アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の長期曝露、ミツバチの生態行動に影響

提供元:ケアネット

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公開日:2013/02/22

 

 過去20年間に多くの国でミツバチやその他の受粉行動をする昆虫が急激に減少した。背景には、寄生ダニ駆除を目的とした、コリン作動性シグナル伝達に作用する有機リン酸系の農薬(殺虫剤)の影響が言われている。英国・ニューキャッスル大学のSally M. Williamson氏らは、それら殺虫剤の長期曝露がミツバチの行動にどのような影響を及ぼすのか、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬を用いた検証試験を行った。その結果、AChE阻害薬の長期曝露により毛づくろい行動(働かなくなる)や排便回数が増えるなど、ミツバチの生理機能や行動に変化がもたらされたことが確認されたという。Frontiers in Physiology誌オンライン版2013年2月5日号の掲載報告。

 コリン作動性シグナル伝達は、大半の臓器の神経筋機能において必須である。そのコリン作動性シグナル伝達をターゲットとする神経毒性の殺虫剤が致死量に達しないまま曝露されると巧みなメカニズムで昆虫の行動に変化をもたらす可能性がある。研究グループは、採餌において高度な行動連鎖がみられるミツバチについて、殺虫剤の曝露により採餌が障害され、コロニー(群れ)の状態が不良となる可能性があるのではないかと仮定し、AChE阻害薬を用いてミツバチの行動への影響を調べた。成虫の働きバチに致死量未満のAChE阻害薬のショ糖合成液を24時間摂取させ、歩行、動きの停止、毛づくろい、混乱行動を15分間観察した。

 主な結果は以下のとおり。

・いずれのAChE阻害薬も10nM濃度において、ミツバチの行動に同様の影響を及ぼした。毛づくろいの行動が著しく増え、頭部の毛づくろい行動の頻度にも変化がみられた。
・農薬のクマホスは用量依存的に行動に影響を及ぼし、1μM濃度で腹部の毛づくろいや排便といった倦怠症状を引き起こした。
・生化学アッセイにより、4種類の化合物(クマホス、アルジカルブ、クロルピリホス、ドネペジル)またはそれらの代謝物が、ミツバチにおいてAChE阻害薬として作用することを確認した。
・さらに、AChE阻害薬の曝露に反応して、2種類のAChE阻害薬の転写発現レベルが、脳および消化管組織において選択的にアップレギュレートされていることもわかった。
・以上の結果から、コリン作動性シグナル伝達に作用する殺虫剤は、微妙であるが重大な生理学的影響を及ぼし、生存の減少に結びついている可能性が示された。

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(ケアネット)