医療一般|page:60

動物病院での猫の不安を軽減する薬を米FDAが承認

 猫を飼っている人なら、猫を獣医師のもとへ連れていくことが猫と飼い主の双方にとっていかにストレスとなるかを経験的によく知っているだろう。米食品医薬品局(FDA)は11月17日、このような猫の不安を軽減する新薬を承認したことを発表した。FDAは、Bonqatと呼ばれるこの抗不安薬は、「移動中や動物病院での診察時に猫が感じる不安や恐怖を和らげるように設計されている」とニュースリリースで説明している。  Bonqatは、過活動状態にある神経を鎮める薬物であるプレガバリンを含む、初のFDA承認薬だ。FDAの説明によると、同薬は、猫を連れて移動するか、または動物病院で診察を受ける1時間半ほど前に経口投与すればよい。投与は2日間連続で可能である。

遺伝性血管性浮腫治療薬のホームデリバリーでQOL向上を目指す/CSLベーリング

 2023年12月5日、CSLベーリング主催による「遺伝性血管性浮腫(HAE)患者さんのQOL向上をめざして」と題したプレスセミナーが開催された。同セミナーでは、広島市民病院 病院長の秀 道広氏による「HAE病態解明と治療法の進歩について」の講演が行われたほか、NPO法人遺伝性血管性浮腫患者会(HAEJ)理事長の松山 真樹子氏が患者の家族として、日常の苦労やHAE患者の今後の課題を述べた。  また、CSLベーリングは同日付のプレスリリースで、2022年11月に発売されたHAE急性発作発症抑制薬「乾燥濃縮人C1-インアクチベーター(商品名:ベリナート皮下注用2000)」による在宅治療を行っている患者に対して、医薬品配送サービス「CSLホームデリバリー」を2023年12月1日より全国で開始したと発表した。

高リスクHER2+乳がん、術前療法へのアテゾリズマブ追加でpCR改善は(APTneo)/SABCS2023

 HER2陽性高リスク乳がんに対する術前補助療法として、トラスツズマブ(H)+ペルツズマブ(P)+化学療法は標準治療となっている。また、抗HER2療法に対する免疫系の寄与を示すデータが報告され、免疫チェックポイント阻害薬と抗HER2抗体の組み合わせが裏付けられている。イタリア・Fondazione MichelangeloのLuca Gianni氏らは、HP+化学療法へのアテゾリズマブ(±アントラサイクリン)の追加を評価することを目的として、第III相APTneo試験を実施。サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で病理学的完全奏効(pCR)についてのデータを報告した。

コーヒーや炭酸飲料、潰瘍性大腸炎リスクを減少/日本人での研究

 食事は潰瘍性大腸炎リスクに影響する可能性があるが、日本人でのエビデンスは乏しい。今回、日本潰瘍性大腸炎研究グループが、コーヒーやその他のカフェインを含む飲料・食品の摂取、カフェインの総摂取量と潰瘍性大腸炎リスクとの関連を症例対照研究で検討した。その結果、欧米よりコーヒーの摂取量が少ない日本においても、コーヒーやカフェインの摂取が潰瘍性大腸炎リスクの低下と関連することが示された。愛媛大学の田中 景子氏らがJournal of Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2023年12月10日号で報告。

小児の消化管アレルギー患者の約半数は新生児期に発症/国立成育医療研究センター

 新生児、小児では消化管は発達途上であり、アレルギーを発症しやすいことが知られている。一方でわが国には、新生児、乳児の消化管アレルギーについて全国を対象にした疫学研究は行われていなかった。そこで、国立成育医療研究センター研究所 好酸球性消化管疾患研究室の鈴木 啓子氏らの研究グループは、日本で初めて2歳未満の新生児、乳児の消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸症)に関する全国疫学調査を実施。その結果、新生児、乳児の消化管アレルギーの約半数は生後1ヵ月までの新生児期に発症していることが判明した。Allergology International誌オンライン版2023年10月30日号からの報告。

腎移植患者に対する帯状疱疹ワクチン接種の推奨/日本臨床腎移植学会

 日本臨床腎移植学会は、2023年11月7日付の「腎移植患者における帯状疱疹予防に関するお知らせ」にて、腎移植患者に対する帯状疱疹発症予防のための乾燥組換え帯状疱疹ワクチン(商品名:シングリックス筋注用、製造販売元:グラクソ・スミスクライン)の接種を積極的に検討するよう同学会の会員に向けて通達した。  米国疾病予防管理センター(CDC)の勧告や海外の最新のガイドラインにおいて、固形臓器移植患者に対するワクチンの接種は、原則、移植前に接種するよう推奨されており、移植前にワクチン接種が不可能な場合は、移植後少なくとも6~12ヵ月後に接種することが望ましいとされている。

新規統合失調症患者に使用される抗精神病薬の有効性と忍容性~メタ解析

 英国・ウルバーハンプトン大学のZina Sherzad Qadir氏らは、PRISMA-P声明に従って、統合失調症治療に使用される経口抗精神病薬の有効性および忍容性を比較するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Pharmacy(Basel、Switzerland)誌2023年11月10日号の報告。  主要アウトカムは、症状の改善、副作用に対する忍容性、治療中止理由により測定された臨床反応とした。  主な結果は以下のとおり。 ・21件の研究を分析に含めた。 ・個々の患者における治療反応は、アリピプラゾールvs.ziprasidoneおよびクエチアピン(CDSS:p=0.04、BPRS:p=0.02、YMRS:p=0.001)、ziprasidone vs.クエチアピン(CGI:p=0.02、CDSS:p=0.02)で認められた。 ・アリピプラゾールは、リスペリドン、ziprasidone、クエチアピンよりも忍容性が高かった(p<0.05)。 ・クエチアピンは、アリピプラゾール、ziprasidone、リスペリドンよりも忍容性が高かった(p<0.05)。 ・ziprasidoneは、クエチアピン、ハロペリドール、オランザピンよりも忍容性が高かった(p<0.05)。 ・リスペリドンは、オランザピンよりも忍容性が高かった(p=0.03)。 ・ハロペリドールは、オランザピン、クエチアピンよりも忍容性が高かった(p<0.05)。 ・オランザピンは、クエチアピンよりも治療中止リスクが低かった(p<0.05)。

ヘムライブラ、重症血友病Aの乳児に対する早期予防投与でベネフィット/中外

 中外製薬は、未治療または治療歴の短い血液凝固第VIII因子に対するインヒビター非保有の重症血友病Aの乳児を対象とした第III相HAVEN 7試験の主要解析において、へムライブラ(一般名:エミシズマブ)の有効性および安全性が裏付けられたことを発表した。生後12ヵ月までの乳児において、ヘムライブラが臨床的意義のある出血コントロールを達成し、忍容性も良好であったことが示されたこの新しいデータは、2023年12月9日~12日にカリフォルニア州サンディエゴで開催された第65回米国血液学会(ASH:American Society of Hematology)年次総会で発表され、プレスプログラムにも採択された。  重症血友病Aによる乳児とその保護者や介護者への負担は大きい。これまでに複数の臨床試験により、早期からの出血抑制を目的とする治療が、長期にわたり転帰を改善し、かつ頭蓋内出血のリスクを低下させることが示されている。このことから、世界血友病連盟(WFH:World Federation of Hemophilia)の治療ガイドラインでは、定期的な出血抑制を目的とする治療を低年齢で開始することが血友病の標準治療とされている。ところが、多くの血友病Aの乳児では、生後1年までは出血抑制を目的とする治療が開始されていない。ヘムライブラは、すでに乳児に対しても承認、使用されており、出生時から皮下投与が可能である。また、維持投与においては複数のさまざまな投与間隔レジメンにより柔軟な治療選択が可能な薬剤である。

TN乳がん術前免疫化療前・後のニボルマブ単剤、pCRに有意差なし(BCT1902/IBCSG 61-20 Neo-N)/SABCS2023

 StageI~IIBのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者に対して、12週間の非アンスラサイクリン系抗がん剤+ニボルマブの術前補助療法の前または後にニボルマブ単剤治療を組み合わせた第II相BCT1902/IBCSG 61-20 Neo-N試験の結果、ニボルマブ単剤治療の順番にかかわらず有望な病理学的完全奏効(pCR)率を示したことを、オーストラリア・Newcastle大学のNicholas Zdenkowski氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023、12月5~9日)で発表した。 ・対象:StageI~IIBのTNBC患者 108例

NAFLD、発症年齢が早いほどがんリスク上昇

 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD、欧米では2023年6月より病名と分類法を変更)の発症年齢は低下傾向にあるが、年齢が異なる約6万4,000例を対象としたコホート研究において、NAFLDはがんリスク上昇と関連し、発症年齢が若いほどがんリスクが高いことが示された。中国・首都医科大学のChenan Liu氏らによる本研究の結果はJAMA Network Open誌2023年9月25日号に掲載された。

アルツハイマー病リスクに対する身体活動の影響~メタ解析

 すべての原因による死亡率や認知症を減少させるために、身体活動(PA)は有用である。しかし、アルツハイマー病リスクに対するPAの影響については、議論の余地が残っている。中国医科大学付属第一医院のXiaoqian Zhang氏らは、アルツハイマー病発症とPAとの根本的な影響を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Ageing Research Reviews誌オンライン版2023年11月17日号の報告。  2023年6月までに公表された研究をPubmed、Embase、Cochrane Library、Web of Scienceより検索した。ランダム効果モデルを用いて、エフェクトサイズ(ハザード比[HR]、95%信頼区間[CI])を算出した。

日本人コロナ患者で見られる肥満パラドックス

 日本人では、肥満は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスク因子ではない可能性を示唆するデータが報告された。肥満ではなく、むしろ低体重の場合に、COVID-19関連死のリスク上昇が認められるという。下関市立市民病院感染管理室の吉田順一氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Medical Sciences」に9月11日掲載された。  古くから「肥満は健康の敵」とされてきたが近年、高齢者や心血管疾患患者などでは、むしろ太っている人の方が予後は良いという、「肥満パラドックス」と呼ばれる関連の存在が知られるようになってきた。COVID-19についても同様の関連が認められるとする報告がある。ただし、それを否定する報告もあり、このトピックに関する結論は得られていない。吉田氏らは2020年3月3日~2022年12月31日までの同院の入院COVID-19患者のデータを用いて、この点について検討した。

BMIが高いとコロナワクチンの抗体応答が低い

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンが普及し、その効果に関してさまざまな報告がなされている。ワクチンと体型、とくにBMI高値の肥満の人にはどのように関係するのであろう。この疑問に対し、オーストラリア・クイーンズ大学化学・分子バイオサイエンス学部のMarcus Zw Tong氏らの研究グループは、COVID-19から回復した被検者から血液サンプルを採取し、ワクチン接種前後の抗体反応を測定・解析した。その結果、高いBMIがワクチンの抗体応答低下と関連することが示唆された。Clinical & Translational Immunology誌2023年12月3日号の報告。

高リスク早期乳がんへの術後アベマシクリブ併用、再発スコアによらず有効(monarchE)/SABCS2023

 HR+/HER2-リンパ節転移陽性の高リスク早期乳がんに対する術後内分泌療法(ET)にアベマシクリブ追加の有用性を検討したmonarchE試験では、無浸潤疾患生存期間(iDFS)と無遠隔再発生存期間(DRFS)が有意かつ臨床的に意義のある改善が示され、さらに併用療法終了から5年後にiDFSとDRFSの絶対的ベネフィットがさらに大きくなったことが報告されている。今回、原発腫瘍組織の分子プロファイルと臨床転帰の関連について検討した結果を、英国・The Royal Marsden Hospital, Institute of Cancer ResearchのNicholas C. Turner氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で発表した。

統合失調症患者の服薬順守の予測因子~大規模コホート

 統合失調症は、重度の精神疾患の中で最も顕著な服薬アドヒアランスの課題を有する疾患であるが、患者の服薬アドヒアランスの予測や改善に関する利用可能なプロスペクティブ研究のデータは限られている。フランス・ボルドー大学のDavid Misdrahi氏らは、大規模コホートにおける1年間の服薬アドヒアランスの予測因子を特定するため、クラスタリング分析を用いた検討を行った。Translational Psychiatry誌2023年11月7日号の報告。  統合失調症を専門とする10施設より募集した外来患者を対象に、臨床医と患者による服薬アドヒアランス測定を含む1日の標準化バッテリーで評価を行った。2段階クラスタリング分析および多変量ロジスティック回帰を用いて、服薬アドヒアランス評価スケール(MARS)とベースラインの予測因子に基づいた服薬アドヒアランスのプロファイルを特定した。

臍帯結紮を遅らせることが早産児の救命につながる可能性

 早産児では、出産後に母子をつないでいるへその緒(臍帯)を固定した上で切断する「臍帯結紮(けっさつ)」を、出生の30秒後以後、なるべく遅らせて行うと、出生直後に臍帯結紮を行った場合と比べて退院までに死亡するリスクが低下することを示した2つの解析結果が、「The Lancet」に11月14日掲載された。これらの論文の筆頭著者で、シドニー大学(オーストラリア)のAnna Lene Seidler氏は、「われわれの解析結果は、臍帯結紮を遅らせることで一部の早産児の命を救える可能性を示した最良のエビデンスだ」と話している。

高中性脂肪血症が認知症を防ぐ?

 中性脂肪値が高いことは心血管系に悪影響を与えることが知られているが、認知機能に対する影響は異なる可能性のあることを示唆するデータが報告された。モナシュ大学(オーストラリア)のZhen Zhou氏らの研究によるもので、詳細は「Neurology」に10月25日掲載された。  この研究では、米国やオーストラリアの高齢者を対象に低用量アスピリンの影響を前向きに検討した縦断研究(ASPREE)と、英国の一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータが解析に用いられた。解析対象は、研究参加登録時に認知症や心血管イベントの既往歴のない65歳以上の高齢者で、前者は1万8,294人〔平均年齢75.1歳、女性56.3%、中性脂肪の中央値106mg/dL(四分位範囲80~142)〕、後者は6万8,200人〔同順に66.9歳、52.7%、139mg/dL(101~193)〕。

レカネマブ薬価決定、アルツハイマー病治療薬として12月20日に発売/エーザイ

 エーザイとバイオジェンは12月13日付のプレスリリースにて、アルツハイマー病の新たな治療薬であるヒト化抗ヒト可溶性アミロイドβ凝集体モノクローナル抗体のレカネマブ(商品名:レケンビ点滴静注200mg、同500mg)について、薬価基準収載予定日である12月20日より、日本で発売することを発表した。米国に次いで2ヵ国目となる。薬価は200mgが4万5,777円/バイアル、500mgが11万4,443円/バイアル。用法・用量は、10mg/kgを2週間に1回、約1時間かけて点滴静注で、患者が体重50kgの場合、年間約298万円になる。保険適用となり、さらに、治療費が高額になった場合は高額療養費制度も利用できる。

HER2+進行乳がん高齢患者への1次治療、T-DM1 vs.標準治療(HERB TEA)/SABCS2023

 HER2陽性進行乳がん患者の1次治療として標準的なHPD(トラスツズマブ+ペルツズマブ+ドセタキセル)療法は、高齢患者では有害事象により相対用量強度を維持できないケースやQOLが損なわれるケースがある。そのため、毒性は低く、有効性は劣らない高齢者における新たな治療オプションが求められる。国立国際医療研究センター病院の下村 昭彦氏は、HPD療法とトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)を比較した第III相HERB TEA試験(JCOG1607)の結果を、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で報告した。

長期服用でCVD死亡率を高める降圧薬は?~ALLHAT試験2次解析

 米国・テキサス大学ヒューストン健康科学センターのJose-Miguel Yamal氏らは降圧薬による長期試験後のリスクを判定するため、ALLHAT試験の2次解析を実施。その結果、心血管疾患(CVD)の死亡率は全3グループ(サイアザイド系利尿薬[以下、利尿薬]、カルシウムチャネル拮抗薬[CCB]、アンジオテンシン変換酵素[ACE]阻害薬)で同様であることが明らかになった。なお、ACE阻害薬は利尿薬と比較して脳卒中リスクを11%増加させた。JAMA Network Open誌12月1日号掲載の報告。