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慢性虚血性心不全に対する自己骨髄単核細胞の経心内膜注入、改善効果は?

慢性虚血性心不全に対する自己骨髄単核細胞(BMC)の経心内膜注入手技について、左室収縮終末期容積(LVESV)や最大酸素消費量などの心機能の改善は認められなかったことが報告された。米国・Texas Heart InstituteのEmerson C. Perin氏らが行った、2つのプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2012年4月25日号で発表した。92人を無作為化、6ヵ月後のLVESVや最大酸素消費量などを比較研究グループは、2009年4月29日~2011年4月18日にかけて、慢性虚血性心不全で左室機能不全が認められる患者(NYHA心機能分類II~IIIまたはカナダ循環器学会分類法II~IV、LVEF<45%、SPECTで血流欠損認める)92人を無作為に2群に分け、一方の群(61人)には自己骨髄単核細胞(BMC)の経心内膜注入(1億BMC)を行い、もう一方の群(31人)にはプラセボを注入した。被験者は、CCTRN(Cardiovascular Cell Therapy Research Network)を後援する5つのNHLBI(National Heart, Lung, and Blood Institute)で治療を受けている患者で、平均年齢63歳、男性が82人で、同治療法以外には血行再建の方法はなかった。主要エンドポイントは、6ヵ月後の、心エコーによるLVESV、最大酸素消費量、SPECTによる可逆性の所見だった。LVESV、最大酸素消費量、可逆性のいずれの変化にも両群で有意差なしその結果、LVESV指標の6ヵ月後の変化について、BMC群とプラセボ群で有意差はなかった(-0.9mL/m2、95%信頼区間:-6.1~4.3、p=0.73)。最大酸素消費量の平均値の変化量も、両群で有意差はなかった(1.0、同:-0.42~2.34、p=0.17)。さらに可逆性についても、その変化量は両群で同等だった(-1.2、同:-12.50~10.12、p=0.84)。副次エンドポイントとして評価した心筋梗塞欠損割合や総欠損量、臨床的改善なども、BMC群とプラセボ群で有意差は認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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オフポンプCABG対オンポンプCABGの30日アウトカム

冠動脈バイパス術(CABG)の施行について、心拍動下(オフポンプ)CABGの人工心肺(オンポンプ)CABGに対する相対的な有益性とリスクを検討する国際多施設共同無作為化対照試験が行われた。カナダ・マクマスター大学のAndre Lamy氏ら研究グループによるもので、血液製剤や術中出血、合併症の減少など周術期の有益性は認められる一方、血行再建術の早期再施行リスクの上昇が認められたと報告している。NEJM誌2012年4月19日号掲載報告より。30日時点の優位性を79施設で比較研究グループは2006年11月~2011年10月の間に19ヵ国79施設から、CABGが予定されていた4,752例を登録して試験を行った。被験者は81%が男性、平均年齢は68歳だった。被験者は、オフポンプCABG群(2,375例)またはオンポンプCABG群(2,377例)に無作為に割り付けられた。第1の共通主要アウトカムは、無作為化30日後の死亡、非致死性の脳卒中、非致死性の心筋梗塞、または透析を必要とする腎不全の新規発症の複合とした。血行再建術の早期再施行リスクは増加結果、オフポンプCABGとオンポンプCABGの間に、主要複合アウトカムの発生率についての有意差はみられなかった(9.8%対10.3%、オフポンプ群のハザード比:0.95、95%信頼区間:0.79~1.14、P=0.59)。個々のアウトカムについても同様だった。オフポンプCABGはオンポンプCABGと比較して、血液製剤の輸注量(50.7%対63.3%、相対リスク:0.80、95%信頼区間:0.75~0.85、P

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未成年2型糖尿病患者の最適な治療は?(4月29日掲載NEJMオンライン速報版より)

メトホルミン単独療法で血糖コントロールが不十分な10-17歳の2型糖尿病患者に対する次の治療選択肢として、チアゾリジン薬の追加併用療法が、メトホルミン単独療法を継続するより有意に血糖を管理できることが、無作為化比較試験The Treatment Options for Type 2 Diabetes in Adolescents and Youth (TODAY) 試験の結果より明らかになった。この結果は4月29日、NEJM誌オンライン速報版に発表された。メトホルミン単独療法でHbA1c≧8%の未成年2型糖尿病患者を無作為化割り付け研究グループは、1日2回のメトホルミン(1,000mg/日)投与においても、HbA1c値が8%未満にコントロールできなかった10-17歳の2型糖尿病患者699例を、 1) メトホルミン単独療法群 2) メトホルミン+チアゾリジン薬(ロシグリタゾン)併用療法群 3) メトホルミン+減量を重要視した生活習慣改善強化群の3群に無作為に割り付けし、主要評価項目を「血糖コントロールの喪失」とし、各治療法を比較検証した。「血糖コントロールの喪失」は、6ヵ月にわたるHbA1c値8%以上の持続またはインスリン治療の必要な持続的な代謝不全と定義された。主な結果は下記のとおり。 1. 平均追跡期間は3.86年 2. 「血糖コントロールの喪失」と判定された症例は319例(45.6%)   1) メトホルミン単独療法群:51.7% (232例中120例)   2) チアゾリジン薬併用療法群:38.6% (233例中90例)   3) 生活習慣改善強化群:46.6% (234例中109例) 3. チアゾリジン薬併用療法群は、メトホルミン単独療法群に比べ、   有意に血糖コントロール喪失が少なかった(P = 0.006)。 4. 生活習慣改善強化群は、メトホルミン単独療法群、   チアゾリジン薬併用療法群のいずれの治療法とも有意な差がなかった。 5. チアゾリジン薬併用療法は、非ヒスパニック系黒人で効果が弱く、   少女で効果が強かった。

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太っていると高血圧になりやすいのか?-茨城県健康研究より-

40歳以上の日本人においてBMIが25kg/㎡の人は、19kg/㎡の人に比べ、高血圧発症のリスクが1.29~1.47倍高くなることが茨城県健康研究(Ibaraki Prefectural Health Study:IPHS)の結果より明らかにされた。筑波大学大学院人間総合科学研究科の辻本氏らは、1993年に茨城県の健康診断を受診した住民のうち、高血圧でなかった68,205名を2006年まで追跡し、ベースライン時のBMIと高血圧症の発症を検証した。追跡期間中の体重変化の影響を除外するために、時間依存性共変量Cox比例ハザードモデルを用いた。高血圧の発症は、140/90mmHg以上 and/or 降圧薬の服用と定義された。主な結果は下記のとおり。1) 平均観察期間3.9年において、30,982名(45.2%)が高血圧症を発症した。2) BMIが25kg/㎡の人の高血圧発症リスク(対照:BMI<19kg/㎡の人)   40-59歳男性:1.42倍(95%信頼区間:1.17-1.73)   60-79歳男性:1.34倍(95%信頼区間:1.19-1.51)   40-59歳女性:1.47倍(95%信頼区間:1.33-1.62)   60-79歳女性:1.29倍(95%信頼区間:1.18-1.41)

3925.

オルメサルタンは、糖尿病と高血圧の併発例においても微量アルブミン尿の発症を遅延させる-ROADMAP試験より-

高血圧と糖尿病を併発する患者においても、ARBオルメサルタンによる治療によって微量アルブミン尿の発症率を低下させることが示された。このRandomized Olmesartan and Diabetes Microalbuminuria Prevention (ROADMAP)試験のサブグループ解析の結果は、Journal of Hypertension誌4月号に掲載された。4,000例以上の高血圧合併例におけるサブグループ解析2011年3月、2型糖尿病患者において、オルメサルタンが微量アルブミン尿の発症を遅らせることがNEJM誌に発表された。今回の報告は高血圧合併例におけるサブグループ解析。高血圧と糖尿病を併発した症例は4,020例。本解析では高血圧は「130/80mmHg以上 and/or 降圧薬服用者」と定義された。被験者はオルメサルタン40mgまたはプラセボが1日1回投与される群に無作為に割り付けられた。観察期間の中央値は3.2年。130/80mmHg未満に到達しない場合、必要に応じてARBまたはACE阻害薬を除く降圧薬が追加投与された。主な結果は下記のとおり。1) 平均到達血圧  オルメサルタン群:126.3/74.7 mmHg  プラセボ群:129.5/76.6 mmHg (P < 0.001)2) オルメサルタン投与によって、微量アルブミン尿の発症が25%減少  (ハザード比=0.75; 95%信頼区間=0.61-0.92, P = 0.007)3) ベースライン時の収縮期血圧値が136.7 mmHg以上の群において  17.45 mmHg以上の降圧が認められた群は、認められなかった群に比べて  微量アルブミン尿の発症率が有意に少なかった。  (8.1 vs 11.2%、P

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高齢者の心電図異常、冠動脈性心疾患イベントリスクを40~50%増

高齢者の心電図異常は、その程度にかかわらず、冠動脈性心疾患イベント発生リスク増大と関連することが明らかにされた。軽度の場合は約1.4倍に、重度では約1.5倍に、それぞれ同リスクが増大するという。また、従来のリスク因子による予測モデルに、心電図異常の要素を盛り込むことで、同イベント発生に関する予測能が向上することも示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のReto Auer氏らが、高齢者2,000人超について約8年間追跡して明らかにしたもので、JAMA誌2012年4月11日号で発表した。心血管疾患のない70~79歳、試験開始時と4年後に心電図測定研究グループは、「健康と加齢、身体計測スタディ」(Health, Aging, and Body Composition Study)の参加者の中から、基線で心血管疾患のない70~79歳2,192人を追跡し、心電図異常と冠動脈性心疾患イベントとの関連を検討した。追跡は、1997~1998年と2006~2007年との8年間にわたって行われた。試験開始時点と4年後に心電図測定を行い、ミネソタ分類により軽度・重度別に分け分析した。またCox比例ハザード回帰モデルを用いて、従来のリスク因子に心電図異常を追加することによる、冠動脈性心疾患イベントの予測能が改善するかどうかも検証した。試験開始時の心電図異常、冠動脈性心疾患イベントリスクを軽度で1.35倍、重度で1.51倍にその結果、試験開始時点で心電図異常が認められたのは、軽度が276人(13%)、重度が506人(23%)だった。追跡期間中、冠動脈性心疾患イベントが発生したのは、351人(冠動脈性心疾患死:96人、急性心筋梗塞:101人、狭心症または冠動脈血行再建術による入院:154人)だった。試験開始時点の心電図異常が軽度でも重度でも、従来のリスク因子補正後の冠動脈性心疾患イベントリスクの増大と関連しており、正常群の同イベント発生率が17.2/1,000人・年に対し、軽度異常群の同発生率は29.3/1,000人・年(ハザード比:1.35)、重度異常群の同発生率は31.6/1,000人・年(ハザード比:1.51)だった。また、従来のリスク因子に心電図異常を盛り込み、予測モデルをつくったところ、従来のリスク因子のみのモデルより、その予測能は向上することが認められた。試験開始4年時点で、新たに心電図異常が認められたのは208人、初回測定時に続き異常が認められたのは416人で、いずれの場合も、冠動脈性心疾患イベント発生リスクは増大した(それぞれ、ハザード比:2.01、同:1.66)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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新型血管造影X線診断装置「Allura Clarity」ファミリー 発売

フィリップス エレクトロニクス ジャパンは13日、新型血管造影X線診断装置「Allura Clarity」ファミリーの販売を開始することを発表した。Allura Clarityファミリーは、医療現場で最も強く要求される、画質の向上と被ばくの低減の両立を実現し、たとえば同社従来品と比較した場合、ほぼ同じ画質を維持して被ばく量を73%低減することができるという。近年、X線装置を使用した血管内治療は、より複雑・高度化し、治療に要する時間も長時間化している。このような高度な治療に際して正確な診断を行うためには、以前にも増して高画質が求められる一方で、長時間の検査・治療や高画質への要求は患者および医療スタッフへの被ばくの増加にもつながっており、被ばくの低減も大きな課題となっている。また、(1)画像処理技術の向上によりリアルタイム作動が可能になり、動きのある部位でもノイズやアーチファクトを低減できる(2)自由度の高いデジタル画像処理技術をX線管からモニタまで適用し、心臓領域、脳神経外科領域といったそれぞれのアプリケーションに最適化された画像処理がされ、インターベンションにおいて被ばくを抑えつつ高画質を実現した(3)システムの500以上のパラメータをアプリケーションごとに調整でき、大容量X線管のMRC tubeも被ばくの低減に貢献している、といった技術的特長が挙げられる。Allura Clarityファミリーの製品ラインアップは、循環器用シングルプレーンシステム FD10、循環器用バイプレーンシステム FD10/10、頭腹部・全身用シングルプレーンシステム FD20、頭腹部・全身用バイプレーンシステム FD20/10、20/20。詳細はプレスリリースへhttp://www.newscenter.philips.com/jp_ja/standard/about/news/healthcare/120413_allura_clarity.wpd

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フルオロキノロン系薬の網膜剥離発症リスクを検討

 経口フルオロキノロン系薬服用中は、網膜剥離発症リスクが約4.5倍に増大することが報告された。一方で1週間以内、1年以内の使用歴は同リスクを増大しないことも示されている。カナダ・Child and Family Research Institute of British ColumbiaのMahyar Etminan氏らが、約99万人を対象としたコホート内症例対照研究の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2012年4月4日号で発表した。フルオロキノロン系薬の眼毒性については、多くの症例報告があるものの、網膜剥離発症リスクとの関連についての研究報告はこれまでほとんど行われていなかったという。追跡期間中央値1.7年で網膜剥離は4,384人 研究グループは、2000年1月~2007年12月の間に、カナダのブリティッシュコロンビア州で眼科医の診察を受けた98万9,591人について、コホート内症例対照研究を行った。主要アウトカムは、網膜剥離発症と、経口フルオロキノロン系薬の服薬状況(現在、最近、過去に服用)との関連だった。その結果、網膜剥離を発症したのは、同コホートのうち4,384人だった。発症者とそのコントロール群の平均年齢は、ともに61.1歳(標準偏差:16.6)、うち男性はケース群が58.2%、コントロール群は43.5%だった。追跡期間の中央値は、1.7年だった。フルオロキノロン系薬服用中の膜剥離発症リスク絶対増加は、4人/1万人・年 経口フルオロキノロン系薬を現在服用中の人の網膜剥離発症リスクは、使用していない人に比べ、約4.5倍増大した(補正後発症率比:4.50、95%信頼区間:3.56~5.70)。一方、1~7日前までの服用者(補正後発症率比:0.92、同:0.45~1.87)、また8~365日前服用者(同発症率比:1.03、同:0.89~1.19)については、いずれも網膜剥離発症リスクの増大は認められなかった。 経口フルオロキノロン系薬使用中の網膜剥離発症リスクの絶対増加は、4人/1万人・年だった。有害事象発症必要数は、2,500人だった。

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人工股関節全置換術、metal-on-metal関節で高い再置換率

人工股関節全置換術(THR)では、metal-on-metal関節は他の人工関節に比べ再置換を要する確率が高く、骨頭径が大きいほど5年再置換率が上昇することが、英国・ブリストル大学整形外科のAlison J Smith氏らの検討で示された。THRは極めて一般的な施術法だが、特に若年患者で人工関節が機能しなかったり、摩滅や転位に起因する弛緩によって再置換を要する場合があるという。これらの問題への対処法として、骨頭径が大きく摺動面がmetal-on-metalの人工関節の移植が行われるが、その耐用性は明らかではなく、セラミック製のceramic-on-ceramic関節の有用性も報告されている。Lancet誌2012年3月31日号(オンライン版2012年3月13日号)掲載の報告。3種の人工関節の耐用性を評価研究グループは、metal-on-metal関節は他のTHR用の人工関節(ceramic-on-ceramic関節、metal-on-polyethylene関節)に比べ耐用性が優れるかを評価し、さらに骨頭径の大きさが耐用性に及ぼす影響について検討を行った。2003~2011年までにNational Joint Registry of England and Walesに登録された初回THR施行患者40万2,051例(そのうち3万1,171例がmetal-on-metal関節)を解析の対象とした。多変量パラメータモデルを用いて、再置換術の施行率を推算した。骨頭径の大きなceramic-on-ceramic関節の有用性が高いmetal-on-metal関節は、ceramic-on-ceramic関節やmetal-on-polyethylene関節に比べ再置換率が高かった。60歳の男性の5年再置換率は骨頭径28mmで3.2%、52mmでは5.1%と、サイズが大きくなるに従って上昇した。若年女性の5年再置換率は、骨頭径28mmのmetal-on-polyethylene関節では1.6%であったが、46mmのmetal-on-metal関節では6.1%だった。これに対し、ceramic-on-ceramic関節では60歳男性の5年再置換率が、骨頭径28mmで3.3%、40mmでは2.0%と、サイズが大きくなるほど低下した。著者は、「metal-on-metal関節は耐用性が劣るため使用すべきではない」と結論づけ、「特に骨頭径の大きな人工関節を留置された若年の女性患者では注意深いモニタリングを要する。骨頭径の大きなceramic-on-ceramic関節は有用性が高く、継続的な使用が推奨される」としている。(菅野守:医学ライター)

3930.

AHA推奨の健康指標、遵守項目が多いほど死亡リスクは有意に減少

米国心臓協会(AHA)が推奨する7項目からなる心血管健康基準について、6項目以上を満たしている人は、1項目以下しか満たしていない人に比べ、全死亡リスクは半分以下、心血管疾患死や虚血性心疾患死リスクは3分の1以下に減少することが示された。米国疾病管理予防センター(CDC)のQuanhe Yang氏らが、約4万5,000人の成人データを調べて明らかにしたもので、JAMA誌2012年3月28日号(オンライン版2012年3月16日号)で発表した。ただしYang氏は、同基準7項目すべてを満たしている人は、1~2%とごくわずかであったことについても言及している。同基準7項目を満たすのは、1~2%とごくわずか研究グループは、全米健康・栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey ;NHANES)の、1988~1994年、1999~2004年、2005~2010年の3つの調査データを用い、20歳以上成人4万4,959人について調査を行った。被験者について、AHAが推奨する「非喫煙」「運動をしている」「血圧値正常」「血糖値正常」「総コレステロール値正常」「標準体重」「健康な食事を摂取」の7項目からなる心血管健康基準の適用度合いと、全死亡と、心血管疾患や虚血性心疾患による死亡リスクとの関連を分析した。結果、被験者のうち、同基準7項目をすべて満たしていたのは、1988~1994年群で2.0%、2005~2010年群で1.2%と、ごくわずかだった。追跡期間は中央値14.5年。その間に、全死亡2,673人、心血管疾患死1,085人、虚血性心疾患死が576人、それぞれ発生した。6項目以上達成群、1項目以下達成群に比べ、全死亡リスクは半分以下同基準項目のうち1項目以下しか満たしていない人の、年齢・性別標準化絶対死亡リスクは、全死亡が14.8、心血管疾患死が6.5、虚血性心疾患死が3.7だった(いずれも1,000人・年当たり)。一方、同基準を6項目以上満たしていた人では、全死亡が5.4、心血管疾患死が1.5、虚血性心疾患死が1.1だった。6項目以上達成群の1項目以下達成群に対する補正後ハザード比は、全死亡が0.49(95%信頼区間:0.33~0.74)、心血管疾患死が0.24(同:0.13~0.47)、虚血性心疾患死が0.30(同:0.13~0.68)だった。補正後集団寄与比率は、全死亡59%、心血管疾患死64%、虚血性心疾患死63%だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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薬剤費自己負担の増加で、小児喘息患者の喘息による入院増加

米国の5~18歳の小児喘息患者について、薬剤費の自己負担額が増えるにつれ、喘息治療薬服用日数がやや減少し、一方で喘息による入院件数が増大することが明らかにされた。米国・ミネソタ大学のPinar Karaca-Mandic氏らが、約9,000人の18歳以下の喘息患者について調べた結果で、JAMA誌2012年3月28日号で発表した。米国では近年、民間医療保険会社が、薬剤費の患者自己負担を増加してきているという。そのことによる小児患者への影響については明らかにされていなかった。年間喘息治療薬自己負担は、約150ドル研究グループは、1997~2007年に治療を開始した、小児喘息患者8,834人について、薬剤費の自己負担額と、喘息治療薬の使用量、喘息による入院や救急外来受診との関連について、後ろ向きに調査を行った。調査対象となったのは、37の雇用主で、追跡期間は1年間だった。被験者の平均年齢は7.3歳、うち男子が59.9%だった。追跡期間中の、喘息治療薬自己負担額の年間平均は、5~18歳(5,913人)が154ドル(95%信頼区間:152~156)、5歳未満(2,921人)が151ドル(同:148~153)だった。追跡期間1年の間に、被験者のつい5~18歳が喘息治療薬を服用した日数は平均40.9%、喘息による入院は220人(3.7%)だった。5歳未満は、喘息治療薬服用日数は平均46.2%、喘息による入院は231人(7.9%)だった。薬剤自己負担額最高四分位範囲の入院は2.4/100児、最低同範囲は1.7/100児喘息治療薬の服用日数についてみると、5~18歳では、自己負担額が最も少ない四分位範囲群41.7%に対して、最も多い四分位範囲群は同40.3%と有意に少なかった(p=0.02)。5歳未満では、こうした有意差は認められなかった。また、補正後の喘息による入院についてみると、5~18歳では、自己負担額最高四分位群が2.4/100児(同:1.9~2.8)だったのに対し、最低四分位群は1.7/100児(同:1.3~2.1)と、有意に少なかった(p=0.004)。5歳未満の被験者では、こうした格差はなかった。なお、救急外来受診については、薬剤自己負担額による有意差は認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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子宮頸がん検診の予後改善効果を確認

子宮頸がんの治癒率は、症状の発現で病変がみつかった女性よりも、検診で発見された女性のほうが高く、検診によって予後が改善することが、スウェーデン・ウプサラ大学のBengt Andrae氏らの調査で示された。通常、検診で発見された子宮頸がん女性は、外来で発見された場合に比べ生存期間が長いが、検診プログラムはリードタイム・バイアス(lead time bias、早期に発見されたため生存期間が長くみえ、生存率も高くみえるバイアス)によってそのベネフィットの評価が歪められるという。そこで、同氏らは浸潤性子宮頸がんの治癒率を指標に、検診プログラムの有用性について検討した。BMJ誌2012年3月25日号(オンライン版2012年3月1日号)掲載の報告。検診の予後改善効果を検証する前向きコホート試験研究グループは、検診による浸潤性子宮頸がんの検出は予後を改善するのか、それともリードタイムの分だけ生存期間が長いだけなのかを検証するために、地域住民ベースの全国的なコホート試験を実施した。1999~2001年にスウェーデンで子宮頸がんと診断された女性1,230例をプロスペクティブにフォローアップした。平均フォローアップ期間は8.5年であった。主要評価項目は、検診歴、年齢、病理組織学的分類、FIGO stageなどで層別化した治癒率とした。治癒率が26%改善治癒率は、検診で浸潤がんを検出された女性が92%と、症状の発現によって浸潤がんが確認された女性の66%に比べ有意に26%改善した。症状発現例の治癒率は、推奨されたとおりの間隔で検診を受けた患者のほうが、検診日を過ぎてから受けた患者よりも有意に14%高かった。治癒率は、小細胞がんを除くすべての病理組織学的タイプで同等であり、FIGO stageと密接な相関を示した。診断時のstageで調整後も、検診で検出された患者の治癒率は有意に優れていた。著者は、「検診によって子宮頸がんの治癒率が改善した」と結論し、「交絡の完全な除外は不可能だが、検診の有効性はリードタイム・バイアスに起因するものではなく、down-stagingの効果よりも大きかった。検診プログラムの評価では治癒率を考慮すべきである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

3933.

携帯電話の使用、神経膠腫の発生に影響せず

アメリカでは現在、携帯電話の使用率がほぼ100%に達しているが、関連が指摘されている神経膠腫のリスク増大は認めないことが、アメリカ国立がん研究所のM P Little氏らの検討で示された。国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer:IARC)は最近、2つの疫学試験[interphone試験(2010年)、スウェーデン試験(2011年)]で報告された相対的なリスクに基づいて、携帯電話の使用と脳腫瘍のリスクの関連について再評価を行い、発がん促進の可能性のある携帯電話のマイクロ波放射の分類を行った。その一方で、1990年半ば以降、脳腫瘍の発生率の傾向は携帯電話の使用増加を反映しておらず、一般にこの状況は現在も続いているという。BMJ誌2012年3月25日号(オンライン版2012年3月8日号)掲載の報告。神経膠腫発生の観測値と推定値を、携帯電話の使用状況との関連で比較研究グループは、IARCの発がん性分類における携帯電話の位置づけの観点から、神経膠腫のリスクに関する最近の2つの報告(IARC分類に基づく)と、アメリカにおける実際の発生状況の整合性について検討した。1997~2008年の神経膠腫発生の観測値と推定値を比較した。推定値は、2010年のInterphone試験、2011年のスウェーデンの試験で報告された相対リスクと、年齢・レジストリー・性別による調整値、携帯電話の使用データ、種々の潜伏期間を統合して算出した。アメリカのSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)プログラムの12のレジストリーから、1992~2008年の神経膠腫発生のデータを用いた。神経膠腫と診断された18歳以上の非ヒスパニック系の白人2万4,813例が解析の対象となった。使用状況は大きく変わったが、リスクは変化せず1992~2008年の間に、アメリカの携帯電話の使用状況はほぼ0%から100%へと大きく変化したが、この間に年齢特異的な神経膠腫の発生率は全般的に変化しなかった(年間発生率の変化率:-0.02%、95%信頼区間:-0.28~0.25%)。電話の使用と神経膠腫リスクが相関し、さらに潜伏期間10年、低相対リスクとした場合でも、推定値が観測値を上回っていた。腫瘍の潜伏期間と累積電話使用期間から算出されたスウェーデン試験の相対リスクに基づくと、アメリカの2008年の推定値は観察値を40%以上も上回っていた。一方、Interphone試験の携帯電話の使用頻度が高い群における神経膠腫発生の推定値は観測値と一致していた。携帯電話の使用頻度が低い群や相対リスクが1以上の群に限定した場合でも、これらの結果の妥当性は維持されていた。著者は、「IARCの再評価に基づくスウェーデン試験で報告された携帯電話の使用による神経膠腫のリスク増大は、アメリカの携帯電話使用者における観測値とは一致しなかったが、Interphone試験の中等度リスク群とアメリカの状況は一致していた」とまとめている。(菅野守:医学ライター)

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高齢者は聴力低下の自覚に乏しい、スクリーニングには“ささやき検査”が有効

高齢者の聴力スクリーニングでは、単一の質問ではなく10項目からなる質問票のほうが、また2フィート先からささやいた文字や数などを答える「ささやき検査」が有効であるとの報告が、JAMA誌2012年3月21日号で発表された。米国・ミネソタ大学のJames T. Pacala氏らが、高齢者の聴覚障害について行われた1,700超の研究結果を再調査し明らかにした。高齢者の聴力の低下は、自覚がないまま進行することも少なくないという。米国の2005~2006年のNational Health and Nutrition Examination Surveyによると、70歳以上のうち、聴力低下が認められる人の割合は63%で、そのなかでも中程度から重度の聴覚障害は27%に上ることがわかっている。10項目の聴覚障害調査票によるスクリーニング、単一質問より有効研究グループは、1980~2011年12月1日までに発表された、高齢者の聴力喪失に関する研究結果について、PubMedを用いて再調査を行った。抽出した1,742件の研究結果のうち、エビデンスの程度が、A(質が高い)、B(中程度の質)以上のものについてのみ、分析を行った。医師による聴力喪失に関する診察時のスクリーニングの種類とその検査能について、以下のような結果が得られた。問診時の質問で、「聞こえにくいことがありますか?」「聞く力が弱くなってきたと思いますか?」という質問による、聴力喪失に関する陽性尤度比は2.4~4.2、陰性尤度比は0.33~0.55だった。さらに、10項目の質問からなる、「聴覚障害調査票、高齢者スクリーニング版」(Hearing Handicap Inventory for the Elderly-Screening Version)で、8ポイント超の場合、陽性尤度比は2.4~7.9、陰性尤度比は0.25~0.70と、先の質問よりも検査能は高かった。2フィート先からのささやき検査、特に除外診断に有効聴力障害のスクリーニングとして、なかでも検査能が高かったのは、2フィート先からの「ささやき検査」だった。6つの文字または数字のうち、3つ以上について聞き取れなかった場合を失格とし、陽性尤度比は7.4、陰性尤度比は0.007と、特に聴力障害の可能性を除外するのに有効だった。一方、オーディオスコープを用いた聴力検査は、ささやき試験よりも検査能は劣り、陽性尤度比は3.1~5.8、陰性尤度比は0.03~0.40だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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非小細胞肺癌治療剤「ザーコリ」 製造販売承認を取得

ファイザーは30日、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC:Non-Small Cell Lung Cancer)の効能・効果で、抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼ阻害剤「ザーコリカプセル200mg/250mg」(一般名:クリゾチニブ、以下、ザーコリ)の製造販売承認を取得したと発表した。ザーコリは、ALKを阻害する世界初の化合物。ALK遺伝子変異は、非小細胞肺がん(NSCLC)などの腫瘍の発生や形成に関わる重要な因子である。肺がんにおけるALK融合遺伝子の存在は日本人研究者によって発見され、2007年に初めて発表された。予備的な疫学調査ではNSCLC患者の約3~5%がALK融合遺伝子陽性とされている。ザーコリは、ALK融合蛋白質のチロシンキナーゼ活性を阻害することにより、腫瘍細胞の成長と生存に必要な細胞内シグナル伝達経路を遮断します。国内においては、2010年3月より非小細胞肺がん患者を対象とした治験を開始し、2011年1月には希少疾病用医薬品(オーファンドラック)に指定された。第1相臨床試験の成績については、2010年10月28日付のNew England Journal of Medicine(NEJM)誌に発表されておりまた、米国臨床腫瘍学会(ASCO)や欧州臨床腫瘍学会(ESMO)などの学会において、第1相試験および第2相試験の結果が発表されている。詳細はプレスリリースへhttp://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2012/2012_03_30.html

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英国NHSで導入された簡易院内死亡率指数SHMIの特徴

英国・シェフィールド大学のMichael J Campbell氏らは、透明性、再現性、可視化に優れた、英国内全病院の入院データから導き出した簡易院内死亡率指数(summary hospital mortality index:SHMI)を開発した。これまでにも院内標準死亡率指数(hospital standardised mortality ratio:HSMR)など死亡率指数はいくつかあったが、SHMIはそれらと違い全入院・死亡データおよび退院30日以内データに基づくもので、2011年10月からNHS(英国保健サービス)の病院評価指標として採用されているという。BMJ誌2012年3月17日号(オンライン版2012年3月1日号)掲載報告より。5年間分の英国全入院データから導き出した指数Campbell氏らはSHMI開発に当たって、5年間分の英国内全入院データを用いて後ろ向き横断調査を行った。具体的には、2005年4月1日から2010年9月30日の、Hospital episode statistics for Englandのデータと英国統計局の死亡データとを突き合わせ、院内死亡と退院30日以内の死亡を主要評価項目として評価を行った。対象に含まれたのは、146の総合病院および72の専門病院に入院した3,650万例分のデータであった。簡易な予測因子で評価が可能評価を行った最終モデルで予測因子として含まれたのは、入院診断名、年齢、性、入院タイプ、共存症であった。院内死亡または退院30日以内死亡は、男性入院患者では4.2%、女性では4.5%で認められた。全入院の75%が救急入院で、それらの人での院内死亡は5.5%だった。対照的に、選択的入院者での院内死亡は0.8%だった。チャールソン共存症スコア0の院内死亡者の割合は2%であったのに対し、スコアが5以上の院内死亡者の割合は15%だった。これらの変数を用いると、地域性や救急外来の既往回数で補正後も、相対的標準院内死亡率が著しく変わることはなかった。Campbell氏らは、これらの予測因子を用いてSHMIを開発。その指数は、標準を逸脱するような病院を特定したり、また以前からの院内死亡率指数を強固なものとすることが示されたと述べている。

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無作為化臨床試験での非盲検評価のバイアス効果は?

バイナリアウトカムの無作為化試験で多用される非盲検評価は、推定治療効果に大幅なバイアス効果をもたらしており、オッズ比評価で約36%過大に評価していることが明らかにされた。ノルディック・コクラン・センター(デンマーク)のAsbjorn Hrobjartsson氏らが、同じバイナリアウトカムの盲検と非盲検の試験の評価についてシステマティックレビューを行った結果による。非盲検評価についてはバイアスを疑うことが賢明だとされているが、その影響については明らかではなかった。BMJ誌2012年3月17日号(オンライン版2012年2月27日号)掲載報告より。同じバイナリアウトカムによる盲検評価と非盲検評価のオッズ比を検証Hrobjartsson氏らは、PubMed、Embase、PsycINFO、CINAHL、Cochrane Central Register of Controlled Trials、HighWire Press, and Google Scholarから、同じバイナリアウトカムによる盲検と非盲検による無作為化試験を選出し、推定治療効果に及ぼす非盲検アウトカム評価者の影響を調べた。各々の試験について、非盲検評価者のオッズ比と盲検評価者のオッズ比とを比較し、その比率が<1の場合は、非盲検評価が盲検評価者よりも推定効果をオプティミステッィクに作成したことを示したとした。逆分散ランダム効果メタ解析による個々のオッズ比比率をプールし、メタ回帰分析によるオッズ比比率の変化の理由を調べ、また、盲検評価者と非盲検評価者間での一致率を分析し、バイアスを中和するための再分類に必要な患者数を割り出した。非盲検は平均36%過大に評価、一方で非盲検と盲検評価の一致率78%主要解析の対象となったのは21試験(4,391例)だった。そのうち8件は、個々の患者データが入手可能だった。また大部分の試験のアウトカムは、患者機能の質的評価など主観的なものだった。そのオッズ比比率は、0.02から14.4までの幅が認められた。また、プールされたオッズ比比率は0.64(95%信頼区間:0.43~0.96)であり、非盲検法ではオッズ比を平均36%過大に評価していることが示された。オッズ比比率の低値と主観的アウトカムとの有意な関連は認められなかった(P=0.27)。試験への非盲検評価者の全体的な関与(P=0.60)、また、非盲検被験者のアウトカムに対する脆弱性についても(P=0.52)、有意な関連は認められなかった。データが活用できた12件の試験では、盲検評価者と非盲検評価者の評価の一致率は、中央値78%だった(四分位範囲:64~90%)。また、非盲検評価者による治療効果の過大評価は、1試験で中央値3%(1~7%)の評価患者の誤分類によるものであることが示された。Hrobjartsson氏は、「非盲検のアウトカム評価は大幅なバイアス効果をもたらしているが、一方で、盲検評価者と非盲検評価者との高いアウトカムの一致が認められ、わずかな患者の誤分類によって修正されるものである」と結論している。

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ACC 2012 速報 "On-pump" CABGに対する "Off-pump”の優越性示せず:CORONARY試験

わが国の冠動脈バイパス術(CABG)において、off-pump CABGの施行数はon-pumpをしのぐ。一方、off-pumpの予後改善作用がon-pumpを超えるとのエビデンスはない。Late Breaking Clinical Trialsセッションで報告されたCORONARY試験(CABG Off or On Pump Revascularization Study)もまた、off-pumpとon-pumpを比較した過去最大の試験ながら、off-pumpの優越性は証明されなかった。カナダ・マクマスター大学のAndré Lamy氏が報告した。CORONARY試験の対象は、正中胸骨切開によるCABGの適応がある4,752例。いずれも、「末梢血管疾患」、「腎機能低下」、「70歳以上」、「70歳未満だが危険因子保有」などのリスクを有する。試験開始時の平均年齢は68歳、男性が80%を占めた。EuroSCOREは「0~2」〔低リスク〕が3割弱、「3~5」〔中等リスク〕が半数強だった。また、40%弱は緊急手術例である。さらに、60%近くが3枝病変、20%弱が2枝病変例だった。これら4,752例が、”Off-pump”CABG群(2,375例)と"On-pump"CABG群(2,377例)に無作為化された。CABG術者は、off-pump、on-pumpともそれぞれ100例以上の経験がある、2年以上のキャリアを有する心臓外科医である。この点は、先に報告されているROOBY試験と大きく異なる。30日間追跡後、一次評価項目である「死亡、脳卒中、非致死性心筋梗塞、新規腎不全」発生率は、off-pump群:9,8%、on-pump群:10.3%で両群間に有意差はなかった(ハザード比:0.95、95%信頼区間:0.79~1.14、p=0.59)。内訳を比較しても、いずれかの群で有意に減少していたイベントはなかった。ただし、血行再建術再施行は、off-pump群で有意に多かった。一方、輸血の必要、急性腎傷害はon-pump群で有意に多かった。Lamy氏は上記から、「熟練者が行う限り、off-pump、on-pumpいずれのCABGも合理的な選択肢」と結論した。これに対し壇上のパネリストからは「本試験はoff-pumpの優越性を証明できなかっただけであり、off-pumpとon-pumpの同等性は証明されているのか」との疑問の声があがった。確かに、当初仮説は「off-pump群で28%のリスク減少が見られる」というものである。これに対しLamy氏は、両群の結果の類似性を強調していた。なお、本試験には、もう一つの一次評価項目、「5年間の死亡、脳卒中、非致死性心筋梗塞、新規腎不全と冠血行再建術再施行」が設定されている。長期追跡によりoff-pumpとon-pumpの予後に差がつく可能性は否定できない。公表予定は2016年。結果が待たれる。

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両腕のSBP差15mmHg以上、血管疾患や死亡の指標に

両腕の収縮期血圧(SBP)の差が10mmHg以上の場合、末梢血管疾患などを想定した精査が必要で、差が15mmHg以上になると血管疾患や死亡の指標となる可能性があることが、英エクセター大学のChristopher E Clark氏らの検討で示された。末梢血管疾患は心血管イベントや死亡のリスク因子だが、早期に検出されれば禁煙、降圧治療、スタチン治療などの介入によって予後の改善が可能となる。両腕のSBP差が10~15mmHg以上の場合、末梢血管疾患や鎖骨下動脈狭窄との関連が指摘されており、これらの病態の早期発見の指標となる可能性があるという。Lancet誌2012年3月10日号(オンライン版2012年1月30日号)掲載の報告。両腕の血圧差と血管疾患、死亡率との関連をメタ解析で検証研究グループは、両腕の血圧差と血管疾患、死亡率との関連を検証するために、系統的なレビューとメタ解析を行った。Medline、Embase、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literatureなどの医学関連データベースを検索して、2011年7月までに公表された文献を抽出した。対象は、両腕のSBPの差と鎖骨下動脈狭窄、末梢血管疾患、脳血管疾患、心血管疾患、生存のデータを含む論文とした。変量効果を用いたメタ解析を行い、両腕のSBP差と各アウトカムの関連について評価した。10mmHg以上の差があると、鎖骨下動脈狭窄のリスクが約9倍に28編の論文がレビューの条件を満たし、そのうち20編がメタ解析の対象となった。血管造影法を用いた侵襲的な試験では、狭窄率>50%の鎖骨下動脈狭窄の患者における両腕のSBP差の平均値は36.9mmHg(95%信頼区間[CI]:35.4~38.4)であり、10mmHg以上の差は鎖骨下動脈狭窄の存在と強い関連を示した(リスク比[RR]:8.8、95%CI:3.6~21.2)。非侵襲的な試験の統合解析では、両腕SBPの15mmHg以上の差は、末梢血管疾患(RR:2.5、95%CI:1.6~3.8、感度:15%、特異度:96%)、脳血管疾患の既往(RR:1.6、95%CI:1.1~2.4、感度:8%、特異度:93%)、心血管死の増加(ハザード比[HR]:1.7、95%CI:1.1~2.5)、全死因死亡(HR:1.6、95%CI:1.1~2.3)と関連を示した。10mmHg以上の差は末梢血管疾患と関連した(RR:2.4、95%CI:1.5~3.9、感度:32%、特異度:91%)。著者は、「両腕のSBPの10mmHg以上または15mmHg以上の差は血管の精査を要する患者の同定に役立ち、15mmHg以上の差は血管疾患や死亡の有用な指標となる可能性がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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Y染色体ハプログループIの男性、冠動脈疾患リスクが有意に高い

Y染色体ハプログループIの男性は、他のY染色体系統の男性に比べ冠動脈疾患リスクが50%以上高いことが、オーストラリア・バララト大学のFadi J Charchar氏らの検討で示された。冠動脈疾患の発生率や有病率には性差がみられ、男性は女性に比べて頻度が高い。Y染色体の主要部分(男性特異的領域:MSY)は父親から息子へと完全なかたちで伝えられるが、Y染色体が心血管系(心血管死や血圧など)や血中コレステロール濃度に影響を及ぼすことを示すデータが報告されているという。Lancet誌2012年3月10日号(オンライン版2012年2月9日号)掲載の報告。約3,200人の男性で冠動脈疾患とY染色体の関連を評価研究グループは、性差による不均衡に基づき、冠動脈疾患におけるY染色体の役割について検討した。対象は、3つのコホート(British Heart Foundation Family Heart Study[BHF-FHS]、West of Scotland Coronary Prevention Study[WOSCOPS]、Cardiogenics Study)に登録された生物学的に血縁関係のないイギリス人男性3,233人。Y染色体のハプログループと冠動脈疾患のリスクの関連を評価し、次いでこのY染色体の系統と冠動脈疾患の発現の関連について検討した。さらに、単球やマクロファージのトランスクリプトーム(特定の状態にある細胞内のすべての遺伝子転写産物[mRNA]を要素とする集合)に及ぼすY染色体の影響について機能分析を行った。炎症や免疫関連遺伝子との相互関連も同定された9つのハプログループのうち2つ(R1b1b2とI)が、Y染色体の約90%に認められた。ハプログループIのキャリアは、他のY染色体系統に比べ冠動脈疾患の年齢調整リスクが50%以上高かった(BHF-FHSコホート:オッズ比[OR];1.75、95%信頼区間[CI];1.20~2.54、p=0.004、WOSCOPSコホート:OR;1.45、95%CI;1.08~1.95、p=0.012、2つのコホートの統合解析:OR;1.56、95%CI;1.24~1.97、p=0.0002)。ハプログループIと冠動脈疾患リスクの増加の関連には、従来の冠動脈リスク因子や社会経済的リスク因子の影響はなかった。Cardiogenics Studyコホートにおけるマクロファージのトランスクリプトーム解析では、ハプログループIと他のY染色体系統の男性間で発現状況が著しく異なる19の分子経路が同定されたが、これらは炎症や免疫関連遺伝子と相互関連を示し、そのうちいくつかはアテローム性動脈硬化と強い関連を示した。著者は、「ヒトのY染色体はヨーロッパ系の男性の冠動脈疾患リスクと関連しており、この関連性は免疫系や炎症との相互作用を介する可能性がある」と結論付けている。(菅野守:医学ライター)

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