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英国における待機的手術施行への民間活力導入、その質的評価は?

英国待機的手術のアウトカムについて、民間治療センター(ISTC)とNHS治療センターとを比較した結果、両者はほぼ同等であることが報告された。英国では、患者が待機的手術をすみやかに、より強い選択権を有して受けられ、より良好なアウトカムを得られるようにするとの目的で、1999年より公的医療サービスであるNHS治療センターの改革プログラムが開始。そのさらなる進展のため2002年より民間活力を導入、2009年12月末までに29のISTCが開設(さらに2施設が建設中)された。しかし、治療センター増大が歓迎される中、ISTCの“民間運営”“外国人医師”に対する懸念が高まり、2006年以降、第三者機構によるISTCとNHSとを比較する質的評価の取り組みが行われているという。本論の報告は、英国保健省がRoyal College of Surgeons of Englandに質的評価の比較について委嘱したPatient Outcomes in Surgery(POiS)監査機構(2007年11月設立)による最終報告で、Royal College of Surgeons of EnglandのJ Chard氏らが、BMJ誌2011年11月12日号(オンライン版2011年10月19日号)で発表した。25のISTCおよび72のNHS治療センターの患者報告のアウトカムを収集・比較POiSは、ISTCとNHS治療センターとの待機的手術(股関節/膝関節置換術、鼡径ヘルニア修復術、静脈瘤手術)のアウトカムについて比較するため、25のISTCおよび72のNHS治療センターで、患者によって報告された術後3~6ヵ月のアウトカムをフォローアップ収集し比較した。具体的には、股関節/膝関節置換術については2008年6月~2009年9月に、ISTCで5,671例、NHS治療センターで1万4,292例を収集、鼡径ヘルニア修復術は2008年12月~2009年9月に同640例と2,023例を、静脈瘤手術は同期間に同248例と1,336例を収集した。それらの患者によって報告された症状と障害(48ポイントスケールのOxford股関節・膝スコア、Aberdeen静脈瘤調査票)、QOL(EuroQol EQ-5Dスコア)を比較の指標とした。NHSの患者のほうがアウトカム劣るが……患者特性として、ISTCの患者のほうがNHSの患者と比べ、健康で、術前重症度は小さく、より裕福であるとの傾向が認められた。補正後アウトカムは、NHSで関節置換術を受けた患者のほうが、劣っていると報告した患者が多かった。同患者のほうが、Oxford股関節スコアは-1.7(95%信頼区間:-2.5~-0.9)、Oxford膝スコアは-0.9(同:-1.6~-0.2)低かった。また、合併症の報告例がNHS患者のほうが多かった。股関節に関する合併症報告例は1.3倍(オッズ比:1.3、95%信頼区間:1.1~1.5)、膝は1.4倍(同:1.4、1.2~1.6)だった。ヘルニア手術、静脈瘤手術の術後アウトカムについては、両施設間に有意な差はみられなかったが、NHS患者のほうが、ヘルニア修復術後の結果が劣っており(オッズ比:1.4、95%信頼区間:1.0~1.9)、静脈瘤手術について追加手術が多かった(同:2.8、1.2~6.8)。Chard氏は「ISTC患者のほうが、やや健康で重症度が低かった。いくつかのアウトカムはISTCのほうがよかったが、ISTCが選択サービスの提供において持ち得る可能性があるインパクトと比べて、その差異は小さかった」と結論している。

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リピート処方の質と安全に、受付・事務スタッフの創造的判断が貢献

リピート処方(repeat prescribing)、いわゆるDo処方について、受付または事務スタッフが、質および安全性に対して重大な「隠れた」貢献を行っているとの研究結果が報告された。英国・バーツ&ロンドン医科歯科大学校のDeborah Swinglehurst氏らによる。BMJ誌2011年11月12日号(オンライン版2011年11月3日号)掲載報告より。リピート処方をめぐる質・安全への貢献および障壁について調査Swinglehurst氏らは、GP(general practice)におけるリピート処方に関して、組織業務の様子を描出、調査、比較検討することで、質および安全に対する貢献者および障壁を特定する研究を行った。研究対象となったのは、電子患者記録を使用しており、患者への処方が準オートメーション化されている英国4都市の組織形態が多様なGP。395時間にわたって民族誌学的事例研究の手法でスタッフ(医師25人、看護師16人、ヘルスアシスタント4人、マネジャー6人、受付・事務スタッフ56人)を観察し、28の文書と、リピート処方に関わる部分的、全体的な人為的な現象について調べた。主要評価項目は、患者安全や良好な診療の特徴に対する潜在的な脅威とした。研究グループは、医師、受付・事務スタッフがリピート処方について、どのような貢献をしているか、また協同しているかを観察し、処方作業をマッピングすること、組織的実践を描出すること、それらを一緒に話し合って描画しているかなどについて解析した。これらは社会的モデルとして知られるもので、ICT(information and communications technologies)により形成化されているものであった。これからの患者安全の研究は、テクノロジーサポートを研究することが大切調査・解析の結果、リピート処方は複雑で、患者安全に重大な影響を有し、医師とスタッフの協働が求められるテクノロジーサポート・ソーシャルプラクティスであることが明らかになった。リピート処方の半数以上が、受付スタッフによって“例外”と判断されていた。大半は、電子リスト上にあったものと異なる薬、投与量、タイミングなどの理由によるものであった。形式的な処方プロトコルと、リピート処方を書くことにはギャップが存在する。そのギャップを埋める作業として、医師が知らないうちに、受付・事務スタッフの創造的な判断が貢献していた。Swinglehurst氏は、「一見、平凡で、標準的で、自動化されていると見られるテクノロジーサポート・ルーチンワークは、実際には高度な部分的な調整や判断が最前線のスタッフによって求められる。それらを研究することが、患者安全研究の新たなアジェンダになっていくだろう」と結論している。

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専門病棟での集学的管理プロトコールが急性期脳卒中の予後を改善

急性期脳卒中専門病棟における看護師による発熱、高血糖、嚥下障害の集学的な管理プロトコールの実践により、退院後の良好な患者アウトカムがもたらされることが、オーストラリア・カソリック大学看護学研究所のSandy Middleton氏らが行ったQASC試験で示された。組織化された脳卒中専門病棟は脳血管イベントによる死亡や身体機能障害を低減するが、長期的な患者の回復に重要なことが知られているにもかかわらず十分な管理が行われていない因子として、発熱、高血糖、嚥下障害が挙げられるという。同氏らは、これら3つの因子のエビデンスに基づく集学的な管理プロトコールを専門病棟で遂行するための標準化された教育プログラムを開発した。Lancet誌2011年11月12日号(オンライン版2011年10月12日号)掲載の報告。ASUにおけるFeSS管理プロトコールの有用性を評価するクラスター無作為化試験QASC(Quality in Acute Stroke Care)試験の研究グループは、急性期脳卒中の専門病棟(acute stroke unit: ASU)に入院中の患者において、エビデンスに基づく発熱(fever)、高血糖(hyperglycaemia=sugar)、嚥下障害(swallowing dysfunction)(FeSS)の管理が、退院後のアウトカムに及ぼす影響を評価する単盲検クラスター無作為化対照比較試験を実施した。対象は、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州のCTとhigh dependency unit(HDU)を備えたASUに入院した発症後48時間以内の虚血性脳卒中または脳出血患者で、英語を話す18歳以上の者とした。FeSS群には、集学的チームによるFeSS管理のための治療プロトコール(ASU入院後72時間内に行う看護師による管理が中心)が施行され、対照群は既存のガイドラインの簡易版に基づく治療を受けた。介入前(無作為割り付け前)と、介入後の患者コホートを登録し、90日後の死亡または要介助[修正Rankinスケール(mRS)≧2]、機能評価[Barthelインデックス(BI)]、QOL(SF-36の「身体機能」と「心の健康」)を比較した。研究助手、統計解析担当、患者には割り付け情報はマスクされた。脳卒中専門病棟の拡充につながる知見19のASUがクラスターとして登録され、FeSS群に10施設、対照群には9施設が割り付けられた。介入前(2005年7月30日~2007年10月30日)のデータは687例から、介入後(2009年2月4日~2010年8月25日)のデータは1,009例(FeSS群:558例、対照群:451例)から得られた。介入前データの解析結果はすでに報告されており、90日後の死亡、死亡または要介助、機能評価などはFeSS群と対照群で同等であった。介入後は、脳卒中の重症度にかかわらず、90日後における死亡またはmRS≧2の割合はFeSS群が42%(236/558例)と、対照群の58%(259/449例)に比べ有意に低かった(p=0.002)。SF-36の「身体機能」の平均スコアはFeSS群[45.6(SD 10.2)]が対照群[42.5(SD 10.5)]よりも有意に良好だった(p=0.002)が、死亡率[4%(21/558例)vs. 5%(24/451例)、p=0.36]やSF-36の「心の健康」[49.5(SD 10.9)vs. 49.4(SD 10.6)、p=0.69]に差はなく、機能評価[BI≧60:92%(487/532例)vs. 90%(380/423例)、p=0.44]も両群で同等であった。著者は、「エビデンスに基づく看護師による発熱、高血糖、嚥下障害の集学的な管理プロトコールは、脳卒中専門病棟退院後の患者において良好なアウトカムをもたらす」と結論し、「これらの知見は脳卒中専門病棟の拡充の可能性を示すものだ」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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ダビガトラン、非弁膜症性心房細動患者で良好なbenefit-harmバランス示す

 トロンビン阻害薬ダビガトラン(商品名:プラザキサ)は非弁膜症性心房細動患者においてワルファリンに比べ有益性(benefit)と有害性(harm)のバランスが優れることが示唆されている。今回、これを裏付ける知見が、イギリスBangor大学のJoshua Pink氏らが実施した定量的なbenefit-harm解析および経済的解析によって示された。ダビガトランは、非弁膜症性心房細動患者においてワルファリンと代替可能な血栓予防薬とされるが、適正用量、benefit-harmバランス、費用対効果は明確にされておらず、費用対効果については相反する結果が報告されているという。BMJ誌2011年11月5日号(オンライン版2011年10月31日号)掲載の報告。高用量と低用量の費用対効果を検討 研究グループは、非弁膜症性心房細動患者におけるダビガトラン110mgまたは150mg(1日2回)と、ワルファリンの有益性を評価し、ダビガトランの費用対効果ついて検討を行った。 離散的事象シミュレーションモデルにRE-LY(Randomized Evaluation of Long-Term Anticoagulation Therapy)試験で得られた知見を外挿して、定量的な経済的解析を行った。脳卒中リスクが中~高で、ベースラインのCHADS2[うっ血性心不全(CHF)、高血圧(HT)、年齢(Age)75歳以上、糖尿病(DM)、脳卒中(Stroke)/一過性脳虚血発作の既往でスコア化して脳塞栓症リスクを低、中、高に分類]の平均スコアが2.1の5万人の患者を想定し、シミュレーションを実施した。主要評価項目は、質調整生存年(QALY)およびQALY当たりの増分コストとした。INRの管理が良好な施設では費用対効果が低い ワルファリンに比べ、ダビガトランはnet benefitが0.094増加し、QALYは0.146延長した。高用量ダビガトラン(150mg×2回/日)のnet benefitは、ワルファリンに比べ94%増加し、低用量ダビガトラン(110mg×2回/日)よりも76%増加した。経済的解析では、ワルファリンとの比較における高用量ダビガトランの費用対効果比は低用量よりも優れ、延長したQALY当たりの費用は高用量の2万3,082ポンド(約2万6,700ユーロ、3万5,800ドルに相当)に対し、低用量は4万3,074ポンドと高価であった。また、ベースラインのCHADS2スコアが3以上の患者で高用量の費用対効果が優れた。 一方、国際標準化比(INR、検体と標準正常血漿のプロトロンビン時間の比)が良好にコントロールされている施設では、高用量ダビガトランによって延長したQALY当たりの費用は4万2,386ポンドに達し、費用対効果が低かった。 著者は、「ダビガトランは、ワルファリンに比べbenefitとharmのバランスが優れるとの知見を支持する結果が得られた」と結論し、「臨床的にも経済的にも、高用量よりも低用量のほうが高い利益をもたらすサブグループは認めなかった。高用量ダビガトランは、脳卒中リスクの高い患者やINRのコントロールが比較的不良な場合に費用対効果が優れる」と指摘している。

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OKI、「救急医療搬送支援システム」の販売を開始

OKIは16日、救急患者の疾患情報と病院の受け入れ状況をリアルタイムで情報収集し、最適な医療機関への搬送支援を行う「救急医療搬送支援システム」を開発したと発表した。同システムは2012年3月より販売開始される予定。救急搬送における医療機関の受け入れ困難は社会問題になっているが、この問題の解消には、救急患者の処置ができる専門医の受け入れ可能状況を把握し、救急車が適切な医療機関への搬送を行う仕組みづくりが重要となる。救急医療体制支援システム構築の「GEMITS」プロジェクト(注1)は、2009年度から経済産業省の委託事業として岐阜大学が取り組み、2010年度からはNPO岐阜救急災害研究開発機構が総務省の委託事業としても実施している。同社はこれまで「GEMITS」プロジェクトに参画し、救急患者の疾患情報の共有や最適な医療機関への搬送を支援するシステムを構築、実証実験に参加してきた。また、企業や関係団体と連携して「GEMITS」の普及・推進を図るために設立されたGEMITSアライアンスパートナーズ(GEMAP〔注2〕)の設立発起人の一員として、「GEMITS」の普及に努めているという。今回、同社はGEMITSプロジェクト参画の経験をいかし、また、これまで様々な分野で培ってきた通信技術やシステム開発力を組み合わせ「救急医療搬送支援システム」を開発した。コンセプトは、救急患者に「最適な病院に、最適の時間で搬送し、最適な処置ができる」こと。同システムは、エンジン機能にあたる「統合エージェント」を中核に7つのシステムから構成されている。中心となる機能は、医師がICタグを装備することで病院での位置情報などから繁忙度を判断する機能。また、救急隊員が所持するタッチパネル式の専門端末(Android搭載)を使って患者の疾患情報や搬送状況を送信することもできる。リアルタイムで収集した医師の繁忙度と患者の疾患および搬送状況をもとに「統合エージェント」が、受け入れ病院の候補を選定する。これらの機能のほかに、受け入れ病院の医療スタッフを支援する機能や、テレビ会議で救急隊員と病院が患者情報を共有できる機能を備えている。注1:GEMITS(Global Emergency Medical supporting Intelligent Transport System)岐阜大学を中心とした産学連携事業体が国の事業との連携を図り、救急医療体制支援システムを構築するプロジェクト。現在、困難な状況にある救急医療体制を医療資源の育成、最適化利用を図ることで、再生できることを実証し、救急医療体制のロールモデルとして全国に展開することを目的に活動を行っている。注2:GEMAP:GEMITSアライアンスパートナーズ(GEMITS Alliance Partners)2011年6月に設立された幅広い分野の企業や関係団体と連携して、「GEMITS」の普及・推進を図るために設立されたコンソーシアム形式の機関。詳細はプレスリリースへhttp://www.oki.com/jp/press/2011/11/z11074.html

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婦人科がんのNCCNガイドライン日本語版を公開

先端医療振興財団 臨床研究情報センターは11月4日、NCCN(National Comprehensive Cancer Network)婦人科がんガイドライン 日本語版を公開。 本ガイドラインは、 日本婦人科腫瘍学会に監訳・監修、および日本の治療との相違点等に関するコメントも掲載している。日本語版は大腸がん、泌尿器がん、肺がんに引き続き第四弾。婦人科がんガイドラインの内容は ・子宮頸がん (Cervical Cancer)・子宮体がん(Uterine Neoplasms)・卵巣がん(Ovarian Cancer)・子宮頸がんのスクリーニング(Cervical Cancer Screening)・乳がんおよび卵巣がんにおける遺伝的 / 家族性リスク評価 (Genetic/Familial High-Risk Assessment: Breast and Ovarian) は近日公開予定詳しくはこちらhttp://www.tri-kobe.org/nccn/guideline/gynecological/index.html

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プライマリ・ケアにおける腰背部痛治療、予後リスクによる層別化管理法が有効

プライマリ・ケアにおける腰背部痛の治療では、予後のスクリーニングに基づく層別化管理法(http://www.keele.ac.uk/sbst/)が現在の最良の治療法よりも有効な可能性があることが、イギリス・キール大学のJonathan C Hill氏らの検討で示された。腰背部痛は、現在も世界中でプライマリ・ケアにおける大きな課題となっており、最近では、従来のすべての患者を一律に管理する戦略は患者の不均一性を無視しているため最適な治療とはいえないと考えられている。著者らが開発した予後のリスクで層別化(低、中、高リスク)した管理モデルは、画一的な治療アプローチを超えて、プライマリ・ケアにおいて臨床的、経済的なベネフィットをもたらすものと期待されていた。Lancet誌2011年10月29日号(オンライン版2011年9月29日号)掲載の報告。プライマリ・ケアでの有効性を評価する無作為化対照比較試験研究グループは、プライマリ・ケアでの腰背部痛の治療における層別化管理法(介入群)と、層別化を行わない現時点での最良の治療法(対照群)の臨床的有効性と費用対効果を評価する無作為化対照比較試験を行った。イングランドの10ヵ所のプライマリ・ケア施設で腰背部痛の診察を受けた18歳以上の1,573人が、試験への参加依頼に応じた。これらの患者が介入群と対照群に2対1の割合で割り付けられた。主要評価項目は、治療12ヵ月後のRoland Morris機能障害質問票(RMDQ)スコア(値が高いほど障害の程度が高い)による治療効果とした。質調整生存年(QALY)の増分および腰背部痛関連の医療費についても評価を行った。RMDQスコア、QALY、コストが改善解析の対象となった851例のうち、568例が介入群に、283例は対照群に割り付けられた。RMDQスコアの調整平均変化は、介入群が対照群に比べ治療4ヵ月(4.7 vs. 3.0、群間差:1.81、95%信頼区間:1.06~2.57)および12ヵ月(4.3 vs. 3.3、群間差:1.06、95%信頼区間:0.25~1.86)の時点で有意に大きかった。治療12ヵ月の時点で、介入群は対照群に比べQALYが平均で0.039延長し、コストが34.39ポンド削減(240.01 vs 274.40ポンド)された。著者は、「腰背部痛の予後スクリーニングに基づく層別化管理法は、プライマリ・ケアにおける将来の管理法として大きな意義を持つと考えられる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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2004年のCONSORT拡張版発表後も、臨床試験報告の方法論基準に改善認められず

臨床試験報告に関する統合基準「CONSORT」(consolidated standards of reporting trials)の拡張版が2004年に発表されて以降、クラスター無作為化試験の報告基準には多少の改善がみられたものの、方法論基準には改善が認められないことが報告された。カナダ・Women’s College Hospital(トロント)のN M Ivers氏らが、300のクラスター無作為化試験について調べ明らかにしたもので、BMJ誌2011年10月15日号(オンライン版2011年9月26日号)で発表した。クラスター無作為化試験300のCONSORT遵守について、04年以前と05年以降を比較CONSORTの初版は1996年に作成されたが、その初版発表の影響についての調査では、1997~2000年に発表されたクラスター無作為化試験において、その大部分がCONSORTで推奨する方法論基準に遵守していないことが明らかになった。そのため2004年、方法論基準と報告基準に関する項目を強化した拡張版が作成された。Ivers氏らは、2000~2008年に英語雑誌にて発表された300のクラスター無作為化試験について、報告基準の14項目と方法論基準の4項目のCONSORT拡張版遵守の状況について調査を行い、2000~2004年に発表されたものと2005~2008年に発表されたものを比較した。報告基準14項目のうち5項目は改善、方法論基準4項目はいずれも改善認められず結果、報告基準14項目のうち5項目については、2005年以降に発表されたものに有意な改善が認められた。具体的には、無作為化されたクラスターについての説明、クラスターのデザインの正当性、アウトカムの評価はブラインドだったか否か、無作為化されたクラスターの数、追跡を失ったクラスターの数の5項目だった。一方で、方法論基準の4項目については、いずれも有意な改善は認められなかった。また全体的に、臨床的環境下の試験は非臨床的環境下の試験よりも、また医学雑誌に発表された試験結果はそうでないものよりも、報告基準や方法論基準がより遵守されている傾向が認められた。研究グループは、「クラスター無作為化試験におけるCONSORTの報告基準と方法論基準の遵守を促すには、さらなる改善のための働きかけが必要だ」と結論している。(當麻 あづさ:医療ジャーナリスト)

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ビタミンE摂取、前立腺がんの長期発症リスクを1.17倍に増大

ビタミンE摂取は、前立腺がんの発症リスクを有意に増大することが、無作為化プラセボ対照試験「Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial」(SELECT)の結果、示された。米国・クリーブランドクリニックのEric A. Klein氏らの報告で、JAMA誌2011年10月12日号で発表した。SELECT試験の結果は2009年に、追跡期間中央値5.5年時点の解析結果が発表され、セレン摂取もビタミンE摂取も前立腺がん発症リスクを減少しないことが認められた。同時に、統計的に有意な増大ではなかったが、ビタミンE摂取群で前立腺がんリスクの増加傾向が懸念される結果が示されていた。今回、より長期の追跡データを分析した結果、ビタミンE群の前立腺がん発症リスクの有意な増加が明らかになったという。前立腺がんの疑いのない約3万6,000人を7~12年追跡Klein氏らは、2001年8月22日~2004年6月24日の間に、米国、カナダ、プエルトリコの427ヵ所で、前立腺がんの兆候が認められない3万5,533人の男性について、無作為化プラセボ対照試験を行った。被験者は、黒人は50歳以上、それ以外は55歳以上で、前立腺特異抗原(PSA)血中濃度が4.0ng/mL以下、直腸診の結果でも前立腺がんの疑いはなかった。研究グループは被験者を無作為に4群に分け、セレン(200μg/日、8,752人)、ビタミンE(400 IU/日、8,737人)、セレンとビタミンEの両者併用(8,702人)、プラセボ(8,696人)をそれぞれ投与した。2011年7月5日まで追跡し、前立腺がんの発症率について比較した。追跡期間は7~12年だった。前立腺がんの絶対リスク増加、ビタミンEは1.6/1,000人・年追跡期間中に前立腺がんを発症したのは、プラセボ群529人に対し、ビタミンE群で620人で、ハザード比1.17(99%信頼区間:1.004~1.36、p=0.008)と、同発症リスクは有意に上昇した。セレン群で同発症が認められたのは575人で、同ハザード比は1.09(同:0.93~1.27、p=0.18)、セレン/ビタミンE群では555人で同ハザード比は1.05(同:0.89~1.22、p=0.46)と、いずれも同発症リスクの有意な増大は認められなかった。プラセボと比較した、1,000人・年当たりの前立腺がん発症に関する絶対リスク増加は、ビタミンEが1.6、セレンが0.8、両者併用が0.4だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

3970.

急性躁病の薬物療法、抗精神病薬が気分安定薬よりも高い効果

成人の急性躁病の薬物療法では、全般的に、抗精神病薬は気分安定薬に比べ有意に良好な効果をもたらすことが、イタリアVerona大学のAndrea Cipriani氏らの検討で示された。躁病は気分が過度に高揚した病態で、通常はうつ病エピソードを伴い、双極性障害の診断の根拠となる。急性躁病の薬物療法では、主に抗精神病薬や気分安定薬が用いられてきたが、これまでの有効性に関するメタ解析では相反する結果が得られているという。Lancet誌2011年10月8日号(オンライン版2011年8月17日号)掲載の報告。約30年間に発表された68試験のメタ解析研究グループは、すべての抗躁病薬の効果を評価するために、複数の治療法を直接的、間接的に比較した試験のメタ解析を行った。1980年1月1日~2010年11月25日までに発表され、躁病の成人患者を対象に治療用量の13薬剤を比較した68件の無作為化対照比較試験(1万6,073例)について系統的なレビューを行った。対象となった薬剤は、アリピプラゾール(商品名:エビリファイ)、asenapine、カルバマゼピン(同:テグレトールなど)、バルプロエート(同:デパケンなど)、ガバペンチン(同:ガバペン)、ハロペリドール(同:セレネースなど)、ラモトリギン(同:ラミクタール)、リチウム(同:リーマス)、オランザピン(同:ジプレキサ)、クエチアピン(同:セロクエル)、リスペリドン(同:リスパダール)、トピラマート(同:トピナ)、ziprasidone。主要評価項目は、治療3週間における躁病評価スケールの変化の平均値および治療中止患者数とした。診療ガイドラインの策定時に考慮すべき知見プラセボに比べハロペリドール、リスペリドン、オランザピン、リチウム、クエチアピン、アリピプラゾール、カルバマゼピン、asenapine、バルプロエート、ziprasidoneは高い有効性を示したのに対し、ガバペンチン、ラモトリギン、トピラマート、ガバペンチンの効果はプラセボに比し高くはなかった。ハロペリドールの効果が最も高く、リチウム、クエチアピン、アリピプラゾール、カルバマゼピン、asenapine、バルプロエート、ziprasidone、ラモトリギン、トピラマートとの間には有意差が認められた。リスペリドンとオランザピンの有効性プロフィールはきわめて類似しており、いずれもバルプロエート、ziprasidone、ラモトリギン、トピラマート、ガバペンチンに比べ高い有効性を示した。オランザピン、リスペリドン、クエチアピンの治療中止例数は、リチウム、ラモトリギン、プラセボ、トピラマート、ガバペンチンよりも有意に少なかった。著者は、「全般的に、抗精神病薬は気分安定薬に比べ有意に良好な効果を示した。リスペリドン、オランザピン、ハロペリドールは、躁病エピソードの治療において最も有効な選択肢である」と結論し、「これらの結果は、診療ガイドラインの策定の際に考慮すべきと考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

3971.

リビング・ウィルが終末期医療費を抑制、院内死亡を低下、ホスピス利用を増大:米国

終末期の医療行為を特定のものに制限する事前指示書「リビング・ウィル」と米国終末期医療費、治療内容との関連を調べた結果、同費用が高い地域において同指示書があることは費用の有意な低下と関連していることが報告された。また、同費用が中程度~高い地域における院内死亡率の低下やホスピス利用の増大も認められたという。米国・ミシガン大学のLauren Hersch Nicholas氏らが、約3,300人について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年10月5日号で発表した。終末期医療費が高い地域で、リビング・ウィルにより約5,600ドル有意に低下研究グループは、1998~2007年に死亡した65歳以上のメディケア加入者で、前向きに調査データが収集されていたHealth and Retirement Study被験者3,302人について、メディケア保険請求データと全米死亡統計(National Death Index)に基づき分析を行った。死亡者の入院先地域で照会したメディケア支払額ごとに、リビング・ウィルと終末期医療費、治療内容との関連について多変量回帰モデルを用いて解析した。主要評価項目は、死亡前半年間のメディケア医療費、延命治療、ホスピス・ケア、病院死亡率とされた。結果、終末期医療費が高い地域では、リビング・ウィルのない人の1人当たり終末期医療費の予測平均値が3万9,518ドルだったのに対し、リビング・ウィルのある人の同医療費の補正後予測平均値は3万3,933ドルと、5,585ドル低かった(95%信頼区間:-1万903~-267、p=0.04)。一方、終末期医療費が低い地域と中程度の地域では、リビング・ウィルの有無による終末期医療費の補正後予測平均値に有意差は認められなかった。終末期医療費が中程度~高い地域、院内死亡が低下、ホスピス入所が増大またリビング・ウィルは、終末期医療費が中程度~高い地域において、補正後院内死亡率予測値の低下と関連していた。同医療費中程度の地域は-5.3ポイント低下(95%信頼区間:-10~-0.4)、高い地域では-9.8ポイント低下していた(同:-16~-3)。さらにリビング・ウィルは、終末期医療費が中程度~高い地域において、補正後ホスピス入所率予測値の増大と関連していた。同医療費中程度の地域で11ポイント増(同:6~16)、高い地域で17ポイント増(同:11~23)だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

3972.

研究助成の決定、無作為性が十分ではなく申込者にコスト負荷

オーストラリアにおける保健・医療研究の助成金決定作業における無作為性と費用について検討した結果、無作為性は十分ではなく、申込者のコストがかさんでいる実態が報告された。オーストリア・クイーンズランド工科大学公衆衛生校&ヘルスバイオメディカル研究所のNicholas Graves氏らによる。研究助成に対する申し込みの成功率は世界的に低下しており、たとえば英国では2000年43%から2008年26%、オーストラリアでは2000年30%から2010年23%となっているという。Graves氏らは、本研究を行った目的について、申込不成功でキャリアへの打撃とさらなる参加コストを要することになる研究者に役立つ情報提供をすることだとしている。BMJ誌2011年10月1日号(オンライン版2011年9月27日号)掲載報告より。2009年にオーストラリアNHMRCに申し込みがあった2,705件を後ろ向きに解析研究は、オーストラリアのNational Health and Medical Research Council(NHMRC)の助成金事業に、2009年に申し込みのあった全2,983件のうち2,705件を対象に後ろ向きに解析した。NHMRC助成金委員会委員のスコアについても評価した。主要評価項目は、資金獲得について「常に」「時々」「一度もない」それぞれの助成申込研究の割合だった。評価は、各委員のスコアに起因する無作為変化を加味してから行われた。また、委員会規模(7名、9名、11名)の違いによる費用対効果についても評価が行われた。助成金獲得「一度もない」61%、「時々」29%解析対象だった2,705件の助成申込研究のうち、620件が助成金対象として選定された。そのうち資金獲得が「時々」だったのは、無作為変化を考慮後で、59%だった。全体(2,705件)をみたところ、資金獲得が「常に」だったのは9%(255件)だけで、「一度もない」は61%(1,662件)、「時々」は29%(788件)だった。研究者の大半は助成申請準備に、中央値22日間を要していた。先導研究者の2人は申し込みに65日以上を費やしていた。主任研究者の5人が費やしたのは15日未満だった。資金獲得運動の費用は総額4,787万豪ドルで、85%は申込者の負担となっていた。委員会規模が大きいほうがシステムは良好であった。最も効果的なシステムで資金提供するためにかかる追加コストは、1万8,541豪ドルであった。

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腸管出血性大腸菌O104: H4感染による重度神経症状に免疫吸着療法が有効

腸管出血性大腸菌O104: H4感染に起因する溶血性尿毒症症候群(HUS)患者にみられる重篤な神経症状のレスキュー治療として免疫吸着療法が有効なことが、ドイツ、エルンスト・モーリッツ・アルント大学のAndreas Greinacher氏らの検討で明らかとなった。2011年5月の北ドイツ地方におけるShiga毒素産生性腸管出血性大腸菌O104: H4の感染拡大により、血漿交換療法や抗補体抗体(eculizumab)に反応しない腸炎後の溶血性尿毒症症候群や血栓性微小血管症が多発した。患者の中には、腸炎発症の1週間後に発現した重篤な神経学的合併症のために人工呼吸を要する者がおり、これは症状の発現機序に抗体が介在することを示唆するという。Lancet誌2011年9月24日号(オンライン版2011年9月5日号)掲載の報告。免疫吸着療法の有用性を評価するプロスペクティブな非対照試験研究グループは、大腸菌O104: H4感染に関連して重度神経症状がみられる患者に対する、レスキュー治療としての免疫吸着療法の有用性を評価するプロスペクティブな非対照試験を実施した。重篤な神経学的症状を呈し、大腸菌O104: H4感染が確認され、他の急性の細菌性感染症やプロカルシトニン値の上昇がみられない患者を対象とした。12Lの血漿量のIgG免疫吸着処置を2日間行った後、IgG補充(0.5g/kgの静脈内IgG投与)を実施した。連日、複合的神経症状スコア(低いほど良好)を算出し、免疫吸着療法前後の変化を評価した。12例中10例で神経症状、腎機能が完全回復初期症状として腸炎を発症したのち腎不全を来した12例が登録された。そのうち10例(83%)は、中央値8.0日(5~12日)までに腎代替療法を要した。神経学的合併症(患者の50%にせん妄、刺激感受性ミオクローヌス、失語、てんかん発作がみられた)の発症までの期間は中央値で8.0日(5~15日)であり、9例で人工呼吸を要した。免疫吸着療法開始の3日前の時点で3.0(SD 1.1、p=0.038)まで上昇した複合的神経症状スコアは、免疫吸着療法施行後3日目には1.0(SD 1.2、p=0.0006)まで改善した。人工呼吸を必要としなかった患者では、免疫吸着療法中に失語の消失など明らかな改善がみられた。人工呼吸を要した9例のうち5例は48時間以内に、2例は4日までに機器が外されたが、残る2例は呼吸障害のために人工呼吸が継続された。12例全例が生存し、10例は神経症状および腎機能が完全に回復した。著者は、「大腸菌O104: H4感染に起因する溶血性尿毒症症候群患者の重篤な神経症状の病因として抗体の関与が示唆される。免疫吸着療法は、これらの重篤な合併症を迅速に改善するレスキュー治療として安全に施行可能である」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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心房細動患者に対するapixaban vs. ワルファリン

心房細動患者の脳卒中または全身性塞栓症のイベント抑制効果について検討された「ARISTOTLE」試験の結果、新規経口直接Xa阻害薬apixabanはワルファリンと比較して、同イベント発生を約2割低下し、予防に優れることが明らかにされた。大出血発生については約3割低く、全死因死亡率は約1割低かった。ワルファリンに代表されるビタミン拮抗薬は、心房細動患者の脳卒中の予防に高い効果を示すが、一方でいくつかの限界もあることが知られる。apixabanについては、これまでにアスピリンとの比較で、同等の集団において脳卒中リスクを抑制したことが示されていた。米国・デューク大学医療センターのChristopher B. Granger氏を筆頭著者とする、NEJM誌2011年9月15日号(オンライン版2011年8月28日号)掲載報告より。18,201例を対象とした国際多施設共同無作為化二重盲検試験ARISTOTLE(Apixaban for Reduction in Stroke and Other Thromboembolic Events in Atrial Fibrillation)試験は、39ヵ国1,034施設から登録された1つ以上の脳卒中リスクを有する心房細動患者18,201例を対象に行われた、国際多施設共同無作為化二重盲検試験であった。被験者は無作為に、apixaban投与群(5mgを1日2回)かワルファリン投与群(目標INR:2.0~3.0)に割り付けられ、中央値1.8年の間追跡された。主要アウトカムは、脳梗塞、脳出血、全身性塞栓症のいずれかの発生とされた。試験は非劣性を検討するようデザインされ、副次評価において主要アウトカムに関する優位性、大出血や全死因死亡に関する優位性が検討された。主要アウトカム発生について、apixaban群の非劣性、優位性が認められる結果、主要アウトカムの発生は、apixaban群1.27%/年、ワルファリン群1.60%/年、ハザード比0.79(95%信頼区間:0.66~0.95)で、apixaban群の非劣性(p<0.001)、優位性(p=0.01)が認められた。大出血の発生は、apixaban群2.13%/年、ワルファリン群3.09%/年、ハザード比0.69(同:0.60~0.80)で、apixaban群の優位性が認められた(p<0.001)。全死因死亡についても、apixaban群3.52%/年、ワルファリン群3.94%/年、ハザード比0.89(同:0.80~0.99)で、apixaban群の優位性が認められた(p=0.047)。また、脳出血の発生は、apixaban投与群0.24%/年に対し、ワルファリン群0.47%/年(ハザード比:0.51、95%CI:0.35~0.75、p<0.001)、脳梗塞または病型不明の脳卒中発生については、apixaban群0.97%/年、ワルファリン群1.05%/年(ハザード比:0.92、95%CI:0.74~1.13、p=0.42)であった。(朝田哲明:医療ライター)

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頭蓋内動脈狭窄症に対するPTAS vs. 積極的薬物治療

頭蓋内動脈狭窄症患者に対するステント治療と積極的薬物治療とを比較検討した試験「SAMMPRIS」の結果、積極的薬物治療単独のほうが予後が優れることが明らかになった。検討されたのはWingspanステントシステム(米国ボストンサイエンス社製)を用いた経皮的血管形成術・ステント留置術(PTAS)であったが、その施術後の早期脳梗塞リスクが高かったこと、さらに積極的薬物治療単独の場合の脳梗塞リスクが予測されていたより低かったためであったという。PTASは、脳梗塞の主要な原因であるアテローム硬化性頭蓋内動脈狭窄症の治療として施術が増えているが、これまで薬物療法との無作為化試験による比較検討はされていなかった。米国・南カリフォルニア大学のMarc I. Chimowitz氏を筆頭著者とする、NEJM誌2011年9月15日号(オンライン版2011年9月7日号)掲載報告より。頭蓋内動脈狭窄症患者451例を積極的薬物治療単独群とPTAS併用群に無作為化SAMMPRIS(Stenting and Aggressive Medical Management for Preventing Recurrent Stroke in Intracranial Stenosis)試験は、米国神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)から資金提供を受けた50施設から登録された、直近の一過性脳虚血発作または主要頭蓋内動脈径の70~99%狭窄を原因とする脳梗塞患者を対象とした無作為化試験であった。被験者は、積極的薬物治療単独群(アスピリン、クロピドグレル、各種降圧薬、rosuvastatinなどによる)か、積極的薬物治療に加えてPTASを併用する群に割り付けられ前向きに追跡された。主要エンドポイントは、「試験登録後30日以内の脳梗塞または死亡」「追跡調査期間中に施行された適格病変部位への血管再生処置後30日以内の脳梗塞または死亡」「30日超での適格動脈領域における脳梗塞」とした。積極的薬物治療単独群がPTAS併用群を上回る好成績本試験は、脳梗塞または死亡の30日発生率が、PTAS併用群14.7%(非致死的脳梗塞12.5%、致死的脳梗塞2.2%)、薬物治療単独群5.8%(非致死的脳梗塞5.3%、脳梗塞と関連しない死亡0.4%)となったため(P=0.002)、無作為化された被験者数451例(PTAS併用群224例、薬物治療単独群227例)で登録中止となった。追跡期間は11.9ヵ月であった(2011年4月28日現在)。事前予想では、主要エンドポイントの評価には追跡期間2年が必要と推定していた。また過去の同様の試験結果からPTAS併用群の主要エンドポイント発生は29%、一方、薬物治療単独群の同発生は24.7%とそれぞれ推定し、必要被験者数各群382例と試算して試験をデザインされていた。追跡調査は、本論発表現在も続けられているという。30日超での適格動脈領域における脳梗塞は、両群ともに13例の発生であった。1年時点の主要エンドポイントのイベント発生率は、PTAS併用群20.0%に対し薬物治療単独群は12.2%で、時間経過とともに有意に異なっていた(P=0.009)。(朝田哲明:医療ライター)

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戸田克広先生「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント-」

1985年新潟大学医学部卒業。現在、廿日市記念病院リハビリテーション科勤務。2001年1月~2004年2月までアメリカ国立衛生研究所に勤務した際、線維筋痛症に出会い、日本の現状を知る。帰国後、線維筋痛症を中心とした中枢性過敏症候群などの治療にあたっている。日本線維筋痛症学会評議員。著書に『線維筋痛症がわかる本』(主婦の友社)。線維筋痛症の現状先進国の線維筋痛症(fibromyalgia : FM)の有病率はわずか2%だが、グレーゾーンを含めると約20%になる。そのため、患者数が多いと予想される。また、先進国や少なくない非先進国ではFMは常識だが、日本ではまだよく知られていない。この疾患特有の愁訴を訴える患者さんを、プライマリ・ケア医や勤務医が診察する機会が多いと予測される。今回、FMの標準的な診療について、正しく理解していただくために診療のサマリーと診療スライドを公開させていただく。よりよい治療成績を求めることが臨床医の努めと考えているので、是非実践していただきたい。線維筋痛症の疫学・病態画像を拡大する腰痛症や肩こりから慢性局所痛症(chronic regional pain: CRP)や慢性広範痛症(chronic widespread pain: CWP)を経由してFMは発症するが、それまで通常10~20年かかる(図1)。FMの有病率は先進国では約2%、FMを含むCWPの有病率は約10%、CRPの有病率はCWPのそれの1-2倍である*1。FMの原因は不明だが、中枢神経の過敏状態(中枢性過敏)が原因であるという説が定説である*1。中枢性過敏によって起こった中枢性過敏症候群(central sensitivity syndrome)にはうつ病、不安障害、慢性疲労症候群、むずむず脚症候群などが含まれるが、FMはその代表的疾患である(図2)。画像を拡大する女性がFM患者の約8割を占める。未就学児にも発生するが、絶対数としては30歳代~60歳代が多数を占める。線維筋痛症の症状全身痛、しびれ、疲労感、感覚異常(過敏や鈍麻)、睡眠障害、記憶力や認知機能の障害などいわゆる不定愁訴を呈する。中枢性過敏症候群に含まれる疾患の合併が多い。痛みや感覚異常の分布は神経分布とは一致せず、痛みやしびれの範囲は移動する。天候が悪化する前や月経前後に症状がしばしば悪化する。症状の程度はCRP<CWP<FMとなる(図1)。線維筋痛症の検査・診断(2012年1月30日に内容を更新)画像を拡大する圧痛以外の他覚所見は通常存在せず、理学検査、血液検査、画像検査も通常正常である。従来はアメリカリウマチ学会(ACR)による1990年の分類基準(図3)が実質的に唯一の診断基準となっていたが、2010年(図4)*2と2011年*3に予備的診断基準が報告された。ACRが認めた2010年の基準は臨床基準であり、医師が問診する必要がある。ACRが現時点では認めていない2011年の基準は研究基準であり、医師の問診なしで患者の回答のみでも許容されるが、患者の自己診断に用いてはならない。2011年の基準は2010年の基準とほぼ同じであるが、「身体症状」が過去6カ月の頭痛、下腹部の痛みや痙攣、抑うつの3つになった。共に「痛みを説明できる他の疾患が存在しない」という条件がある*2、*3。1990年の分類基準は廃止ではなく、使用可能である*2、*3。CRPやCWPにFMと同じ治療を行う限り、FMの臨床基準には存在意義がほとんどない。どの診断基準がどのくらいの頻度で、どのように使用されるのかは現時点では不明である。画像を拡大する1990年の分類基準によると、身体5カ所、つまり、左半身、右半身、腰を含まない上半身、腰を含む下半身、体幹部(頚椎、前胸部、胸椎、腰部)に3カ月以上痛みがあり、18カ所の圧痛点を約4kgで圧迫して11カ所以上で患者が「痛い」といえば他にいかなる疾患が存在しても自動的にFMと診断される*1(図3)。つまり、圧痛以外の理学検査、血液検査、画像検査の結果は、診断基準にも除外基準にもならない。通常、身体5カ所に3カ月以上痛みがあれば広義のCWPと、CWPの基準を満たさないが腰痛症のみや肩こりのみより痛みの範囲が広い場合にはCRPと診断される。FMとは異なり他の疾患で症状が説明できる場合には、通常CRPやCWPとは診断されない。~~ ここまで2012年1月30日に内容を更新~~従来の基準を使う限り、FMには鑑別疾患は存在しないが、合併する疾患を見つけることは重要である。従来、身体表現性障害(疼痛性障害、身体化障害)、心因性疼痛、仮面うつ病と診断されたかなりの患者はCRP、CWP、FMに該当する。線維筋痛症の治療(2012年7月24日に内容を更新)画像を拡大する世界ではCWPに対して通常FMと同じ治療が行われており、CRPやCWPにFMと同じ治療を行うとFM以上の治療成績を得ることができる*1。FMの治療は肩こり、慢性腰痛症、慢性掻痒症、FM以外の慢性痛にもしばしば有効である。他の疾患を合併している場合、一方のみの治療をまず行うのか、両方の治療を同時に行うのかの判断は重要である。FMの治療の基本は薬物治療と非薬物治療の組み合わせである。非薬物治療には認知行動療法、有酸素運動、減量、禁煙(受動喫煙の回避を含む)、人工甘味料アスパルテームの摂取中止*4が含まれる(図5)。鍼の有効性の根拠は弱く高額であるため、週1回合計5回行っても一時的な効果のみであれば、中止するか一時的な効果しかないことを了解して継続すべきである。薬物治療の基本は一つずつ薬の効果を確認することである。一つの薬を少量から上限量まで漸増する必要がある。効果と副作用の両面から最適量を決定し、それでも不十分な鎮痛効果しか得られなければ次の薬を追加する。上限量を1-2週間投与しても無効であれば漸減中止すべきで、上限量を使用せず無効と判断してはならない。メタ解析や系統的総説により有効性が示された薬はアミトリプチリン〔トリプタノール〕、ミルナシプラン〔トレドミン〕、プレガバリン〔リリカ〕、デュロキセチン〔サインバルタ〕である*1、4。二重盲検法により有効性が示された薬はガバペンチン〔ガバペン〕、デキストロメトルファン〔メジコン〕、トラマドールとアセトアミノフェンの合剤〔トラムセット配合錠〕などである*1、4。ノルトリプチリン〔ノリトレン〕は体内で多くがアミトリプチリンに代謝され、有効性のエビデンスは低いが実際に使用すると有効例が多い。ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液〔ノイロトロピン〕、ラフチジン〔プロテカジン〕は対照群のない研究での有効性しか示されていないが、有効例が多く副作用が少ない。抗不安薬はFMに有効という証拠がないばかりか常用量依存を引き起こしやすいため、鎮痛目的や睡眠目的で使用すべきではない*1、4。また、ステロイドが有効な疾患を合併しない限りステロイドはFMには有害無益である*1。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は通常無効であるが、個々の患者では有効なことがある。個々の薬物の有効性のレベルは文献*1、4を参照していただきたい。論文上の効果や副作用、私自身が経験した効果や副作用、費用の点を総合的に考慮した私の個人的な優先順位は〔ノイロトロピン〕、アミトリプチリン、デキストロメトルファン、ノリトレン、メコバラミンと葉酸の併用、イコサペント酸エチル、ラフチジン、ミルナシプラン、ガバペンチン、デュロキセチン、プレガバリンである。これには科学的根拠はないが、薬物治療が単純になる。不都合があれば各医師が優先順位を変更すればよい。日本のガイドラインにも科学的根拠がないことはガイドラインに記載されている*5。筋付着部炎型にステロイドやサラゾスフファピリジン〔アザルフィジン〕が推奨されているが、それらはFMに有効なのではなくFMとは別の疾患に有効なのである。肺炎型FMに抗生物質を推奨することと同じである。線維筋痛症の治療成績画像を拡大する2007年4月の時点で3カ月以上私が治療を行った34人のFM患者のうち薬物を中止できた人は5人(15%)、痛みが7割以上改善した人が4人(12%)、痛みが1割以上7割未満改善した人が17人(50%)、不変・悪化の人が8人(24%)であった*1。CRPやCWPにFMとまったく同じ治療を行えば、有意差はないがFMよりはよい治療成績であった*1(図6)。※〔 〕内の名称は商品名です文献*1 戸田克広: 線維筋痛症がわかる本. 主婦の友社, 東京, 2010.*2 Wolfe F, Clauw DJ, Fitzcharles MA et al: The American College of Rheumatology preliminary diagnostic criteria for fibromyalgia and measurement of symptom severity. Arthritis Care Res (Hoboken) 62: 600-610, 2010. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20461783*3 Wolfe F, Clauw DJ, Fitzcharles MA et al: Fibromyalgia Criteria and Severity Scales for Clinical and Epidemiological Studies: A Modification of the ACR Preliminary Diagnostic Criteria for Fibromyalgia. J Rheumatol 38: 1113-1122, 2011. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21285161*4 戸田克広: エビデンスに基づく薬物治療(海外の事例を含む). 日本線維筋痛症学会編, 線維筋痛症診療ガイドライン2011. 日本医事新報, 東京, 2011; 93-105.*5 西岡久寿樹: 治療総論. 日本線維筋痛症学会編, 線維筋痛症診療ガイドライン2011. 日本医事新報, 東京, 2011; 82-92.質問と回答を公開中!

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9.11後9年、救助・復旧作業従事者の健康問題が浮き彫りに

2001年9月11日のニューヨーク市、世界貿易センター(WTC)での同時多発テロによる襲撃後9年の間、現場で救助・復旧作業に従事した人々には身体的、精神的な障害という重い負担が継続的に課せられている実態が、マウントサイナイ医科大学(同市)のJuan P Wisnivesky氏らの調査で明らかとなった。WTC襲撃後に現場で救助や復旧に当たった人員は5万人以上に上る。被災後早期から、これらの作業従事者にはさまざまな健康問題の発生が報告されているという。Lancet誌2011年9月3日号掲載の報告。救助・復旧作業員の健康障害を評価するコホート試験研究グループは、WTCの被災後9年間における救助・復旧作業員の身体的、精神的な健康障害の発生率および罹病率を調査して、その職業的な曝露との関連を評価し、さらに身体的障害と精神的障害の併存状況を定量的に検討することを目的に、大規模な縦断的コホート試験を行った。WTC Screening, Monitoring, and Treatment Programに参加した2万7,449人の救助・復旧作業員(警察官、消防士、建設作業員、市職員など)のデータを収集した。Kaplan-Meier法を用いて、身体的障害(喘息、副鼻腔炎、胃-食道逆流症)、精神的障害(うつ状態、心的外傷後ストレス障害[PTSD]、パニック障害)、スパイロメトリー上の肺機能障害について評価した。曝露の程度別(WTCの現場での作業日数や粉塵への曝露状況)の障害の発生率についても検討を行った。継続的なモニタリングや治療が必要9年間の身体的障害の累積発生率は、喘息が27.6%(7,027人)、副鼻腔炎が42.3%(5,870人)、胃・食道逆流症は39.3%(5,650人)であった。警察官の7.0%(3,648人)にうつ状態を認め、PTSDは9.3%(3,761人)、パニック障害は8.4%(3,780人)にみられた。警察官以外では、うつ状態が27.5%(4,200人)、PTSDが31.9%(4,342人)、パニック障害は21.2%(4,953人)に認められた。9年間で41.8%(5,769人)にスパイロメトリー上の肺機能異常が確認され、その4分の3は努力性肺活量の低下であった。障害の多くは、WTCでの曝露時間が最も長い作業員で発生率が最も高かった。複数の身体的障害や複数の精神的障害が併存する者、また身体的障害と精神的障害を併発する者が多いことも示された。著者は、「2001年9月11日のWTC襲撃後9年の間、救助・復旧作業従事者には身体的、精神的な健康問題という重い負担が課せられていることがわかった。今回の知見により、これらの人々には継続的なモニタリングや治療が必要なことが浮き彫りとなった」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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先天性心疾患の退院前スクリーニング検査に、パルスオキシメトリーが有用

パルスオキシメトリーは、先天性心疾患の退院前スクリーニング検査として安全に施行可能で、既存の検査に新たな価値を付与する可能性があることが、英国・バーミンガム大学のAndrew K Ewer氏らが実施したPulseOx試験で示された。現在、先天性心疾患のスクリーニングは出生前超音波検査や出生後臨床検査によって行われているが、生命を脅かすような重度の病態は検出されないことが多いという。Lancet誌2011年8月27日号(オンライン版2011年8月5日号)掲載の報告。パルスオキシメトリーの検出感度、特異度を評価PulseOx試験では、先天性心疾患のスクリーニング検査としてのパルスオキシメトリーの正確度(accuracy)の評価が行われた。イギリスの6つの産科施設において、症状のみられない新生児(在胎期間>34週)に対し、退院前スクリーニング検査としてパルスオキシメトリーを施行した。事前に規定された酸素飽和度の閾値を満たさなかった新生児には心エコー検査を行い、それ以外の子どもには生後12ヵ月まで地域や国の登録システムを利用したフォローアップや、臨床的なフォローアップが実施された。主要評価項目は、パルスオキシメトリーによる重篤な先天性心疾患(28日以内の死亡および侵襲的な介入を要する病態)あるいは重大な先天性心疾患(12ヵ月以内の死亡および侵襲的な介入を要する病態)の検出感度および特異度とした。感度は重篤な病態が75%、重大な病態は49%、特異度は99%2008年2月~2009年1月までに2万55人の新生児がパルスオキシメトリーによるスクリーニングを受けた。195人(0.8%)が先天性心疾患と診断され、そのうち192人(98%)に心エコー検査が施行された。53人が重大な先天性心疾患と診断され、そのうち24人が重篤な先天性心疾患であった。重篤な先天性心疾患に関するパルスオキシメトリーの感度は75.00%(95%信頼区間:53.29~90.23)、重大な先天性心疾患では49.06%(同:35.06~63.16)であった。出生前超音波検査で先天性心疾患が疑われた35例を除くと、パルスオキシメトリーの感度は重篤な先天性心疾患で58.33%(95%信頼区間:27.67~84.83)、重大な先天性心疾患では28.57%(同:14.64~46.30)まで低下した。169人(0.8%)が偽陽性と判定され、特異度は99.16%(95%信頼区間:99.02~99.28)であった。6人は重大の定義よりも軽症の先天性心疾患で、40人は緊急の介入を要する別の疾患(呼吸器疾患、感染症など)であった。著者は、「パルスオキシメトリーは安全に施行可能な検査であり、既存のスクリーニング検査に新たな価値を付与すると考えられる。出生前超音波検査で検出されなかった重篤な先天性心疾患を同定するとともに、他の疾患をも早期に検出するという利点をもたらす」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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急性冠症候群発症患者への虚血性イベント再発予防としてのapixaban

急性冠症候群発症患者に対する経口抗凝固薬である直接作用型第Xa因子阻害薬apixabanの虚血性イベント予防効果について、虚血性イベント再発の有意な低下をもたらすことなく重大出血イベントの増大が認められたことが報告された。米国・デューク大学医療センターJohn H. Alexander氏らAPPRAISE-2研究グループによる、第III相国際多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果による。同グループが従前に行った試験では、用量依存で重大出血イベント増大および虚血性イベント低下の傾向が認められた。そこから効果の可能性が期待された投与量1日2回5mgについてプラセボ対照試験を行った。NEJM誌2011年8月25日号(オンライン版2011年7月24日号)掲載報告より。標準治療に加えて1日2回5mgのapixaban投与APPRAISE-2(Apixaban for Prevention of Acute Ischemic Events 2)試験は、39ヵ国858施設で2009年3月~2010年11月の間に登録が行われ、被験者合計7,392例が、標準治療(抗血小板薬療法)に加えて1日2回5mgのapixaban投与群かプラセボ群に割り付けられた。被験者は、直近に急性冠症候群を発症し、2つ以上の虚血性イベント再発リスクを有していた。主要有効性アウトカムは、心血管系による死亡・心筋梗塞・虚血性脳卒中の複合であった。主要安全性アウトカムには、TIMI定義による重大出血であった。ハザード比は主要有効性アウトカム0.95、主要安全性アウトカム2.59試験は、apixabanが重大出血イベント増大を上回る虚血性イベント低下の効果が認められなかったことから、早期に打ち切られ、試験データは2011年3月に締め切られ解析された。追跡期間中央値241日間で、主要有効性アウトカム発生率は、apixaban群279/3,705例(7.5%)、プラセボ群293/3,687例(7.9%)だった。100患者・年当たりイベント発生率はそれぞれ13.2件と14.0件で、apixaban群のハザード比は0.95(95%信頼区間:0.80~1.11)だった(P=0.51)。主要安全性アウトカム発生率は、apixabanを1回以上服用した群46/3,673例(1.3%)、プラセボを1回以上服用した群18/3,642例(0.5%)だった。100患者・年当たりイベント発生率はそれぞれ2.4件と0.9件で、apixaban群のハザード比は2.59(95%信頼区間:1.50~4.46)だった(P=0.001)。頭蓋内出血と致死的出血は、プラセボ群よりもapixaban群で多く認められた。(朝田哲明:医療ライター)

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非糖尿病性腎症患者、ガイドライン推奨値の減塩維持が蛋白尿減少と降圧の鍵

ACE阻害薬最大量で治療中の非糖尿病性腎症患者には、ガイドライン推奨レベルの減塩食を持続して摂らせることが、蛋白尿減少と降圧に、より効果的であることが52例を対象とする無作為化試験の結果、示された。試験は、オランダ・フローニンゲン大学医療センター腎臓病学部門のMaartje C J Slagman氏らが、同患者への追加療法として、減塩食の効果とARB追加の効果とを比較したもので、両者の直接的な比較は初めて。Slagman氏は、「この結果は、より有効な腎保護治療を行うために、医療者と患者が一致協力して、ガイドラインレベルの減塩維持に取り組むべきことを裏付けるものである」と結論している。BMJ誌2011年8月6日号(オンライン版2011年7月26日号)掲載報告より。ACE最大量投与中にARB and/or減塩食を追加した場合の蛋白尿と血圧への影響を比較Slagman氏らは、ACE阻害薬最大量服用中の非糖尿病性腎症患者の蛋白尿や血圧への影響について、減塩食を追加した場合と最大量のARBを追加した場合、あるいは両方を追加した場合とを比較する多施設共同クロスオーバー無作為化試験を行った。被験者は、オランダの外来診療所を受診する52例で、ARBのバルサルタン(商品名:ディオバン)320mg/日+減塩食(目標Na+ 50mmol/日)、プラセボ+減塩食、ARB+通常食(同200mmol/日)、プラセボ+通常食の4治療を6週間で受けるように割り付けられた。ARBとプラセボの投与は順不同で二重盲検にて行われ、食事の介入はオープンラベルで行われた。試験期間中、被験者は全員、ACE阻害薬のリシノプリル(商品名:ロンゲス、ゼストリルほか)40mg/日を服用していた。主要評価項目は蛋白尿、副次評価項目が血圧であった。直接対決では減塩食の効果が有意平均尿中ナトリウム排泄量は、減塩食摂取中は106(SE 5)mmol/日、通常食摂取中は184(6)mmol/日だった(P

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