救急医療機関における自殺企図患者は、何かしらの精神疾患を抱えているケースが少なくない。岩手医科大学 肥田篤彦氏らは統合失調症患者における自殺企図の特徴を、うつ病患者と比較し、検討を行った。Schizophrenia research誌オンライン版2012年11月3日号の報告。
統合失調症患者は重篤な自殺未遂方法を選択する傾向
対象は、8年間に岩手医科大学精神科救急部門においてICD-10で統合失調症(F2)と診断された患者260例、およびうつ病(F3)と診断された患者705例。対象患者は24歳以下、25~44歳、45歳以上の3群で比較した。自殺未遂方法の重篤度に関連する因子は、多変量ロジスティック回帰分析を用いて同定した。
統合失調症患者における自殺企図の特徴を検討した主な結果は以下のとおり。
・25歳以上の統合失調症患者は、うつ病患者と比較し、平均年齢がより若く、1年以内の自殺企図、過去の自殺企図を有する割合が高かった。
・統合失調症患者では、年齢にかかわらず、幻覚・妄想に起因する自殺未遂が圧倒的に多く、高所からの飛び降り、対向列車への投身、自分自身に火をつけるなどの重篤な自殺未遂方法を選択する傾向にあった。
・45歳以上の患者では、独居者の割合が高かった。
・すべての年齢層において、失業者が多かった。また統合失調症患者では、うつ病群と比較し、LCU(Life Change Unit:生活変化単位)スコアが低値であった。
・25~44歳の統合失調症患者では、より高いBPRS(簡易精神症状評価尺度)スコアとより低いGAS(総合評価尺度)スコアが認められた。
・自殺未遂方法の重篤度に影響を与える要因として、1年以内の自殺企図の既往が重篤度を上昇させ、教育年数と重篤度にも相関が認められた。また、統合失調症患者、うつ病患者の双方で、GASにおける全体的な健康の低スコアが重篤度を上昇させることが示された。
(ケアネット 鷹野 敦夫)