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日本人対象のテリパラチド週1回皮下注射の有用性(TOWER試験)

テリパラチドは骨折の危険性の高い骨粗鬆症患者に対し使用することで、骨形成と骨量増加を促す薬剤である。産業医科大学などの研究グループにより、テリパラチド56.5μg、週1回皮下注射によって骨折リスクが低下することが報告された。The Journal of clinical endocrinology and metabolism誌オンライン版2012年6月20日報告。この国内第III相試験は骨粗鬆症患者における椎体骨折の発生率の減少を目的として、多施設二重盲検プラセボ対照試験として行われた。対象は既存の椎体骨折を有する65歳から95歳までの日本人骨粗鬆症患者578例。被験者は無作為にテリパラチド56.5μg週1回皮下注射群(テリパラチド週1回群)とプラセボ群に割り付けられ、72週間投与された。プライマリエンドポイントは新規椎体骨折の発生率で、X線写真よって評価された主な結果は以下のとおり。 ・テリパラチド週1回群は新規椎体骨折の累積発生率を減少させた(テリパラチド週1回群3.1%、プラセボ群14.5%、P

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乾癬とアトピー性皮膚炎患者に対する教育プログラムは治療に影響を与えるのか?

標準治療に加えて、治療に何らかの影響を与えるような患者教育の実施は、皮膚科領域では比較的新しい概念である。ベルギーのゲント大学病院のBostoen氏らは、乾癬またはアトピー性皮膚炎患者の重症度やQOLに対して12週間の教育プログラムがどのような影響を与えるかを調べるため、無作為化試験(RCT)を実施した。単独施設におけるRCTではあるが、今回実施したような教育プログラムは長期にわたる乾癬治療において付加価値をもたらすことが示唆された。British Journal of Dermatology誌オンライン版2012年6月18日号の報告。本試験では、ゲント大学病院で治療中の乾癬患者(n=29)およびアトピー性皮膚炎患者(n=21)の計50例を治療介入群またはコントロール群に1:1の割合で無作為に割り付け、乾癬の面積と重症度の指標であるPASI(Psoriasis Area and Severity Index)スコア、またはアトピー性皮膚炎の重症度の指標であるSCORAD(Scoring Atopic Dermatitis)やEASI(Eczema Area and Severity Index)を用いて盲検化された観察者によって重症度を測定した。QOLに関しては、皮膚科領域に特化したQOL指標 であるDLQI(Dermatology Life Quality Index)やPDI(Psoriasis Disability Index)などを用いて測定した。フォローアップ期間は9ヵ月間であった。主な結果は以下の通り。 ・試験開始3ヵ月の時点で、乾癬患者には重症度とQOLの有意な改善が見られたが、アトピー性皮膚炎患者には見られなかった。・試験開始3ヵ月の時点で、PASI平均値、DLQI平均値、PDI平均値は、治療介入群においてコントロール群と比較して有意に改善した。(各p=0.036、 p=0.019、 p=0.015)・この改善は、少なくとも6ヶ月間は持続した。(教育プログラム終了後3ヵ月間は改善が継続していたが、試験開始から9ヵ月後には見られなかった)(ケアネット 藤井 美佳) ========================================関連コンテンツ【レポート】第111回皮膚科学会総会

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医師が抱く、「インスリン使用」への抵抗感  ~DAWN JAPAN Study~

インスリン療法は2型糖尿病において良好な血糖コントロールを実現する手段だが、一般的にインスリンの導入開始時期は遅れがちであると言われる。今回、天理よろづ相談所病院の石井氏らの研究で、「医師が抱くインスリン治療に対する心理的障壁」についての検討結果が明らかになった。2012年6月14日、PLoS One誌で公開された報告。本研究は、2004 年から2005年にかけて日本国内で実施された、インスリン療法に対する心理的障壁についての実態調査DAWN JAPAN研究(Diabetes Attitudes,Wishes, and Needs study-JAPAN)の結果をもとに行われた。対象は、日本糖尿病学会認定専門医師(n=77)、日本糖尿病学会会員医師(n=30)、日本糖尿病学会非会員医師(n=27)の計134名の医師 。新たに開発された27の質問項目から成る調査票を用いて実施された。この結果、医師側がインスリン療法に何らかの不安を抱いていることが示された。この不安がインスリンの導入開始時期の遅れにもつながっている可能性が考えられると著者は考察している。主な結果は以下のとおり。 ・参加医師によって治療されている患者は合計11,656名・患者の平均年齢は64.1歳、糖尿病罹病期間は平均121.6ヵ月、平均HbA1c(NGSP)値は7.5%で、全患者の27.4%でインスリンが使用されていた。・医師が抱く、インスリン治療に対する心理的障壁のうち、JDS認定専門医師群とJDS非会員医師群とで有意差のあった項目は、「インスリン療法の支援が可能な医療スタッフ(看護師・薬剤師)がいない」 (1.3% vs 55.5%)、「高齢者に対するインスリン療法に何らかの懸念がある」(38.1% vs 81.5%)、「インスリン導入のための患者指導や教育を行うことが困難」(16.9% vs 55.5%) であった。・医師がインスリン導入を患者に勧める際の平均HbA1c(NGSP)値は8.7%であった。しかし、自分自身にインスリン導入が必要になると仮定した場合には、その数値は8.2%まで減少した。(ケアネット 佐藤 寿美)〔関連情報〕 動画による糖尿病セミナー (インスリンなど)

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糖尿病管理への質改善戦略の導入、治療効果の向上に寄与

糖尿病管理への質改善(quality improvement:QI)戦略の導入によって治療効果が向上することが、カナダSt Michael病院Li Ka Shing Knowledge InstituteのAndrea C Tricco氏らの検討で示された。糖尿病の管理は複雑なため、プライマリ・ケア医と他の医療従事者の連携が必要であり、患者の行動変容や健康的な生活習慣の奨励なども重要な課題とされる。糖尿病治療におけるQI戦略の効果に関する以前の系統的レビューでは、HbA1c以外の要素は検討されていないという。Lancet誌2012年6月16日号(オンライン版6月9日号)掲載の報告。QI戦略の有効性をメタ解析で評価研究グループは、糖尿病患者におけるHbA1c、血管リスク管理、細小血管合併症のモニタリング、禁煙に対するQI戦略の有効性を評価するために系統的なレビューとメタ解析を行った。Medline、Cochrane Effective Practice and Organisation of Care databaseおよび無作為化試験の文献を検索して、成人糖尿病外来患者を対象に11のQI戦略(医療組織、医療従事者、患者を対象としたQI戦略から成る)について検討した試験を抽出した。2名の研究者が別個に、抽出されたデータをレビューし、バイアスのリスク評価を行った。患者に対するQI戦略とともに医療組織への介入が重要48のクラスター無作為化試験(2,538クラスター、8万4,865例)と94の無作為化試験(3万8,664例)が解析の対象となった。ランダム効果モデルによるメタ解析では、標準治療に比べQI戦略では、HbA1cが0.37%(95%信頼区間[CI]:0.28~0.45、120試験)、LDLコレステロールが0.10mmol/L(95%CI:0.05~0.14[=3.87mg/dL、95%CI:1.935~5.418]、47試験)、収縮期血圧が3.13mmHg(95%CI:2.19~4.06、65試験)、拡張期血圧が1.55mmHg(95%CI:0.95~2.15、61試験)それぞれ低下した。ベースラインのHbA1cが8.0%以上、LDLコレステロールが2.59mmol/L(=100.233mg/dL)以上、拡張期血圧が80mmHg以上、収縮期血圧が140mmHg以上の場合にQI戦略の効果が大きかった。また、ベースラインのHbA1cのコントロール状況によってQI戦略の効果にばらつきがみられた。QI戦略では、標準治療に比べアスピリン(相対リスク[RR]:1.33、95%CI:1.21~1.45、11試験)や降圧薬(RR:1.17、95%CI:1.01~1.37、10試験)の使用が増加し、網膜(RR:1.22、95%CI:1.13~1.32、23試験)、腎症(RR:1.28、95%CI:1.13~1.44、14試験)、足の異常(RR:1.27、95%CI:1.16~1.39、22試験)のスクリーニングが増加した。一方、QI戦略はスタチンの使用(RR:1.12、95%CI:0.99~1.28、10試験)、降圧コントロール(RR:1.01、95%CI:0.96~1.07、18試験)、禁煙(RR:1.13、95%CI:0.99~1.29、13試験)には有意な影響を示さなかった。著者は、「多くの試験において、QI戦略による糖尿病治療の改善効果が示された」と結論し、「糖尿病管理の改善を目指した介入では、患者に対するQI戦略とともに医療組織への介入を行うことが重要である。医療従事者に限定した介入は、ベースラインのHbA1cコントロールが不良な場合にのみ有用と考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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要注意…論文のアブストラクトと本文の結語の不一致:肺がん全身療法のRCTを分析

臨床医は、新たなRCT(Randomized Control Study)の情報に乗り遅れないよう、論文のアブストラクトだけを読むことがある。しかし、論文の結語(conclusion)は、アブストラクトと本文中で記載内容が一致していないことがある。このアブストラクトの不一致についてカナダQueen’s UniversityのAltwairgi氏らが分析し、その結果がJournal of Clinical Oncologyオンライン版2012年5月29日に掲載された。分析対象となったのは2004年~2009年の間に発表された肺がん全身療法のRCTである。アブストラクト中と本文中の結語は、7段階のリッカート尺度を用いて階層化された(スコア1は対照群を強く支持、4は双方に中立、7は試験群を強く支持)。双方の点数差が2以上の場合、不一致と判定された。また、不一致関連因子の特定にはχ2検定とロジスティック回帰分析が用いられた。結果、114件のRCT(非小細胞肺がん90件、小細胞肺がん24件)が選出され、そのうち11件(10%)の論文で、結語の不一致が示された。不一致は、実験群がアブストラクト中の結語で強く支持されるケースで最も多かった(9/11 件、82%)。また、不一致の要因を分析したところ、掲載誌のインパクトファクター、肺がん進行度、スポンサーシップの有無など試験関連因子からは独立したものであることがわかった。Altwairgi氏らは、実臨床において、RCTに関する論文のアブストラクトだけを確認して診療変更を検討するような場合は、注意を払うべきであると、結語で述べている。(ケアネット 細田 雅之)

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「医の倫理」と弁護士に関する論考

健保連 大阪中央病院顧問 平岡 諦 2012年6月20日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 ●弁護士とは何する人ぞ  弁護士とは「基本的人権を擁護し、社会正義を実現する」ことを目指す専門家です。日本弁護士連合会(日弁連)の会則にはつぎのように記載されています。 第二条;本会は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現する源泉である。第十条;弁護士は、人権の擁護者であり、社会正義を顕現するものであることを自覚しなければならない。日弁連のホームページにはつぎに様にも書かれています。「弁護士がその使命である人権擁護と社会正義を実現するためには、いかなる権力にも屈することなく、自由独立でなければなりません。そのため、日弁連には、完全な自治権が認められています。弁護士の資格審査、登録手続は日弁連自身が行い、日弁連の組織・運営に関する会則を自ら定めることができ、弁護士に対する懲戒は、弁護士会と日弁連によって行われます。弁護士会と日弁連の財政は、そのほとんど全てを会員の会費によって賄っています。このように、弁護士に対する指導監督は、日弁連と弁護士会のみが行うことから、弁護士になると、各地にあるいずれかの弁護士会の会員となり、かつ当然に日弁連の会員にもなることとされているのです。」●弁護士と日弁連との関係弁護士と弁護士集団である日弁連の関係を社会の側から見ると次のようになります。現在の社会は「人権を擁護し、社会正義を実現することを目指す専門職」を必要としています。それが現在の弁護士です。「人権を擁護し、社会正義を実現する」ためには、「いかなる権力にも屈することなく、自由独立でなければなりません」。これが社会の求めている「個々の弁護士としてのあり方」です。弁護士も人間です。人間とは時に過ちを犯すものです。個々の弁護士の努力に任せているだけでは、時に「個々の弁護士としてのあり方」を踏み外してしまいます。とくに権力からの「under the threat(脅迫の下)」では個々の弁護士の努力だけでは弱すぎます。弁護士集団に個々の弁護士をバックアップさせる必要があります。そこで社会は「完全な自治権」を弁護士集団に与えて、日弁連を作っているのです。全員加入を強制しているのは、「人権を擁護し、社会正義を実現する」という目的をすべての弁護士に強制する必要があるからです。日弁連は「基本的人権を擁護し、社会正義を実現する源泉である」ことを宣言しています(上記第二条)。この宣言は日弁連自体が「いかなる権力にも屈することなく、自由独立」であること、すなわち日弁連のindependence(自立)を宣言していることになります。宣言は個々の弁護士を後押しすることになります。また、日弁連は、宣言した内容に違反する会員弁護士に対する懲戒、指導監督のシステムを持っています。これは集団としてのself-regulation(自己規制)になります。違反した弁護士を求められている「あり方」に向かわせることになります。このようにして、完全な自治権を持つ、すなわち「自律」した日弁連が個々の弁護士をバックアップすることになるのです。カントは、絶えざる反省(self-regulation)による、本能からの自立(independence)を自律(autonomy)と呼びました。self-regulation(自己規制)によりindependence(自立)を得ている日弁連のあり方は、カントのAutonomy(自律)の概念に一致するものです。そしてまた、世界医師会(WMA)が各国医師会に勧める「医師集団としての自律(Professional autonomy)」とも一致するものです(次項)。なお、専門家集団の自律を考える時に、強制加入か否かは本質的な問題ではありません。●WMAが勧める「医師集団としての自律(Professional autonomy)」とはドイツ・ナチス政権下で行われた「合法的だが、非人道的な人体実験」の悲劇を二度と起こさないように、WMAは新しい「医の倫理」を形成し、各国医師会に受け入れを奨励してきました。法という時の権力の意向よりも(何よりも)患者の意向(自己決定、人権、権利)を優先すること、すなわち「患者の権利(人権)を最優先する医療」を目指すことを「個々の医師としてのあり方」としたのです。WMAはこれをClinical autonomyあるいはClinical independenceと呼んでいます。「患者第一;To put the patient first」の医療を実践するということです。医師も人間です。人間とは時に過ちを犯すものです。個々の医師の努力に任せているだけでは、時に「個々の医師としてのあり方」を踏み外してしまいます。とくに権力からの「under the threat(脅迫の下)」では個々の医師の努力だけでは弱すぎます。医師集団に個々の医師をバックアップさせる必要があります。そこでWMAが考えたのが「医師集団としての自律(Professional autonomy)」です。医師集団としての宣言(権力からのindependence)、そして過ちを犯した医師に対する自己規制システム(self-regulation)を作ることです。すなわち自律した医師会になることを各国医師会に勧めているのです。過去の「医の倫理」は患者・医師間の関係を規定するだけで良かったのです。そこに「悪法」という第三者の問題が出てきたため、患者・医師・第三者の関係を扱う「医の倫理」が必要になったのです。新しい「医の倫理」の第一目的が「患者の権利(人権)を最優先する」ことになりました。そして、その遵守のために医師集団のバックアップが必要になったということです。(注:片仮名の「プロフェッショナル・オートノミー」は日本医師会の造語です。「個々の医師としてのあり方」を指すことばですので、WMAのProfessional autonomyとは全く別物です。)なお、WMAは患者の権利(人権)を守るための「患者としてのあり方」をPatient autonomyと呼んできます。自己決定(self-regulation)により、実験の道具にされないために医師からの自立(independence)を図りなさいということです。WMAは、医師、医師集団、患者としての「あり方」がカントのAutonomyの概念に一致するため、それぞれをClinical autonomy、Professional autonomy、Patient autonomyと呼んでいるのです。●法と医師との関係「患者の権利(人権)を最優先する医療」を実践するためには、「時には、医師に非倫理的行為を求める法には従わないことを要求します」。すなわち医師には「遵法」とともに時には「法への非服従」が求められているのです。「法への非服従」とは「悪法であると主張して変化を求めること」です。その例がアメリカ医師会の倫理綱領(A physician shall respect the law and also recognize a responsibility to seek changes in those requirements which are contrary to the best interests of the patient.)です。詳しくは拙稿「日本医師会は「医の倫理」を法律家(弁護士)に任せてはいけない」(MRIC. vol. 496. 497)を参照ください。最後に述べる「岩田健太郎先生への反論」も参照ください。●法と弁護士との関係日弁連の会則を見ると次のように記載されています。第十一条;弁護士は、常に法令が適正に運用されているかどうかを注意し、いやしくも非違不正を発見したときは、その是正に努めなければならない。すなわち、弁護士が現行法に対してとる態度はあくまでも「遵法」です。「かれ(法律家)の職務とするところは、たんに現行法を適用することで、現行法そのものが改善の必要がないかどうかを探求することではない」(カント著「永遠の平和のために」、宇都宮芳明訳、岩波文庫、74頁)のです。多くの弁護士が現行法の改善や新たな法制定への行動を起こしています。それは「社会正義の実現」のためです。弁護士が「法への非服従」や「違法」を目指すことは決してありません。●日本医師会・参与の畔柳達雄弁護士の働き日本医師会にあって、WMAの「医の倫理」を日本に紹介している中心人物は畔柳達雄氏(日本医師会・参与、弁護士)です。しかし、氏は(意図的に)誤って日本へ紹介しています。例えばジュネーブ宣言や国際医の倫理綱領についての解説の中で、最も重要な「法」を含む第三者との関係についての解説が無いのです。「患者の権利(人権)」を守るための「法への非服従」の問題についての解説が無いのです。なぜ氏はこのようなことをするのでしょうか。それは日本医師会の意向を慮ってのことだと思われます。詳しくは拙稿「日本医師会は「医の倫理」を法律家(弁護士)に任せてはいけない」(MRIC. vol. 496. 497)を参照ください。「患者の権利(人権)」に関する重要な解説をせず、クライアントである日本医師会の意向に従っている、これが日本医師会・参与である、弁護士の畔柳達雄氏の行っていることです。問題は無いのでしょうか。極悪非道な人間にも弁護士が付きます。これは単に「クライアントの最大限の利益を擁護する」というよりも「極悪非道な人間にもある人権を、法が侵害しないように見守る」ということではないでしょうか。「クライアントの立場を斟酌して、翻訳に際して『意訳も加えて多少の手直し』をすることは有り得ると思われる」かも知れません。その通りです。決して違法をしている訳ではありません。ただ、弁護士としての倫理性はいかがかということが問われるのです。●岩田健太郎先生への反論(「医師と『法への不服従』に関する論考」;MRIC Vol.516への反論)第一に、「法への不服従」は決して「現行法を悪法だと無視して進んで違法行為を行う」ことではありません。本稿「法と医師との関係」の項を参照ください。第二に、アメリカ医師会の倫理綱領の文章と日医の『医師の職業倫理指針』にある文章について「主張はそう変わりがないのだ」と言われますが、読解力を疑います。「A physician shall respect the law and also recognize a responsibility to seek changes in those requirements which are contrary to the best interests of the patient.」と「法律の不備についてその改善を求めることは医師の責務であるが、現行法に違反すれば処罰を免れないということもあって、医師は現在の司法の考えを熟知しておくことも必要である」とでは、主張すべき点はまったく反対です。前者は「法への非服従」を、後者は「遵法」を強調していることになります。また、日医の文章では何に対する法律の不備であるかが不明瞭です。第三に、ジュネーブ宣言の原文「even under threat」に「いかなる」は含まれていないとするご指摘はその通りです。ただ、WMA医の倫理マニュアルの中のジュネーブ宣言では、「even under threat」の日本医師会訳は「いかなる脅迫があっても」となっています。どちらでも良いのではないでしょうか。

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基底細胞がんへのvismodegib、腫瘍縮小効果と関連

基底細胞がんの多くは外科的に治療されるが、局所進行型や転移性の症例については効果的な治療法が存在しない。その基底細胞がんの発生機序に関与しているヘッジホッグ情報伝達の変化に着目して開発されたvismodegib(GDC-0449)は、画期的医薬品(ファースト・イン・クラス)といわれるヘッジホッグ経路低分子阻害薬で、第1相試験では進行型基底細胞がん患者で奏効率58%という成績を示した。本報告は、米国・メイヨークリニックのAleksandar Sekulic氏らにより行われた多施設共同国際2コホート非無作為化試験の結果で、NEJM誌2012年6月7日号で発表された。手術不能・不適応の転移性・局所進行型の基底細胞がん患者に経口vismodegibを投与試験には、米国、欧州、オーストラリアの31施設から104例の患者が登録され、全例に150mg/日の経口vismodegibを投与し、有効性と安全性について検討した。33例が転移性の基底細胞がん、71例が局所進行型の基底細胞がん患者で、いずれも、手術不能または手術不適応(複数回の再発で外科的治癒の可能性が低いか、著しく外見が損なわれることが予想されたことを理由とする)の患者であった。主要エンドポイントは、独立評価による客観的奏効率とした。局所進行基底細胞がん患者の奏効率は20%以上、転移性基底細胞がん患者では10%以上との主要仮説について検討した。奏効率30~43%、腫瘍縮小効果に関連すると結論転移性基底細胞がん患者33例の独立評価による奏効率は、30%(95%信頼区間:16~48、P=0.001)だった。局所進行基底細胞がん患者63例についての同奏効率は、43%(31~56、P

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第111回日本皮膚科学会総会

2012年6月1日~3日、国立京都国際会館にて、第111回日本皮膚科学会総会が開催された。昨年開催予定だった第110回総会が東日本大震災のために中止となり、2年ぶりの開催となった今回は、「進化する皮膚科:知と技を磨く」というテーマのもと、皮膚科学の様々な疾患をカバーする数多くのセッションが企画された。ここでは、その中からいくつかのセッションをレポートする。レポート教育講演「分子標的薬の現状と展望―副作用対策を含めて―」メーカー紹介株式会社レザック歯科等の炭酸ガスレーザー、フラクショナルCO2レーザーはレザック。グラファ ラボラトリーズ株式会社エビデンスに基づく製品開発を実践します。株式会社サンソリット信頼できるピーリングを。ピーリングのパイオニア サンソリットルートロニックジャパン株式会社Technology for Beauty and Healthアラガン・ジャパン株式会社アイケア、神経科、皮膚科、美容医療、泌尿器科などの専門領域に特化したグローバルヘルスケア・カンパニーサイノシュアー株式会社Be transformed株式会社ファンケル毎日心地よく肌のお手入れができるように。皮膚科専門医との共同研究から生まれた、「無添加FDR」のご紹介キャンデラ株式会社ひとにやさしく、未来につながる技術。株式会社おんでこおんでこ ダーモスコープ エピライトエイト ONDEKO DERMOSCOPE (EPI LIGHT×8) のご紹介パロマジャパン株式会社FROM LIGHT COMES BEAUTYマルホ株式会社敏感肌や乾燥肌のためのスキンケアをサポートする2e(ドゥーエ)。製品に込められた、その想いをお伝えしますマーシュ・フィールド株式会社痣・火傷痕・傷痕・白斑などのカバー専用化粧品、並びに低刺激性スキンケアの企画販売レキットベンキーザー・ジャパン株式会社フットケアの専門ブランド  ドクター・ショール(Dr.Scholl)日本ロレアル株式会社ラ ロッシュ ポゼ 皮膚科医が採用する敏感肌のためのスキンケア株式会社ケイセイ医療機関を対象に化粧品・医薬部外品の企画・開発・販売を実施

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キャンデラ株式会社

第111回日本皮膚科学会総会では、医療機器についても多数のメーカーによりブースが設けられていた。キャンデラ株式会社も、そのうちの一社である。Science, Results, Trustキャンデラ株式会社は、米国Candela Corporationの日本法人として1989年に設立され、四半世紀にわたりEBMを重視した質の高い医療用レーザー機器を中心に扱ってきた。臨床面からメンテナンスまで信頼のおけるサポートに力を入れている、同社の取り扱い製品を紹介する。製品紹介【GentleLASE】ロングパルスアレキサンドライトレーザー皮膚に存在するメラニン色素に対し選択的に吸収されやすい波長を持つロングパルスアレキサンドライトレーザー装置ジェントルレーズは良性の色素性疾患治療に有効。スポットサイズも従来機種に比べ非常に大きいため、乱反射による光エネルギーのロスが少なくレーザービームはより深部まで到達でき、また大口径のスポットは広範囲のメラニン疾患に対しても大変効率良く治療することが可能である。【GentleYAG】ロングパルスヤグレーザー皮膚組織の凝固を主目的とするロングパルスヤグレーザー装置。皮膚深達性に優れ皮膚中層から深層にまで熱エネルギーを伝達することができる。また、ターゲットに応じてパルス幅を0.25~250ミリ秒まで可変することが可能で、周囲の正常組織への熱損傷を最小限に抑えることに適している。操作性を重視し、大口径の照射スポット、光ファイバーによる導光方式を採用。レーザー照射は最高で毎秒2回の連続照射が可能である。【Vbeam】ロングパルスダイレーザーいわゆる赤アザのレーザー治療は1960年代からすでに始められ、ルビーレーザー、炭酸ガスレーザー、アルゴンレーザーなどさまざまな波長のレーザーによる治療が研究されてきた。ローダミン色素を用いた波長577ナノメートルの色素レーザーによる臨床報告以降、1990年代からはパルス波ダイレーザーによる治療が最も安全かつ有効であると云われている。キャンデラ社は初期の段階からパルス波色素レーザーの医家向けの開発を手がけており、キャンデラ社ダイレーザーを使用した医学会誌での臨床論文の総数も300を超えているという。キャンデラ社製Candela Vbeamは現在、世界で最も親しまれている血管病変治療用のダイレーザーの1つであり、平成24年6月現在、62ヵ国、1800台以上が日々臨床使用されている。Vbeamから発振される波長595ナノメートルのレーザー光は、血液中のヘモグロビンに選択的に吸収されるという特徴を持つ。毛細血管が凝集した病変部では、ヘモグロビンがレーザーの光エネルギーを吸収し、熱変換することで血管内壁が熱破壊され、血管を閉塞させる。また、Vbeamはレーザーのパルス幅(照射時間)を調節できるという新機能を有しており、これにより毛細血管の血管径に応じた照射時間を適宜設定することが可能となった。さらに、内蔵のダイナミッククーリングディバイス(DCD)がレーザーに同期し、レーザー照射直前に寒剤を吹きつけることにより皮膚を保護する。当治療は保険適応の対象となっている。対象疾患: 単純性血管腫、苺状血腫、毛細血管拡張症の治療【AlexLAZR】Qスイッチアレキサンドライトレーザー皮膚良性色素性疾患治療用レーザー装置アレックスレーザーは太田母斑などの「青アザ」の原因となる皮膚に含まれる異常メラニン色素に対し、選択的に吸収されやすい波長を有している。また、Q-スイッチと呼ばれるシステムによりレーザーパルスの照射時間が非常に短く、周辺の正常組織への影響を最小限に抑えた安全な治療が可能である。メラニンだけを選択的に破壊できるメカニズムは1983年にDr. AndersonとDr. Parrishにより提唱されたSelective Photothermolysis理論(選択的光加熱分解)に基づいており、メラニンに吸収されやすい波長を持つレーザーで、メラニンの熱緩和時間(~50ナノ秒)以内にレーザーパルスを照射することにより選択性が生じ、安全な治療が可能になったとのこと。当治療も保険適応の対象となっている。(ケアネット)

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統合失調症の病態にメラトニンが関与?!

統合失調症におけるメラトニンの関与はこれまであまり議論されていない。Anderson氏らはメラトニンと統合失調症の罹患、神経免疫や酸化性病態生理、睡眠障害を含む特異的な症状、サーカディアンリズム、遅発性ジスキネジアやメタボリックシンドロームを含む抗精神病薬の副作用との関係をレビューした。Metab Brain Dis誌2012年6月号掲載(オンライン版2012年4月25日号)。電子データベース(PubMed、Scopus、Google Scholar)よりメラトニンと統合失調症、精神障害、遅発性ジスキネジア、抗精神病薬、メタボリックシンドローム、薬剤性副作用をキーワードとし、統合失調症の病因、経過、治療に関連した論文を抽出した。主な結果は以下のとおり。 ・統合失調症患者ではメラトニン濃度とメラトニン・サーカディアンリズムが有意に減少する。・統合失調症患者に対するメラトニン補助療法は、抗炎症作用および抗酸化作用により抗精神病薬の効力を増強する可能性がある。・メラトニンは統合失調症患者の睡眠障害や抗精神病薬による副作用(遅発性ジスキネジア、メタボリックシンドローム、高血圧など)を改善する可能性がある。・メラトニンはストレス反応とコルチゾール分泌を介して、トリプトファン代謝経路に影響を与え、認知に関連する皮質(扁桃体反応、線条体の処理機能)へ影響を与える。・統合失調症ではメラトニンの分泌が減少しており、それが病因(病態や治療)と関与している。・メラトニンは統合失調症患者の平均寿命に影響を与える抗精神病薬の代謝系副作用に関与すると考えられる。(ケアネット 鷹野 敦夫)関連医療ニュース ・日本おける抗精神病薬の用量はアジア各国と比較し、まだ多い―REAP調査― ・精神疾患患者におけるメタボリックシンドローム発症要因は? ・統合失調症の高感度スクリーニング検査 「眼球運動検査」

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糖尿病予備群および早期糖尿病の患者を対象としたORIGINの結果を発表

フランスのサノフィ社は11日(現地時間)、ORIGIN試験(Outcome Reduction with Initial Glargine Intervention)の結果を報告し、ランタス(一般名:インスリングラルギン〔遺伝子組換え〕)は標準的治療に比べ、心血管系イベントの発生に対して統計的に悪影響を及ぼさないことを発表した。また同試験の結果より、インスリングラルギンは糖尿病予備群から2型糖尿病への進行を遅らせること、また同薬の投与と癌のリスク上昇との間に関連を認めないことが明らかにされた。サノフィ・アベンティスが14日に報告した。また試験結果は、第72回米国糖尿病学会において発表され、New England Journal of Medicine (NEJM)のオンライン版にも掲載された。ORIGIN試験は、インスリングラルギンと標準的治療が心血管系イベントの発生に及ぼす影響を6年間にわたって比較したもの。同試験では、心血管系リスクが高い糖尿病予備群または早期2型糖尿病患者12,500例以上が世界各地で無作為化を受け、6,264例がインスリングラルギン群に割り付けられ、空腹時血糖が正常値となるまで投与量の調節が行われた。主要評価項目は、(1)心血管イベントによる死亡、非致死的な心筋梗塞、非致死的な脳卒中のいずれかの発症、ならびに(2)心血管イベントによる死亡、非致死的な心筋梗塞、非致死的な脳卒中、血行再建術の実施、心不全による入院のいずれかの発症の2項目とした。試験では、早期の血糖異常の患者の空腹時血糖を正常域に下げる治療は、心血管系イベント抑制に影響しないことが示された。(第1の主要評価項目のハザード比1.02, p=0.63, NS,第2の主要評価項目のハザード比1.04; p=0.27, NS)。インスリングラルギンの投与により血糖コントロールの目標値(空腹時血糖値の5.2 mmol/L、HbA1c 6.2%〔いずれも中央値〕)に到達し、6.2年間の追跡期間中を通じて維持された。また、インスリングラルギンと癌の発症リスク上昇との間には関連が認められなかったという(HR:1.00; p=0.97, NS)。癌全般について解析した場合、癌種別に解析した場合のいずれも、インスリングラルギンの使用者にリスク上昇を示唆する所見を認めなかったとのこと。試験の結果、インスリングラルギンは糖尿病予備群(IFG またはIGT)から2型糖尿病への進行を28%遅らせることを示しており(HR:0.72; p=0.006)、ほかにも副次評価項目として微小血管に関するイベント発症(腎症または網膜症の評価項目〔HR:0.97; p=0.43〕)や全死亡〔HR:0.98; p=0.70〕の検討がなされた。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.sanofi-aventis.co.jp/l/jp/ja/download.jsp?file=C2FC519A-337E-4613-9E57-D391A9BF9B0B.pdf

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医師と「法への不服従」に関する論考

神戸大学感染症内科岩田 健太郎 2012年6月12日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 平岡諦氏の「日本医師会は「医の倫理」を法律家(弁護士)に任せてはいけない」(MRIC. vol. 496. 497)を興味深く読みました。平岡氏は「医の倫理」は「法」よりも上位にあり、日本医師会は「医の倫理」に遵法を要求していることから、法律家(弁護士)が「医の倫理」規定に参画するのは間違っていると主張します。本稿の目的は平岡氏のこの大意「そのもの」への反論ではありません。平岡氏が指摘するような日本医師会の医療倫理への「操作」や歴史的プロセスについて、あるいはそこにおける弁護士の意味や役割についてぼくは十分な情報を持っていませんし、また関心事でもないからです。しかし、部分的には異議を持ちましたので、その点については、あくまでも各論的に指摘したいと思います。アメリカ医師会の倫理綱領を紹介して平岡氏はそこで「『法への非服従』を謳っている」と説明し、「A physician shall respect the law and also recognize a respondsibility to seek changes in those requirements which are contrary to the best interests of the patient」という文章を紹介します。しかし、「法への非服従」には二つの意味があります。一つは現行法を遵守しつつ、その法が「悪法である」と主張して変化を求めること、もう一つは現行法を悪法だと無視して進んで違法行為を行うことです。平岡氏が主張する「法への非服従」は後者にあたります。しかし、アメリカ医師会の文章では「seek changes」と書かれていますから、素直に読めば前者の意味と理解するのが自然です。平岡氏は自身の見解、医師の「法への非服従」にあまりにこだわるあまり、AMAの見解を曲解しています。ナチスドイツが行ったユダヤ人やその他の民族の大虐殺、そして医療の世界における非道な人体実験は我々の倫理・道徳的な観念に大きな揺さぶりをもたらしました。問題は、これらの非道な行為が「悪意に満ちた、悪魔的な集団によって行われた」というより、ハンナ・アーレントらが指摘するように、普通の常識的な人物たちが当時の法と上司の命令に素直に従って行った悪烈な行為であったことが大きな問題であったのです。ですから、それに対する大きな反省を受けて、「明白に犯罪的な命令には従ってはならない」(ハンナ・アーレント「イスラエルのアイヒマン」みすず書房 225ページ)という考えがでてきました。これが平岡氏の言う「法への非服従」でしょう。さて、「明白に犯罪的な命令には従ってはならない」は普遍的な原則です。ナチスドイツの法と命令に従った全ての人に適応可能な原則なのですから。したがって、「法への非服従」を求められる職業は平岡氏が主張するように医師だけに要求される倫理観ではありません。看護師などの他の医療者や、教師や、あるいはあらゆる社会人にも適用可能な原則です。しかし、ナチスドイツにしても、日本の731部隊にしても、その人体実験は極端なまでに悪らつで、また例外的な悪事でした。医療者は一般的に善良な意志を持っており、また善良なプラクティスを心がけています。それが必ずしも患者にとって最良な医療になる保証はありませんが、少なくともナチスドイツや731部隊的な行為は日常的には行われません。あれは、極めて例外的な事項です。日常的にあんなことが頻発されてはたまったものではありません。例外的なのだから忘却しても構わない、と申し上げたいのではありません。ハンナ・アーレントが指摘するように、そのような例外的な悪らつ非道は「ふつうの人」にも起こりえる陥穽を秘めています。だから、ぼくらはそのような「極端な悪事」にうっかり手を貸してしまうリスクを常に認識しておかねばなりません。繰り返しますが、「明白に犯罪的な命令には従ってはならない」というハンナ・アーレントの格率は、そのような極端な事例において適応が検討されるもので、日常的な格率ではありません。一方、アメリカはかなり強固な契約社会であり、法とか社会のルールを遵守するのが正しいと主張する社会です。アメリカのような契約社会でルールを破っても構わない、という考え方はかなりリスクが大きいのです。医師を含め、医療者も法やルールをきちんと遵守することが日ごろから要求されています。平岡氏のいう「法への非服従」はアメリカ医療の前提にはありません。だからAMAはseek changesとは言っても、act against the lawとは明記しなかったのです。もしアメリカにおいてそれが許容されることがあったとしても、繰り返しますが、極めてレアなケースとなるでしょう。アメリカ以外の社会においても、法への非服従が正当化されるのはナチスドイツ的な極めて例外的な悪事、「明白に犯罪的な命令」に限定されます。しかも、何が犯罪的なのかは自分自身で判断しなければならないのですが、その基準は「あいまい」であってはなりません。ハンナ・アーレントは「原則と原則からの甚だしい乖離を判別する能力」(同ページ)が必要と述べます。「甚だしい」乖離でなければならないのです。臨床試験の医療倫理規定であるヘルシンキ宣言もナチスドイツの人体実験の反省からできたものですが、ホープは極めて例外的なナチスドイツ的行為が、日常的な臨床試験の基準のベースになっていることに倫理的な問題を指摘しています(医療倫理、岩波書店)。あまりにも杓子定規で性悪説的なヘルシンキ宣言のために、患者が医療サービスを十全に受ける権利が阻害されているというのです。形式的で保険の契約書みたいなインフォームドコンセント、過度に官僚的なプロトコルなどがその弊害です。医療倫理を善と悪という二元的でデジタルな切り方をするから、こういう困難が生じるのです。多くの場合、医療の現場は白でも黒でもないグレーゾーンであり、ぼくら現場の専門家に求められるのは、「どのくらいグレーか」の程度問題なのですから。そして、アメリカであれ、日本であれ、他の世界であれ、医師が「法への不服従」を正当化されるのは(正当化されるとすれば、ですが)、極めて黒に近い極端で例外的な事例においてのみ、なのです。また、平岡氏は日本医師会がハンセン病患者の隔離政策に対応してこなかったことを批判します。その批判は正当なものです。しかし、それは「法の改正を求める」という方法と「法そのものをあえて破る」ことが区別されずに批判されています。たとえば、現行の悪法を悪法だと批判し、改正を求めることもひとつの方法なのです。そして、(引用)『医師の職業倫理指針』では「法律の不備についてその改善を求めることは医師の責務であるが、現行法に違反すれば処罰を免れないということもあって、医師は現在の司法の考えを熟知しておくことも必要である」となっています。すなわち、日本医師会は「遵法」のみを医師に要求し、「法への非服従」を医師に求めていないのです。このことは、日本医師会が「悪法問題」を解決していないことを示しています。(引用終わり)と医師会も「法律の不備」を指摘し、改善を求める必要は認めているのですから、少なくともAMAと(WMAはさておき)主張はそう変わりないのだとぼくは思います。また、平岡氏はジュネーブ宣言を引用して「いかなる脅迫があっても」と訳しますが、原文は「even under threat」、、脅迫下においても、、、という言及のみで「いかなる」=under any circumstances、とは書かれていません。この点では平岡氏の牽強付会さ、議論の過度な拡大解釈、が問題になります。平岡氏は日本医師会が「世界標準」から外れており、そこに(WMAに)従わないのが問題だといいます。その是非は、ここでは問いません。しかし、そもそも医の倫理に「世界標準」などというものを作ってしまえば、それは倫理を他者の目、「他者の基準」に合わせてしまうことを意味しています。しかし、たとえWMAがいう「規範」であっても、それが自分の中にある道徳基準を極端に外れている場合は、それに従わないというのが、カントらが説く自律的な倫理観です。AMAがこういっている、WMAがそう訴えている、「だから」それに従うというのは、そもそもその自律的な倫理原則から外れてしまいます。これは本質的なジレンマです。自律と他律のこのジレンマは、ヘーゲルら多くの哲学者もとっくみあった極めて難しい問題ですが、いずれにしても「世界標準だから」医師会にそれに従えと言うのは、自律を原則とする医療倫理における大きなパラドックスではないでしょうか。AMAの倫理規定を読むと、ぼくはいつもため息を禁じえません。http://www.ama-assn.org/resources/doc/ethics/decofprofessional.pdfそこには例えば、Respect human life and the dignity of every individual.とあります。全ての人の生命と尊厳を尊重せよと説きます。しかし、その基盤となるアメリカの国民皆保険に強固に反対してきたのも、またAMAでした(医師の利益が阻害されるからです)。このようなダブルスタンダードが、もっとも非倫理的な偽善ではないかとぼくは考えます。日本医師会がどうあるべきかは、本稿の趣旨を超えるものですが、少なくともAMAやWMAを模倣することに、その回答があるのではないことは、倫理の自律性という原則に照らし合わせれば確かなのです。

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手術患者に対するトラネキサム酸、輸血リスク低減は確たる証拠あり

 手術における輸血リスクを低減するとされるトラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)の有効性エビデンスについて、英国・London School of Hygiene and Tropical MedicineのKatharine Ker氏らによるシステマティックレビュー・累積メタ解析の結果、過去10年に遡って強いエビデンスがあり、輸血に関してはこれ以上試験を行っても新たな知見はもたらされないだろうと報告した。しかし、「血栓塞栓症イベントと死亡率に対する影響については、いまだ明らかではない」として、手術患者にその情報を提供し選択をさせるべきであると結論。小規模な臨床試験をこれ以上行うのではなく、種々雑多な患者を含む大規模プラグマティックな試験を行うことの必要性について言及した。BMJ誌2012年5月26日号(オンライン版2012年5月17日号)掲載報告より。システマティックレビューで129試験・総患者数1万488例を解析 Ker氏らは、手術患者へのトラネキサム酸投与に関する輸血、血栓塞栓症イベント、死亡に関する効果の評価を目的とした。Cochrane対照設定試験中央レジスター、Medline、Embaseの初刊行~2011年9月の間の発表論文、WHO国際臨床試験登録プラットフォームと関連論文参照リストを検索し、解析論文を特定した。 対象となったのは、手術患者についてトラネキサム酸投与と非投与またはプラセボ投与を比較した無作為化対照試験で、アウトカムとして、輸血を受けた患者数、血栓塞栓症イベント件数(心筋梗塞、脳卒中、深部静脈血栓症、肺塞栓症)、死亡件数を測定していたものとした。論文執筆の言語や刊行の有無などは問わなかった。 結果、1972~2011年の間の129試験・総患者数1万488例のデータが解析に含まれた。血栓塞栓症イベントに対する効果は不明、死亡に対する効果も不確定 トラネキサム酸投与は輸血を受ける確率を3分の1低減することが認められた(リスク比:0.62、95%信頼区間:0.58~0.65、P<0.001)。この効果は、割付隠蔽化を用いて解析に制限をかけた場合も維持された(同:0.68、0.62~0.74、P<0.001)。 一方で、心筋梗塞(同;0.68、0.43~1.09、P=0.11)、脳卒中(同:1.14、0.65~2.00、P=0.65)、深部静脈血栓症(同:0.86、0.53~1.39、P=0.54)、肺塞栓症(同:0.61、0.25~1.47、P=0.27)については効果が明らかではなかった。 死亡の発生は少なかった(同:0.61、0.38~0.98、P=0.04)が、割付隠蔽化を用いて解析に制限をかけた場合は、考慮すべき不確定さが認められた(同:0.67、0.33~1.34、P=0.25)。 累積メタ解析の結果、輸血に対するトラネキサム酸の効果のエビデンスは確たるものであること、過去10年にわたってそのエビデンスは確実に入手できることが示された。

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国家的「手洗いキャンペーン」が医療従事者関連感染症を低減:英国

イングランドとウェールズでは2004年に、全国のNHS傘下病院の医療従事者に対し、「手洗いキャンペーン(Cleanyourhands campaign)」が開始された。背景には、MRSAやMRSSなどの感染症蔓延の報告に対する懸念、一方の医療従事者の手洗いコンプライアンスが低率という報告があったこと、それらの前提として医療従事者の手指を媒介として患者から患者への感染拡大の可能性があったことなどによるという。キャンペーンは、2008年までに3回にわたって発動され、その効果について、英国・University College London Medical SchoolのSheldon Paul Stone氏らが前向き調査にて評価をした。BMJ誌2012年5月26日号(オンライン版2012年5月3日号)掲載報告より。病院のアルコール手指消毒薬と液体石鹸の調達率と感染症発生との関連について調査「手洗いキャンペーン」は、ベッドサイドへのアルコール手指消毒薬の供給、医療従事者に手洗いを想起させるポスターの配布、コンプライアンスについての定期的検査とフィードバック、医療従事者に手洗いを想起させるための患者への資料提供から成った。アルコール手指消毒薬および液状石鹸はNHS物品供給会社を通して購入することとされ品質は保証されたものだった。キャンペーンは保健省が資金を提供し、国家患者安全丁(NPSA)の調整の下で展開された。キャンペーンの全国展開開始は2004年12月1日で翌2005年6月まで全国の急性期NHS病院に対し介入が続けられた。その後、2006年6月末、2007年10月に一新やポスターの再作成などが図られた。Stone氏らは、病院のアルコール手指消毒薬と液体石鹸の調達率、特定の医療従事者関連感染の報告におけるキャンペーンの影響について評価し、2004年7月1日~2008年6月30日の間の感染症発生と調達率との関連について、前向き生態学的断続時系列の手法を用いて調査した。調達率3倍に、MRSAとC. difficileは減少に転じたがMSSAには影響認められず四半期ごとに調べられた病院のアルコール手指消毒薬と液体石鹸の調達率は、1患者・床・日当たり21.8mLから59.8mLへと約3倍に増えていた。調達率は各キャンペーン発動と関連して上昇していた。感染報告症例は1万床・日当たり、MRSA菌血症は1.88から0.91に減少、C. difficile感染症も16.75から9.49に減少した。しかしMSSA菌血症は減少に転じなかった(2.67からピーク時3.23に、試験終了時は3.0)。石鹸の調達は、C. difficile感染症低減と独立した関連が試験期間を通して一貫して認められた(1mL/患者・床・日増大に対する補正後発生率:0.993、95%信頼区間:0.990~0.996、P<0.0001)。アルコール手指消毒薬の調達は、MRSA菌血症低減と独立した関連が認められたが、それは試験最後の4四半期においてのみだった(同:0.990、0.985~0.995、P<0.0001)。2006年発動のキャンペーンが最も強くMRSA菌血症低減(同:0.86、0.75~0.98、P=0.02)、C. difficile感染症低減(同:0.75、0.67~0.84、P<0.0001)と関連していた。定期検査のための保健省改善チームのトラスト訪問も、MRSA菌血症低減(同:0.91、0.83~0.99、P=0.03)、C. difficile感染症低減(同:0.80、0.71~0.90、P=0.01)と強く関連し、訪問後少なくとも2四半期はその影響が認められた。結果を踏まえてStone氏は、「手洗いキャンペーンは、病院の手指消毒薬等の調達継続と関連しており、医療従事者関連の感染症低減に重要な役割を果たすことが示された。医療従事者関連の感染症低減には、人目を引く政治組織的な推進力の下で行う国家的介入の感染症コントロールが有効である」と結論している。

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耳鳴り順応療法、耳鳴りに悩む人のQOLを改善

 耳鳴り症状に対し、通常ケアと比較して認知行動療法が、健康関連QOLや耳鳴り重症度を改善することが、オランダ・マーストリヒト大学のRilana F F Cima氏らによる無作為化試験の結果、報告された。耳鳴り症状を呈する成人は最高で21%にも達し、最も苦痛で消耗が激しい聴覚医学的問題の1つとされている。しかし臨床的治癒を導く標準療法がないため、コスト高で長期にわたる治療となりやすい。そこでCima氏らは、認知行動療法による段階的ケアアプローチの効果について通常ケアと比較する評価を行った。Lancet誌2012年5月26日号より。耳鳴りの音に脳を順応させる認知行動療法と通常ケアを比較 試験は、オランダ・HoensbroekにあるAdelante Department of Audiology and Communicationで被験者を募り行われた。耳鳴りを主訴とするが、試験参加を妨げるような健康問題を有していない、18歳以上の未治療のオランダ語を話せる人を登録した。 独立した研究アシスタントがコンピュータを使って、被験者を耳鳴り重症度と聴力で4つのグループに層別化し、認知行動療法として耳鳴りの音に脳が順応するよう訓練する耳鳴り順応療法(tinnitus retraining therapy:TRT)を受ける群(専門治療群)と、通常ケアを受ける群に患者を1対1となるよう無作為に割り付けた。患者と評価者に治療割付情報は知らされなかった。 主要評価項目は、健康関連QOL(健康ユーティリティ・インデックス・スコアで評価)、耳鳴り重症度(耳鳴りアンケート・スコア)、耳鳴り機能障害(耳鳴りハンディキャップ項目スコア)とした。評価は治療前と、無作為化後3ヵ月、8ヵ月、12ヵ月時点で行われ、マルチレベル混合回帰分析法を用いてintention-to-treatでのアウトカム評価が行われた。健康関連QOL、耳鳴り重症度および機能障害が改善 2007年9月~2011年1月の間に741例がスクリーニングを受け、492例(66%)が登録され治療を受けた。 結果、専門治療群(245例)は、通常ケア群(247例)と比較して、12ヵ月で健康関連QOLの改善が認められ(群間差:0.059、95%信頼区間:0.025~0.094、コーエン効果サイズについてのd=0.24、p=0.0009)、耳鳴り重症度指数が低下し(同:-8.062、-10.829~-5.295、d=0.43、p<0.0001)、耳鳴り機能障害指数が低下した(-7.506、-10.661~-4.352、d=0.45、p<0.0001)。 耳鳴り順応療法は、初期の耳鳴り重症度にかかわりなく効果的であり、有害事象もみられなかった。研究グループは、「認知行動療法に基づく耳鳴り専門治療は、重症度の異なる患者に広く実施可能と言える」と結論している。

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CKD診療ガイド改訂 -慢性腎臓病(CKD)は原疾患、腎機能と尿所見でリスク評価を-

日本慢性腎臓病対策協議会(東京都文京区、理事長:槇野博史、J-CKDI)は、1日、CKD診療に関して、かかりつけ医の標準化と腎臓専門医の連携を目的とした「CKD診療ガイド2012」を発行した。「CKD診療ガイド」は、2009年以来3年ぶりの改訂となる。本ガイド改訂委員長の今井圓裕氏は、今回の最も大きな改訂点として、CKDの重症度分類が腎機能だけでなく、原疾患、尿所見を評価した分類に変更されたことを挙げ、その他、血圧管理、貧血管理が臨床上に影響を及ぼす点として掲げた。最大の改訂点となった重症度分類の変更は、わが国でなく、国際腎臓病ガイドライン(KDIGO)も同様の見直しを行なっていると今井氏は言う。従来は糸球体濾過量(G = GFR)を基にした腎機能のみで評価してきたが、尿蛋白・尿アルブミン値(A = Albumin)、原疾患(C = Cause)を加えたいわゆるCGA分類で評価する。これはアルブミン尿や蛋白尿が、腎機能とは独立して末期腎不全、心血管死の発症リスクであることを示すエビデンスが確立してきたため。病期は4つに区分され、リスクに応じて腎臓専門医への相談・紹介基準や、腎臓専門医への通院間隔が推奨されている。次に注目すべき改訂点は、血圧管理。CKDにおける血圧管理については国際的に基準が変わってきており、現在の降圧目標レベルが過剰であると捉えられつつあると今井氏は述べた。これまでの蛋白尿が1g/日以上を認めるCKD患者の降圧目標値は「125/75mmHg未満」が推奨されてきたが、今回の改訂により撤廃され、「130/80mmHg以下」に統一された。高齢者においては、「140/90mmHg未満を目標に降圧し、腎機能悪化や臓器の虚血症状がみられないことを確認し、130/80mmHg以下に降圧する、収縮期血圧110mmHg未満への降圧は避ける」とさらに慎重な構え。特に夏期、RA系阻害薬投与例において、過降圧を来たし、急性腎障害で搬送される例も少なくないことも例に挙げ、高齢者における過降圧に注意を喚起した。また、推奨する降圧薬については、糖尿病and/or蛋白尿が認められる場合は、従来どおりRAS阻害薬を第一選択薬とすることは変わりないが、糖尿病も蛋白尿もみられないCKD例においては、降圧薬の種類を問わないことが記述された。貧血管理の改訂も注目すべき改訂点と言える。前回の改訂があった2009年以降、貧血の改善が臨床転帰につながらなかった試験が発表された。遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤の投与については、「投与開始Hb値=10g/dL、治療目標Hb値=10~12g/dL、13g/dLを超えないよう配慮する」と基準を明記している。今回の改訂において、「重症度分類の変更」が意味するところは、蛋白尿、アルブミン尿が末期腎不全、心血管死の独立した危険因子であるものとして捉え、尿検査を定期的に実施していくことの重要性を促すものと捉えている。(ケアネット 藤原 健次)

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10代うつ病患者の治療はファンタジーゲームで?

うつ病の認知行動療法のパソコン用ソフトとして開発された「SPARX(Smart, Positive, Active, Realistic, X-factor thoughts)」は、ファンタジーゲーム様式が特徴で、4~7週間にわたって提供される7つのモジュールを克服していくというものである。その治療効果について、ニュージーランド・オークランド大学のSally N Merry氏らによる12~19歳のティーンエイジャーを対象とした多施設無作為化非劣性試験の結果、プライマリ・ケアにおいて対面カウンセリングといった通常ケアの代替療法となり得るものであることが示された。Merry氏らは、「治療が必要にもかかわらず介入が行われていない患者を対象に適用していくことができるだろう」とまとめている。これまでパソコンソフトを活用した認知行動療法は成人についてはその効果が認められていたが、ティーンエイジャーにおける効果は明らかではなかった。BMJ誌2012年4月19日号より。12~19歳の187例をSPARX介入群と通常ケア群に無作為化試験は、ニュージーランドの24のプライマリなヘルスケア施設(小児科、一般診療所、学校のカウンセリング・サービス)で、うつ症状に対する支援を希望していて、自傷行為の重大リスクがなく、一般医が治療が必要と判断した12~19歳の187例を対象に、多施設無作為化非劣性試験を実施した。94例がSPARXを受ける群(平均年齢15.6歳、女性62.8%)に、93例は通常の治療を受ける群(平均年齢15.6歳、女性68.8%)に割り付けられた。通常ケア群には、訓練を受けたカウンセラーと臨床心理士が提供する対面カウンセリングが行われた。主要評価項目は、小児うつ病尺度改訂版(CDRS-R:children's depression rating scale-revised)スコアの変化とした。副次評価項目は、小児うつ病尺度改訂版、Reynoldのティーンエイジャーうつ病スケール第2版(Reynolds adolescent depression scale-second edition)、気分と感情質問票(mood and feelings questionnaire)、Spence小児不安スケール(SCAS:Spence children's anxiety scale)、小児用QOL・喜び・満足度質問票(paediatric quality of life enjoyment and satisfaction questionnaire)、小児用Kazdin絶望感測定尺度(Kazdin hopelessness scale for children)などの各スケールスコアの変化と、治療評価を含む全体的満足度を含めた。副次評価項目もすべてSPARX群の非劣性を支持170例(91%、SPARX群85例、通常ケア群85例)が介入後に評価を受け、168例(90%、83例、85例)が3ヵ月後のフォローアップ評価を受けた。パープロトコル解析(143例)の結果、SPARX群が通常ケア群に非劣性であることが示された。介入後、CDRS-R未処理スコアは、SPARX群で平均10.32の減少が認められた。通常ケア群では7.59の減少だった(群間差:2.73、95%信頼区間:-0.31~5.77、P=0.079)。寛解率は、SPARX群(31例、43.7%)が通常ケア群(19例、26.4%)より有意に高く(差17.3%、95%CI 1.6~31.8%)、P=0.030)、反応率はSPARX群(66.2%、47例)と通常ケア群(58.3%、42例)との間に有意差は認められなかった(格差:7.9%、95%信頼区間:-7.9~24%、P=0.332)。副次評価項目もすべて非劣性を支持するものであった。intention-to-treat解析はこれらの所見を確認し、得られた改善はフォローアップ後も維持された。介入に関連すると思われる有害事象の頻度も群間での差異は認められなかった(SPARX群11例、通常ケア群11例)。

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妊婦への新型インフルエンザワクチン接種、胎児死亡との関連認められず

妊婦への不活化新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種に関して、胎児死亡リスク増大のエビデンスは見つからなかったことが、デンマーク・Statens Serum InstitutのBjorn Pasternak氏らによる約5.5万人の妊婦を被験者とするデンマーク全国登録コホート研究の結果、示された。2009パンデミック当時、新型インフルエンザに罹患した妊婦の罹病率、死亡率が増大し、妊娠アウトカムが不良となることが認められたことから、その後、多くの国で、新型インフルエンザワクチン接種キャンペーンのターゲットに妊婦を含んでいる。Pasternak氏らは、ワクチン接種が胎児死亡と関連しないかを国民ベースで検証した。BMJ誌2012年5月19日号(オンライン版2012年5月2日号)掲載報告より。妊婦5万4,585例を対象に、ワクチン接種群と非接種群の胎児死亡等リスクを比較対象となったのは、2009年11月~2010年9月に単胎児妊娠中の妊婦5万4,585例であった。AS03パンデミックA/H1N1 2009インフルエンザワクチン不活化新型インフルエンザワクチン(Pandemrix)接種状況および潜在的交絡因子を結びつけて調査が行われた。主要アウトカムは、ワクチン非接種妊婦と比較したワクチン接種妊婦の、傾向スコア補正後の胎児死亡(特発性流産と死産を含む)リスクとした。副次アウトカムは、流産(妊娠7~22週)、死産(22週過ぎ以降)とした。主要、副次アウトカムともにリスク増大の関連認められず妊婦5万4,585例のうち、ワクチン接種者は7,062例(12.9%)。胎児死亡発生は、1,818例(特発性流産1,678例、死産140例)だった。解析の結果、ワクチン接種と胎児死亡リスク増大との関連は認められなかった(補正後オッズ比:0.79、95%信頼区間:0.53~1.16)。副次アウトカムについても、流産(同:1.11、0.71~1.73)、死産(同:0.44、0.20~0.94)ともに増大は認められなかった。また共存症あり(同:0.82、0.44~1.53)、共存症なし(同:0.77、0.47~1.25)で検討した結果も、推定胎児死亡リスクは同程度であった。

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進行期のホジキンリンパ腫への6サイクルBEACOPP+放射線療法

進行期のホジキンリンパ腫の最も有望な治療法と目されている多剤併用化学療法のBEACOPPに関して、標準としてきた8サイクルと比べて、6サイクル+PET活用の放射線療法が、無治療失敗(FFTF)についてより効果があり、かつ8サイクルで懸念される毒性を低減することが示された。ドイツ・ケルン大学病院のAndreas Engert氏らによる無作為化オープンラベル非劣性試験の結果で、Engert氏は、「6サイクル+PET活用の放射線療法を、進行期ホジキンリンパ腫の治療選択肢の一つとすべきであろう」と結論した。また化学療法後のPET活用の有用性について、「追加的な放射線療法に欠かせないもの」とまとめている。Lancet誌2012年5月12日号(オンライン版2012年4月4日号)掲載報告より。BEACOPPの強度と放射線療法の必要性について検討研究グループは、進行期ホジキンリンパ腫患者への化学療法の強度と放射線療法の必要性について明らかとするため、多施設共同オープンラベルパラレル平行非劣性試験「HD15」を行った。研究グループが以前標準レジメンとしていた8サイクルBEACOPP(8×Besc)と、2つの強度を弱めた、6サイクルBEACOPP(6×Besc)と、14日間を1サイクルとして8サイクル行うBEACOPP(8×B14)とを比較検討した。被験者は化学療法後、PET検査で2.5cm以上の腫瘍が認められた場合、追加で放射線療法(30Gy)を受けることとした。試験に登録されたのは、18~60歳の進行期ホジキンリンパ腫の新規患者2,182例だった。主要エンドポイントは無治療失敗(FFTF)とした。また12ヵ月時点のPETによる腫瘍再発の陰性予測値を独立エンドポイントとした。6×Besc群、標準の8×Besc群に対して非劣性登録被験者のうち2,126例が無作為に、8×Besc群705例、6×Besc群711例、8×B14群710例に割り付けられintention-to-treat解析が行われた。FFTFは、結果としては6×Besc群と8×B14群は、8×Besc群に対し非劣性だった。5年FFTF率は、8×Besc群84.4%[97.5%信頼区間(CI):81.0~87.7]、6×Besc群89.3%(同:86.5~92.1)、8×B14群85.4%(同:82.1~88.7)だった(6×Besc群と8×Besc群との差の97.5%CI:0.5~9.3)。3群の全生存率は、8×Besc群91.9%、6×Besc群95.3%、8×B14群94.5%で、8×Besc群よりも6×Besc群が有意に良好だった(両群間差の97.5%CI:0.2~6.5)。死亡率は8×Besc群(7.5%)が、6×Besc群(4.6%)、8×B14群(5.2%)よりも高値を示した。その差の要因は、主として治療関連のイベントにあり(各群2.1%、0.8%、0.8%)、副次的には二次性腫瘍によるものだった(各群1.8%、0.7%、1.1%)。追加放射線療法を受けたのは2,126例中225例(11%)で、12ヵ月時点のPET評価による陰性予測値は94.1%(95%CI:92.1~96.1)だった。

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2型糖尿病肥満、薬物療法+外科的肥満手術で血糖コントロール有意に改善

2型糖尿病非コントロールの肥満患者について、薬物療法に加えて胃バイパス術など外科的肥満手術を行うことが、薬物療法単独よりも有意に血糖コントロールを達成するとの報告が発表された。米国・Bariatric and Metabolic InstituteのPhilip R. Schauer氏らが、無作為化非盲検単独施設試験の結果、報告したもので、これまでは観察研究においては、胃バイパス術などを受けた2型糖尿病患者における病状の改善が認められていた。NEJM誌2012年4月26日号(オンライン版2012年3月26日号)掲載報告より。150例を対象に薬物療法単独と外科的手術群の血糖コントロール改善を比較Schauer氏らによるSurgical Treatment and Medications Potentially Eradicate Diabetes Efficiently(STAMPEDE)試験は、2007年3月から2011年1月にクリーブランドクリニック単施設で行われた無作為化試験で、2型糖尿病を有するBMI 30~35以上の肥満患者を対象に、血糖コントロール達成について、薬物療法単独と外科的手術(Roux-en-Y胃バイパス術と胃切除術)を併用する群とを比較して行われた。被験者は150例、平均年齢は49±8歳、66%が女性であり、血糖値平均は9.2±1.5%であった。追跡期間は12ヵ月、主要エンドポイントは、治療12ヵ月後に血糖値6%以下に到達した患者の割合とした。被験者150例のうち93%が、12ヵ月の追跡期間を完了した。治療後の血糖値平均、薬物療法単独群7.5%に対し、胃バイパス術群6.4%、胃切除群6.6%結果、主要エンドポイントを達成した患者の割合は、薬物療法単独群12%(5/41例)に対し、胃バイパス術群42%(21/50例、P=0.002)、胃切除群37%(18/49例、P=0.008)だった。血糖コントロールは3群すべて改善したが、薬物療法単独群の改善された血糖値平均7.5±1.8%に比べて、胃バイパス術群は6.4±0.9%(P<0.001)、胃切除群は6.6±1.0%(P=0.003)だった。手術群はいずれも、術後は血糖降下薬、脂質低下薬、降圧薬の使用量が減少した。一方で、薬物療法群は増量していた。また、手術群はインスリン抵抗性指数(HOMA-IR)も有意に改善していた。その他には、患者4例が再手術を受けていたが、死亡や命に関わるような合併症の発生例はなかった。研究グループは今回の結果を受け、さらなる無作為化試験での検証の必要性を提言している。

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