にわたり持続することが明らかとなった。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのWendy Atkin氏らが、55~64歳を対象とした無作為化比較試験UK Flexible Sigmoidoscopy Screening Trial(UKFSS試験)の長期追跡結果を報告した。大腸がんは世界で3番目に多いがんで、その予防や早期発見は重要な課題となっている。UKFSS試験の追跡期間約11年時の解析では、軟性S状結腸鏡検査の1回施行で、大腸がんの発生が33%、死亡率が43%減少することが示されていた。Lancet誌オンライン版2017年2月21日号掲載の報告。
男女約17万人をスクリーニング実施群と非実施群に無作為化
研究グループは、1994年11月14日~1999年3月30日の期間に、事前のアンケートで軟性S状結腸鏡検査によるスクリーニング(検査を1回施行し、ポリープなどの病変が発見された場合は切除)の案内があれば参加すると回答し、適格基準を満たした55~64歳の男女17万432例を、軟性S状結腸鏡検査を実施する介入群と実施しない対照群に、ブロックランダム化法(ブロックサイズ12、試験施設・一般診療所・世帯類型で層別化)により、1対2の割合で無作為に割り付けた。介入の特性上、医療スタッフの盲検化は困難であったが、対照群およびまだ無作為化されていない参加者には割り付け状況がわからないよう、無作為化は数回に分けてなされた。
主要評価項目は、大腸がんの発症率および死亡率。ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)をintention-to-treat解析およびper-protocol解析で算出し評価した。
スクリーニングを受けた場合、大腸がん発症率は35%、死亡率は41%減少
解析には17万34例が組み込まれた。介入群5万7,098例、対照群11万2,936例で、介入群のうち4万621例(71%)がスクリーニングを受け、1万6,477例(29%)はスクリーニングを受けなかった。
追跡期間中央値17.1年の間に、介入群1,230例、対照群3,253例が大腸がんと診断され、そのうちそれぞれ353例、996例が大腸がんで死亡した。Intention-to-treat解析では、対照群と比較し介入群の大腸がん発症率は有意に26%低下し(HR:0.74、95%CI:0.70~0.80、p<0.0001)、死亡率は有意に30%低下した(HR:0.70、95%CI:0.62~0.79、p<0.0001)。per-protocol解析では、検査未実施で補正した場合、スクリーニングを受けた集団において大腸がん発症率は35%低下し(HR:0.65、95%CI:0.59~0.71)、死亡率は41%低下した(HR:0.59、95%CI:0.49~0.70)。
著者は、今回の試験は、スクリーニングへの参加の意志に基づいて選別されたコホートが対象という限界はあるとしつつ、「過去10年で内視鏡技術は進歩しており、将来、軟性S状結腸鏡検査の有益性は、今回得られた結果よりもさらに拡大する可能性が考えられる」と述べている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)