現代では24時間型の生活習慣による生活の乱れや、高齢化、ストレスに満ちた社会環境などにより、国民の約5人に1人は睡眠に悩んでいるといわれ、不眠症は誰にでも起こりうる現代病のひとつといえる。不眠は、集中力や気力、充実感といった日中パフォーマンスの低下を招くだけでなく、糖尿病や高血圧をはじめとする生活習慣病やうつ病のリスクともなる。
現代社会における睡眠、不眠に対する意識や行動の実態を把握するため、睡眠専門医である林田 健一氏の監修のもと、アステラス製薬株式会社ならびにサノフィ・アベンティス株式会社は、日本・アメリカ・フランスの3ヵ国で約7,000人を対象に睡眠に関する意識と行動についてのインターネット調査を実施した。本調査結果は、2012年5月22日、アステラス製薬株式会社とサノフィ・アベンティス株式会社によるプレスセミナーにて発表された。
日本人の睡眠時間は米仏と比べ、約0.5時間短い
平日の平均睡眠時間は、日本は6.50時間で米国の7.01時間、仏国の7.07時間より約0.5時間短く、平均睡眠時間が6時間未満の割合は、日本が最も多く19.8%、米国12.5%、仏国10.2%であった。また、日本人は睡眠時間に対する満足度も最も低かった。
日本人は睡眠の質に対する満足度も低く、日中パフォーマンスも低下
睡眠の質への満足度調査では、「満足」と回答した割合は米国59.4%、仏国61.1%に対し、日本は44.7%であった。一方、「不満」と回答した日本人は36.0%と約3人に1人が睡眠の質に不満であることが明らかとなった。
日中パフォーマンスとして評価した「集中力、気力・充実感の低下」および「眠気」を感じる人の割合は、日本はいずれの項目でも米仏より高い結果であった。とくに、「集中力がない」と回答した割合は、米仏(各4.5%、9.7%)に対して日本人は17.4%、「日中に眠気を感じる」が米仏(各56.0%、30.3%)に対して日本人70.9%、と米仏との間に大きな開きがあった。また、日本人では睡眠の質に対する満足度が低いほど日中パフォーマンスの低下が顕著にみられた。
不眠の対処法-日本人は「寝酒」、米仏では「かかりつけ医に相談」-
不眠症状のある人(アテネ不眠尺度6点以上)を対象に、不眠への対処を調査したところ、日本では「お酒を飲む」19.5%、「医師から処方された睡眠薬を飲む」13.7%、「何もしない」13.1%の順であった。米仏では「医師から処方された薬を飲む」(各19.2%、16.9%)、「医師の診察を受ける」(各18.6%、19.9%)の割合が多く、日本とは対照的な結果であった。
次いで、不眠症状がある人が医療機関を受診した割合では、米国27.3%、仏国25.6%に対し、日本は15.7%と低い結果であった。また、不眠症状があるが受診経験のない人を対象に「不眠の改善に良いと思う診療科」を尋ねたところ、米仏では「かかりつけ医(内科)」(各49.8%、66.7%)の割合が多いが、日本では25.9% と低く、さらに31.4%が「わからない」と回答した。加えて、「かかりつけ医から睡眠について聞かれた経験がある」と回答した割合は、米仏(各29.8%、47.2%)と比べ、日本人では20.8%と低かった。
求められる、かかりつけ医の役割「積極的な睡眠の問診と治療を」
今回の調査結果から、日本人は睡眠時間や睡眠の質に関する悩みを抱えているものの、米仏と比べ医師に相談することも少なく、寝酒で不眠対処をする傾向 があることがわかった。林田氏は「不眠の予防、早期発見、治療は日本人の健康と安全を守るうえで重要であり、かかりつけ医には睡眠についてより積極的な問診を実施し治療を行うことが求められる」と語った。
【調査概要】
調査目的:睡眠、不眠に対する意識や行動の実態を把握する
調査対象:日米仏の成人、計6,973人(30歳以上)
日本 3,282人(男性:49.8%、女性:50.2%)
米国 1,725人(男性:49.8%、女性:50.2%)
仏国 1,966人(男性:49.6%、女性:50.4%)
調査手法:インターネット調査(2011年8月18日~24日)
(ケアネット 鷹野 敦夫)
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