カナダ・モントリオール大学のMoteshafi H氏らは、オランザピンの忍容性[心血管代謝系の有害反応と錐体外路症状(EPS)]について、統合失調症患者と情動障害患者を比較するメタ解析を行った。その結果、統合失調症患者は体重増加を引き起こしやすい可能性が示された。著者は「この結果は、統合失調症患者ではメタボリック症候群になりやすいという遺伝的素因に加えて、とくに心血管疾患に対する生活習慣リスク(食生活の乱れ、運動不足、ストレス、喫煙など)を有する割合が高いという事実の裏付けとなるのではないか」と述べている。Drug Saf誌2012年10月1日号の報告。
PsycINFO(1967~2010年)、PubMed(MEDLINE)、EMBASE(1980~2010年)などのデータソースを用いて、(1)統合失調症と情動障害の成人患者に関するオランザピンの有害反応(代謝あるいはEPS)、(2)試験期間中のオランザピン単独療法 を評価していた無作為化試験を検索し、解析に組み込んだ。2人の独立したレビュワーが論文選定のためアブストラクトをスクリーニングし、レビュワー1人が事前に決めていた除外・包含基準に基づき関連データを抽出した。主要アウトカムは代謝有害反応(体重変化、血糖値、LDL-C、総コレステロール、トリグリセリド)、副次アウトカムはEPS(パーキンソン症候群、静座不能、抗パーキンソン病薬の服用)の発生率であった。
主な結果は以下のとおり。
・33試験(4,831例)を解析に組み込んだ。
・忍容性アウトカム(統合失調症群と情動障害群で個別に算出しメタ解析に組み込んだ)は、統合失調症患者および情動障害患者いずれにおいても、オランザピンが体重増加に関与し、トリグリセリド値、血糖値、総コレステロール値を上昇することを示した。
・オランザピン治療によって、情動障害患者よりも統合失調症患者で有意に体重が増加した。
・血糖値、総コレステロール、トリグリセリド値の上昇について、統計的有意差はみられなかったものの、統合失調症群が情動障害群よりも高値であった。
・パーキンソン症候群の発症率は、統合失調症群が情動障害群よりも有意に高値であった。
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(ケアネット)