性的強迫観念は、統合失調症患者で頻度が高く、自殺行動と独立して関連

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2012/11/15

 

 性的強迫観念(sexual obsession)は、統合失調症患者で頻度が高く半数以上でみられ、次いで気分障害患者で3割強にみられる。また、統合失調症患者では女性よりも男性に多く、自殺行動の独立関連因子であることなどが、Liliana Dell Osso氏らによる研究の結果から、明らかになった。これまで性的強迫観念をトピックとした精神症状の研究は十分調査されておらず、結果を踏まえて著者は、「性的強迫観念に焦点を当てた研究と治療戦略の確立が、とくに気分障害や統合失調症を有する患者に着目して行われる必要がある」と提言している。Annals of general psychiatry誌オンライン版2012年10月30日号の掲載報告。

 本研究の目的は、(1)気分障害患者(156例)、パニック障害患者(54例)、統合失調症患者(79例)と非精神疾患被験者(100例)における性的強迫観念の有無を調べること、(2)性的強迫観念と自殺行動との関連を社会人口統計学的に(精神障害に考慮)調査すること、の2つであった。計289例の精神疾患患者の被験者は、イタリアの大学病院の精神科から集められ、100例の対照群は同じ大学の眼科に定期視力検査で受診した人であった。性的強迫観念について、Structured Clinical Interview for DSM-IV-TR、Brief Psychiatric Rating Scale(BPRS)、Obsessive-Compulsive Spectrum Self-Report(OBS-SR)にて評価し、Mood Spectrum-Self Report lifetime version(MOODS-SR)などでの評価も行った。自殺傾向は、MOODS-SRの6項目で評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・性的強迫観念は、統合失調症で頻度が高く(54.4%)、次いで気分障害で多く認められた(35.9%)。
・統合失調症患者では、男性の方が女性よりも報告例が多かった(p<0.01)。
・自殺行動(自殺念慮、計画および企図)が多く報告されたのは、女性(補正後OR:1.99)、精神障害患者ではとくに気分障害患者が多く(同:11.5)、統合失調症(同:3.7)、パニック障害(同:2.9)と続いた。また、生涯にわたり性的強迫観念があると報告した被験者(同:3.6)でも報告が多かった。
・性的強迫観念は、あらゆる自殺行動と独立的に関連していた。
・年齢、教育、配偶者の有無、雇用状況は、自殺行動と関連していなかった。

関連医療ニュース
100年前と比べ統合失調症患者の死亡は4倍増、最大の死因は自殺
自殺リスクの危険因子の検証、年齢別のうつ症状との関係は?
破壊的行動障害に対する非定型抗精神病薬使用

(ケアネット)