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血漿HDL-C高値、心筋梗塞のリスクを低下させない可能性が

 血漿HDLコレステロール(HDL-C)値の上昇が、必ずしも心筋梗塞のリスクを低減しない可能性があることが、米国・ペンシルバニア大学のBenjamin F Voight氏らの検討で明らかとなった。血漿HDL-C高値は心筋梗塞のリスク低減と関連するとされるが、その因果関係は不明である。遺伝子型は、減数分裂時にランダムに決定され、非遺伝子的な交絡因子の影響を受けず、疾患過程の修飾も受けないことから、バイオマーカーと疾患の因果関係の検証にはメンデル無作為化(mendelian randomization)解析が有用だという。Lancet誌2012年8月11日号(オンライン版5月17日号)掲載の報告。因果関係を2つのメンデル無作為化解析で評価研究グループは、血漿HDL-C高値と心筋梗塞のリスク低下の因果関係を検証するために、2つのメンデル無作為化解析を実施した。まず、20試験(心筋梗塞2万913例、対照9万5,407例)のデータを用いて、内皮リパーゼ遺伝子(LIPG Asn396Ser)の一塩基多型(SNP)の評価を行った。次いで、心筋梗塞1万2,482例および対照4万1,331例のデータを使用し、HDL-Cと関連する14の頻度の高いSNPから成る遺伝子型スコアについて検討した。また、陽性対照(positive control)として、LDLコレステロール(LDL-C)に関連する13のSNPの遺伝子型スコアの評価も行った。遺伝子型スコアによるHDL-C値上昇はリスクと関連なしLIPG 396Ser対立遺伝子の保有率は2.6%であった。LIPG 396Ser対立遺伝子保有群は、非保有群に比べHDL-C値が0.14mmol/L(≒5.4mg/dL)有意に高かった[p=8×10(-13)]が、心筋梗塞リスクに関連するその他の脂質および非脂質因子は両群間に差を認めなかった。このHDL-C値の差により、LIPG 396Ser対立遺伝子保有群では心筋梗塞のリスクが13%低下すると予測された[オッズ比(OR):0.87、95%信頼区間(CI):0.84~0.91]。しかし、対立遺伝子保有群における心筋梗塞のリスク低下は有意ではなかった(OR:0.99、95%CI:0.88~1.11、p=0.85)。観察疫学試験では、HDL-C値の1 SDの上昇により心筋梗塞リスクが有意に低下した(OR:0.62、95%CI:0.58~0.66)。しかし、遺伝子型スコアに基づくHDL-C値の1 SDの上昇は心筋梗塞のリスクとは関連しなかった(OR:0.93、95%CI:0.68~1.26、p=0.63)。一方、観察疫学試験におけるLDL-C値の1 SDの上昇により心筋梗塞リスクが有意に上昇し(OR:1.54、95%CI:1.45~1.63)、遺伝子型スコアによるLDL-C値の1 SDの上昇も心筋梗塞リスクの有意な上昇と有意な関連を示した[OR:2.13、95%CI:1.69~2.69、p=2×10(-10)]。著者は、「血漿HDL-C値の上昇をもたらす遺伝子的メカニズムが、必ずしも心筋梗塞のリスクを低減しない可能性が示唆される」と結論し、「これらの知見は、血漿HDL-C値の上昇が一律に心筋梗塞のリスク低下をもたらすとのコンセプトに疑問を呈するもの」としている。

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結腸がん補助化学療法におけるFOLFOXの有効性:Stage IIと高齢者におけるサブ解析

 オキサリプラチンをフッ化ピリミジンに追加した補助化学療法はStage IIIの結腸がん患者の生存率を改善するが、Stage IIおよび高齢患者における補助化学療法にオキサリプラチンを追加することの有用性については意見が分かれている。Christophe Tournigand氏らは、結腸がんの補助化学療法におけるオキサリプラチン/フルオロウラシル/LVの多施設国際共同試験において、フルオロウラシル+LV(FL)とFL+オキサリプラチン(FOLFOX4)に無作為に割り付けられた患者のうち、Stage IIおよび高齢(70~75歳)患者のサブグループ解析を実施。その結果、どちらの患者でも全生存率(OS)と無病生存率(DFS)にはオキサリプラチン追加による有意なベネフィットは認められなかったことを、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2012年8月20日号に報告した。 FL群とFOLFOX4群に無作為に割り付けられた2,246例のうち、Stage IIの患者が899例(低リスク330例、高リスク569例)、高齢(70~75歳)の患者が315例であった。主な結果は以下のとおり。・Stage IIの患者においてFLと比較したFOLFOX4のハザード比(HR)は、DFSでは0.84(95%CI:0.62~1.14)、再発までの期間(TTR)では0.70(95%CI:0.49~0.99)、OSでは1.00(95%CI:0.70〜1.41)であった。・低リスクStage IIの患者においては、オキサリプラチン追加による有意なベネフィットは認められなかった。・高リスクStage IIの患者におけるHRは、DFSでは0.72(95%CI:0.51~1.01)、TTRでは0.62(95%CI:0.41~0.92)、OSでは0.91(95%CI:0.61~1.36)であった。・高齢の患者におけるHRは、DFSでは0.93(95%CI:0.64~1.35)、TTRでは0.72(95%CI:0.47〜1.11)、OSでは1.10(95%CI:0.73〜1.65)であった。

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痛みの治療薬をどう選択するか 「抗うつ薬」

「抗うつ薬の鎮痛薬としての使用法とその具体例」独協医科大学医学部 麻酔科学講座 濱口眞輔氏2009年以降に発売された抗うつ薬、ミルタザピン、デュロキセチン、エスシタロプラムを中心に、その使用経験を含め解説する。まずミルタザピンであるが、この薬剤はNaSSA(Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant)とよばれ、構造的には四環系抗うつ薬に近い。2006年の海外の報告では、頭痛、腰背部痛、腹筋・筋膜性等の痛み、三叉神経痛、CRPS等594人の慢性痛患者に対しミルタザピン投与を投与した結果、80%の患者で無痛または中等度以上の改善を示している。用量設定は、15mg錠の1規格のみで、最大用量は3錠と増量もシンプルに行える。ただし、実際の使用にあたっては眠気を経験されている臨床医もおられると思う。また、体重増加についても報告があり、糖尿病患者などには注意が必要である。デュロキセチンは、日本ペインクリニック学会の神経障害性疼痛薬物療法アルゴリズムにも入っている。さらに最近では、糖尿病性神経障害痛に対する効能・効果の追加が承認された。デュロキセチンは、既存のSNRIよりノルアドレナリンの再取り込み阻害作用が強く、ドーパミン系の再取り込み作用が少ないといわれている。また、各神経伝達物質と受容体に対しての親和性が低く、抗コリン作用が少ない、α1遮断作用など副作用を抑えた抗うつ薬ともいわれるようである。離脱症候群は比較的軽度であるといわれ、これも安全に使うためには有利な点であると考えられる。デュロキセチンの実際の使用法であるが、用量設定20mgのカプセルのみで、3カプセルが最大である。日本のII相・III相試験では朝食後だったが、実際には少し眠気がでるため夕食後がよいという患者もいるようである。最後に、最近承認された薬剤でエスシタロプラムがある。SSRIの中で最も選択的な5-HT再取り込み阻害作用を有するといわれる。H1受容体に介した傾眠や沈静が発現する可能性は有しているが、これまで眠気が問題となり中止した症例は経験していない。論文では、抑うつをもっている患者の痛み強度を、最大用量でコントロール群に比して有意に減少させたという報告もある。また、痛みの減少は抑うつ状態のスコア変化で補正しても認められ、エスシタロプラム鎮痛効果は抗うつ作用とは独立していると報告している。実際の使用法であるが、用量設定は10mg錠のみで、最大用量は20mgとシンプルである。抗うつ薬の鎮痛機序として、最近は下降性痛覚抑制系以外の可能性も示唆されており、今後の研究が進められていくことと思う。とはいえ、新しい抗うつ薬は薬剤費が高い。患者の医療費負担と症状の改善、双方を考慮した有効な薬剤選択が必要だと考えている。

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寄稿 線維筋痛症の基本

廿日市記念病院リハビリテーション科戸田克広痛みは原因の観点から神経障害性疼痛(神経障害痛)と侵害受容性疼痛(侵害受容痛)およびその合併に分類され、世界標準の医学では心因性疼痛単独は存在しないという考えが主流である。通常、日本医学ではこれに心因性疼痛が加わる。線維筋痛症(Fibromyalgia、以下FM)およびその不全型は日本医学の心因性疼痛の大部分を占めるが、世界標準の医学では神経障害痛の中の中枢性神経障害痛に含まれる。医学的に説明のつかない症状や痛みを世界の慢性痛やリウマチの業界はFMやその不全型と診断、治療し、精神科の業界は身体表現性障害(身体化障害、疼痛性障害)と診断、治療している。FMの原因は不明であるが、脳の機能障害が原因という説が定説になっている。器質的な異常があるのかもしれないが、現時点の医学レベルでは明確な器質的異常は判明していない。脳の機能障害が原因で生じる中枢性過敏症候群という疾患群があり、うつ病、不安障害、慢性疲労症候群、FM、むずむず脚症候群、緊張型頭痛などがそれに含まれる。先進国においてはFMの有病率は約2%であるが、その不全型を含めると少なくとも20%の有病率になる。FMおよび不全型の診断基準は「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント -」に記載されている1)。医学的に説明のつかない痛みを訴える場合には、FMあるいはその不全型を疑うことが望ましい。FMもその不全型も治療は同一であるため、これらを区別する意義は臨床的にはほとんどない。薬物治療のみならず、禁煙、有酸素運動、患者教育、認知行動療法などが有効である。ただし、認知行動療法は具体的に何をすればよいかわからない部分が多く、それを行うことができる人間が少ないため、実施している施設は少ない。人工甘味料アスパルテームによりFMを発症した症例が報告されたため、その摂取中止が望ましい1)。当初は必ず一つの薬のみを上限量まで漸増し、有効か無効かを判定する必要がある。副作用のために増量不能となった場合や、満足できる鎮痛効果が得られた場合には、上限量を使用する必要はない。つまり、上限量を使用せずして無効と判断することや、不十分な鎮痛効果にもかかわらず上限量を使用しないことは適切ではない(副作用のために増量不能の場合を除く)。一つの薬の最適量が決まれば、患者さんが満足できる鎮痛効果が得られない限り、同様の方法により次の薬を追加する。これは国際疼痛学会が神経障害痛に一般論として推奨している薬物治療の方法である。2、3種類の薬を同時に投与することは望ましくない。どの薬が有効か不明になり、同じ薬を漫然と投与することになりやすいからである。世界標準のFMでは有効性の証拠の強い順に薬物を使用することが推奨されているが、その方法は臨床的にはあまり有用ではない。投薬の優先順位を決定する際には有効性の証拠の強さのみならず、実際に使用した経験も考慮する必要がある。さらに論文上の副作用、実際に経験した副作用、薬価も考慮する必要がある。FMは治癒することが少ない上に、FMにより死亡することも少ないため、30年以上の内服が必要になることがしばしばあるからである。FMの薬物治療においては適用外処方は不可避であるが、保険請求上の病名も考慮する必要がある。さらに、日本独特の風習である添付文書上の自動車運転禁止の問題も考慮する必要がある。抗痙攣薬、抗不安薬、睡眠薬、ほとんどの抗うつ薬を内服中には添付文書上自動車の運転は禁止されているが、それを遵守すると、少なくない患者さんの生活が破綻するばかりではなく、日本経済そのものが破綻する。以上の要因を総合して、薬物治療の優先順位を決めている1)。これにより医師の経験量によらず、ほぼ一定の治療効果を得ることができる。ただし、それには明確なエビデンスはないため、各医師が適宜変更していただきたい。副作用が少ないことを優先する場合や自動車の運転が必須の患者さんの場合には、眠気などの副作用が少ない薬を優先投与する必要がある。すなわち、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(ノイロトロピン) 、メコバラミンと葉酸の併用、イコサペント酸エチル、ラフチジン、デキストロメトルファンを優先使用している。痛みが強い場合には、有効性の証拠が強い薬、すなわちアミトリプチリン、プレガバリン、ミルナシプラン、デュロキセチンを優先使用している。抗不安薬は常用量依存を引き起こしやすいため、鎮痛目的や睡眠目的には使用せず、パニック発作の抑制目的にのみ使用し、かつ3ヵ月以内に中止すべきである。FMにアルプラゾラムが有効と抄録に書かれた論文2)があるが、本文中では有効性に関して偽薬と差がないという記載があるため、注意が必要である。ステロイドはFMには有害無益であり、ステロイドが有効な疾患が合併しない限り使用してはならない。昨年、日本の診療ガイドラインが報告された。筋緊張亢進型、腱付着部炎型、うつ型、およびその合併に分類する方法および各タイプ別に優先使用する薬は世界標準のFMとは異なっており、私が個人的に決めた優先順位と同様に明確なエビデンスに基づいていない。たとえば、腱付着部炎型にサラゾスルファピリジンやプレドニンが有効と記載されているが、それはFMに有効なのではなく、腱付着部炎を引き起こすFMとは異なる疾患に有効なのである。糖尿病型FMにインシュリンが有効という理論と同様である。薬を何種類併用してよいかという問題があるが、誰も正解を知らない。私は睡眠薬を除いて原則的に6種類まで併用している。1年以上投薬すると、中止しても痛みが悪化しないことがある。そのため、1年以上使用している薬は中止して、その効果が持続しているかどうかを確かめることが望ましい。引用文献1) CareNetホームページ カンファレンス Q&A:戸田克広先生「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント-」2)Russell IJ et al: Treatment of primary fibrositis/fibromyalgia syndrome with ibuprofen and alprazolam. A double-blind, placebo-controlled study. Arthritis Rheum. 1991;34:552-560.

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女性の急性腎盂腎炎、抗菌薬の7日間投与が有効

 急性腎盂腎炎の女性患者に対するシプロフロキサシン(商品名:シプロキサンなど)の7日間投与は有効かつ安全な治療法であることが、スウェーデン・Sahlgrenska大学病院のTorsten Sandberg氏らの検討で示された。尿路感染症の最大の原因は腸内細菌の抗菌薬に対する耐性化であり、対策としては投与期間の短縮など、抗菌薬の消費量の抑制が重要だという。急性腎盂腎炎は成人女性に高頻度にみられる感染症だが、その治療法に関する対照比較試験は少なく、抗菌薬治療の至適投与期間は確立されていない。Lancet誌2012年8月4日号(オンライン版2012年6月21日号)掲載の報告。至適投与期間を前向き無作為化非劣性試験で検討研究グループは、急性腎盂腎炎の女性患者に対するシプロフロキサシン治療における7日間投与と14日間投与の有効性をプロスペクティブに比較するプラセボ対照無作為化非劣性試験を実施した。対象は、スウェーデンの21の感染症医療施設で急性腎盂腎炎と推定診断された18歳以上の妊娠していない女性であった。これらの患者が、シプロフロキサシン(500mg×2回/日)を7日間投与する群あるいは14日間投与する群に無作為に割り付けられた。最初の1週間は非盲検下に全例に同様の治療が行われ、2週目は二重盲検下にシプロフロキサシン(500mg×2回/日)あるいはプラセボが継続投与された。患者、介護者、担当医、試験運営センター職員には治療割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は治療終了後の短期的(10~14日)な臨床治癒率、副次的評価項目は長期的(42~63日)な累積治癒率とし、per-protocol解析を行った。治癒は、臨床的かつ細菌学的な治癒が達成された場合と定義した。短期的臨床治癒率:97% vs 96%、長期的累積治癒率:93% vs 93%2006年2月1日~2008年12月31日までに248例登録され、7日間投与群に126例が、14日間投与群には122例が割り付けられた。それぞれ73例(平均年齢46歳、27~62歳)、83例(同:41歳、23~58歳)が解析の対象となった。短期的臨床治癒率は、7日間投与群が97%(71/73例)、14日間投与群は96%(80/83例)で、短期投与の長期投与に対する非劣性が確認された(群間差:-0.9%、95%信頼区間:-6.5~4.8、非劣性検定:p=0.004)。長期的累積治癒率は両群とも93%(7日間投与群:68/73例、14日間投与群:78/84例)で、これも同様の非劣性が示された(群間差:-0.3%、95%信頼区間:-7.4~7.2、非劣性検定:p=0.015)。両群とも忍容性は良好であった。7日間投与群の1例が筋肉痛で治療を中止し、14日間投与群ではそう痒性発疹による治療中止が1例認められた。最初の1週間の治療後にシプロフロキサシン関連の有害事象を発現した患者は、7日間投与群が5%(4/86例)、14日間投与群は6%(6/93例)だった。粘膜カンジダ感染症は7日間投与群ではみられなかったが、14日間投与群では5例に認めた(p=0.036)。著者は、「高齢女性や比較的重篤な病態の女性を含む急性腎盂腎炎患者において、シプロフロキサシンの7日間投与は有効かつ安全な治療法であることが示された」と結論し、「薬剤耐性が増加傾向にある現在、短期的抗菌薬療法は好ましい治療法といえよう」と指摘している。

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閉経後女性における結腸がんの危険因子~15万912人の追跡データより

 閉経後女性における結腸がんの危険因子について、米国Women's Health Initiativeにおけるプロスペクティブデータから、関連する可能性がある800以上の因子を検討した結果が、Cancer Causes and Control誌オンライン版2012年8月2日版に発表された。Arthur Hartz氏らが報告。 著者らは、150,912人(50〜79歳)の閉経後女性のデータから、Cox比例ハザード回帰分析を用い、追跡期間中央値である8年において結腸がん発症に関連する独立危険因子を検討した。主な結果は以下のとおり。・1,210人の女性が結腸がん、282人の女性が直腸がんを発症した。・11の危険因子が、結腸がんリスク増加との独立した関連性が認められた(p

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太り過ぎの乳がん患者の二次原発がんリスクは有意に高い!肥満による大腸がん発症の相対リスクは1.89

 乳がん患者における二次原発がん発生率とBMI(Body Mass Index)との関連が、いくつかの観察研究で検討されている。この関連の強さを評価するために、フランスのDruesne-Pecollo N氏らがエビデンスの系統的レビューとメタ解析を行った。解析の結果、肥満により二次原発がんのリスクは有意に増加することが認められ、太り過ぎや肥満の患者を減少させるための予防対策が重要であることが示唆された。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2012年8月5日号における報告。 著者らは、PubMedとEMBASEで2012年5月まで検索を行い、解析に含まれている研究の参考文献リストを調査した(前向き研究13報、コホート研究5報、ケースコントロール研究8報)。 BMIのメタ解析の結果、肥満は、対側乳房(相対リスク(RR):1.37、95%信頼区間(CI):1.20~1.57)、乳房(RR:1.40、95%CI:1.24~1.58)、子宮内膜(RR:1.96、95%CI:1.43~2.70)、大腸(RR:1.89、95%CI:1.28~2.79)における二次原発がんの有意なリスクの増加に関連していた。 また、用量反応メタ解析によると、BMIが5kg/m2増加することにより、対側二次原発乳がんのRRが1.12(95%CI:1.06~1.20)、二次原発乳がんのRRが1.14(95%CI:1.07~1.21)と、それぞれ有意に二次原発がんのリスクが増加した。子宮内膜の二次原発がんでは、5kg/m2増加による要約RRは、1.46(95%CI:1.17~1.83)であった。 今後、体重過多の乳がん患者において、正常体重への減量による二次原発がん発生率への効果を評価するための臨床試験が必要である、と著者らは述べている。

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認知症を予防するには「体を動かすべき」

 超高齢社会に突入したわが国において、認知症の予防は重要な課題である。認知症予防に有効だと考えられている1つの方法に「運動」がある。Bowen氏は運動を行うことで認知症リスクに影響を与えるか否かを検証し、Am J Health Promot誌2012年7月号で報告した。 本研究は、HRSの身体活動に関するデータとADAMSの認知アウトカムデータを使用したプロスペクティブ研究(HRS:Health and Retirement Study、ADAMS:Aging, Demographics, and Memory Study)。対象は、3~7年間の身体活動に関する情報を有する認知症を発症していない71歳以上の高齢者808名である。身体活動はエアロビクス、スポーツ、サイクリング、重労働の家事などの活発な身体活動を週3回以上実施しているかどうかで評価した。認知症の診断は、専門医(神経心理学者、神経科医、老年科医、老年精神医学科医など)による神経心理学的テストにより評価した。分析には、人口統計学的特性などの因子を調整するためロジスティック回帰分析モデルを用いた。主な結果は以下のとおり。・認知症リスクと活発な身体活動には顕著な関係が認められた。・最終的には、活発な身体活動を行っていた高齢者では認知症と診断されるリスクが21%低くなると考えられる(p≦0.05)。・活発な身体活動は、認知症リスク低下の独立した危険因子の可能性がある。関連医療ニュース ・認知症予防のポイント!MCIへのアプローチ ・アルツハイマーの予防にスタチン!? ・なぜ、うつ病患者はアルツハイマー病リスクが高いのか?

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重症敗血症、HES 130/0.42輸液蘇生は死亡リスクが高い

重症敗血症に対するヒドロキシエチルデンプン(HES)130/0.42を用いた輸液蘇生は、酢酸リンゲル液を用いた患者と比較して90日時点の死亡リスクが高く、腎代替療法を必要とする割合が高いことが、多施設共同無作為化試験の結果、明らかにされた。HES 130/0.42は、ICUでの輸液蘇生に広く使われているが、安全性と有効性は立証されていなかった。デンマーク・コペンハーゲン大学病院のAnders Perner氏らによる報告で、NEJM誌2012年7月12日号(オンライン版2012年6月27日号)で発表された。4ヵ国26のICUで無作為化試験、HES 130/0.42 vs.酢酸リンゲル液試験は、2009年12月23日~2011年11月15日の間にデンマーク、ノルウェー、フィンランド、アイスランドの4ヵ国のICU施設26ヵ所から被験者を登録して行われた多施設共同並行群間比較盲検無作為化試験だった。患者は重度敗血症患者で、スクリーニング後、輸液蘇生に6%HES 130/0.42を用いる群と、酢酸リンゲル液を用いる群に無作為に割り付けられた。最大投与量は、33mL/kg標準体重/日だった。主要評価項目は、無作為化後90日時点の死亡または末期腎不全(透析に依存)とした。無作為化された患者は804例で、そのうち798例が修正intention-to-treat解析された。両介入群のベースラインでの患者特性は同等だった。相対リスク、90日時点死亡1.17、腎代替療法1.35、重度出血の発生1.52結果、無作為化後90日時点での死亡は、酢酸リンゲル液群172/400例(43%)に対し、HES 130/0.42群の201/398例(51%)だった(相対リスク:1.17、95%信頼区間:1.01~1.36、P=0.03)。末期腎不全は、両群とも1例ずつだった。また90日間で腎代替療法を要したのは、酢酸リンゲル液群は65例(16%)に対し、HES 130/0.42群は87例(22%)だった(同:1.35、1.01~1.80、P=0.04)。重度出血は、HES 130/0.42群38例(10%)、酢酸リンゲル群25例(6%)だった(同:1.52、0.94~2.48、P=0.09)。これらの結果は、既知の死亡・急性腎障害のリスク因子についてベースラインで補正した多変量解析においても支持された。

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妊婦への新型インフルエンザワクチン接種、出生児のリスク増大認められず

妊娠中へのアジュバント新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種は、重大な先天異常や早産、胎児発育遅リスクを、非接種と比べて増大しないことが報告された。デンマーク・Statens Serum InstitutのBjo rn Pasternak氏らが、新生児5万例超の国内登録コホート試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年7月11日号で発表した。妊娠第1期の予防接種での重大先天異常リスクは接種群5.5%、非接種群4.5%研究グループは、2009年11月2日~2010年9月30日にデンマークで生まれた単胎児5万3,432例を対象とする登録コホート試験を行った。傾向スコアによるマッチング解析を行い、妊娠中のアジュバント新型インフルエンザワクチン(Pandemrix)接種の有無による、致死的転帰発生リスクを比較した。主要アウトカムは、重大な先天異常、早産、在胎齢に対する過少体重だった。母親が妊娠中にインフルエンザ予防接種を受けていたのは、13.1%(6,989例)だった。そのうち妊娠第1期の接種は345例、第2~3期接種は6,644例だった。妊娠第1期接種者についての傾向スコアマッチング(330例曝露群、330例非接種群)の結果、重大な先天異常が認められたのは接種群18例(5.5%)に対し、非接種群では15例(4.5%)だった(有病割合オッズ比:1.21、95%信頼区間:0.60~2.45)。早産、在胎齢に対する過少体重ともに、妊娠中ワクチン接種によるリスク増大認められず早産の発生についても、曝露群31例(9.4%)、非接種群24例(7.3%)と、有意なリスク増大は認められなかった(有病割合オッズ比:1.32、同:0.76~2.31)。早産については妊娠第2・第3期についても比較したが、同発生は第2・第3期接種群6,543例中302例(4.6%)、非接種群6,366例中295例(4.6%)と、リスク増大は認められなかった(有病割合オッズ比:1.00、同:0.84~1.17)。在胎齢に対する過少体重は、妊娠第1期では接種群25例(7.6%)、非接種群31例(9.4%)に認められた(有病割合オッズ比:0.79、同:0.46~1.37)。妊娠第2・第3期接種群では、6,642例中641例(9.7%)、同非接種群6,642例中657例(9.9%)だった(有病割合オッズ比:0.97、同:0.87~1.09)。

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アジアの臨床腫瘍学のエピセンターを目指すJSMO2012 第10回日本臨床腫瘍学会学術集会プレスセミナーより

今年の日本臨床腫瘍学会(以下、JSMO)学術集会は10周年記念大会として、"Beyond the Global Standard of Medical Oncology 縲弃erspectives from Asia縲鰀"をテーマとして掲げ 、7月26日~28日の3日間、大阪国際会議場で開催される。10ヵ所の講演会場とポスター会場を使い、1,000題を超えるプレゼンテーションが行われる。今年の学術集会の見どころを、13日に行われたプレスセミナーで、会長である近畿大学医学部内科学教室腫瘍内科部門 教授 中川和彦氏が紹介した。設立10周年記念企画 7月26日、10周年記念企画「わが国における臨床腫瘍学の歩みと今後の展望」が開かれる。ここではJSMOがこの10年間どのように成長したか、今後どのような方向に向かっていくのか、歴代会長と現役会員がそれぞれの観点からディスカッションを行う。国際化への取り組みJSMOは、“アジアの臨床腫瘍学のエピセンターを目指す”と宣言しているが、その宣言を反映するように、海外から一般演題を募集するという初めての試みを行っている。その結果、今回の1,135演題のうち122演題が海外からの応募演題となった。これら海外からの演題は12のインターナショナルセッションに配置しているが、予定以上の演題数に、急遽6のミニインターナショナルセッションも設け、プレゼンテーションの機会を与えている。 7月26日にはASCO、27日にはESMO、28日にはCSCO(中国)およびKACO(韓国)の各臨床腫瘍学会とのジョイントシンポジウムが行われる。ASCOからは次期ASCO会長であるDr.Swain、ESMO からは機関誌Annal of Oncologyの編集者でもあるDr.Vermorken、また、CSCO、KACOからもそれぞれClinical oncologyの第一人者が出席する。これらのシンポジウムでは、国内外の最先端の研究報告が期待される。また、このような活動を通し、JSMOは今後、海外、とくにアジアでのコンセンサスを形成する活動を目指していくという。プレナリーセッションすべての演題の中から重要度の高い7演題をプレナリーセッションに取り上げている。腎がん、乳がん、胃がん、大腸がん2題、肺がん2題の演題はすべてPhase3であり、いずれも非常にインパクトが高く臨床に直結した発表である。また、プレナリーセッション開催時は、その他の会場でのプログラムがなく、同セッションだけに集中できるスケジュールとなっている。プレナリーセッション演題は下記のとおり。1:「Phase III AXIS trial of axitinib vs sorafenib in patients with metastatic renal cell carcinoma: Asian subgroup analysis」Hirotsugu Uemura (Department of Urology, Kinki University School of Medicine, Osaka2:「A Phase III, Multicenter, Randomized Trial of Maintenance Versus Observation After Achieving Clinical Response in Patients With Metastatic Breast Cancer Who Received 6 Cycles of Gemcitabine Plus Paclitaxel as First-line Chemotherapy (KCSG-BR 0702, NCT00561119) 」Young-Hyuck Im (Samsung Medical Center)3: 「Randomized phase III study of irinotecan (CPT-11) vs. weekly paclitaxel (wPTX) for advanced gastric cancer (AGC) refractory to combination chemotherapy (CT) of fluoropyrimidine plus platinum (FP) : WJOG4007 trial」Nozomu Machida (Division of Gastrointestinal Oncology, Shizuoka Cancer Center)4: 「Results of a phase III randomized, double-blind, placebo-controlled, multicenter trial (CORRECT) of regorafenib plus best supportive care (BSC) versus placebo plus BSC in patients (pts) with metastatic colorectal cancer (mCRC) who have progressed after standard therapies.」Takayuki Yoshino (National Cancer Center Hospital East)5: 「Results of ML18147: A phase III study of bevacizumab in 2nd line mCRC for patients pretreated with bevacizumab in 1st line」Stefan Kubicka (District Clinic Reutlingen)6: 「LUX-Lung 3: afatinib vs cisplatin and pemetrexed in Japanese patients with adenocarcinoma of the lung harboring an EGFR mutation」Nobuyuki Yamamoto (Thoracic Oncology Division, Shizuoka Cancer Center)7: 「Maintenance pemetrexed (pem) plus best supportive care (BSC) vs placebo plus BSC after pem plus cisplatin for advanced nonsquamous NSCLC」C. K. Obasaju (Eli Lilly and Company, Indianapolis, IN, USA)学会へ行こうプログラム今回は、市民との対話の機会を設けるなど、アカデミックなプログラム以外の活動も企画している。具体的には「学会へ行こうプログラム」を企画。市民の学会への参加を呼びかけるとともに、市民公開講座、ペイシェント・アドボケイト・プログラムなどを実施する。今まで当学会への市民参加は行ったことがなかったが、がん診療のあり方を変える取り組みとして、市民に参加してもらう機会を作りたいという意図から実施に至った。 この中で、最も注目されるイベントは7月26日14時30分から開催される公開シンポジウムである。「がん患者の必要としているがん医療縲恍n域でがん患者を支えるためには縲怐vと題し、司会に田原総一朗氏を招き、学会・マスコミの第一人者を集めて2部構成で開催される。第1部では、がん対策基本法が制定されてから、これまでどのようなことが変わってきたか? 第2部では、政府の新たな指針に対する検証、各方面からの要望などを議論する。教育講演今回の大会の目玉の一つとして、充実した教育講演がある。具体的には、日本の第一人者による32の教育講演を3日間続けて行う。内容は支持療法から臓器各論、標準治療、分子標的治療薬に至るまでさまざまなテーマで開催される。今年は、海外からの参加者も念頭に置き、同時通訳と英語スライドを使用するとのこと。また、7月27日8時からは、JSMO専門医会がケースカンファレンスを行う。乳がん、原発不明がん、大腸がんを取り上げ、どのように専門医が有効に働いていくのかを知る良い機会となる。今回の大会では、今年6月のASCOで発表された注目の演題も数多く取り上げられているが、それだけでなく、日本での臨床応用についてのディスカッションも行われる。これは日本の臨床腫瘍学にとって、非常に有益なことであり、将来はJSMOから世界に発信するということを目標としたい、と中川氏は語った。 (ケアネット細田雅之)

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5大医学専門誌の情報提供の質は改善したか?

論文アブストラクトのミスリードを解消することを目的に、2008年1月にCONSORT(consolidated standards of reporting trials)ステートメントによって発表されたガイドラインの影響について、英国・オックスフォード大学のSally Hopewell氏らが5大医学専門誌(AIM、BMJ、Lancet、JAMA、NEJM)を対象に検討した。結果、媒体によって異なる傾向がみられたという。BMJ誌2012年7月2日号(オンライン版2012年6月22日号)掲載報告より。ガイドライン発表後の、5大誌のアブストラクトに含まれる推奨項目の変化を比較CONSORTガイドラインでは、アブストラクトで無作為化試験の主要な結果を報告する際に示すべき項目を定めている。Sally Hopewell氏らは、影響力の大きい医学専門誌5誌を対象に、ガイドラインに対する各媒体の編集方針、ガイドラインの推奨項目がアブストラクトでどれだけ採用されているかなどを分割時系列分析にて調査した。2006~2009年に発表された無作為化試験に関する主要な報告60題(アブストラクト電子版がPubMedに登録されたもの)を対象とし、電子版のアブストラクトのないもの、2次試験の報告論文や経済分析がなされていない報告は除外した。対象学術誌は、ガイドラインに関する編集方針に即して、「著者に対する指示でガイドラインについて言及していない」(JAMA、NEJM)、「著者に対する指示でガイドラインがあることを紹介はしているが、実行ポリシーは特段に示していない」(BMJ)、「著者に対する指示でガイドラインがあることを紹介し、実行するための積極的なポリシーもある」(AIM、Lancet)の3つに分類され、2人の本分析担当者が各々、CONSORTのアブストラクトチェックリストに基づいてデータを抽出した。主要アウトカムは、CONSORT推奨の9項目(2006年に刊行された医学専門誌5誌に発表されたアブストラクトにおいていずれも50%未満しか報告されていなかった項目)の、選択アブストラクトに含まれる平均項目数とした。BMJ、JAMA、NEJMは、推奨項目採用の増加みられず無作為化試験に関する955件のアブストラクトが選択され評価された。結果、ガイドライン準拠の積極的ポリシーを有する学術誌では、報告された平均項目数の即座の増加がみられた(1.50項目の増加、P=0.0037)。ガイドライン発表後23ヵ月時点で、アブストラクトにみられたガイドライン推奨平均項目数は5.41/9項目で、介入前の傾向を基に推定した期待値より53%増加した。一方、ガイドライン準拠のポリシーが示されていない学術誌(BMJ、JAMA、NEJM)では、項目や傾向の増加がみられなかった。結果を踏まえて研究グループは、「学術誌のCONSORTアブストラクトガイドラインの積極的ポリシーは、無作為化試験に関するアブストラクトの情報提供の改善につながる可能性がある」と結論している。

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医学専門誌の別刷部数、医薬品企業からの資金提供と関連

英国・オックスフォード大学のAdam E Handel氏らは、資金提供と研究デザインが医学専門誌の別刷の大量注文とどれだけ関連するかを評価するケースコントロール研究を行った。その結果、医薬品企業による資金提供と大量の別刷注文との関連が認められたという。BMJ誌2012年7月2日号(オンライン版2012年6月28日号)掲載報告より。Lancetグループ3誌とBMJグループ4誌を評価出版された論文の別刷は、情報を広める有益な手段で、論文執筆者自身が別刷を要請する場合もあるが、最大の発注者は医薬品企業で、別刷は贈り物やサンプル品に次いで、医師の間で流通する主要な製薬会社のプロモーション材料となっている。製薬会社が資金提供した論文が掲載された学術誌の別刷を発注する場合もあるため、論文の別刷は利害関係を生む基ともなり、出版バイアスを招く可能性が示唆されている。Handel氏らは、医学専門誌7誌の2002~2009年のトップ論文を評価対象として別刷注文数による比較研究を行った。対象となったのは「Lancet」「Lancet Neurology」「Lancet Oncology」(以上Lancetグループ)、「BMJ」「Gut」「Heart」「Journal of Neurology、Neurosurgery & Psychiatry」(以上BMJグループ)で、別刷大量注文リストになかった同時期掲載の記事と照合した。主要評価項目は、資金提供と無作為化試験デザインまたはその他試験デザインとした。医薬品企業からの資金提供がある論文は大量の別刷注文の傾向7誌の別刷注文数の中央値は3,000部から12万6,350部の範囲に及んだ。大量の別刷注文があった論文は、対照論文と比べて医薬品企業からの資金提供を受けている傾向がみられた。企業資金提供vs. 他の資金提供または提供なしのオッズ比8.64(95%信頼区間:5.09~14.68)、資金提供が複数(mixed funding)vs. 他の資金提供または提供なしのオッズ比3.72(同:2.43~5.70)だった。また、無作為化試験の論文がその他試験の論文よりも、大量の別刷注文が多いという傾向はみられなかった(オッズ比:1.04、95%信頼区間:0.70~1.54)。

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MRSA感染症、市中型も院内型も2005年以降は減少傾向

米国におけるMRSA感染症は、2005年以降は市中型・院内型ともに減少傾向にあることが報告された。MRSA起因の市中型皮膚軟部組織感染症についても、2006年以降は減少しているという。米国・San AntonioMilitary Medical CenterのMichael L. Landrum氏らが、米国国防総省の医療保険受給者を対象に行った観察研究の結果明らかにしたもので、JAMA誌2102年7月4日号で発表した。これまでに、院内型MRSA感染症の発症率の減少傾向は報告されているものの、市中型MRSA感染症の動向については報告がなかった。延べ追跡期間5,600万人・年のうち、MRSA感染症は約2,600人、創部膿瘍感染は8万人超研究グループは、2005~2010年に、米国国防総省の医療保険「TRICARE」受給者について観察研究を行った。主要アウトカムは、10万人・年当たりのMRSAを起因とする感染症罹患率と、2005~2010年の年間罹患率の傾向とした。延べ追跡期間は5,600万人・年で、その間にMRSA感染症は2,643人、MRSAによる創部膿瘍感染は8万281人に、それぞれ発症した。MRSA感染症の年罹患率は3.6~6.0/10万人・年、MRSA皮膚軟部組織感染症は122.7~168.9/10万人・年だった。2010年のMRSA感染症年間罹患率、市中型1.2/10万人・年、院内型0.4/10万人・年追跡期間中の年間罹患率の変化についてみると、市中型MRSA感染症の発症率は、2005年の1.7/10万人・年から、2010年の1.2/10万人・年へと減少した(傾向p=0.005)。院内型MRSA感染症も、同期間に0.7/10万人・年から0.4/10万人・年へと減少した(傾向p=0.005)。また、MRSAが原因の市中型皮膚軟部組織感染症についても、2006年には創部膿瘍の62%を占めたのをピークに、2010年にはその割合は52%へと低下した(傾向p<0.001)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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HIV母子感染、抗レトロウイルス薬28週治療が有効:BAN試験

授乳に代わる安全な育児法がない環境においては、HIVに感染した母親あるいは未感染乳児に対する28週の抗レトロウイルス薬予防治療により、乳児へのHIV感染が減少することが、米国疾病対策予防センター(CDC)のDenise J Jamieson氏らの検討で示された。HIVの母子感染は世界的に減少傾向にあるが、医療資源が乏しい地域では解決すべき課題とされる。WHOは、医療資源が限られ、授乳に代わる安全な育児法がない環境では、授乳期間中は母親あるいは乳児のいずれかに対する抗レトロウイルス薬の予防投与を推奨している。Lancet誌2012年6月30日号(オンライン版2012年4月26日号)掲載の報告。母親あるいは乳児に対する予防治療の有効性を無作為化試験で評価BAN(Breastfeeding、 Antiretrovirals、 and Nutrition)試験は、HIV感染母親から子どもへの感染予防における母親あるいは乳児に対する抗レトロウイルス薬の28週投与の有効性を検討する無作為化対照比較試験。2004年4月21日~2010年6月28日まで、アフリカ南東部の国マラウイの首都リロングウェ市で実施された。HIVに感染し、CD4陽性リンパ球細胞数≧250個/1μLの授乳期の母親2,369人とその乳児を対象とし、3つのレジメンのいずれかに無作為に割り付けた。すべての母親と乳児に、ネビラピン(商品名:ビラミューン)(母親:200mg/kg、乳児:2mg/kg)を1回経口投与し、ジドブジン(商品名:レトロビル)(母親:300mg/kg、乳児:2mg/kg)+ラミブジン(商品名:エピビル)(母親:150mg/kg、乳児:4mg/kg)の合剤(母親は錠剤、乳児はシロップ)を1日2回、7日間投与した。対照群(668人)にはこれ以上の治療は行わなかった。母親に対する抗レトロウイルス薬3剤併用療法群(849人)には、ジドブジン+ラミブジン合剤(商品名:コンビビル)を28週投与し、ネビラピンは出産後最初の2週は1日1回、15日~28週は1日2回投与した。乳児に対するネビラピン療法群(852人)は、出生後最初の2週は10mg/kgを、3~18週は20mg/kgを、19~28週は30mg/kgをそれぞれ1日1回投与した。なお、ネビラピンは、その肝毒性に関するFDA勧告に基づき、2005年2月以降はネルフィナビル(商品名:ビラセプト)に、2006年2月以降はロピナビル+リトナビル合剤(商品名:カレトラ)に変更した。母親には産後24~28週の離乳が推奨された。治療割り付け情報は、現地の医療従事者と患者には知らされたが、それ以外の研究者にはマスクされた。主要評価項目は48週時の乳児のHIV感染とした。48週乳児HIV感染率:対照群7%、母親3剤併用群4%、乳児ネビラピン群4%母親3剤併用群の676組、乳児ネビラピン群の680組、対照群の542組が、48週のフォローアップを完遂した。産後28週以降は授乳を中止した母親は2つの介入群を合わせ96%、対照群は88%だった。生後2~48週の間にHIVに感染した乳児は、母親3剤併用群が30人、乳児ネビラピン群が25人、対照群は38人で、そのうち28人(30%)は28週の治療終了以降に感染していた(それぞれ9人、13人、6人)。48週までの乳児HIV感染リスクは、対照群の7%に比し、母親3剤併用群が4%(p=0.0273)、乳児ネビラピン群も4%(p=0.0027)と、いずれも有意に良好だった。乳児における重篤な有害事象の頻度は、治療期間中よりも治療終了後(29~48週)のほうが有意に高く(1.1件/100人・週 vs 0.7件/100人・週、p<0.0001)、下痢、マラリア、発育不良、結核、死亡のリスクが高かった。産後2~48週の間に9人の母親が死亡した(母親3剤併用群:1人、乳児ネビラピン群:2人、対照群:6人)。著者は、「医療資源が限られ、授乳に代わる安全な育児法がない環境では、母親あるいは乳児に対する抗レトロウイルス薬の28週予防投与により乳児のHIV感染が減少するが、6ヵ月での離乳は乳児の罹病率を増加させる可能性がある」と結論している。なお、WHOは現在、本試験を含む知見に基づき、授乳期12ヵ月間の抗レトロウイルス薬予防治療を推奨しているという。(菅野守:医学ライター)

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IBS患者の結腸鏡検査におけるCO2注入は苦痛軽減に有効か?

 過敏性腸症候群(IBS)患者では結腸鏡検査に伴う苦痛が有意に大きく、検査時の二酸化炭素(CO2)注入が苦痛軽減に効果的であることが示唆された。北海道大学の今井氏らがJournal of gastroenterology and hepatology誌オンライン版2012年6月13日号に報告した。 結腸鏡検査には痛み・不快感が伴うが、CO2注入がその痛みと不快感を有意に低下させることが報告されている。しかし、これまでIBS患者の結腸鏡検査について検討した報告はなかった。本試験では、IBS患者における結腸鏡検査に伴う苦痛の重症度と、CO2注入の有効性について検討した。 本試験は、結腸鏡検査の被験者を対象とした無作為化二重盲検比較試験であり、分析対象者はIBS/空気群18例、IBS/CO2群19例、対照/空気群25例、対照/ CO2群26例の計88例であった。患者の症状は、視覚的評価スケール(VAS)により評価された。 主な結果は以下のとおり。・結腸鏡検査後の膨満感と、検査中から検査後1時間の痛みに関する平均重症度はIBS群でより高く、これらの症状はCO2群でより早期に軽減された。・結腸鏡検査のCO2注入は、検査後15分から1時間の間、IBS群でより効果的であった。

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“ヨガ”で精神症状とQOLが改善

Vancampfort氏らは統合失調症患者の精神症状(陽性症状、陰性症状)や健康に関連する生活の質(HRQL)に対し、ヨガセラピーを行うことが補助的治療として有用かを無作為化比較試験(RCT)のシステマティックレビュ―にて検討した。Acta Psychiatr Scand誌7月号(オンライン版2012年4 月6日号)報告。2人の評価者により、統合失調症患者に対するヨガセラピー介入のRCT研究を選定し、データの抽出、質の評価を行い、基準を満たした3件のRCTをもとに解析を行った。精神症状はPANSSトータルスコアおよびサブスケールスコア、HRQLは短縮版WHOQOL-BREFにて評価した。主な結果は以下のとおり。 ・精神症状の改善はエクササイズや待機コントロールと比較し、ヨガセラピー後に認められた。・身体的、心理的、社会的、環境的HRQLも同様に、ヨガセラピー後に、より有意な改善を示した。・いずれのRCTにおいても、有害事象は認められなかった。・統合失調症患者に対する抗精神病薬の補助的治療として、ヨガセラピーは有用であると考えられる。(ケアネット 鷹野 敦夫) 関連医療ニュース ・厚労省も新制度義務化:精神疾患患者の「社会復帰」へ ・統合失調症の病態にメラトニンが関与?! ・日本人統合失調症患者の認知機能に影響を与える処方パターンとは

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新たな冠動脈疾患の予測モデル、有病率が低い集団でも優れた予測能

オランダ・エラスムス大学医療センターのTessa S S Genders氏らが新たに開発した冠動脈疾患の予測モデルは、有病率が低い集団においても優れた予測能を示すことが、同氏らが実施した検証試験で確認された。検査前確率は、患者にとって最も有益な検査法を決めるのに有用とされる。ACC/AHAやESCの現行ガイドラインでは、安定胸痛がみられる患者における冠動脈疾患の検査前確率の評価には、Diamond and ForresterモデルやDuke臨床スコアが推奨されているが、いずれの方法にもいくつか欠点があるという。BMJ誌2012年6月23日号(オンライン版2012年6月12日号)掲載の報告。新規予測モデルの予測能を後ろ向き統合解析で検証研究グループは、有病率の低い集団における冠動脈疾患の検査前確率の評価に有用な予測モデルを開発するために、個々の患者データのレトロスペクティブな統合解析を行った。ヨーロッパおよび米国の18施設から、冠動脈疾患の既往歴のない安定胸痛患者が登録された。CTあるいはカテーテルベースの冠動脈造影所見に基づき、低有病率または高有病率の集団に分類した。主要評価項目は閉塞性冠動脈疾患(カテーテル冠動脈造影で1つ以上の血管に≧50%の狭窄)とした。予測モデルは、基本モデル(年齢、性別、症状、有病率の高低)、臨床モデル(基本モデルの因子、糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙)および拡張モデル(臨床モデルの因子、CT冠動脈造影によるカルシウムスコア)で構成された。低有病率の集団のデータセットを用いて、交差検証法(cross validation)による解析を行い、識別能(C統計量)、キャリブレーション、純再分類改善度(net reclassification improvement; NRI)ついて評価した。冠動脈カルシウムスコアを加えると予測能がさらに改善解析の対象となった5,677例(男性3,283例[平均年齢58歳]、女性2,394例[同:60歳])のうち、5,190例(91%)でCT冠動脈造影が施行され、1,634例(31%)が閉塞性冠動脈疾患と診断された。このうち1,083例(66%)にカテーテル冠動脈造影が施行され、886例(82%)に閉塞性冠動脈疾患が確認された。CT冠動脈造影で閉塞性冠動脈疾患がみられなかった3,556例のうち、526例にカテーテル冠動脈造影が施行され、閉塞性冠動脈疾患が否定されたのは498例(95%)だった。全体として、カテーテル冠動脈血管造影が施行されたのは2,062例(36%)で、そのうち閉塞性冠動脈疾患と診断されたのは1,176例(57%)であった。単変量および多変量解析では、すべての予測因子が疾患の発現と有意に関連した。臨床モデルの予測能は、基本モデルに比べ優れていた(交差検証されたc統計量が0.77から0.79に改善、NRI:35%)。拡張モデルの冠動脈カルシウムスコアは主要な予測因子であった(同:0.79から0.88に改善、102%)。著者は、「年齢、性別、症状、心血管リスクなどから成る新たな予測モデルにより、有病率が低い集団における冠動脈疾患の検査前確率の正確な予測が可能となった。この予測モデルに冠動脈カルシウムスコアを加えると、予測能がさらに改善された」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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双極性障害の再発予防に有効か?「Lam+Div療法」

双極性障害の治療では発現している躁症状やうつ症状を治療することだけでなく、予防することも重要である。現在わが国において「双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制」に適応を有する薬剤にラモトリギン(Lam)がある。Bowden氏らはLamとジバルプロエックス(バルプロ酸とバルプロ酸塩の1:1配合剤:Div)の併用が双極性障害のうつ病相予防に有用であるかを検討した。Acta Psychiatr Scand誌オンライン版2012年6月18日付報告。大うつ病エピソードを有する双極性障害Ⅰ型およびⅡ型患者86例を対象に、Lam+プラセボ(Lam群)またはLam+Div群にランダムに割り付け、8ヵ月の二重盲検比較試験を実施した。なお、患者はオープンフェーズでうつ症状および躁症状がコントロールされていた。分析はカプランマイヤー生存曲線によるカイ二乗検定(Χ[2])を利用した。主な結果は以下のとおり。 ・うつ病エピソードまでの時間に有意差はなかった(Χ[2]=1.82、df=1、p=0.18)。・維持期におけるMADRSスコア15以上が少なくとも1項目認められた患者の割合は、Lam群67%(30/45)、Lam+Div群44%(18/41)であり、有意な差が示された(Χ[2]=4.51、p=0.03)。・とくに、双極性障害Ⅰ型患者においてMADRSスコア15以上が少なくとも1項目認められた患者の割合は、Lam群71.4%(25/35)、Lam+Div群36.7%(11/30)であり、有意な差が示された(Χ[2]=7.89、df=1、p=0.005)。(ケアネット 鷹野 敦夫) 関連医療ニュース ・「双極性障害に対する薬物療法レビュー」WPAでの報告 ・双極性障害患者の「うつ症状」は心血管イベントリスクを高める ・高齢者のてんかん患者が増加!

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脳卒中のrt-PA血栓溶解療法、発症後6時間でも身体機能を改善: IST-3試験

脳卒中患者に対する遺伝子組み換え組織プラスミノーゲンアクチベータ(rt-PA)による静脈内血栓溶解療法は、発症から6時間まで適応を拡大しても、6ヵ月後の身体機能アウトカムを改善することが、英国オックスフォード大学のColin Baigent氏らIST-3 collaborative groupが進めるIST-3試験(http://www.dcn.ed.ac.uk/ist3/)で示された。rt-PAによる血栓溶解療法は、欧州では発症後3時間以内、80歳未満の急性虚血性脳卒中患者に対し承認されている。一方、11試験(3,977例)に関するコクランレビューでは、rt-PAは早期の致死的脳出血を3%増加させるものの身体機能障害のない生存を有意に改善することが示され、発症後6時間まで有効な可能性が示唆されている。Lancet誌2012年6月23日号(オンライン版2012年5月23日号)掲載の報告。rt-PA 6時間以内投与の有用性を無作為化試験で評価IST-3(Third International Stroke Trial)試験は、より広範な脳卒中患者(発症後6時間まで、80歳以上)に対するrt-PAによる静脈内血栓溶解療法の有用性を評価する国際的な多施設共同非盲検無作為化試験。患者は、rt-PA 0.9mg/kgを静脈内投与する群または対照群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、6ヵ月後の自立した生存例の割合とした。自立はOxford Handicap Score(OHS)で評価し、OHS 0~2点を自立と定義した(0:身体機能の障害がなく、日常生活に変化なし、1:軽度の症状があるが、日常生活に支障なし、2:軽度の身体機能障害があり、日常生活にもある程度制限があるが、自立している)。早期の死亡率や脳出血の頻度は高いが、6ヵ月後のOHSが改善2000年5月~2011年7月までに、12ヵ国156施設から3,035例が登録され、このうち1,617例(53%)が80歳以上だった。rt-PA群に1,515例が、対照群には1,520例が割り付けられた。6ヵ月の時点における自立した生存率はrt-PA群が37%(554/1,515例)、対照群は35%(534/1,520例)で、両群間に有意な差はなかった[調整オッズ比(OR):1.13、95%信頼区間(CI):0.95~1.35、p=0.181]。OHSの改善率はrt-PA群で有意に高かった(OR:1.27、95%CI:1.10~1.47、p=0.001)。7日以内に発現した致死的/非致死的な症候性脳出血はrt-PA群が7%(104/1,515例)と、対照群の1%(16/1,520例)に比べ有意に高頻度であった(調整OR:6.94、95%CI:4.07~11.8、p<0.0001)。7日以内の死亡率はrt-PA群が11%(163/1,515例)と、対照群の7%(107/1,520例)に比べ有意に高かった(調整OR:1.60、95%CI:1.22~2.08、p=0.001)が、7日~6ヵ月の死亡率はrt-PA群で有意に低く[rt-PA群16%(245/1,515例) vs 対照群20%(300/1,520例)、調整OR:0.73、95%CI:0.59~0.89、p=0.002]、6ヵ月までの全体の死亡率は両群で同等だった[rt-PA群27%(408/1,515例) vs 対照群27%(407/1,520例)、調整OR:0.96、95%CI:0.80~1.15、p=0.672]。著者は、「約4分の3の患者が発症から3時間以降に無作為割り付けされ、半数以上が80歳を超える集団において、rt-PAは6ヵ月後の身体機能アウトカムを改善することを示すエビデンスが得られた」と結論し、「これらの知見は、rt-PAの80歳以上の患者に対する適応拡大を正当化し、脳卒中の重症度やベースラインの画像診断における早期の虚血性変化にかかわらず有用なことを示す。今後は、発症後4.5時間以降の患者を対象とした無作為化試験を行う必要がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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