狭小弁輪を伴う大動脈弁狭窄症へのTAVR、自己拡張型弁vs.バルーン拡張型弁/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2024/04/26

 

 狭小弁輪を伴う重症大動脈弁狭窄症患者において、バルーン拡張型弁を使用した経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)に対する自己拡張型弁を使用したTAVRの12ヵ月時点の臨床アウトカムに関する非劣性、および生体弁機能不全に関する優越性が検証された。米国・ペンシルベニア大学のHoward C. Herrmann氏らSMART Trial Investigatorsが、13ヵ国83施設で実施した無作為化試験「SMall Annuli Randomized To Evolut or SAPIEN Trial:SMART試験」の結果を報告した。狭小弁輪を伴う重症大動脈弁狭窄症患者は、TAVR後に弁の血行動態が低下し、心血管系臨床アウトカムが不良となるリスクが報告されていた。NEJM誌オンライン版2024年4月7日号掲載の報告。

2つの主要複合エンドポイントを評価

 研究グループは、症候性重症大動脈弁狭窄症で大動脈弁輪面積が430mm2以下の患者を、自己拡張型弁(Evolut PRO/PRO+/FX、Medtronic製)を用いるTAVR群、またはバルーン拡張型弁(SAPIEN 3/3 Ultra、Edwards Lifesciences製)を用いるTAVR群に、1対1の割合で無作為に割り付け、5年間追跡した。

 主要エンドポイントは、12ヵ月時の死亡、後遺障害を伴う脳卒中または心不全による再入院の複合(非劣性を評価、非劣性マージン8%)、ならびに12ヵ月時の生体弁機能不全(大動脈弁平均圧較差20mmHg以上、重症prosthesis-patient mismatch[PPM]または中等症以上の大動脈弁逆流症、臨床的弁血栓症、心内膜炎、大動脈弁の再インターベンション)を測定する複合エンドポイント(優越性を評価、片側α=0.025)とした。

 2021年4月~2022年9月に737例が無作為化され、このうち716例がTAVRを受け(as-treated集団)、解析対象集団に組み込まれた。患者背景は、平均年齢80歳、女性が87%、米国胸部外科医学会予測死亡リスク(STS-PROM)スコアの平均値は3.3%であった。

自己拡張型弁のバルーン拡張型弁に対する非劣性および優越性を検証

 第1の主要エンドポイントである12ヵ月時の死亡、後遺障害を伴う脳卒中または心不全による再入院の複合イベントの発生率(Kaplan-Meier推定値)は、自己拡張型弁群9.4%、バルーン拡張型弁群10.6%であった(群間差:-1.2%、90%信頼区間[CI]:-4.9~2.5、非劣性のp<0.001)。

 第2の主要エンドポイントである12ヵ月時の生体弁機能不全の発生率(Kaplan-Meier推定値)は、自己拡張型弁群9.4%、バルーン拡張型弁群41.6%であった(群間差:-32.2%、95%CI:-38.7~-25.6、優越性のp<0.001)。

 副次エンドポイントについては、12ヵ月時の大動脈弁平均圧較差が自己拡張型弁群で7.7mmHg、バルーン拡張型弁群で15.7mmHg、平均有効弁口面積がそれぞれ1.99cm2および1.50cm2、血行動態的構造的弁機能不全の発生率が3.5%および32.8%、女性における生体弁機能不全の発生率は10.2%および43.3%であった(すべてp<0.001)。また、30日時点の中等度または重症PPMは、自己拡張型弁群で11.2%、バルーン拡張型弁群で35.3%に認められた(p<0.001)。

 主な安全性エンドポイントは、両群で類似していた。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 上妻 謙( こうづま けん ) 氏

帝京大学医学部内科学講座・循環器内科 教授