サイト内検索|page:1

検索結果 合計:531件 表示位置:1 - 20

1.

二次性僧帽弁逆流症、TEER vs.僧帽弁手術/NEJM

 心不全および二次性僧帽弁逆流症を有する患者において、経カテーテルedge-to-edge修復術(transcatheter edge-to-edge repair:TEER)は、1年時の複合エンドポイント(死亡、心不全による入院、僧帽弁再治療、補助デバイス植込み、脳卒中)に関して、僧帽弁手術に対し非劣性であることが示された。ドイツ・ケルン大学のStephan Baldus氏らが、前向き多施設共同無作為化非劣性試験「Multicenter Mitral Valve Reconstruction for Advanced Insufficiency of Functional or Ischemic Origin trial:MATTERHORN試験」の結果を報告した。二次性僧帽弁逆流症を有する心不全患者に対する現在の推奨治療には、TEERおよび僧帽弁手術が含まれるが、この患者集団においてこれらの治療法を比較した無作為化試験のデータは不十分であった。NEJM誌オンライン版2024年8月31日号掲載の報告。外科的僧帽弁手術に対するTEERの非劣性を評価 研究グループは、2015年2月~2022年12月に、臨床的に重大な二次性僧帽弁逆流症を呈し、左室駆出率が20%以上、ガイドラインに従った薬物療法にもかかわらずNYHA心機能分類クラスII以上の心不全を有する患者を、TEER(介入群)または外科的僧帽弁修復術/置換術(手術群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 有効性の主要エンドポイントは、術後1年以内の死亡、心不全による入院、僧帽弁再治療、補助デバイス植込み、脳卒中の複合で、非劣性マージンは推定平均群間差の90%信頼区間(CI)の上限が17.5%ポイントとした。 安全性の主要エンドポイントは、術後30日以内の主要有害事象(死亡、心筋梗塞、大出血、脳卒中/一過性脳虚血発作、再入院、再インターベンションまたは非待機的心血管手術、腎不全、深部創感染、48時間超の機械的人工換気、外科手術を要する消化管合併症、心房細動の新規発症、敗血症、心内膜炎の複合)とした。主要エンドポイント、介入群16.7% vs.手術群22.5%で非劣性を確認 計210例が無作為化されたが、無作為化後に2例が同意を撤回し、ITT集団は介入群104例、手術群104例で構成された。患者の平均(±SD)年齢は70.5±7.9歳、39.9%が女性、平均左室駆出率は43.0±11.7%であった。 有効性の主要エンドポイントのイベントは、介入群ではデータが得られた96例中16例(16.7%)に、手術群では同89例中20例(22.5%)に発生し、推定平均群間差は-6%(95%CI:-17~6、非劣性のp<0.001)であった。 安全性の主要エンドポイントのイベントは、介入群では101例中15例(14.9%)に、手術群では93例中51例(54.8%)に発生した(推定平均群間差:-40%、95%CI:-51~-27、p<0.001)。

2.

中等症~重症の尋常性乾癬、経口TYK2阻害薬zasocitinibが有望

 チロシンキナーゼ2(TYK2)に高い選択性を示すアロステリック阻害薬zasocitinib(TAK-279)は、尋常性乾癬の新たな経口治療薬として有望であることが示された。米国・カリフォルニア大学のApril W. Armstrong氏らが、海外第IIb相二重盲検無作為化比較試験の結果を報告した。本試験において、1日1回5mg以上のzasocitinibはプラセボと比較して、12週間にわたり良好な皮膚症状の改善が認められた。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年8月21日号掲載の報告。 研究グループは、中等症~重症の尋常性乾癬患者を対象としてzasocitinibの有効性、安全性および忍容性を評価することを目的に、2021年8月11日~2022年9月12日の期間に米国47施設とカナダ8施設で試験を実施した。 本試験は、12週間の治療期間と4週間のフォローアップ期間で構成された。適格基準は、18~70歳、Psoriasis Area and Severity Index(PASI)スコア12以上、Physician’s Global Assessmentスコア3以上、尋常性乾癬の皮疹面積が体表面積(BSA)の10%以上などであった。 被験者を1日1回zasocitinib 2mg、同5mg、同15mg、同30mgまたはプラセボを投与する群へ無作為に均等に割り付け、12週間投与した。 主要有効性エンドポイントは、12週時点におけるPASI 75(ベースラインから75%以上改善)達成率とした。副次有効性エンドポイントは、PASI 90(ベースラインから90%以上改善)達成率、PASI 100(PASIスコア0)達成率などとした。安全性エンドポイントは試験治療下における有害事象(TEAE)、重篤な有害事象(SAE)、臨床検査値などとした。 主な結果は以下のとおり。・287例が無作為化され、259例(平均年齢47[SD 13]歳、女性82例[32%])が少なくとも1回以上の試験薬の投与を受けた。・12週時点におけるPASI 75達成率は、zasocitinib 2mg群18%(9例)、同5mg群44%(23例)、同15mg群68%(36例)、同30mg群67%(35例)、プラセボ群6%(3例)であった。・PASI 90達成率は、zasocitinib 2mg群8%(4例)、同5mg群21%(11例)、同15mg群45%(24例)、同30mg群46%(24例)、プラセボ群0%であり、PASI 75と同様の用量反応性がみられた。・PASI 100達成率は、zasocitinib 2mg群2%(1例)、同5mg群10%(5例)、同15mg群15%(8例)、同30mg群33%(17例)、プラセボ群0%であり、用量が多いほど達成率が高かった。・TEAEはプラセボ群の44%(23例)に発現し、zasocitinibの4用量群では53%(15mg群の28例)~62%(2mg群の31例)に発現した。TEAEの発現率に用量反応性はなかった。SAEはzasocitinib 15mg群の1例のみに2件みられたが、治療薬との関連はないと判断された。臨床検査値に臨床的に意味のある経時的変化はみられなかった。

3.

季節性インフル曝露後予防投与、ノイラミニダーゼ阻害薬以外の効果は?/Lancet

 重症化リスクの高い季節性インフルエンザウイルス曝露者に対し、ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビルによる曝露後予防投与は、症候性季節性インフルエンザのリスクを低下させる可能性が示された。また、これらの抗ウイルス薬は、ヒトへの感染で重症化を引き起こす新型インフルエンザAウイルス曝露者に対しても、予防投与により人獣共通インフルエンザの発症リスクを軽減する可能性が示されたという。中国・重慶医科大学附属第二医院のYunli Zhao氏らがシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析の結果を報告した。抗ウイルス薬のノイラミニダーゼ阻害薬による曝露後予防投与は、インフルエンザの発症および症候性インフルエンザのリスクを低減することが可能だが、その他のクラスの抗ウイルス薬の有効性は不明のままであった。Lancet誌2024年8月24日号掲載の報告。6種の抗ウイルス薬についてシステマティックレビューとネットワークメタ解析 研究グループは、WHOインフルエンザガイドラインの更新サポートのために、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析により、抗ウイルス薬のインフルエンザ曝露後予防について評価した。 MEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature、Global Health、Epistemonikos、ClinicalTrials.govを用いて、インフルエンザ予防における抗ウイルス薬の有効性と安全性を他の抗ウイルス薬、プラセボまたは標準治療と比較した、2023年9月20日までに公開された無作為化比較試験を系統的に検索。2人1組のレビュワーが独立して試験をレビューし、データを抽出、バイアスリスクを評価した。 ネットワークメタ解析は頻度論的(frequentist)ランダム効果モデルを用いて行い、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)アプローチを用いてエビデンスの確実性を評価した。 重視したアウトカムは、症候性または無症候性の感染、入院、全死因死亡、抗ウイルス薬に関連した有害事象、重篤な有害事象であった。 検索により公表論文1万1,845本を特定し、6種の抗ウイルス薬(ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビル、アマンタジン、リマンタジン)に関する33試験・被験者1万9,096例(平均年齢6.75~81.15歳)をシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析に組み入れた。ほとんどの試験でバイアスリスクは低いと評価された。ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビルは軽減効果がある可能性 ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビルは、重症化リスクの高い被験者において、季節性インフルエンザ曝露後、速やかに投与することで(例:48時間以内)症候性インフルエンザの発症を大幅に軽減する可能性が示唆された(ザナミビル[リスク比:0.35、95%信頼区間[CI]:0.25~0.50]、オセルタミビル[0.40、0.26~0.62]、ラニナミビル[0.43、0.30~0.63]、バロキサビル[0.43、0.23~0.79]、確実性は中程度)。これらの抗ウイルス薬は、重症化リスクの低い人では、季節性インフルエンザに曝露後、速やかに投与しても症候性インフルエンザの発症を大幅に軽減しない可能性が示唆された(確実性は中程度)。 また、ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビルは、感染したヒトの重症化と関連する新型インフルエンザAウイルス曝露後に、速やかに投与したときは、人獣共通インフルエンザの発症を大幅に軽減する可能性が示唆された(確実性は低度)。 オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビル、アマンタジンは、すべてのインフルエンザのリスクを低下させる可能性が示唆された(症候性および無症候性の感染:確実性は中程度)。 ザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビルは、無症候性インフルエンザウイルスの感染または全死因死亡の予防に、ほとんどまたはまったく効果がない可能性が示唆された(確実性は高度または中程度)。 オセルタミビルは、入院への効果は、ほとんどまたはまったくない可能性が示唆された(確実性は中程度)。 6種の抗ウイルス薬はすべて、エビデンスの確実性は異なるが、薬剤関連の有害事象または重篤な有害事象の発現頻度を有意に増加させないことが示唆された。

4.

高齢のCKD患者、タンパク質制限は本当に必要?

 軽度または中等度の慢性腎臓病(CKD)を有する高齢者におけるタンパク質摂取量と全死亡率を調査した結果、タンパク質摂取量が多いほど死亡リスクが低く、タンパク質摂取の利点が欠点を上回る可能性があることを、スウェーデン・カロリンスカ研究所のAdrian Carballo-Casla氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2024年8月1日号掲載の報告。 健康な高齢者では健康を維持するために一定のタンパク質を摂取することが推奨されているが、CKD患者ではCKDのステージ進行を抑制することを目的として、タンパク質摂取量を制限することが推奨されている。しかし、軽度または中等度のCKDを有する高齢者のタンパク質摂取を制限した場合の全般的な健康への影響については十分なエビデンスが得られていない。 そこで研究グループは、60歳以上の地域在住成人で構成されたスウェーデンおよびスペインの3つのコホート研究の縦断的データを統合し、国際腎臓病ガイドライン機構(KDIGO)の分類によるCKDステージ1~3の高齢者における総タンパク質、動物性タンパク質、植物性タンパク質の摂取量と10年全死亡率との関連性を推定し、その結果をCKDを有さない高齢者(対照群)の結果と比較した。参加者は2001年3月~2017年6月に募集され、最長で2024年1月まで追跡された。食事や死亡率に関する情報がない参加者、CKDステージが4または5の参加者、腎代替療法を受けている参加者、および腎移植を受けた参加者は除外された。 タンパク質摂取量は、食事歴および食物摂取頻度調査票により推定された。穀物、豆類、ナッツ類、その他の植物由来のタンパク質は植物性タンパク質とみなされ、乳製品、肉、卵、魚類、その他の動物由来のタンパク質は動物性タンパク質とみなされた。Cox比例ハザードモデルを用いて、タンパク質摂取量と死亡率の関連性についてハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。●合計1万4,399例(CKD群:4,789例、対照群:9,610例)が解析に含まれた。CKD群は女性が2,726例(56.9%)、平均年齢が78.0(SD 7.2)歳であった。追跡期間中に、両群合わせて1,468例が死亡した。●CKD群では、総タンパク質摂取量が多いほど死亡リスクが低くなることが示された。 ・1.00g/kg/日vs.0.80g/kg/日のHR 0.88(95%CI:0.79~0.98) ・1.20g/kg/日vs.0.80g/kg/日のHR 0.79(95%CI:0.66~0.95) ・1.40g/kg/日vs.0.80g/kg/日のHR 0.73(95%CI:0.57~0.92) ・1.60g/kg/日vs.0.80g/kg/日のHR 0.67(95%CI:0.51~0.89)●CKD群の各タンパク質摂取量0.20g/kg/日増加当たりの死亡のHRは、総タンパク質、動物性タンパク質、植物性タンパク質で同等であった。 ・総タンパク質のHR 0.92(95%CI:0.86~0.98) ・動物性タンパク質のHR 0.88(95%CI:0.81~0.95) ・植物性タンパク質のHR 0.80(95%CI:0.65~0.98)●CKD群の総タンパク質摂取量0.20g/kg/日増加当たりの死亡のHRは、75歳未満でも75歳以上でも同等であった(相互作用のp=0.51)。 ・75歳未満のHR 0.94(95%CI:0.85~1.04) ・75歳以上のHR 0.91(95%CI:0.85~0.98)●総タンパク質摂取量と死亡率との逆相関は、対照群のほうがCKD群よりも大きかった(相互作用のp=0.02)。 ・CKD群のHR 0.92(95%CI:0.86~0.98) ・対照群のHR 0.85(95%CI:0.79~0.92) これらの結果より、研究グループは「高齢者を対象としたこのマルチコホート研究では、総タンパク質、動物性タンパク質、植物性タンパク質の摂取量が多いほど、CKD患者の死亡リスクが低いことが示された。CKDを有さない人では関連性がより強く、軽度または中等度のCKDを有する高齢者ではタンパク質摂取の利点が欠点を上回る可能性があることを示唆している」とまとめた。

5.

アトピー性皮膚炎へのデュピルマブ、5年有効性・安全性は?

 デュピルマブで治療を受けたアトピー性皮膚炎患者を最長5年追跡調査したコホート研究において、デュピルマブの臨床的有効性は維持された。一方で3分の2の患者は3週ごとまたは4週ごとの投与量に漸減し、23.8%の患者が治療を中止した。治療中止の主な理由は有害事象、無効であった。これまで日常診療でのアドピー性皮膚炎に対するデュピルマブの、長期の有効性と安全性に関するデータは限られていた。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのCeleste M. Boesjes氏らが、JAMA Dermatology誌オンライン版2024年8月7日号で報告した。 研究グループは、日常診療で最長5年間治療を受けたアトピー性皮膚炎の小児、成人および高齢者における、デュピルマブ治療の臨床的有効性と治療中止の理由を評価する前向き多施設コホート研究を行った。 BioDayレジストリ(オランダの大学病院4施設とその他10施設で登録)を用いて、2017年10月~2022年12月にデュピルマブによる治療を受けたすべての年齢のアトピー性皮膚炎患者を特定し、研究対象とした。 臨床的有効性は、小児(18歳未満)、成人(18~64歳)、高齢者(65歳以上)で層別化を行い、Eczema Area and Severity Index(EASI)、Investigator Global Assessment(IGA)、そう痒Numeric Rating Scale(NRS)で評価した。さらに、TARC値、好酸球数などを評価。デュピルマブを中止した患者について、中止の理由を評価した。 主な結果は以下のとおり。・計1,286例のアトピー性皮膚炎患者(年齢中央値38歳[四分位範囲[IQR]:26~54]、男性726例[56.6%])がデュピルマブによる治療を受けた(小児130例、成人1,025例、高齢者131例)。・追跡期間中央値は87.5ヵ月(IQR:32.0~157.0)。・ほとんどの患者が最長5年の治療期間にわたりアトピー性皮膚炎のコントロールを維持しており、EASIが7以下の患者は78.6~92.3%、そう痒NRSが4以下の患者は72.2~88.2%であった。・全患者の最大70.5%の投与間隔が延長し、ほとんどが300mgの3週ごとまたは4週ごと投与となっていた。・治療開始5年後、EASIスコア平均値は2.7(95%信頼区間[CI]:1.2~4.2)、そう痒NRS平均値は3.5(2.7~4.3)であった。・EASI、IGAについて、観察期間を通じて年齢群間に統計学的有意差がみられたが、その差(52週時点でEASIは0.3~1.6、IGAは0.12~0.26)は非常に小さかった。そう痒NRSについては、統計学的有意差はみられなかった。・TARC中央値は、1,751pg/mL(95%CI:1,614~1,900)から治療開始6ヵ月で390pg/mL(368~413)へ大幅に低下し、低値を維持した。・好酸球数中央値は16週まで一時的に上昇したが、その後は経時的に統計学的有意な低下がみられた。・合計306例(23.8%)がデュピルマブを中止し、中止までの期間中央値は54.0週(IQR:29.0~110.0)であった。多く報告された中止の理由は、有害事象98例(7.6%)、無効85例(6.6%)であった。41例(3.2%)がデュピルマブ投与を再開し、これらの患者の大半で奏効が認められた。

6.

心筋梗塞既往の糖尿病患者へのキレーション療法、有効性は?/JAMA

 50歳以上の心筋梗塞既往の糖尿病患者において、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)キレーション療法はプラセボと比較し、血中鉛濃度が有意に低下したが、心血管イベントは減少しなかった。米国・マウントサイナイ医療センターのGervasio A. Lamas氏らが、米国とカナダの88施設で実施した「Trial to Assess Chelation Therapy 2:TACT2試験」の結果を報告した。2013年には、心筋梗塞既往患者1,708例を対象とした「TACT試験」で、EDTAキレーション療法により心血管イベントが18%有意に減少したことが報告されていた。JAMA誌オンライン版2024年8月14日号掲載の報告。主要エンドポイントは全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術、不安定狭心症による入院の複合 研究グループは、登録の少なくとも6週間前に心筋梗塞の既往がある50歳以上の糖尿病患者を、2×2要因デザイン法を用いて、EDTAキレーション療法群とプラセボ点滴静注群(いずれも週1回3時間の点滴静注を計40回)、または高用量マルチビタミン・ミネラル経口投与群とプラセボ経口投与群(1日2回60ヵ月間経口投与)に無作為に割り付けた。本論文ではキレーション療法群とプラセボ点滴静注群の比較について報告されている。 EDTAキレーション溶液は、推定クレアチニンクリアランスに基づきEDTA-二ナトリウム最大3g、ならびにアスコルビン酸、塩化マグネシウム、プロカイン塩酸塩、未分画ヘパリン、塩化カリウム、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)、パントテン酸、チアミン、ピリドキシンおよび注射用水で構成された。 主要エンドポイントは、全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術、不安定狭心症による入院の複合であった。 2016年10月27日~2021年12月31日に、1,000例がキレーション療法群(499例)またはプラセボ群(501例)に無作為に割り付けられた。最終追跡調査日は2023年6月30日であった。追跡期間4年の主要エンドポイント発生、キレーション療法群35.6% vs.プラセボ群35.7% 解析対象は、少なくとも1回試験薬の投与を受けた959例(キレーション療法群483例、プラセボ群476例)で、年齢中央値67歳(四分位範囲:60~72)、女性27%、白人78%、黒人10%、ヒスパニック20%であった。 追跡期間中央値48ヵ月において、主要エンドポイントはキレーション療法群で172例(35.6%)、プラセボ群で170例(35.7%)に発生した(補正後ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.76~1.16、p=0.53)。Kaplan-Meier法による主要エンドポイントの推定5年累積発生率は、キレーション療法群45.8%(95%CI:39.9~51.5)、プラセボ群46.5%(39.7~53.0)であった。 主要エンドポイントの各イベントの発生率も治療群間で差はなかった。心血管死、心筋梗塞または脳卒中のイベントはキレーション療法群で89例(18.4%)、プラセボ群で94例(19.7%)に認められた(補正後HR:0.89、95%CI:0.66~1.19)。全死因死亡は、キレーション療法群で84例(17.4%)、プラセボ群で84例(17.6%)であった(0.96、0.71~1.30)。 血中鉛濃度中央値は、キレーション療法群ではベースラインの9.0μg/Lから、40回が終了した時点で3.5μg/Lに低下し(p<0.001)、プラセボ群ではそれぞれ9.3μg/L、8.7μg/Lであった。 重篤な有害事象は、キレーション療法群で81例(16.8%)、プラセボ群で79例(16.6%)にみられた。

7.

若年者の砂糖入り飲料摂取、世界的な動向は?/BMJ

 世界185ヵ国の小児・思春期児(3~19歳)における砂糖入り飲料(sugar sweetened beverage、SSB)の摂取量は、1990~2018年の間に23%増加しており、このことと同年齢層における世界的な肥満症有病率の上昇が対応していることを、米国・タフツ大学のLaura Lara-Castor氏らがGlobal Dietary Databaseを用いた検討で明らかにした。また、世界の小児・思春期児のSSB摂取量は、年齢や親の教育レベル、都市居住か否かによりばらつきがみられたという。BMJ誌2024年8月7日号掲載の報告。1990~2018年の185ヵ国の小児と思春期児について分析 研究グループはGlobal Dietary Databaseを用いた連続横断分析で、世界の小児・思春期児におけるSSB摂取量と経時的な傾向を定量化した。1990~2018年の185ヵ国の3~19歳を、年齢、性別、親の教育レベル、および地方または都市居住によって地域レベルで層別化し分析した。世界の若者人口の10.4%が7サービング/週以上を摂取 2018年において、世界の平均SSB摂取量は3.6(95%不確定区間:3.3~4.0)サービング/週であり(標準化サービング=248g[8オンス])、地域別にみると、南アジアの1.3(1.0~1.9)サービング/週から中南米・カリブ海地域の9.1(8.3~10.1)まで大きくばらついていた。 SSB摂取量は、年少児よりは年長児で、地方居住者よりは都市居住者で、両親の教育レベルは低レベル群よりは高レベル群で高かった。 1990~2018年に、世界の平均SSB摂取量は0.68サービング/週(22.9%)増加していた。最も増加していたのはサハラ以南のアフリカ諸国で2.17サービング/週(106%)であった。 解析に含んだ185ヵ国のうち、56ヵ国(30.3%)の平均SSB摂取量は≧7サービング/週であった。これら摂取群には小児・思春期児2億3,800万人、世界の若者人口の10.4%が含まれる。 結果を踏まえて著者は、「本研究は、とくに中南米とカリブ海地域の都市および地方居住で、教育レベルを問わずSSB摂取量が多い若者へのSSB摂取量を減らすための政策や、サハラ以南のアフリカ諸国において拡大しているSSBの問題に役立つだろう」とまとめている。

8.

忽那氏が振り返る新型コロナ、今後の対策は?/感染症学会・化学療法学会

 2024年8月2日の政府の発表によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の定点当たりの報告数は14.6人で、昨夏ピーク時(第9波)の20.5人に迫る勢いで12週連続増加し、とくに10歳未満の感染者数が最も多く、1医療機関当たり2.16人だった。週当たりの新規入院患者数は4,579人で、すでに第9波および第10波のピークを超えている1)。 大阪大学医学部感染制御学の忽那 賢志氏は、これまでのコロナ禍を振り返り、パンデミック時に対応できる医師が不足しているという課題や、患者数増加に伴う医師や看護師のバーンアウトのリスク増加など、今後のパンデミックへの対策について、6月27~29日に開催の第98回日本感染症学会学術講演会 第72回日本化学療法学会総会 合同学会にて発表した。日本ではオミクロン株以前の感染を抑制 忽那氏は、コロナ禍以前の新興感染症の対策について振り返った。コロナ禍以前から政府が想定していた新型インフルエンザ対策は、「不要不急の外出の自粛要請、施設の使用制限等の要請、各事業者における業務縮小等による接触機会の抑制等の感染対策、ワクチンや抗インフルエンザウイルス薬等を含めた医療対応を組み合わせて総合的に行う」というもので、コロナ禍でも基本的に同じ考え方の対策が講じられた。 欧米では、オミクロン株が出現した2021~22年に流行のピークを迎え、その後減少している。オミクロン株拡大前もしくはワクチン接種開始前に多くの死者が出た。一方、日本での流行の特徴として、第1波から第8波まで波を経るごとに感染者数と死亡者数が拡大し、とくにオミクロン株が拡大してからの感染者が増加していることが挙げられる。忽那氏は「オミクロン株拡大までは感染者数を少なく抑えることができ、それまでに初回ワクチン接種を進めることができた。結果として、オミクロン株拡大後は、感染者数は増えたものの、他国と比較して死亡者数を少なくすることができた」と分析した。新型コロナの社会的影響 しかし、他国よりも感染対策の緩和が遅れたことで、新型コロナによる社会的な影響も及んでいる可能性があることについて、忽那氏はいくつかの研究を挙げながら解説した。東京大学の千葉 安佐子氏らの日本における婚姻数の推移に関する研究では、2010~22年において、もともと右肩下がりだった婚姻数が、感染対策で他人との接触が制限されたことにより、2020年の婚姻数が急激に減少したことが示されている2)。また、超過自殺の調査では、新型コロナの影響で社会的に孤立する人の増加や経済的理由のために、想定されていた自殺者数よりも増加していることが示された3)。忽那氏は、「日本は医療の面では新型コロナによる直接的な被害者を抑制することができたが、このようなほかの面では課題が残っているのではないか。医療従事者としては、感染者と死亡者を減らすことが第一に重要だが、より広い視点から今回のパンデミックを振り返り、次に備えて検証していくべきだろう」と述べた。パンデミック時、感染症を診療する医師をどう確保するか コロナ禍では、医療逼迫や医療崩壊という言葉がたびたび繰り返された。政府が2023年に発表した第8次医療計画において、次に新興感染症が起こった時の各都道府県の対応について、医療機関との間に病床確保の協定を結ぶことなどが記載されている。ただし、医療従事者数の確保については欠落していると忽那氏は指摘した。OECDの加盟国における人口1,000人当たりの医師数の割合のデータによると、日本は38ヵ国中33位(2.5人)であり医師の数が少ない4)。また、1994~2020年の医療施設従事医師数の推移データでは、医師全体の数は1.47倍に増えているものの、各診療科別では、内科医は0.99倍でほぼ横ばいであり、新興感染症を実際に診療する内科、呼吸器科、集中治療、救急科といった診療科の医師は増えていない5)。 感染症専門医は2023年12月時点で1,764人であり、次の新興感染症を感染症専門医だけでカバーすることは難しい。また、岡山大学の調査によると、コロナパンデミックを経て、6.1%の医学生が「過去に感染症専門医に興味を持ったことがあるが、調査時点では興味がない」と回答し、3.7%の医学生が「コロナ禍を経て感染症専門医になりたいと思うようになった」、11.0%の医学生が「むしろ感染症専門医にはなりたくない」と回答したという結果となった6)。医療従事者のバーンアウト対策 日本の医師と看護師の燃え尽きに関する調査では、患者数が増えると医師と看護師の燃え尽きも増加することが示されている7)。米国のMedscapeによる2023年の調査では、診療科別で多い順に、救急科、内科、小児科、産婦人科、感染症内科となっており、コロナを診療する科においてとくに燃え尽きる医師の割合が高かった8)。そのため、パンデミック時の医師の燃え尽き症候群に対して、医療機関で対策を行うことも重要だ。忽那氏は、所属の医療機関において、コロナの前線にいる医師に対して精神科医がメンタルケアを定期的に実施していたことが効果的であったことを、自身の経験として挙げた。また、業務負荷がかかり過ぎるとバーンアウトを起こしやすくなるため、診療科の枠を越えて、シフトの調整や業務分散をして個人の負担を減らすなど、スタッフを守る取り組みが大事だという。 忽那氏は最後に、「感染症専門医だけで次のパンデミックをカバーすることはできないので、医師全体の感染症に対する知識の底上げのための啓発や、感染対策のプラクティスを臨床現場で蓄積していくことが必要だ。今後の新型コロナのシナリオとして、基本的には過去の感染者やワクチン接種者が増えているため、感染者や重症者は減っていくだろう。波は徐々に小さくなっていくことが予想される。一方、より重症度が高く、感染力の強い変異株が出現し、感染者が急激に増える場合も考えられる。課題を整理しつつ、次のパンデミックに備えていくことが重要だ」とまとめた。■参考1)内閣感染症危機管理統括庁:新型コロナウイルス感染症 感染動向などについて(2024年8月2日)2)千葉 安佐子ほか. コロナ禍における婚姻と出生. 東京大学BALANCING INFECTION PREVENTION AND ECONOMIC. 2022年12月2日.3)Batista Qほか. コロナ禍における超過自殺. 東京大学BALANCING INFECTION PREVENTION AND ECONOMIC. 2022年9月7日4)清水 麻生. 医療関連データの国際比較-OECD Health Statistics 2021およびOECDレポートより-. 日本医師会総合政策研究機構. 2022年3月24日5)不破雷蔵. 増える糖尿病内科や精神科、減る外科や小児科…日本の医師数の変化をさぐる(2022年公開版)6)Hagiya H, et al. PLoS One. 2022;17:e0267587.7)Morioka S, et al. Front Psychiatry. 2022;13:781796.8)Medscape: 'I Cry but No One Cares': Physician Burnout & Depression Report 2023

9.

最新のアトピー性皮膚炎治療薬レブリキズマブ、有効性はデュピルマブと同等か

 カナダ・トロント大学のAaron M. Drucker氏らは、アトピー性皮膚炎を効能・効果として新たに承認されたレブリキズマブについて、リビングシステマティックレビューおよびメタ解析により、その他の免疫療法と有効性・安全性を比較した。その結果、成人のアトピー性皮膚炎の短期治療の有効性は、デュピルマブと同等であった。レブリキズマブは臨床試験でプラセボと比較されていたが、実薬対照比較はされていなかった。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年7月17日号掲載の報告。 研究グループは、Cochrane Central Register of Controlled Trials、MEDLINE、Embase、Latin American and Caribbean Health Science Informationデータベース、Global Resource of Eczema Trialsデータベースおよび試験レジストリを用いて、2023年11月3日までに登録された情報を検索した。中等症~重症のアトピー性皮膚炎に対する全身免疫療法を8週間以上評価した無作為化比較試験を適格とし、タイトル、アブストラクト、全文をスクリーニングした。データを抽出し、ランダム効果モデルを用いたベイジアンネットワークメタ解析を実施。薬剤間の差は、臨床的意義のある最小変化量を用いて評価した。エビデンスの確実性は、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)システムを用いて評価した。最新の解析は2023年12月13日~2024年2月20日に実施した。 有効性アウトカムは、Eczema Area and Severity Index(EASI)、Patient Oriented Eczema Measure(POEM)、Dermatology Life Quality Index(DLQI)、Peak Pruritus Numeric Rating Scales(PP-NRS)とし、平均群間差(MD)と95%信用区間(CrI)を求めて比較した。安全性アウトカムは、重篤な有害事象、有害事象による試験薬の中止とした。その他のアウトカムは、EASI-50、EASI-75、EASI-90達成率、Investigator Global Assessment(IGA)スコアに基づく奏効率(IGAスコアが2点以上低下し、1点以下を達成)などとし、これらの二値変数のアウトカムはオッズ比と95%CrIを求めて比較した。 主な結果は以下のとおり。・解析には、98の適格試験の対象患者2万4,707例が組み込まれた。・最長16週間の治療を受けた成人アトピー性皮膚炎患者において、レブリキズマブはデュピルマブと比較して、EASI(MD:-2.0、95%CrI:-4.5~0.3、エビデンスの確実性:中)、POEM(-1.1、-2.5~0.2、中)、DLQI(-0.2、-2.1~1.6、中)、PP-NRS(0.1、-0.4~0.6、高)のいずれも臨床的に意義のある差はみられなかった。・有効性に関する二値変数のアウトカムのオッズは、デュピルマブがレブリキズマブと比較して高い傾向にあった。・その他の承認済みの全身療法の相対的有効性は、今回のリビングシステマティックレビュー以前のアップデートで示されたものと同様であり、高用量ウパダシチニブおよびアブロシチニブが、数値的に最も高い相対的有効性を示した。・安全性アウトカムは、イベント発現率が低く、有用な比較が制限された。

10.

中等症~重症アトピー性皮膚炎、ネモリズマブ追加で治療成功率が向上/Lancet

 そう痒を伴う中等症~重症のアトピー性皮膚炎を有する成人および青少年の治療において、基礎治療(局所コルチコステロイド[TCS]±局所カルシニューリン阻害薬[TCI])単独と比較して、基礎治療+ネモリズマブ(インターロイキン-31受容体サブユニットα拮抗薬)は、治療成功および皮膚症状改善の達成率の向上をもたらし、安全性プロファイルは両群でほぼ同様であることが、米国・ジョージ・ワシントン大学のJonathan I. Silverberg氏らが実施した2つの臨床試験(ARCADIA 1試験、ARCADIA 2試験)で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年8月3日号に掲載された。同じデザインの2つの無作為化プラセボ対照第III相試験 ARCADIA 1試験とARCADIA 2試験は、同じデザインの48週の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、ARCADIA 1試験は2019年8月~2021年9月に14ヵ国161施設で、ARCADIA 2試験は2019年8月~2022年11月に11ヵ国120施設で患者を登録した(Galdermaの助成を受けた)。 2つの試験とも、年齢12歳以上、そう痒を伴う中等症~重症のアトピー性皮膚炎(登録の2年以上前に診断)で、TCS±TCIによる治療で効果が不十分であった患者を対象とした。 被験者を、基礎治療(TCS±TCI)との併用で、ネモリズマブ30mg(ベースラインの負荷用量60mg)を4週に1回皮下投与する群、またはプラセボ群に、2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは2つで、16週目の時点でのInvestigator's Global Assessment(IGA)に基づく治療成功(IGAが0[皮膚病変消失]または1[同ほぼ消失]で、かつベースラインから2段階以上の改善)、およびEczema Area and Severity Index(EASI)のベースラインから75%以上の改善(EASI-75)とした。9つの主な副次エンドポイントもすべて有意に改善 2つの試験に合計1,728例を登録した。ネモリズマブ群に1,142例(ARCADIA 1試験620例[平均年齢33.5歳、女性48%]、ARCADIA 2試験522例[34.9歳、52%])、プラセボ群に586例(321例[33.3歳、45%]、265例[35.2歳、51%])を割り付けた。 両試験とも2つの主要エンドポイントを満たした。16週時のIGAに基づく治療成功の割合はプラセボ群に比べネモリズマブ群で有意に優れた(ARCADIA 1試験:36% vs.25%、補正後群間差:11.5%[97.5%信頼区間[CI]:4.7~18.3]、p=0.0003/ARCADIA 2試験:38% vs.26%、12.2%[4.6~19.8]、p=0.0006)。 また、EASI-75の達成割合も、プラセボ群に比しネモリズマブ群で有意に良好だった(ARCADIA 1試験:44% vs.29%、補正後群間差:14.9%[97.5%CI:7.8~22.0]、p<0.0001/ARCADIA 2試験:42% vs.30%、12.5%[4.6~20.3]、p=0.0006)。 9つの主な副次エンドポイント(そう痒[Peak Pruritus Numerical Rating Scale:PP-NRS]、睡眠[Sleep Disturbance Numerical Rating Scale:SD-NRS]など)はいずれも、ネモリズマブ群で有意な有益性を認めた。ネモリズマブ関連の可能性がある有害事象は1% 安全性プロファイルは両群でほぼ同様だった。少なくとも1件の試験治療下における有害事象を発現した患者は、ネモリズマブ群ではARCADIA 1試験で50%(306/616例)、ARCADIA 2試験で41%(215/519例)、プラセボ群ではそれぞれ45%(146/321例)および44%(117/263例)であった。このうち重篤な有害事象は、ネモリズマブ群ではARCADIA 1試験で1%(6例)、ARCADIA 2試験で3%(13例)、プラセボ群ではそれぞれ1%(4例)および1%(3例)であった。 ネモリズマブ関連の可能性がある治療関連有害事象は、ARCADIA 2試験で5例(1%)に10件報告された。 著者は、「アトピー性皮膚炎は多面的な病態生理を有する疾患で、臨床においてはさまざまな作用機序を有する薬剤を必要とするため、有効な治療法の探索を継続することは重要である」と述べた。

11.

慢性手湿疹、デルゴシチニブ外用薬が有効/Lancet

 中等症~重症の慢性手湿疹を有し、基本的なスキンケアやコルチコステロイド外用薬では十分にコントロールできない患者の治療において、基剤を含み有効成分を含まないクリームと比較してヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬デルゴシチニブを含有するクリームは、16週の投与で高い有効性を示し、忍容性も良好であることが、カナダ・Innovaderm ResearchのRobert Bissonnette氏らtrial investigatorsが実施した2つの臨床試験(DELTA 1試験、DELTA 2試験)で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年7月18日号で報告された。同一デザインの2つの無作為化第III相試験 DELTA 1試験とDELTA 2試験は、いずれも基剤を対照とした二重盲検無作為化第III相試験であり、DELTA 1は2021年5月~2022年10月に6ヵ国53施設で、DELTA 2は2021年5月~2023年1月に7ヵ国50施設で患者を登録した(LEO Pharmaの助成を受けた)。 両試験とも、年齢18歳以上、中等症~重症の慢性手湿疹と診断され、スクリーニング時から過去1年以内にコルチコステロイド外用薬の効果が不十分か、医学的に推奨されなかった患者を対象とした。手湿疹の重症度は、Investigator's Global Assessment for Chronic Hand Eczema(IGA-CHE)の修正版(5段階:0[皮膚病変消失]、1[同ほぼ消失]、2[軽症]、3[中等症]、4[重症])に準拠した。 被験者を、デルゴシチニブ クリーム20mg/g(1日2回)を塗布する群または基剤クリームを塗布する群に、2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、16週の時点におけるIGA-CHEに基づく治療成功とした。治療成功は、IGA-CHEスコアが0(皮膚病変消失)または1(同ほぼ消失)で、ベースラインから16週目までに少なくとも2段階の改善を達成した場合と定義した。主な副次エンドポイントもすべて有意に良好 DELTA 1試験は487例(年齢中央値44.0歳[四分位範囲:32.0~55.0]、女性306例[63%])を、DELTA 2試験は473例(44.0歳[33.0~56.0]、312例[66%])を登録した。DELTA 1試験の325例とDELTA 2試験の314例をデルゴシチニブ群に、それぞれ162例と159例を基剤群に割り付けた。 16週の時点で、治療成功を達成した患者の割合は、DELTA 1試験では基剤群が9.9%(16/162例)であったのに対しデルゴシチニブ群は19.7%(64/325例)(群間差:9.8%、95%信頼区間[CI]:3.6~16.1、p=0.0055)、DELTA 2試験では基剤群の6.9%(11/159例)に比べデルゴシチニブ群は29.1%(91/313例)(22.2%、15.8~28.5、p<0.0001)と、どちらの試験も有意に優れた。 2つの試験の双方とも、主な副次エンドポイント(4および8週時のIGA-CHEに基づく治療成功、手湿疹重症度指数[HECSI]、手湿疹症状日誌[HESD]、皮膚疾患の生活の質指標[DLQI]など)はすべて、デルゴシチニブ群で有意に良好だった。有害事象の頻度は、2試験とも両群で同程度 有害事象を報告した患者の割合は、デルゴシチニブ群がDELTA 1試験で45%(147/325例)、DELTA 2試験で46%(143/313例)、基剤群はそれぞれ51%(82/162例)および45%(71/159例)であり、2つの試験とも両群で同程度であった。 2%以上の患者に発現した最も頻度の高い有害事象は、新型コロナウイルス感染症(デルゴシチニブ群:DELTA 1試験11%、DELTA 2試験12%、基剤群:DELTA 1試験9%、DELTA 2試験13%)、鼻咽頭炎(7%、9%、7%、6%)、頭痛(3%、2%、6%、6%)であった。また、重篤な有害事象(2%、2%、2%、2%)の頻度も同程度であったが、試験薬関連の可能性がある有害事象(4%、8%、7%、7%)はDELTA 1試験ではデルゴシチニブ群で少なく、試験薬の投与中止の原因となった有害事象(1%、4%、<1%、3%)は2つの試験ともデルゴシチニブ群で少なかった。 著者は、「これらのデータは、デルゴシチニブ クリームは、治療が困難な場合が多いこの患者集団において、臨床徴候や症状の緩和のための革新的な治療選択肢となることを示唆する」「デルゴシチニブ クリームは、限られた皮膚領域に局所的に適用されるため、全身投与に伴う安全性の懸念なしに、JAK阻害薬による治療の有益性が得られる可能性がある」としている。

12.

線維筋痛症、治療用スマホアプリで症状改善/Lancet

 線維筋痛症の成人患者の管理において、スマートフォンアプリを用いて毎日の症状を追跡するアクティブコントロール群と比較して、アプリを用いたアクセプタンス・コミットメント療法(ACT)によるセルフガイド型のデジタル行動療法は、患者評価による症状の改善度が優れ、デバイス関連の安全性に関するイベントは発生しないことが、米国・Gendreau ConsultingのR. Michael Gendreau氏らが実施した「PROSPER-FM試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年7月8日号で報告された。 PROSPER-FM試験は、米国の25の地域施設が参加した第III相無作為化対照比較試験であり、2022年2月~2023年2月に患者のスクリーニングを行った(Swing Therapeuticsの助成を受けた)。 年齢22~75歳、初発の線維筋痛症と診断された患者275例(女性257例[93%]、白人229例[83%])を登録した。スマートフォン用の治療アプリ(Stanza)を用いたデジタルACT群に140例(年齢中央値49.0歳[四分位範囲[IQR]:40.5~59.0])、症状追跡アプリと、健康関連および線維筋痛症関連の教育資料へのアクセスを提供するアクティブコントロール群に135例(同49.0歳[41.0~57.0])を割り付けた。治療割り付け情報は、統計解析の担当者を除き、マスクされなかった。 主要エンドポイントは、12週の時点における症状の変化に対する患者の全般的印象度(patient global impression of change:PGIC)の改善とし、ITT解析を行った。PGICは、患者の自己評価に基づく治療の全般的な有益性の尺度であり、7つのカテゴリ(著しく改善、かなり改善、最小限の改善、変化なし、最小限の悪化、かなり悪化、著しく悪化)から患者が選択した。「最小限の改善」以上:70.6% vs.22.2%、「かなり改善」以上:25.9% vs.4.5% 12週の時点で、PGICの「最小限の改善」以上を達成した患者の割合(主解析)は、アクティブコントロール群が22.2%(30/135例)であったのに対し、デジタルACT群は70.6%(99/140例)と有意に良好であった(群間差:48.4%、95%信頼区間[CI]:37.9~58.9、p<0.0001)。 また、同時点におけるPGICの「かなり改善」以上の患者の割合は、アクティブコントロール群の4.5%(6/135例)と比較して、デジタルACT群は25.9%(36/140例)であり、有意に優れた(群間差:21.4%、95%CI:13.0~29.8、p<0.0001)。 改訂版Fibromyalgia Impact Questionnaire(FIQ)のベースラインから12週までの総スコアの変化(最小二乗平均)は、アクティブコントロール群が-2.2点であったのに対し、デジタルACT群は-10.3点と改善度が有意に高かった(群間差:-8.0点、95%CI:-10.98~-5.10、p<0.0001)。デバイス関連の有害事象の報告はない デバイス関連の有害事象は、両群とも報告がなかった。最も頻度の高い有害事象は、感染症および寄生虫症(デジタルACT群28%、アクティブコントロール群25%)であり、次いで精神障害関連イベント(14% vs.14%)だった。 全体的な患者満足度は、デジタルACT群が80%、アクティブコントロール群は85%であり、それぞれ80%および79%が当該アプリを再度使用すると回答した。 著者は、「線維筋痛症に対するデジタルACTによる介入は、安全かつ有効な治療選択肢であり、ガイドラインで推奨される行動療法を受ける際の実質的な障壁に対処可能と考えられる」としている。

13.

ASCO2024 レポート 乳がん

レポーター紹介2024年5月31日~6月4日まで5日間にわたり、ASCO2024がハイブリッド形式で開催された。昨年も人が戻ってきている感じはあったが、会場の雰囲気はコロナ流行前と変わりなくなっていた。一方、日本からの参加者は若干少なかったように思われる。これは航空運賃の高騰に加えて、円安の影響が大きいと思われる(今回私が行ったときは1ドル160円!! 奮発した150ドルのステーキがなんと24,000円に…。来年は費用面で行けない可能性も出てきました…)。さて、本題に戻ると、今回のASCOのテーマは“The Art and Science of Cancer Care:From Comfort to Cure”であった。乳がんの演題は日本の臨床に大きなインパクトを与えるものが大きく、とくにPlenary sessionの前に1演題のためだけに独立して行われたセッションで発表されたDESTINY-Breast06試験は早朝7:30のセッションにもかかわらず、満席であった。日本からは乳がんのオーラルが2演題あり、日本の実力も垣間見ることとなった。本稿では、日本からの演題も含めて5題を概説する。DESTINY-Breast06試験トラスツズマブ・デルクステカン(T-DXd)は日本で開発が開始され、現在グローバルで最も使われている抗体薬物複合体(ADC)の1つと言っても過言ではない。乳がんではHER2陽性乳がんで開発され、現在はHER2低発現乳がんにおける2次化学療法としてのエビデンスに基づいて適応拡大されている。20年近く乳がんの世界で用いられてきたサブタイプの概念を大きく変えることになった薬剤である。T-DXdのHER2低発現乳がんの1次化学療法としての有効性を検証したのがDESTINY-Breast06(DB-06)試験である。この試験では、ホルモン受容体陽性HER2低発現の乳がんにおいて、T-DXdの主治医選択化学療法に対する無増悪生存期間(PFS)における優越性が検証された。この試験のもう1つの大きな特徴は、HER2超低発現(ultra-low)の乳がんに対する有効性についても探索的に検討したことである。HER2超低発現とは、これまで免疫組織化学染色においてHER2 0と診断されてきた腫瘍のうち、わずかでもHER2染色があるものを指す。本試験では866例(うちHER2低発現713例、超低発現が152例)の患者がT-DXdと主治医選択治療(TPC)に1:1に割り付けられた。主要評価項目はHER2低発現におけるPFSで13.2ヵ月 vs. 8.1ヵ月(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.51~0.74、p<0.0001)とT-DXd群の優越性が示された。ITT集団においても同様の傾向であった。HER2超低発現の集団については探索的項目であるが、PFSは13.2ヵ月 vs.8.3ヵ月(HR:0.78、95%CI:0.50~1.21)とHER2低発現の集団と遜色ない結果であった。一方、全生存期間(OS)についてはHER2低発現でHR:0.83、HER2超低発現でHR:0.75であり、いずれも有意差はつかなかった。有害事象は既知のとおりであるが、薬剤性肺障害(ILD)はany gradeで11.3%であった。2次化学療法の試験であるDESTINY-Breast 04試験ではOSの優越性も示されているため、OSの優越性が示されていない状況で毒性の強い薬剤をより早いラインで使うかどうかは議論が必要であろう。また、HER2超低発現の病理評価の標準化についても課題が残される。postMONARCH試験こちらも待望の試験である。日本国内で使えるCDK4/6阻害薬であるアベマシクリブのbeyond PD(progressive disease)を証明した初の試験である。これまでMAINTAIN試験で(phase2ではあるが)、CDK4/6阻害薬の治療後のribociclibの有効性が示されていたが、ribociclibは日本国内では未承認なため、エビデンスを活用することができなかった。postMONARCH試験では、転移乳がん、もしくは術後治療としてホルモン療法(転移乳がんはAI剤)とCDK4/6阻害薬を使用後にPDもしくは再発となった368例の患者を対象に、フルベストラント+アベマシクリブ/プラセボに1:1に割り付けられた。術後CDK4/6阻害薬後の再発が適格となっていたが残念ながら全体で2例のみであり、プラクティスへの参考にはならなかった。前治療のCDK4/6阻害薬はパルボシクリブが60%と最も多く、ついでribociclibで、アベマシクリブは両群とも8%含まれた。主要評価項目は主治医判断のPFSで、6.0ヵ月 vs. 5.3ヵ月(HR:0.73、95%CI :0.57~0.95、p=0.02)とアベマシクリブ群で良好であった。盲検化PFSが副次評価項目に設定されていたが、面白いことに12.9ヵ月 vs.5.6ヵ月(HR:0.55、95%CI:0.39~0.77、p=0.0004)と主治医判断よりも良い結果となった。有害事象はこれまでの臨床試験と変わりはなかった。この試験の結果をもって、自信を持ってホルモン療法の2次治療としてフルベストラント+アベマシクリブを実施できるようになったと言える。JBCRG-06/EMERALD試験さて、日本からの試験も紹介する。研究代表者である神奈川県立がんセンターの山下 年成先生が口演された。本試験はHER2陽性転移乳がんの初回治療として、標準治療であるトラスツズマブ+ペルツズマブ+タキサン(HPT)療法に対して、トラスツズマブ+ペルツズマブ+エリブリン療法が非劣性であることを証明した。446例の患者が登録され、1:1に割り付けられた。ホルモン受容体は60%が陽性であり、PSは80%以上が0であった。初発StageIVが60%を占めていた。主要評価項目のPFSはHPT群12.9ヵ月 vs.エリブリン群14.0ヵ月(HR:0.95、95%CI:0.76~1.19、p=0.6817)で非劣性マージンの1.33を下回り、エリブリン群の非劣性が示された。化学療法併用期間の中央値はエリブリン群が28.1週、HPT群は約20週であり、エリブリン群で長かった。OSもHR:1.09(95%CI:0.76~1.58、p=0.7258)と両群間の差を認めなかった。毒性については末梢神経障害がエリブリン群で61.2% vs. HPT群で52.8%(G3に限ると9.8% vs.4.1%)と、エリブリン群で多かった。治療期間が長いことの影響があると思われるが、less toxic newと言ってよいかどうかは悩ましいところである。HER2陽性乳がんにおけるエリブリン併用療法は1つの標準治療になったと言えるが、実臨床での使用はタキサンアレルギーの症例などに限られるかもしれない。ER低発現乳がんにおける術後ホルモン療法こちらはデータベースを使った後ろ向き研究であり臨床試験ではないが、実臨床の疑問に重要なものであるため取り上げる。米国のがんデータベースからStageI~IIIでER 1~10%の症例を抽出し、術後ホルモン療法の実施率と予後を検討したものである。データベースから7,018例の対象症例が抽出され、42%の症例が術後ホルモン療法を省略されていた。ホルモン療法実施群と非実施群におけるOSは3年OSが92.3% vs.89.1%であり、HR:1.25、95%CI:1.05~1.48、p=0.01と実施群で良い傾向にあった。後ろ向き研究ではあるが、ER低発現であっても術後ホルモン療法に意義がある可能性が提示されたことは、今後の術後治療の選択にとって重要な情報である。PRO-DUCE試験最後に日本からのもう1つの口演であるPRO-DUCE試験を紹介する。これは治療薬の臨床試験ではなく、ePROが患者のQOLに影響するかを検証した試験である。関西医科大学の木川 雄一郎先生によって発表された。本試験はT-DXdによる治療を受ける患者を対象として、ePRO+SpO2/体温の介入が通常ケアと比較してQOLに影響するかを比較した。主要評価項目はベースラインから治療開始24週後のEORTC QLQ-C30を用いたglobal health scoreの変化であり、ePRO群では-2.4、通常ケア群では-10.4であり、両群間の差は8.0(90%CI:0.2~15.8、p=0.091)と統計学的に有意にePRO群で良好であった。その他の項目では倦怠感はePRO群で良好であったが、悪心/嘔吐は両群間の差は認めなかった。この研究は日本から乳がんにおいてePROが有効であることを示した初の試験である。ePROは世界的にも必須のものとなっており、今後の発展が期待される。

14.

生活習慣の改善でアルツハイマー病の進行が抑制か

 食事や運動などの健康的な生活習慣を組み合わせて取り入れることが、軽度認知障害(MCI)や初期の認知症の患者の認知機能維持に役立つことが、米国の非営利団体である予防医学研究所(Preventive Medicine Research Institute)所長のDean Ornish氏らが実施したランダム化比較試験(RCT)で示された。このRCTでは、健康的な食事、定期的な運動、ストレスマネジメントなどを組み合わせた生活習慣改善プログラムを受けた患者の約71%で認知症の症状が安定、または薬剤を使わずに改善していた。それに対し、こうした生活習慣の改善を行わなかった対照群では約68%の患者で症状の悪化が認められたという。この試験の詳細は、「Alzheimer’s Research and Therapy」に6月7日掲載された。Ornish氏らは、「生活習慣の改善が認知症やアルツハイマー病の進行に影響を与えることを示した研究は、これが初めてだ」と説明している。 Ornish氏らはこのRCTで、MCIまたは初期のアルツハイマー型認知症と診断された51人を登録し、生活習慣を改善するプログラムを受ける群と対照群のいずれかにランダムに割り付けた。生活習慣改善プログラムは、以下の4つの要素で構成されていた。1)有害な脂質や精製された穀類、アルコール、甘味料の摂取を抑え、ホールフード(加工や精製をしないか極力抑えた野菜や果物、穀類、魚など)と植物性食品を中心としたプラントベース食を基本とする食事の摂取、2)低強度の筋力トレーニングを週に3回以上と有酸素運動を1日に30分以上実施、3)瞑想やストレッチ、呼吸法、誘導イメージ療法などによるストレスマネジメントを1日1時間実施、4)患者とそのパートナーのためのサポートグループの1時間の活動を週3回実施。 その結果、20週間後の時点で、Clinical Global Impression of Change(CGIC)での認知機能の評価において、生活習慣改善プログラム群では17人(約71%)が改善か状態を維持していると評価されたのに対し、対照群では17人(68%)が最小限〜中等度の悪化と評価されたことが明らかになった。また、認知機能とアミロイドタンパク質などのアルツハイマー病の血中マーカーの双方において、生活習慣改善プログラム群と対照群の間に有意差が認められた。例えば、生活習慣改善プログラム群ではアミロイド値の改善が認められたが、対照群では同値は悪化していた。さらに、生活習慣改善プログラムの遵守度が高いほどアミロイド値の低下の幅も大きくなることが示された。このほか、生活習慣改善プログラム群ではアルツハイマー病リスクを高める微生物が有意に減少し、アルツハイマー病に対して保護的に働く可能性が指摘されている微生物が増加していることも確認されたという。 Ornish氏は、「今回のRCTの結果は極めて心強いものであり、慎重に受け止めてはいるが楽観視している。この結果は、多くの人々に新たな希望と選択肢をもたらすことになるかもしれない」と話す。 このRCTの参加者の一人は、以前は1冊の本を読み終えるのに何週間もかかっていたが、RCT終了後は3~4日で読み終えることができ、しかも読んだ内容のほとんどを覚えていたという。また、自身の資金や退職後の生活を管理する能力を取り戻した元経営者の参加者もいた。さらに、ある女性参加者は、それまで5年間にわたってできていなかった家業の財務レポートを、現在では正確に作成できるようになったと話している。 今回のRCTに参加した米マサチューセッツ総合病院McCance Center for Brain HealthのRudolph Tanzi氏は、「アルツハイマー病の新たな治療法は切実に求められている。バイオファーマ企業はアルツハイマー病の治療薬を開発するために数十億ドルもの資金を投じてきたが、過去20年間に承認に至ったアルツハイマー病治療薬はわずか2剤だけだ。このうちの1剤は、最近、市場から回収され、もう1剤は効果が限定的で価格は極めて高く、脳浮腫や脳出血などの重篤な副作用を引き起こすこともある」と指摘。「それに対して、今回の試験で実施した集中的な生活習慣の改善は、わずかな費用で認知機能と日常生活機能の改善をもたらすなど、良い効果しかないことが示された」と述べている。

15.

「面倒くさい」は認知症一直線【外来で役立つ!認知症Topics】第18回

「面倒くさいは、認知症一直線です」とは、私が外来でよく使うフレーズの1つである。認知症専門外来では、もの忘れ関連の訴えと共に「意欲、やる気がなくなった」という訴えがよくある。これを患者さん自身は普通、日常生活の場で「面倒くさい」と述べる。「一直線」を言われた方の反応は、「ほーっ、確かにね」という表情か、逆に「いや認知症ってもの忘れでしょう?」と怪訝な表情かに分かれる。さて若い頃は、普通の精神科医であった私はいつの頃からか、「脳の器質的な病気で意欲が落ちないものはない、脳はどの部分がやられようと必ず意欲低下につながる」と思うようになった。そんなこともあって、軽度認知障害(MCI)かな?と思うような人で「面倒くさい」が口癖になっている人には、この「一直線」を言う。実は最近、これはまんざらの台詞ではないと思える論文を読んだ。SPECTやPETでアミロイド沈着を評価というのは、アルツハイマー病(AD)について、その脳画像を含む最初期の生物学的マーカーに関わる近年のレビューなどを読んだことを指す。その端緒は、レカネマブのようなアミロイドβ系の治療薬を使うにはAβ-PETか脳脊髄液穿刺が必要なところにある。安くなったとはいえ、前者は15万円もする。後者はいかにも痛そうと嫌われがちで、しかも穿刺に熟練した医師でも穿刺できない高齢者が少なくない。それだけに既存のデータから、基準を満たすアミロイド沈着を正確に予想したいと考えた。そこで注目したのはSingle Photon Emission Computed Tomography(SPECT)やPositron Emission Tomography(PET)を用いた脳機能画像である。広く使われているMRI画像という形態画像も当然考えられるのだが、アミロイド沈着をより高い精度で予測するには、経験的に機能画像のほうが良さそうだと思ったのである。多くの医療関係者も世間一般の人も、ADとくると海馬だと深く刻まれているようだ。だからADでは初期から海馬が萎縮したり、その血流が低下したりすると思いがちである。しかしMCIやその前のPreclinical(前臨床期)には海馬の萎縮はまずないし、脳血流SPECTではむしろ血流が代償的に増加しているという報告も多い。だから臨床の場で患者さんに説明するとき、「アルツハイマー病がある程度進まないと海馬の萎縮もみられません。あなたのような(認知症だという)白黒がはっきりしないレベルで、海馬の萎縮がないのはもっともなことです」と話すことが少なくない。最初に変化が現れるのは海馬ではない!さて筆者は1990年代に、当時の国立精神・神経センター・武蔵病院(現:国立精神・神経医療研究センター)でわが国のSPECT界のレジェンドである松田 博史先生のもとでAD脳の標準画像を作成する一連の研究に参加させてもらった。当時は海馬信仰者であった筆者の最大の驚きは、いわば知られざる脳部位である帯状回後部や楔前部などで、実は最初に脳血流(rCBF)が低下するという結果であった。調べてみると、PET研究から、当時アメリカにおられた簑島 聡博士がすでに、ADではここでグルコース代謝が最初に生じると発表されていた。この帯状回後部や楔前部は、今でも多くの人には馴染みが薄いだろう。前者は、長期記憶とワーキングメモリを密接に結び、また海馬や海馬周辺皮質と相互作用して学習や記憶に関わる。また感覚野や運動野とのやり取りを通して、空間機能に関連する役割も持つ。一方で、楔前部の機能には、視空間イメージ、エピソード記憶の再生などがある。これらの脳機能はいずれもADの最初期から障害を受けるから、「帯状回後部と楔前部、なるほどね」という気になる。SPECTやPETからアミロイド沈着を予測する話に戻る。まずこの30年近くのレビューによれば、SPECTとPET共に最初期の変化は、帯状回後部や楔前部、そして側頭・頭頂移行部に現れることが確立している。そしてADを示す最初のバイオマーカーは脳血流低下だとされる。ADの原因関連物質はアミロイドだが、その初期形態であるオリゴマーの神経への毒性がポイントである。実は筆者は、最近これが血管への毒性も持っていると初めて知った。脳血流低下と意欲の欠如なぜADになると脳血流が減少するのか、長年疑問に思ってきたのだが、あるレビューが簡潔にこれを説明していた1)。「オリゴマー状態のアミロイドβが毛細血管壁を取り巻く収縮性周皮細胞に働きかけて毛細血管の狭窄がおこる。この狭窄により毛細血管内部で好中球捕捉が起こって血栓ができる。この両者が主因となって脳血流は減少する。」最近では、ADのPreclinical(前臨床期)で、帯状回後部と楔前部にみられる脳血流低下はアミロイド沈着に先立って現れ、認知面では遂行機能の障害が記憶障害の出現より前にみられるという報告2)もある。言うまでもなく、遂行機能とやる気(意欲)は表裏で、前頭葉が主に関わる。これが冒頭で「面倒くさい(意欲の欠如)は、認知症一直線」は、まんざらでもないと述べた理由である。参考1)Korte N, et al. Cerebral blood flow decrease as an early pathological mechanism in Alzheimer's disease. Acta Neuropathol. 2020;140:793-810.2)Ali DG, et al. Amyloid-PET Levels in the Precuneus and Posterior Cingulate Cortices Are Associated with Executive Function Scores in Preclinical Alzheimer's Disease Prior to Overt Global Amyloid Positivity. J Alzheimers Dis. 2022;88:1127-1135.

16.

第101回 桂ざこばさん逝去、喘息とCOPDのオーバーラップの治療は

エイコ呼吸器内科領域で「エイコ」と呼ばれる病態があります。人の名前ではなく、「ACO(asthma and COPD overlap)」のことを指します。桂ざこばさんが、この病態に罹患しておられ、先日逝去されたと報道されました。ACOの患者さんは、呼吸器内科以外では診療されていないかもしれませんが、調べると結構多い病態です。ACOは、喘息になりやすい2型炎症の素因に加えて、喫煙者に多いCOPDが加わることで、1秒量・1秒率がガクンと下がる病態です。典型的には「成人持ち越し喘息・アトピー素因がある喫煙者」という患者像になります。喘息であるにもかかわらず、胸部CTにおいて気腫肺を確認することでも疑うことが可能です。日本と海外の齟齬日本呼吸器学会では、ACOの日本語表記を「喘息とCOPDのオーバーラップ」として、2018年と2023年に診断と治療の手引きを刊行しています1)。しかしながら、単一疾患概念(single disease entity)として、実は議論の余地があります。喘息の国際ガイドラインGINA20242)では、「基本的に喘息は喘息として対応し、COPDはCOPDとして対応する」というsingle disease entityとしての確立には否定的です。同様に、COPDの国際ガイドラインGOLD20243)においても、「もはやACOという表記は行わない」と明記されています。ですので、国際的にもACOという病態は「喘息とCOPDの足し算」と認識されており、この病名自体はもしかして消えゆく運命にあるのかもしれません。とはいえ、軽視してよいかというとそういうわけではなく。あくまで学術的な定義は不要ということであって、2型糖尿病+肥満、高血圧症+慢性腎臓病などのように、合併した場合には警戒度を上げて対応すべきです。吸入薬はどれを選択するか?ACOの治療は、喘息の吸入薬とCOPDの吸入薬で同時に治療することが肝要になります。重症の場合は、吸入ステロイド(ICS)/吸入長時間作用性β2刺激薬(LABA)/吸入長時間作用性抗コリン薬(LAMA)合剤のトリプル吸入療法が適用され、それに満たない場合には喘息主体の場合ICS/LABA合剤、COPD主体の場合ICS+LAMAが選択されます。ただ、ICS/LAMAという合剤が存在しないため、COPD寄りのACOではICS+LAMAで両者を分けて処方することがガイドライン上想定されています。しかしながら、吸入薬とは服薬アドヒアランスが高いこと前提にある世界です。そのため、ICSとLAMAを別々に処方することは実臨床ではほぼなく、ICS/LABAで押すか、ICS/LABA/LAMAのトリプル吸入製剤を処方するかのどちらかになります。どちらの病名も適用して治療に当たるため、トリプル吸入製剤についてはどの製剤も保険適用上使用可能となります(表1)。画像を拡大する表1. トリプル吸入製剤参考文献・参考サイト1)喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き第2版作成委員会. 喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き第2版. 2023年.2)2024 GINA Main Report Global Strategy for Asthma Management and Prevention.3)Global Strategy for Prevention, Diagnosis and Management of COPD: 2024 Report.

17.

統合失調症に対する抗精神病薬の有効性および安全性の性差

 抗精神病薬は、精神疾患患者にとって中心的な治療薬であるが、有効性と安全性のバランスをとることが求められる。治療アウトカムを改善するためにも、抗精神病薬の有効性および安全性に影響を及ぼす個別の因子を理解することは重要である。オーストラリア・モナシュ大学のMegan Galbally氏らは、抗精神病薬に関連する有効性および忍容性における性差について、調査を行った。CNS Drugs誌オンライン版2024年5月7日号の報告。 大規模抗精神病薬比較試験であるClinical Antipsychotic Trials of Intervention Effectiveness(CATIE)の第IおよびIa相試験のデータを2次分析した。CATIE試験では、統合失調症患者を経口オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ziprasidone、ペルフェナジンによる治療にランダムに割り付け、二重盲検治療を行った。評価基準には、陽性陰性症状評価尺度(PANSS)、臨床全般印象度(CGI)、Calgary Depression Rating Scale、自己報告による副作用、服薬コンプライアンス、投与量、体重、さまざまな血液パラメータを含めた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は1,460例(女性:380例、男性:1,080例)であった。・治療反応、副作用、コンプライアンス、抗精神病薬の投与量は、男女間でほとんど差が認められなかった。・便秘(28% vs.16%)、口渇(50% vs.38%)、女性化乳房/乳汁漏出(11% vs.3%)、失禁/夜間頻尿(16% vs.8%)、自己報告による体重増加(37% vs.24%)は、女性において男性よりも有意に多く報告された(各々、p<0.001)。・リスペリドン治療群では、女性(61例)において男性(159例)よりもプロラクチンレベルの有意な上昇が認められた(p<0.001)。・臨床医の評価による測定値、体重増加、その他の臨床検査値は、全体として差が認められなかった。 著者らは「抗精神病薬の有効性および忍容性は、全体としての性差は限られていたが、リスペリドンについては、いくつかの特定の知見がみられた。抗精神病薬の試験において性差を評価することは、統合失調症患者に対する個別化治療だけでなく、有効性の向上や副作用の軽減にとっても重要である」としている。

18.

T-DXd治療中の転移乳がん患者、ePROモニタリングがQOLに効果(PRO-DUCE)/ASCO2024

 トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)で治療中のHER2+転移乳がん患者において、通常ケアに加え、電子患者報告アウトカム(ePRO)モニタリングを実施することにより、24週目のglobal QOLスコアのベースラインからの変化が良好だったことが、わが国で実施されたPRO-DUCE試験で示された。関西医科大学の木川 雄一郎氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で発表した。 ePROモニタリングは、まず患者が自身のスマートフォンなどのデバイスを用いて「ヒビログ」アプリから、体温・SpO2を毎日、PRO-CTCAE症状を週1回報告する。報告された症状が事前に設定した閾値を超えた場合、医師をはじめとした医療従事者に警告通知メールが送信されePROが評価される。さらに必要に応じて72時間以内に電話相談を実施するという流れである。木川氏らは、T-DXd投与中の乳がん患者におけるePROモニタリングのQOLへの効果を、多施設共同無作為化非盲検群間比較探索研究で評価した。・対象:T-DXdの投与対象となるHER2+転移乳がん患者・試験群:通常ケア+ePROモニタリング・対照群:通常ケア・評価項目:[主要評価項目]EORTC QLQ-C30に基づくglobal QOLスコアのベースラインから24週目の変化[副次評価項目]各ドメインにおけるベースラインから24週目/追跡期間終了時までの変化、がん関連の疲労、EORTC QLQ-C30における悪化までの期間、ePROのアドヒアランスなど 主な結果は以下のとおり。・2021年3月~2023年1月に日本の38病院で登録された111例をePROモニタリング群(56例)と通常ケア群(55例)に割り付けた。QOL解析の対象はそれぞれ54例と52例であった。・24週目のglobal QOLスコアのベースラインからの変化は、ePROモニタリング群が通常ケア群より有意に良好だった(平均差:8.0、90%信頼区間[CI]:0.2~15.8、p=0.091、探索的研究のためαエラー<0.10で有意と設定)。・24週目の疲労はePROモニタリング群で有意に改善したが(平均差:-8.4、95%CI:-16.1~-0.6)、悪心/嘔吐では差がなかった(平均差:0.5、95%CI:-6.2~7.1)。・24週目の役割機能、認知機能、社会機能はePROモニタリング群で良好で、それぞれの平均差は10.0(95%CI:1.1~18.9)、6.3(同:1.1~11.5)、10.9(同:3.9~18.0)であった。・global QOLスコアの臨床的に意義のある悪化までの期間の中央値は、ePROモニタリング群で3.9ヵ月、通常ケア群で3.0ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.73、95%CI:0.45~1.17)。認知機能については、ePROモニタリング群16.3ヵ月、通常ケア群6.3ヵ月と有意に延長した(HR:0.41、95%CI:0.24~0.71)。 木川氏は「本試験の結果から、T-DXd投与中のHER2+転移乳がん患者において、ePROモニタリングによりQOLを維持・改善する可能性が示唆される」と期待を示した。

19.

気候変動は脳の疾患の悪化と関連

 気候変動は、脳卒中、片頭痛、アルツハイマー病、てんかん、多発性硬化症などの脳の疾患を悪化させる可能性のあることが、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)クイーンスクエア神経学研究所教授のSanjay Sisodiya氏らによる研究で明らかになった。研究グループは、「気候変動は、さまざまな神経疾患にかなりの影響を与える可能性が高い」と危惧を示している。この研究の詳細は、「The Lancet Neurology」6月号に掲載された。 この研究では、1968年から2023年の間に発表された332件の研究データを分析し、気候変動が、2016年の世界疾病負荷研究(Global Burden of Disease Study 2016)で検討された、脳卒中、片頭痛、アルツハイマー病、髄膜炎、てんかん、多発性硬化症などの19種類の神経疾患、および不安や抑うつ、統合失調症などの精神疾患に与える影響を検討した。 その結果、気候がいくつかの脳の疾患に影響を与えることに対しては明確なエビデンスがあり、特に脳卒中と神経系の感染症に対する影響は大きいことが示された。また、気候変動の中でも、極端な気温(高い場合も低い場合も)と気温の日内変動の大きさは脳の疾患に影響を及ぼし、特に、それらが季節的に異常な場合には影響が大きくなることも判明した。Sisodiya氏は、「夜の気温はとりわけ重要と考えられる。夜間を通して高い気温は睡眠を妨げ、睡眠の質の低さは多くの脳の疾患を悪化させることが知られているからだ」と話す。 実際に、本研究では、高温の日や熱波が発生しているときには、脳卒中による入院や身体障害の発生、死亡数が増加することが示された。一方、認知症の人は、認知機能障害が妨げとなって環境の変化に合わせた行動を取るのが難しいため、極端な気温のときや洪水や山火事のような自然災害が発生したときに悪影響を受けやすい傾向が認められた。研究グループは、「認知症の人はリスクに対する意識が低下しているため、暑いときに助けを求める能力や、水分の摂取量を増やし、衣類を調節するなどして危害を軽減させる能力が低下している」と説明している。さらに、多くの精神疾患で、高温、気温の日内変動、極端に高い気温と低い気温は、精神疾患の発症、入院、死亡リスクと関連していることも示された。 こうした結果を踏まえて研究グループは、「悪天候に起因する出来事が深刻さを増し、地球の気温が上昇するにつれて、過去の研究では脳の疾患に影響を与えるほど深刻ではないと考えられた環境要因が悪化し、人々はその悪化した要因にさらされている」と指摘する。その上で、気候変動の現在の状態だけでなく、将来の状態も考慮した最新の研究を行うことの重要性を強調している。 Sisodiya氏は、「この研究は気候条件が悪化していく中で実施されたが、有用な情報を個人や組織に提供し続けるためには、敏捷かつ動的であり続ける必要がある」と話す。同氏はまた、「将来の気候シナリオが脳の疾患へ及ぼす影響を見積もる研究はほとんどないことが、将来の計画を立てることを難しくしている」と述べている。

20.

英語で「それでは始めましょう」は?【1分★医療英語】第131回

第131回 英語で「それでは始めましょう」は?《例文1》Let's get the ball rolling with the test.(それでは、その検査から始めましょう)《例文2》Shall we get the ball rolling with your blood pressure check?(それでは血圧の測定から始めましょうか?)《解説》“Let's get the ball rolling”は、何かのプロセスや活動を始めるときに使われる表現です。直訳すると「ボールを転がし始めましょう」となりますが、そこから転じて、「それでは始めましょう」という意味で用いられます。医療現場においても、診察を始めるとき、検査を開始するとき、治療に取り掛かるときなど、さまざまなシチュエーションでこのフレーズを使うことができます。英語では、具体的な行動に移ることを示唆するために、このような動きを連想させる表現がよく用いられます。たとえば、“Let's kick things off”なども何かを始める際に使える表現です。よりシンプルな“Let’s begin”や“Let’s get started”などでもよいですが、“Let's get the ball rolling”のような少し気の利いたフレーズは親しみやすさも兼ね備えており、コミュニケーションをより円滑にすることに役立ってくれるため、レパートリーに加えておくとよいでしょう。講師紹介

検索結果 合計:531件 表示位置:1 - 20