リポ蛋白リパーゼ(LPL)遺伝子の稀有な機能障害性変異(ヘテロ接合体)は、トリグリセライド高値および冠動脈疾患(CAD)と有意に関連していることが、米国・マサチューセッツ総合病院のAmit V Khera氏らによる横断的研究の結果、明らかとなった。LPLの活性は、トリグリセライドが豊富なリポ蛋白が血中で代謝される際の律速段階に寄与する。そのためLPL遺伝子の機能障害性変異は、終生にわたり酵素活性不足をもたらし、ヒトの疾患に関与する可能性が推察されるが、両者の関連はこれまで確認されていなかった。著者は、「今後、ヘテロ接合体によるLPL欠損症がCADの原因となる機序があるかどうかをさらに検証する必要がある」とまとめている。JAMA誌オンライン版2017年3月7日号掲載の報告。
CAD患者約1万4,000例、対照約3万3,000例でLPL遺伝子を解析
研究グループは、ヘテロ接合体のLPL欠損症をもたらすまれな機能障害性変異、ならびにLPLの高頻度変異が、血中脂質値や早発性CADの発症と関連しているかを検証した。2010~15年の間に、Myocardial Infarction Genetics Consortiumにおける10のCAD症例対照コホート(CAD患者1万138例、対照1万2,395例)、およびGeisinger Health SystemのDiscovEHRコホートにおけるコホート内CAD症例対照コホート(CAD患者4,107例、対照2万251例)について、LPLの遺伝子配列を解析した。
LPL遺伝子の機能障害性変異(マイナー対立遺伝子頻度<1%)には、機能喪失型変異やヒト遺伝子データベース(ClinVar)で病原性があるとアノテーション(注釈付け)されたもの、コンピュータ予測アルゴリズムによって障害性があると予測されたものなどが含まれた。
LPL遺伝子の高頻度変異(マイナー対立遺伝子頻度>1%)は、2012~14年にGlobal Lipids Genetics Consortiumの最大30万5,699例、およびCARDIoGRAM Exome Consortiumの最大12万600例で解析され、独立して血中トリグリセライド値と関連していると同定された遺伝子型とした。
主要評価項目は、血中脂質値とCADで、メタ解析により併合した。
変異遺伝子保有者でトリグリセライド値が高く、CADリスクは1.8倍
LPL遺伝子配列を解析した合計4万6,891例の患者背景は、平均(±SD)年齢50±12.6歳、女性が51%であった。
LPL機能障害性変異(ヘテロ接合体)保有者は、対照3万2,646例中105例(0.32%)、早発性CAD発症者1万4,245例中83例(0.58%)、合計188例(0.40%、95%信頼区間[CI]:0.35~0.46%)であった。
非保有者4万6,703例と比較し保有者188例は、血漿トリグリセライド値が高値(19.6mg/dL、95%CI:4.6~34.6mg/dL)、CADのオッズ比(OR)が有意に高かった(OR:1.84、95%CI:1.35~2.51、p<0.001)。
LPL高頻度変異6種(マイナー対立遺伝子変異頻度1~29%)については、CADのオッズ比はトリグリセライド1 SD増加当たり1.51(95%CI:1.39~1.64、p=1.1×10
-22)であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)