乳がん放射線療法の有効性、1980年代以前vs.以降/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2023/11/16

 

 放射線治療は1980年代以降、よりターゲットを絞れるようになり、安全性と有効性が改善されている。英国・オックスフォード大学のCarolyn Taylor氏らEarly Breast Cancer Trialists' Collaborative Group(EBCTCG)は、1980年代以前と以後に行われた乳がん患者に対する局所リンパ節放射線療法の無作為化試験における有効性を評価し、1980年代以降に行われた試験では、乳がんの死亡率および全死因死亡率が有意に低下していたが、1980年代以前の試験では有意な低下はみられなかったことを示した。Lancet誌オンライン版2023年11月3日号掲載の報告。

2008年末までに開始した無作為化比較試験の被験者データをメタ解析

 研究グループは、早期乳がん女性患者に対する局所リンパ節放射線療法と非局所リンパ節放射線療法を比較した、2009年1月1日以前に開始したすべての無作為化比較試験からデータを収集し、被験者個別データを用いたメタ解析を行った。

 試験は、MEDLINE、Embase、Cochrane Libraryおよび学術会議アブストラクトを含むデータベースを用いた、EBCTCGの定期的で体系的な検索により特定された(右側乳房がんの場合のみリンパ節放射線療法を行った試験が1件含まれた)。

 各試験の治療の相違点は、具体的な局所リンパ節放射線療法(内側乳房鎖、鎖骨上窩、または腋窩まで、もしくはこれらの組み合わせ)だけだった。

 主要評価項目は、あらゆる部位の再発、乳がん死、非乳がん死、全死因死亡だった。

 データは試験担当医によって提供され、解析に適したフォーマットに標準化。そのデータの概要は検証担当医に戻された。log-rank解析で初回イベント発生率比(RR)と信頼区間(CI)を求めた。

新しい試験では、乳がん死亡率は0.87倍、総死亡率は0.90倍に

 17試験が特定され、データが入手できた16試験(被験者総数1万4,324例)を解析対象とした(被験者165例の1試験はデータが入手できず除外)。

 1989~2008年に開始された、より新しい8試験(被験者総数1万2,167例)では、局所リンパ節放射線療法は再発を有意に減少した(RR:0.88、95%CI:0.81~0.95、p=0.0008)。主に遠隔再発が減少しており、局所リンパ節再発はほとんど報告されていなかった。

 放射線療法は乳がん死を有意に減少し(RR:0.87、95%CI:0.80~0.94、p=0.0010)、非乳がん死への効果はみられなかった(0.97、0.84~1.11、p=0.63)が、結果として全死因死亡を有意に減少した(0.90、0.84~0.96、p=0.0022)。

 試算例では、15年乳がん死の推定絶対減少率は、腋窩リンパ節転移のない女性では1.6%、同リンパ節転移1~3個では2.7%、同4個以上では4.5%だった。

 一方、1961~78年に開始したより古い8試験(被験者総数2,157例)では、局所リンパ節放射線療法の乳がん死への影響はほとんどみられず(RR:1.04、95%CI:0.91~1.20、p=0.55)、非乳がん死は有意に増加していた(1.42、1.18~1.71、p=0.00023)。同リスクは主に20年後以降に現れ、全死因死亡も有意に増加していた(1.17、1.04~1.31、p=0.0067)。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)