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スタチンの肝機能異常の改善効果が明らかに:GREACE試験事後解析

スタチン治療は、軽度~中等度の肝機能異常患者に対して安全に施行可能で、検査値を改善し心血管疾患罹患率を低下させることが、ギリシャのテッサロニキ・アリストテレス大学Hippokration病院のVasilios G Athyros氏らによるGREACE試験の事後解析で明らかとなった。非アルコール性脂肪肝によると考えられる肝機能異常は、欧米人や日本人の約33%にみられると推定され、スタチンはこのような患者の肝機能や心血管イベントの改善に有効な可能性が示唆されている。Lancet誌2010年12月4日号(オンライン版2010年11月24日号)掲載の報告。スタチン治療例と非治療例で初回再発リスクの低下効果を評価研究グループは、肝機能検査異常患者に対するスタチン治療の安全性と有効性の評価を目的に、Greek Atorvastatin and Coronary Heart Disease Evaluation(GREACE)試験の事後解析を行った。GREACE試験は、75歳未満、LDLコレステロール>2.6mmol/L、トリグリセリド<4.5mmol/Lの冠動脈心疾患患者1,600例を対象に、テッサロニキ・アリストテレス大学ヒポクラテス病院で実施されたスタチン治療と通常治療(スタチンを含む場合あり)を比較するプロスペクティブな無作為化試験であった。今回の事後解析の主要評価項目は、肝機能異常患者のうちスタチン治療を受けなかった症例に対する、中等度の肝機能異常(血清ALT値、AST値が正常上限値の3倍未満までと定義)を有し、スタチン治療を受けた患者の初回再発心血管イベントのリスク低下効果とした。このリスク低下は、スタチン治療例と非治療例における肝機能正常例の割合で評価した。スタチン治療により心血管イベントの相対リスクが68%低下ベースラインにおいて非アルコール性脂肪肝によると考えられる中等度の肝機能異常を呈した患者437例のうち、スタチン治療(主にアトルバスタチン〈商品名:リピトール〉24mg/日)を受けた群(227例)は検査値が改善した(p<0.0001)のに対し、スタチン治療を受けなかった群(210例)はALT値/AST値がさらに上昇した。心血管イベントは、スタチン治療群の10%(22/227例)で発生(3.2イベント/100人・年)したのに対し、非スタチン治療群では30%(63/210例)に認められ(10.0イベント/100人・年)、スタチン治療による相対リスク低下率は68%であった(p<0.0001)。この肝機能異常患者における心血管疾患に関するベネフィットは、肝機能が正常な患者に比べて大きかった(p=0.0074)。肝機能正常者の心血管イベント発生率は、スタチン治療群14%(90/653例、4.6イベント/100人・年)に対し、非スタチン治療群23%(117/510例、7.6イベント/100人・年)、相対リスク低下率は39%であった(p<0.0001)。スタチン治療群(880例)のうち、肝臓関連の有害事象で治療を中止したのは7例(<1%)であった。著者は、「非アルコール性脂肪肝によると考えられる軽度~中等度の肝機能異常患者に対するスタチン治療は安全に施行可能であり、検査値を改善し心血管疾患罹患率を低下させる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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減量達成後は、タンパク質多め、GI指数低めの食事が体重減少を維持

減量達成後の体重減少維持には、タンパク質が多め、グリセミック指数(GI)は低めの食事が、長続きする食事療法であり体重減少維持に結びつくことが、ヨーロッパ8ヵ国で行われた無作為化試験「Diogenes(Diet, Obesity, and Genes)」の結果、明らかになった。スクリーニングを受けた平均年齢41歳、平均BMI値34の1,209例のうち、938例に対しまず8週間の低エネルギー食(800kcal/日)介入が行われ、基線体重より8%以上の体重減少に達した773例を、5つの食事療法群に無作為化し26週間にわたり比較検討した結果による。NEJM誌2010年11月25日号掲載より。5つの食事療法群に無作為化し、いずれが長続きし体重減少を維持するかを検討本試験は、体重減少後のリバウンドおよび肥満関連リスクを抑制するために有効な食事療法を、タンパク質量およびGI値に着目して評価することを目的とした。評価された5つの食事療法群は、(1)低タンパク(総エネルギーの13%)・低GI食群、(2)低タンパク・高GI食群、(3)高タンパク(総エネルギーの25%)・低GI食群、(4)高タンパク・高GI食群、(5)対照群(各国食事療法ガイドラインに準じ中タンパクで、GI値は不問)であった。群間の摂取タンパク質量の高低差は12%を、GI値の高低差は15単位を目標とされた。食欲と体重管理能力を調べるため、総エネルギー量に制限は設けられなかったが、5群とも脂肪摂取は中等度(総エネルギーの25~30%)となるよう調整された。目標摂取量が達成できるよう、家族に対するレシピ提供、調理法や行動のアドバイスが行われ、参加国のうち2ヵ国では栄養量が調整済みの食品が無料で配布された。被験者は、体重減少維持試験当初6週間は隔週で、その後は1ヵ月に1回、食事カウンセリングを受けた。また維持試験介入前3日間、4週後、26週後に食事量を量り記録することが求められた。低タンパク・高GI食群のみリバウンドが有意に維持試験を完了したのは548例(71%)だった。試験脱落者が少なかったのは、高タンパク食群26.4%、低GI食群25.6%だった(低タンパク・高GI食群37.4%との比較で、それぞれP=0.02、P=0.01)。最初に行われた8週間の低エネルギー食(800kcal/日)介入時の体重減少は、平均11.0kgだった。その後の維持試験完了者548例について解析した結果、低タンパク・高GI食群のみ有意なリバウンドが認められた(1.67kg、95%信頼区間:0.48~2.87)。維持試験被験者(773例)のintention-to-treat解析の結果、体重再増加は、高タンパク食群の方が低タンパク食群よりも0.93kg(95%信頼区間:0.31~1.55)少なく、また、低GI食群の方が高GI食群よりも0.95kg(同:0.33~1.57)少なかった(いずれもP=0.003)。試験完了者の解析結果も同様だった。食事療法に関する有害事象は群間に有意な違いは認められなかった。なお栄養摂取量について、高タンパク食群の方が低タンパク食群と比べて、タンパク質量が5.4%多く、炭水化物量は7.1%低かった(両群間比較のP

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腱症に対する注射療法のエビデンス

腱症に対するコルチコステロイド注射は、短期的には有効だが、中長期的には非コルチコステロイド注射のベネフィットが優る可能性があることが、オーストラリア・クイーンズランド大学のBrooke K Coombes氏らが行った系統的なレビューで示された。現在、エビデンスに基づく腱症の治療ガイドラインはほとんどないという。腱症は、angiofibroblastic hyperplasia(細胞過形成、血管新生、蛋白合成増進、基質破壊などがみられる)を特徴とし、炎症性疾患ではないためコルチコステロイド注射には疑問の声もあり、ラウロマクロゴール(一般名:ポリドカノール)、多血小板血漿、ボツリヌス毒素、プロテイナーゼなどの注射療法の施行機会が増えているという。Lancet誌2010年11月20日号(オンライン版2010年10月22日号)掲載の報告。腱周囲注射とプラセボ、非手術的介入の無作為化試験を解析研究グループは、腱症に対する注射療法の臨床効果および有害事象リスクの評価を目的に系統的なレビューを行った。8つのデータベースを、言語、発表の形態や時期を制限せずに検索し、腱症に対する腱周囲注射とプラセボあるいは非手術的介入の効果を比較した無作為化対照比較試験を抽出した。メタ解析にはランダム効果モデルを用い、相対リスクおよび標準化平均値差(standardised mean difference:SMD)を推算した。臨床効果に関する主要評価項目は、プロトコルで規定した疼痛スコアとし、短期(4週、範囲:0~12週)、中期(26週、同:13~26週)、長期(52週、同:52週以上)に分けて解析した。コルチコステロイド注射は短期的には有効同定された3,824試験のうち、適格基準を満たした41試験に登録された2,672例のデータが解析の対象となった。多くの質の高い無作為化試験では、コルチコステロイド注射の短期的な疼痛改善効果が他の介入法に比べ優れるとの一致した知見が示されたが、この効果は中期、長期には逆転した。たとえば、外側上顆痛の治療に関するプール解析では、コルチコステロイド注射は短期的には非介入群に比べ疼痛の抑制において大きな効果(SMD>0.8と定義)が認められた(SMD:1.44、95%信頼区間:1.17~1.71、p<0.0001)が、中期(同:-0.40、-0.67~-0.14、p<0.003)、長期(同:-0.31、-0.61~-0.01、p=0.05)には非介入群の方が効果は有意に大きかった。回旋腱板障害に対するコルチコステロイド注射の短期的な効果は、明確ではなかった。有害事象の報告のある試験においてコルチコステロイド注射を受けた991例のうち、重篤な有害事象(腱断裂)がみられたのは1例(0.1%)のみであった。外側上顆痛の治療のプラセボ対照比較試験では、ヒアルロン酸ナトリウム注入が短期(SMD:3.91、95%信頼区間:3.54~4.28、p<0.0001)、中期(同:2.89、2.58~3.20、p<0.0001)、長期(同:3.91、3.55~4.28、p<0.0001)に有効で、ボツリヌス毒素注入は短期(同:1.23、同:0.67~1.78、p<0.0001)に有効、prolotherapyは中期(同:2.62、1.36~3.88、p<0.0001)に有効であった。アキレス腱症の治療では、ラウロマクロゴール、アプロチニン、多血小板血漿はプラセボに比べ有効ではなかったのに対し、prolotherapyは伸張性運動よりも有効ではなかった。著者は、「外側上顆痛の治療では、短期的にはコルチコステロイド注射は有効だが、中長期的には非コルチコステロイド注射のベネフィットが優る可能性がある」と結論し、「しかし、腱症は部位によって効果にばらつきがみられるため、注射療法の効果を一般化すべきではない」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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心筋血流イメージングを受けた人の約3割が複数放射線検査で累積線量は100mSv超

心筋血流イメージング(MPI)を受けた患者1,000人超について調べたところ、累積的に受けている放射線検査回数の中央値が15回に上ることが明らかになった。そのうち4回は高線量の検査であったという。米国コロンビア大学医療センター循環器部門のAndrew J. Einstein氏らが報告したもので、JAMA誌2010年11月17日号(オンライン版2010年11月15日号)で発表した。MPIは1回の放射線量が最も高い検査である。これまでの調査で、米国民の多くがMPIなど放射線検査を繰り返し受けていることは明らかになっているが、その実態については明らかになっていなかった。放射線検査の中央値は15回、うち4回が高線量研究グループは、2006年1月1日~4月10日の間に、ニューヨークにあるコロンビア大学医療センターでMPIを受けた患者1,097人について、後ろ向きコホート試験を行った。被験者が1988年10月~2008年6月までに同センターで受けた、電離放射線イメージング検査について調査を行った。その結果、被験者の受けた放射線検査回数の中央値は15回(四分位範囲:6~32、平均23.9)だった。そのうち、1年間で3mSv以上といった高線量の検査回数の中央値は4回(同:2~8、平均6.5)であり、MPI検査の回数の中央値は1回(同:1~2、平均1.8)だった。すべての医学的検査を合わせた累積推計100mSvを超える放射線量を受けていたのは、344人(31.4%)に上った。複数回MPIを受けた人の累積推計放射線量は121mSv複数回MPI検査を受けていたのは全体の38.6%にあたる424人で、その累積推計放射線量は121mSv(同:81~189、平均149mSv)だった。また被験者の中でも、男性、白人が、累積推計放射線量の値が多い傾向が認められた。さらに、初回MPI検査を受けた人の80%またはMPI検査を2回以上受けた人の90%が、すでに血管系の疾患の診断を受けていたり、その症状が認められる人だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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心筋梗塞既往例に対する強化LDL-C低下療法の有効性と安全性:約1万2,000例の解析

心筋梗塞の既往歴を有する患者に対する高用量スタチンによる強化LDLコレステロール(LDL-C)低下療法は、通常用量に比べLDL-Cを低下させ、重篤な血管イベントも抑制することが、Study of the Effectiveness of Additional Reductions in Cholesterol and Homocysteine (SEARCH)共同研究グループが行った無作為化試験で示された。スタチン療法の大規模な無作為化対照比較試験では、LDL-C値が平均未満の患者でもLDL-C低下療法による閉塞性血管イベントのリスク低下がみられ、リスクの低下度はLDL-C低下の程度と相関することが示されている。この知見から、LDL-C低下療法をより強化すれば、さらに大きなベネフィットがもたらされることが示唆されていた。Lancet誌2010年11月13日号(オンライン版2010年11月9日号)掲載の報告。心筋梗塞既往例約1万2,000例で、スタチン高用量群と通常用量群を比較SEARCH共同研究グループは、心血管リスクが高い患者における強化スタチン療法の有効性と安全性の確立を目的に、二重盲検無作為化試験を実施した。対象は、心筋梗塞の既往歴のある18~80歳の患者1万2,064例で、スタチン療法を受けているか、その適応が明らかである症例であった。すでにスタチン療法を受けている場合は総コレステロール値が少なくとも3.5mmol/Lとなるように、受けていない場合は4.5mmol/Lとなるよう治療が行われた。患者は、シンバスタチン(商品名:リポバスなど)80mg/日あるいは20mg/日を投与する群に無作為に割り付けられ、フォローアップ期間が終了するまで2、4、8、12ヵ月後、その後は6ヵ月ごとに検査が行われた。主要評価項目は、重篤な血管イベント(冠動脈死、心筋梗塞、脳卒中、動脈血行再建術)とし、intention-to-treat解析を行った。ミオパチーが増加したものの、安全に施行可能高用量(80mg/日)群に6,031例が、通常用量(20mg/日)群には6,033例が割り付けられた。平均フォローアップ期間6.7(SD 1.5)年の間に、通常用量群に比べ高用量群でLDL-C値が平均0.35(SE 0.01)mmol/L低下した。重篤な血管イベントの発現率は、高用量群が24.5%(1,477/6,031例)、通常用量群は25.7%(1,553/6,033例)と、高用量群で6%低下したが有意な差は認めなかった(リスク比:0.94、95%信頼区間:0.88~1.01、p=0.10)。出血性脳卒中(高用量群 vs, 通常用量群:0.4% vs. 0.4%)、血管死(9.4% vs. 9.5%)、非血管死(6.6% vs. 6.6%)の発現率には明らかな差を認めなかった。ミオパチーは、通常用量群では2例(0.03%)にみられたのに対し、高用量群では53例(0.9%)で発現した。著者は、「通常用量群に比べ高用量群でLDL-Cが0.35mmol/L低下し、重篤な血管イベントが6%抑制されたが、これは既報の知見と一致する。ミオパチーが増加したものの、強化LDL-C低下療法は他の薬物療法と安全に併用可能と考えられる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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冠動脈疾患に対するクロピドグレルのオメプラゾール投与の有無による効果

抗血小板療法としてアスピリン+クロピドグレル(商品名:プラビックス)を受けている患者への、プロトンポンプ阻害薬(PPI)であるオメプラゾール(商品名:オメプラール、オメプラゾンほか)投与は、上部消化管出血を減らすことが明らかにされた。米国ボストン退役軍人ヘルスケアシステムのDeepak L. Bhatt氏らCOGENT研究グループによる。抗血小板療法を受けている患者の消化管合併症は重大な問題となっている。PPIがそのようなリスクを減じるのではないかとされていたが、これまで無作為化試験は行われていなかった。またクロピドグレルを用いた抗血小板併用療法を受けている患者へのPPI投与については、クロピドグレルの効果を減弱するのではないかとの懸念もあり、本試験ではその点の検討も行われた。NEJM誌2010年11月11日号(オンライン版2010年10月6日号)掲載より。抗血小板薬2剤併用療法が適応となる患者にPPIもしくはプラセボを投与し追跡COGENT(Clopidogrel and the Optimization of Gastrointestinal Events Trial)研究は、国際無作為化二重盲検ダブルダミープラセボ対照試験として、2008年1月に15ヵ国393施設で登録が開始された。抗血小板薬2剤併用療法が適応となる患者を、クロピドグレル+アスピリンに加えて、オメプラゾールを投与する群と、プラセボを投与する群に無作為に割り付け追跡した。消化器症状に関する主要エンドポイントは、出血(顕性・不顕性含む)、症候性十二指腸潰瘍、びらん、閉塞、穿孔の複合とした。心血管系に関するエンドポイントは、心血管系の原因により死亡、非致死的心筋梗塞、血行再建、脳卒中の複合とした。試験は、被験者登録5,000人を目指して開始されたが、スポンサーによる資金調達が不可能となり早期に終了された。結果、3,873例が無作為化され、3,761例が解析された。クロピドグレルの効果は減弱しない?被験者のうち、消化管イベントを発症したのは51例だった。180日時点での発症率は、オメプラゾール投与群は1.1%、プラセボ投与群は2.9%で、オメプラゾールのハザード比は0.34(95%信頼区間:0.18~0.63、P<0.001)だった。上部消化管出血の発症も、オメプラゾール群の方が低下し、ハザード比は0.13(同:0.03~0.56、P=0.001)だった。心血管イベントは109例で発生した。オメプラゾール群は4.9%、プラセボ群は5.7%で、ハザード比0.99(同:0.68~1.44、P=0.96)、サブグループのハイリスク群でも有意な不均一性は認められなかった。重大な有害事象発生率について両群間に有意な差異は認められなかった。ただし、オメプラゾール群で、下痢のリスク増加が認められた。試験の結果を受け研究グループは、アスピリンとクロピドグレル投与を受けている患者への予防的なPPI投与は、上部消化管出血の割合を減じると結論。またクロピドグレルとオメプラゾールに心血管系の相互作用は認められなかったが、「しかし、PPI使用で心血管イベントに臨床的に意義ある差異が生じることをルールアウトする結論には至らなかった」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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2015年へのカウントダウンに向け、妊婦、子どもの健康関連ODAは改善されたか?

2003~2008年の6年間で、開発途上国への妊婦、新生児、子どもの健康に関する政府開発援助(ODA)の供与額は増加したが、他の健康領域を含む総額も増加したため相対的に優先度には変化がないことが、イギリス・ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院のCatherine Pitt氏らの調査で明らかとなった。効果的な介入を広範に行ってミレニアム開発目標(MDG)4(2015年までに5歳未満児の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減する)およびMDG5A(2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の水準の4分の1に削減する)を達成するには十分な資金が必要だが、2015年へのカウントダウンに向けた支援の優先国68ヵ国の多くがODAに依存しているのが現状だという。Lancet誌2010年10月30日号(オンライン版2010年9月17日号)掲載の報告。ニーズが最も高い被援助国に対して供与すべきODAを調査研究グループは、2007年と2008年の妊婦、新生児、子どもの健康に対する援助の流れ、および以前に実施された2003~2006年の予測の達成度を解析した。研究グループが開発したODAの追跡法を用いて、2007年と2008年の経済協力開発機構(OECD)の援助活動の完全データベースを手作業でコード化して解析を行った。援助供与額および推定人口の新たなデータを用いて、2003~2006年のデータを改訂。妊婦および子どもの健康に関するニーズが最も高い被援助国に対して、援助国はどの程度のODA供与の対象とすべきかを解析し、2003~2008年の6年間の傾向を調査した。2007、2008年の妊婦、子どもの健康関連OADの70%以上が優先国へ全開発途上国における妊婦、新生児、子どもの健康関連の活動への支援として、2007年に47億米ドル、2008年には54億米ドルが供与されていた(2008年の不変ドル換算)。これらの総額は2003年から2008年までに105%増加したが、健康関連ODAの総額も同じく105%増加したため相対的には不変であった。2015年へのカウントダウンの優先国は、2007年に34億米ドル、2008年には41億米ドルを受け取っており、これは妊婦、新生児、子どもの健康に対する全供与額のそれぞれ71.6%、75.6%に相当するものだった。妊婦および子どもの死亡率が高い国へのODAは6年間で改善されていたが、この期間を通じて、死亡率がより低く所得が高い国に比べ一人当たりのODAがはるかに低い国もあった。2003~2008年のワクチン予防接種世界同盟(GAVI Alliance)の基金および世界エイズ・結核・マラリア対策基金(Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria)は、各国機関による中核的基金を上回っており、二国間共同基金も特にイギリスとアメリカによるものが著明に増加していた。著者は、「2003~2008年の妊婦、新生児、子どもの健康に対するODAの増加は歓迎すべきであり、より多くのニーズのある国へのODAの配分も多少改善している。にもかかわらず、これらの供与額の増加は他の健康分野に比べて優先順位が高くなったことを示すわけではない」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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重度敗血症は高齢者の自立を損なう

重度敗血症を発症し、回復した人は、その後中等度から重度の認知障害を発症するリスクが3倍超に増大することが報告された。また同発症後には、新たに現れる身体機能の制約数も増えるという。米国ミシガン大学医学校内科部門のTheodore J. Iwashyna氏らが、敗血症で入院した高齢者約1,200人について追跡し明らかにしたもので、JAMA誌2010年10月27日号で発表した。重度敗血症の罹患率は高く、また増加傾向にあるものの、その後の長期的な認知能力や身体機能に与える影響については、これまでほとんど調査されていなかった。重度敗血症後の中~重度認知障害リスク、3.34倍に同氏らは、1998~2006年に50歳以上の米国住民を抽出し行われた全米調査「HRS(Health and Retirement Study)」のうち、認知能力や身体機能などに関する情報の得られた9,223人のデータを元に、前向きコホート試験を行った。HRSコホートのうち、重度敗血症で入院した人は1,194人、入院件数は1,520件だった。そのうち、回復した人は516人(入院時の平均年齢は76.9歳)だった。一方、被験者のうち重度敗血症以外で入院した人は、4,517人だった。重度敗血症で入院した人は、中等度から重度の認知障害の罹患率が、発症前6.1%から発症後16.7%へと、10.6ポイント増加していた。多変量回帰分析の結果、重度敗血症は中等度から重度の認知障害リスクを、3.34倍(95%信頼区間:1.53~7.25)増大することがわかった。敗血症以外の入院では認知障害リスクは増大せず同様に身体機能の制約についても、重度敗血症後に新たな制約が高率にみられた。発症前に制約がみられなかった人において、発症後には新たな制約数が平均1.57(95%信頼区間:0.99~2.15)となっていた。また発症前に軽度から中等度の身体機能の制約がみられた人でも平均1.50(同:0.87~2.12)の新たな制約がみられた。一方で、敗血症以外の理由による入院と、中等度から重度の認知障害発症リスクとには関連がみられなかった(オッズ比:1.15、95%信頼区間:0.80~1.67、重度敗血症との差に関するp=0.01)。退院後に現れた身体機能の制約数は、敗血症による入院の場合に比べ少なく、平均値は発症前に制約がなかった人で0.48(p<0.001)、軽度から中等度の制約があった人で0.43(p=0.001)だった。また、認知能力や身体機能の低下は、最低8年間継続していた。著者は、「高齢者における重度敗血症は、新たな認知障害および身体機能障害を引き起こす独立した因子である。そのもたらす障害の影響は大きく、自立した生活能力を損なうことに結びついているようだ」と結論している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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妊婦へのDHAサプリメント、産後うつや子どもの発達に効果みられず

妊婦に対し、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含むサプリメントを投与しても、産後うつ病の改善や、子どもの認知・言語能力の発達には効果がみられないことが明らかにされた。オーストラリアWomen’s and Children’s Health Research InstituteのMaria Makrides氏らが、約2,400人の妊婦を対象に行った、無作為化二重盲検試験「DHA to Optimize Mother Infant Outcome」(DOMInO)の結果によるもので、JAMA誌2010年10月20日号で発表されている。産後6ヵ月までの母親のうつ状態と、生後18ヵ月の子どもの発育状態を評価研究グループは、2005年10月31日~2008年1月11日にかけて、オーストラリア国内5ヵ所の医療機関で、単体児妊娠21週未満の妊婦2,399人について試験を開始した。また、生まれた子ども726人についても、2009年12月16日まで追跡した。被験者妊婦は無作為に2群に分けられ、一方にはDHA 800mg/日を含む魚油サプリメントを、もう一方にはDHAを含まない野菜油カプセルを投与した。産後6週目と6ヵ月後に、エジンバラ産後うつ病評価スケール(EPDS)で、うつ状態を評価。生まれた子どもについては、ベイレイ乳幼児発達スケール(Bayley Scales of Infant and Toddler Development)で、生後18ヵ月に認知・言語能力を評価した。登録された妊婦は、96.7%が試験を完了した。産後のうつ病リスクや子どもの認知・言語能力スケールに、両群で有意差なし結果、産後6ヵ月にEPDSスコアが12超だった人の割合は、DHA群9.67%、対照群11.19%で、両群に有意差はみられなかった(相対リスク:0.85、95%信頼区間:0.70~1.02、p=0.09)。子どもの認知能力スケール総合スコアについても、両群間の補正後平均値格差は、0.01(95%信頼区間:-1.36~1.37、p=0.99)と有意差がなかった。言語能力スケール総合スコアの両群間の補正後平均値格差も、-1.42(同:-3.07~0.22、p=0.09)で有意差がなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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グルコサミンとコンドロイチンは単独・併用でも関節痛への効果はない

グルコサミン、コンドロイチンのサプリメントを単独または併用服用しても、股関節痛や膝関節痛を和らげることはなく、関節腔狭小化への影響もないことが、スイスのベルン大学社会・予防医療研究所のSimon Wandel氏らが行ったネットワーク・メタ解析の結果、明らかにされた。Wandel氏は、「保健衛生を担う当局および健康保健事業者は、これらの製剤コストをカバーすべきではない。そしてまだ投与を受けていない患者への新たな処方を阻止しなければならない」と提言している。BMJ誌2010年10月2日号(オンライン版2010年9月16日号)掲載より。プラセボとの比較で、グルコサミン、コンドロイチン単独・併用の関節痛への効果を判定Wandel氏らは、関節痛とX線診断で股関節炎や膝関節炎の病勢進行が認められた症例に対し、グルコサミン、コンドロイチンを単独または併用の効果を判定することを目的に、ネットワーク・メタ解析を行った。Cochrane、Medline、Embaseなどの電子データベースを検索、および専門家へのヒアリング、関連ウェブサイトから適格試験を選定し、試験内直接比較を、異なるタイムポイントの統合を可能とするベイズモデルを使って、他の試験の間接エビデンスと結びつけた。主要アウトカムは疼痛強度とし、副次アウトカムは関節腔狭小化とした。製剤とプラセボとの臨床的に意義ある差異を示す最小値は、10cmビジュアル・アナログ・スケールで-0.9cmと事前特定された。疼痛強度、関節腔狭小化とも臨床的意義ある差異は認められず解析には、10試験・3,803例が含まれた。結果、10cmビジュアル・アナログ・スケールで、プラセボと比較して、疼痛強度の差異は、グルコサミン群は-0.4cm(95%信頼区間:-0.7~-0.1 cm)、コンドロイチン群は-0.3cm(同:-0.7~0.0 cm)、併用群は-0.5cm(同:-0.9~0.0 cm)だった。95%信頼区間値が、臨床的意義ある差異を示す最小値(-0.9)を越えたものはなかった。企業から資金提供を受けて行われた試験結果に比べて、独立して行われた試験では、より小さい効果量が示されていた(相互作用のP=0.02)。また副次アウトカムの関節腔狭小化の差異も、95%信頼区間値が0値に重なり合うほどわずかだった。(武藤まき:医療ライター)

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医師の学ぶ意欲、パフォーマンス向上を刺激するのはどんな評価か?

臨床パフォーマンスの評価は重要だが、難しいテーマとされる。これまでは、評価はいわずもがなで標準化しにくい、徒弟制度モデルのような主観的な判断に基づいていた。しかし近年は、コンピテンスやパフォーマンスを評価する新しいシステムによる卒後教育が構築され、ワーク・プレイス・アセスメントも、その一つとされる。では、日々の臨床パフォーマンスを評価するのに用いられるワーク・プレイス・アセスメントが、卒後教育やパフォーマンスにどれほど影響しているのか。イギリス・ペニンシュラ医科歯科大学/プリマス大学のAlice Miller氏らがエビデンスを得るため、システマティックレビューを行った。BMJ誌2010年10月2日号(オンライン版2010年9月24日号)掲載より。ワーク・プレイス・アセスメントの効果を検討した研究をシステマティックレビュー主要なデータソースは、雑誌データベース(Ovid、Medline、Embase、CINAHL、PsycINFO、ERIC)を用い行われた。また、エビデンス・レビューは、Bandolier、Cochrane Library、DARE、HTA Database、NHS EEDおよびHealth Information Resourcesのウェブサイトを活用し行われた。関連研究の参照リストとレビュー記事の文献も当たり、ワーク・プレイス・アセスメントの教育的効果、または医師のパフォーマンスに与えた効果の評価を試みた研究のいずれもが対象に含まれた。対象集団が非メディカルまたは医学生よって行われた研究は除外され、論評記事、解説、レターも同様に除外された。最終的に、実際の臨床経験ではなく模擬患者やモデル利用の研究も除外基準に含まれた。結果、16件の研究が選定された。15件は、非比較の記述・観察研究で、残りは無作為化試験だった。研究の質は混合された。マルチソース・フィードバックがパフォーマンス改善に結びつく8件の研究が、マルチソース・フィードバック(多面的評価)を検討しており、大半の医師が、マルチソース・フィードバックは教育的価値はあるが、実践を変えるほどのエビデンスはないと感じていた。ただし一部のジュニアドクターおよび外科医に、マルチソース・フィードバックに応じて変化することを喜んで受け入れる意思を示す者がいた。家庭医は、より変化に意欲的である可能性が示された。パフォーマンスへの変化が起きやすかったのは、フィードバックが正確で信頼できるものだったり、また自分たちの強みあるいは弱点を特定するのに役立つ指導がもたらされるものである時にみられた。4件の研究は、ミニ臨床評価エクササイズを検討したもので、1件の研究は、技術手順を直接観察したものであり、3件の研究は、手順を多面的に評価したものだった。そして4件とも、ワーク・プレイス・アセスメント・ツールの教育的影響をポジティブに報告していたが、これらのツールによりパフォーマンスが改善されたかを観察したものはなかった。Miller氏は、「パフォーマンス評価の手法としてワーク・プレイス・アセスメントの重要性が強調はされていても、医師の教育やパフォーマンスに与える影響を調査している論文はほとんどない」と述べたうえで、「今回のレビューで、マルチソース・フィードバックは、フィードバックの詳細、内容、促進を促す内容が盛り込まれているかで、パフォーマンス改善に重大な効果があることが明らかになった。それ以外のワーク・プレイス・アセスメント・ツール(ミニ臨床評価エクササイズなど)は、教育に与える影響があることを主観的に報告はしていたが、パフォーマンス改善に結びつくエビデンスは認められなかった」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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心不全患者への自己管理カウンセリング、死亡率や入院率の低下につながらず

心不全患者に対し、服薬や塩分摂取制限などに関する自己管理について、カウンセリング・プログラムを強化しても、死亡率や入院率の低下にはつながらないことが報告された。米国ラッシュ大学メディカルセンター(シカゴ)予防医療部門のLynda H. Powell氏らが、約900人の患者を対象に行った無作為化比較対照試験「HART」(Heart Failure Adherence and Retention Trial)で明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月22/29日号で発表した。2時間のグループセッションを1年間に18回実施単一施設複数病院一部盲検で行われたHARTでは、2001年10月~2004年10月にかけて、軽度~中等度の心不全患者902人について試験を開始した。被験者の心臓収縮機能は、減少・維持の両者が含まれた。研究グループは、被験者を無作為に2群に分け、一方の群には、服薬遵守や塩分摂取制限、適度な運動やストレス管理といった自己管理について、1回2時間、約10人でのグループカウンセリングを、1年間にわたり18回行った。その際、心不全の自己管理に関するパンフレット(18シートからなるものを毎回1シートずつ)も配布した。もう一方の群には、同様の18シートからなるパンフレットを郵送し、電話によるフォローアップを行った。被験者の平均年齢は63.6歳、うち女性は47%で、人種/民族を申告した人が40%、年間世帯所得が3万ドル未満が52%を占めた。収縮機能の維持が認められたのは23%だった。追跡期間の中央値は2.56年。主要評価項目は、追跡期間中央値2.56年間の死亡および心不全による入院とした。死亡または心不全による入院の発生率は低下せず結果、追跡期間の死亡または心不全による入院は、自己管理介入群の163件(40.1%)に対し、対照群171件(41.2%)と、両群に有意差はみられなかった(オッズ比:0.95、95%信頼区間:0.72~1.26)。また、副次エンドポイントとした、死亡、心不全による入院、理由を問わない入院、QOLのいずれについても、両群で有意差は認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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60歳時のPSA値で、前立腺がん死亡・転移の生涯リスクが予測できる

60歳時の前立腺特異抗原(PSA)値から、転移と前立腺がん死の生涯リスクが予測できるとの報告が、米国Sloan-Kettering記念がんセンター(ニューヨーク)のAndrew J Vickers氏らにより発表された。また、その際のPSA値が中央値(≦1 ng/mL)以下の場合、前立腺がんが潜んでいる可能性はあるものの、生命を脅かすようなことはないとも述べ、「それら男性はさらなるスクリーニングは免除されるべきで、それよりもPSA値がより高い群に照準を合わせるべき」と結論づけている。PSAスクリーニングは、前立腺がんの早期発見のため広く行われるようになっているが、過剰診断を招いていることが無作為化試験で示されたり、70歳男性の40%近くが前立腺がんを有していると推定されており、研究グループは「前立腺がんの有無ではなく、症状を引き起こすのか生命を縮めるのかが重要」として、検査値とその後の臨床転帰との関連を調べた。BMJ誌2010年9月18日号(オンライン版2010年9月14日号)より。スクリーニングと化学的予防のリスク層別化が課題研究グループは、60歳時にPSAスクリーニングを受けその後はスクリーニングを受けていない集団で、PSA値とその後の前立腺がん臨床症状との関連を評価すること、スクリーニングと前立腺がんに対する化学的予防療法がリスク層別化をできたのかどうかを評価するため、ケースコントロール研究を行った。本研究は、一般集団をベースに症例1対対照3の割合でマッチングを図ったネステッドケースコントロール研究で、Malmo Preventive Projectに参加するスウェーデン人男性を対象とした。1981年の60歳時に血液サンプルを採取され、National Board of Health and Welfareにがん登録された1,167例で、85歳まで追跡された。主要評価項目は、転移または前立腺がんによる死亡とした。>2ng/mL群が前立腺がん死の90%を占める本研究期間中のスクリーニング実施率は低かった。転移は43例、前立腺がん死は35例だった。60歳時点のPSA濃度は、前立腺がん転移(曲線下面積0.86、95%信頼区間:0.79~0.92、P

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MCATスコアが低いほど、医師資格試験は初回不合格の確率大

米国で医学部を卒業しながら医師資格試験に初回受験で不合格である確率は、「MCAT(Medical College Admission Test)スコアが低い」「白人に比べ非白人の方が」「学費の借金が5万ドル以上ある」で、増大する傾向があるという。米国ワシントン大学のDorothy A. Andriole氏らが、医学部に入学した10万人弱について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月15日号で発表した。卒業生の88.7%が初回で医師試験に合格、成績理由で退学は入学生の1.2%Andriole氏らは、1994~1999年にかけて米国の医学部に入学した9万7,445人について、2009年3月まで、後ろ向きに追跡調査を行った。その結果、データが得られた8万4,018人(86.2%)のうち、医学部を卒業したのは、96.7%にあたる8万1,237人で、成績が理由で医学部を退学したのは1,049人(1.2%)、成績以外の理由による退学は1,732人(2.1%)だった。卒業生のうち、初回受験で米国医師資格試験(ステップ1・2)に合格したのは7万4,494人(88.7%)で、不合格は6,743人(8.0%)だった。MCATスコアが18~20だと、初回不合格の確率13倍、成績不振で退学の確率11倍米国医科大学入学のための共通テスト「MCAT」のスコアと、初回受験で米国医師資格試験に不合格となる補正後オッズ比についてみたところ、同スコアが18~20(被験者の2.9%)の群では、同スコア29超の群に比べ、補正後オッズ比は13.06(95%信頼区間:11.56~14.76)だった。また、同スコアが21~23(5.6%)の同オッズ比は7.52(同:6.79~8.33)、24~26(13.9%)の同オッズ比は4.27(同:3.92~4.65)だった。MCATスコアと、成績理由による退学との関係は、同スコアが18~20の群では、29超の群に比べ、補正後オッズ比が11.08であり、同スコアが21~23の同オッズ比は5.97、24~26の同オッズ比は3.56だった。人種別では、アジア・環太平洋人の、白人に対する初回受験で米国医師資格試験に不合格となる補正後オッズ比は2.15、成績理由による退学に関する補正後オッズ比は1.69だった。また医学部進学のための借金が5万ドル以上ある場合も、同補正後オッズ比はそれぞれ1.68、2.33と高かった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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心拍数は慢性心不全の治療ターゲットか?:SHIFT試験

 心拍数高値は心不全のリスク因子であり、ivabradineによる選択的な心拍数低下療法は心血管アウトカムを改善することが、ドイツUniversitatsklinikum des SaarlandesのMichael Bohm氏らによる無作為化試験(SHIFT試験)で判明した。心拍数の上昇は心血管リスクの強力なマーカーとされる。SHIFT試験では、すでにivabradine投与による心拍数の低下が、症候性心不全患者における不良な臨床予後を低減することが示されており、これは心拍数がリスクのマーカーのみならずリスク因子でもあることを示唆するという。Lancet誌2010年9月11日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載の報告。ベースラインと治療28日の心拍数でそれぞれ5群に分けて解析 SHIFT試験は慢性心不全に対する選択的洞結節抑制薬ivabradineの効果を検討するプラセボ対照無作為化試験。研究グループは、今回、心拍数上昇は心不全における心血管イベントのリスク因子であるとの仮説を立て、その検証を行った。 慢性心不全の症状がみられ左室駆出率≦35%、心拍数≧70bpmの洞調律が保持された患者6,505例(ivabradine群:3,241例、プラセボ群:3,264例)が登録された。ベースラインの心拍数で70~71bpm(987例)、72~74bpm(1,364例)、75~79bpm(1,545例)、80~86bpm(1,287例)、≧87bpm(1,318例)の5群に分けた。 主要評価項目は、心血管死および心不全の増悪による入院の複合エンドポイントとした。ivabradine群では、治療28日の心拍数と予後の関連について解析した。ivabradineの直接的なリスク低下の作用機序としての心拍数について検討するために、心拍数の変化に基づく補正解析を行った。1bpmの上昇でリスクが3%増大、治療後の最低心拍数群でリスクが最低 プラセボ群の複合エンドポイントのイベント発生数は、最も心拍数が高い群(≧87bpm、682例)が286件と、最も低い群(70~71bpm、461例)の92件の2倍以上に達した(ハザード比:2.34、95%信頼区間:1.84~2.98、p<0.0001)。 プラセボ群では、ベースラインの心拍数が1bpm上昇するごとに複合エンドポイントのリスクが3%ずつ増大し、5bpmの上昇ごとに16%増大した。 ivabradine群では、治療28日の心拍数と心臓アウトカムの間に直接的な関連が認められた。すなわち、治療28日の心拍数が<60bpmに低下した患者(1,192例)の複合エンドポイントのイベント発生率は17.4%(95%信頼区間:15.3~19.6%)であり、60~64bpmの23.8%、65~69bpmの23.0%、70~74bpmの26.5%、≧75bpmの32.4%に比べ低かった(p<0.0001)。 治療28日までの心拍数の変化で補正を行ったところ治療効果が中和されたことから(ハザード比:0.95、95%信頼区間:0.85~1.06、p=0.352)、ivabradineの効果は心拍数の低下で説明できることが示された。 著者は、「心拍数が高いことは心不全のリスク因子であり、ivabradineによる選択的な心拍数低下療法は心血管アウトカムを改善する」と結論し、「心拍数は心不全の重要な治療ターゲットである」と指摘する。

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医師の力量評価スコア、無保険者や英語が話せない患者が多いと低スコア傾向に

医師のクリニカルパフォーマンス・スコアは、患者の中に無保険者や英語が話せない人の割合が多いと、低スコアになる傾向があることが明らかにされた。米国マサチューセッツ総合病院総合診療部門のClemens S. Hong氏らが、同一の医師グループに帰属するプライマリ・ケア医162人と、その患者約12万5,000人について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月8日号で発表した。高スコア群医師の患者は低スコア群より、高齢で合併症も多い傾向研究グループは、2003年1月1日~2005年12月31日にかけて、同一の医師グループ(9つの病院診療所と4つの地域保健センター)に属するプライマリ・ケア医162人のパフォーマンス・スコア「Health Plan Employer and Data Information Set」(HEDIS)と、その患者12万5,303人の属性との関連について、調査を行った。患者のカルテは、共通の電子カルテシステムで管理されていた。結果、スコアが低い方から三分位の医師の患者の平均年齢は46.6歳だったのに対し、高い方から三分位の医師の患者は51.1歳と、より高齢だった(p

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麻酔による合併症リスクが高い患児をいかに同定するか?

手術時の麻酔施行前に、International Study Group for Asthma and Allergies in Childhood(ISAAC)の改訂質問票で評価を行えば、周術期の呼吸器合併症のリスクが高い患児を同定可能なことが、オーストラリア、プリンセス・マーガレット小児病院(パース)麻酔科のBritta S von Ungern-Sternberg氏らが行ったコホート研究で示された。小児における麻酔に起因する疾患や死亡の主要な原因として、周術期の呼吸器系の合併症が挙げられる。これまでに合併症のリスク因子の報告はあるが、臨床における高リスク患児の同定法は確立されていないという。Lancet誌2010年9月4日号掲載の報告。単一施設における前向きコホート研究研究グループは、家族歴、麻酔法と周術期呼吸器合併症の関連を評価するプロスペクティブなコホート研究を実施した。2007年2月1日~2008年1月31日までにプリンセス・マーガレット小児病院で外科的あるいは内科的介入、待機的あるいは緊急処置として全身麻酔を施行された全患児を前向きに登録した。手術当日に、担当麻酔医がISAACの改訂質問票を用いて喘息、アトピー、上気道感染症、受動喫煙などの既往について調査した。麻酔法および周術期にみられたすべての呼吸器合併症が記録された。呼吸器疾患の既往歴、上気道感染症などがあると合併症リスクが増大12ヵ月後までに1万496人の患児から得られた9,297の質問票が解析の対象となった。患児の平均年齢は6.21(SD 4.8)歳であった。周術期の呼吸器合併症として気管支攣縮、喉頭痙攣、咳嗽/酸素飽和度低下/気道閉塞について解析した。呼吸器疾患の既往歴(夜間乾性咳嗽、運動時喘鳴、過去12ヵ月で3回以上の喘鳴、現在あるいは過去の湿疹の病歴)は、気管支攣縮(相対リスク:8.46、95%信頼区間:6.18~11.59、p<0.0001)、喉頭痙攣(同:4.13、同:3.37~5.08、p<0.0001)、周術期の咳嗽、酸素飽和度低下、気道閉塞(同:3.05、同:2.76~3.37、p<0.0001)の発現と有意な関連が認められた。上気道感染症は、症状がみられる場合には周術期の呼吸器合併症のリスクを増大させた(相対リスク:2.05、95%信頼区間:1.82~2.31、p<0.0001)。上気道感染症が手術前の2週間以内にみられた場合は周術期呼吸器合併症のリスクが有意に増大した(同:2.34、同:2.07~2.66、p<0.0001)のに対し、感染が手術前2~4週の場合は有意に低下していた(同:0.66、同:0.53~0.81、p<0.0001)。家族の2人以上に喘息、アトピー、喫煙の既往歴があると、周術期の呼吸器合併症のリスクが増大した(いずれも、p<0.0001)。麻酔の導入は吸入薬よりも静注薬の方が合併症のリスクが低く(いずれも、p<0.0001)、麻酔の維持は静注薬に比べ吸入薬が低リスクであった(いずれも、p<0.0001)。気道の確保は、研修医に比べ小児麻酔専門医が行う方が合併症リスクは低く(いずれもp<0.0001)、気管内挿管よりもマスクを使用する方が低リスクであった(いずれもp<0.0001)。著者は、「手術時の麻酔施行前の評価により、周術期の呼吸器合併症のリスクが高い患児を系統的に同定することが可能であり、それゆえターゲットを定めた特異的な麻酔法がベネフィットをもたらす可能性がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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世界一の長寿国日本、長生きに希望持っておらず

株式会社 フィリップス エレクトロニクス ジャパンは9月8日、「Philips Index(フィリップス インデックス)日本人の健康および精神的充足度に関する報告書2010」を発表した。報告書によると、日本人は他国に比較して、健康および精神的充足度が低く、長生きに関しても希望を持っていないことが明らかになった。「あなたは総合的にみて自分の健康および精神的充足度をどう思いますか?」という質問に対し、「とても良い」「良い」と答えた人の割合は、約38%という低い結果になった。また、「あなたは何歳まで生きると思いますか?」という質問に対して最も多かった回答は、「71歳から80歳(36.3%)」となり、「91歳以上」は3.9%にとどまった。フィリップス代表取締役社長ダニー・リスバーグは、「フィリップスは、世界中の人々に健康とやすらぎを提供する企業として、こうした調査結果から得られるグローバルな知見を活用して、超高齢社会を迎えた日本市場に貢献する製品やサービスについて、しっかりと検討をしていきたいと考えています」と述べている。詳細はプレスリリースへhttp://www.newscenter.philips.com/jp_ja/standard/about/news/others/100908_philips_index_2010.wpd

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降圧療法を強化してもCKD進行に影響は認められず:AASK試験

黒人CKD合併高血圧患者を対象に行われた、降圧療法の強化のCKD進展に対する影響を検討した試験の結果、130/80mmHg未満目標の強化血圧コントロールを行っても、腎疾患進行に与える影響は認められなかったことが報告された。ただし、基線での蛋白尿があるかないかで、効果に差がある可能性が示されたとも結論している。報告は、「AASK(African American Study of Kidney Disease and Hypertension)」共同研究グループによるもので、NEJM誌2010年9月2日号で掲載された。1,094例を130/80mmHg未満目標群か標準群かに無作為し追跡試験は、試験相(trial phase)期間に強化血圧コントロールか標準血圧コントロールを受けた1,094例のCKD合併高血圧の黒人患者を、無作為化し行われた。試験相(trial phase)期間を完了した被験者は、コホート相(cohort phase)への登録を促され、強化血圧コントロール群(130/80mmHg未満目標)か標準血圧コントロール群(140/90mmHg目標)に割り付けられ、血清クレアチニン値の倍増、末期腎不全診断、死亡を含むCKDの進行を主要臨床転帰とし追跡された。追跡期間は、8.8~12.2年にわたった。基線で蛋白/クレアチニン比が0.22超の患者にはベネフィットあり?試験相(trial phase)期間の被験者の平均血圧は、強化血圧コントロール群130/78mmHg、標準血圧コントロール群141/86mmHgだった。コホート相(cohort phase)期間の平均血圧は、強化血圧コントロール群131/78mmHg、標準血圧コントロール群134/78mmHgだった。両相の期間とも、群間で、主要臨床転帰リスクの有意差は認められなかった(強化血圧コントロール群のハザード比:0.91、P=0.27)。しかし、蛋白尿の基線値によって効果は異なり(相互作用のP=0.02)、蛋白/クレアチニン比が0.22超の患者にはベネフィットがある可能性が示された(ハザード比:0.73、P=0.01)。(武藤まき:医療ライター)

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新規糖尿病患者への集団教育プログラム実施の費用対効果:英国DESMONDプログラム

糖尿病新規診断患者に対する糖尿病教育・自己管理指導(DESMOND)プログラムの、長期的な臨床効果と費用対効果に関する調査結果が、英国シェフィールド大学Health and Related Research校のM Gillett氏らによって報告された。服薬治療だけの通常ケアと比較して、DESMONDプログラム導入の費用対効果は高く、体重減少、禁煙実現といった利点があることが明らかになったという。BMJ誌2010年8月28日号(オンライン版2010年8月20日号)掲載より。費用対効果の検証は初めてDESMONDプログラムは、認定講習を受けたヘルスケア専門家が6時間にわたる集団教育を1日もしくは半日ずつ2回で提供するもので、カリキュラムは生活習慣(食習慣、運動)と心血管リスク因子に焦点を合わせた内容となっている。臨床への効果を検討するため2004年に始められた「DESMOND試験」の短期的(1年)結果を踏まえ(http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=2994)、2008年からは英国糖尿病ガイドラインで、PCT(primary care trust)での実施が明記されるようになっており、現在、イングランドとスコットランドの80以上のPCTで導入されている。これまで費用対効果に関する検討は行われていなかったことから、Gillett氏らは、費用効果分析を実施した。DESMOND試験(13診療所・824例が12ヵ月間追跡された)データを用い、治療の有用性、合併症発生率、死亡率に関する長期アウトカムを、シェフィールド2型糖尿病モデルを使って解析すると同時に、コストおよび健康関連QOL(QALYs)について検討した。さらに、プログラムを取り巻く最近の実態コストを反映した「リアルワールド」コストを用いた分析も行った。主要評価項目は、増大コストとQALYs獲得とした。増大コストに比しQALYs獲得に優れるDESMOND試験データに基づく解析から、プログラムを受けた患者1人当たりの生涯コストの増大は、平均209ポンド(326ドル)と推計された。QALYs増大は0.0392で、QALYs増大にかかるコスト増は平均5,387ポンドと推計された。リアルワールドコストを用いた解析では、プログラムを受けた患者1人当たりの生涯コストの増大は、平均82ポンドと推計され、QALYs増大にかかるコスト増は平均2,092ポンドと推計された。確率的感度解析から、QALYs増大コストの許容額20,000ポンドに対し、試験データベースでは66%、リアルワールドベースでは70%の費用対効果がある可能性が示された。また一方向感受性解析から、プログラムによる介入効果は1年を過ぎると減じると仮定しても、費用対効果に優れることが示唆された。

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