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ハゲタカジャーナルの査読をしているのは誰?世の中にはハゲタカジャーナルというものがあります。著者が論文投稿料を支払うことで、誰でも論文を読むことができるオープンジャーナルのモデルを悪用した医学雑誌のことで、すみやかに出版したい著者をだまして高額な投稿料をせしめるとんでもないジャーナル群のことを指します。ハゲタカジャーナルは、査読は形式的に行われるか、あるいはまったく行わないため、投稿された論文の質は極めて低いものが多いです。そんなハゲタカジャーナルにまつわる珍しい論文を紹介しましょう。Severin A, et al. Characteristics of scholars who review for predatory and legitimate journals: linkage study of Cabells Scholarly Analytics and Publons data.BMJ Open. 2021 Jul 21;11(7):e050270.この論文はPublonsに登録された査読が対象となっています。Publonsは世界における査読者の査読実績を集める事業を展開しています。Publonsのアカウントを取得した研究者は、Publonsに自分が担当した論文の査読歴を登録・管理することができます。まあ、この事業のことは今回の本旨とは異なりますので割愛します。この論文では、1万9,598人のレビュアーによってPublonsに投稿された18万3,743件の査読が分析対象となりました。このうち、67件のレビューがハゲタカジャーナル(1,160誌が該当)に対するもの(レビュー全体の3.31%)、1万7,766件のレビューが非ハゲタカジャーナル(6,403誌が該当)に対するもの(96.69%)であることがわかりました。全体の90%の査読者は、これまでハゲタカジャーナルに関与したことはない、と回答しています。ハゲタカジャーナルの査読を行っている人は、学歴が若く、研究・出版物や査読数自体も少ないということがわかりました。つまり、まだまだ研究の世界では未熟とされる若者たちが査読を行っているという現状が浮き彫りになったわけです。また、ハゲタカジャーナルの査読のほとんどが、アフリカから行われていることも示されています。査読というのは、闇が存在します、闇が。私のもとにもハゲタカジャーナルの査読依頼はよく来ますが、すべて断っています。というか、スパムメールフォルダに入っているので、基本的に無視しています。