医療一般|page:71

KRAS G12C変異陽性NSCLCに対するadagrasib+ペムブロリズマブの有用性(KRYSTAL-7)/ESMO2023

 adagrasibは、半減期が長く(23時間)、用量依存的な薬物動態を示し、中枢神経系への移行性を有するKRAS G12C阻害薬である。また、肝臓やその他の臓器部位に対するoff-target作用も少ないと考えられている。KRAS G12C変異を有する進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、adagrasibとペムブロリズマブの併用療法を検討したKRYSTAL-7試験が実施され、PD-L1高発現(TPS 50%以上)の患者において有望な結果が示された。本結果は、米国・シカゴ大学メディカルセンターのMarina Garassino氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。

引用頻度が高いコロナ論文の多い国・大学は

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック開始から3年間、非常に多くのCOVID-19関連の論文が世界中で発表された。京都大学大学院医学研究科の船田 哲氏(現:慶應義塾大学)らの研究グループは、被引用数の多いCOVID-19関連論文を発表した国や機関、研究領域などの傾向を調査した。その結果、高被引用論文の件数は2021年末にピークに達した後、2022年末まで減少傾向を示し、発表数の多い国は当初の中国から米国および英国へと推移していることなどが判明した。JAMA Network Open誌2023年9月8日号に掲載。  本研究では、2020年1月~2022年12月の期間で、Clarivate社のEssential Science Indicators(学術論文の引用動向データを提供するデータベース)から、引用頻度の高い論文を、2ヵ月ごと18期間分を抽出した。それらの論文の固有のアクセッション番号に基づいて、論文データベースのWeb of Science Core Collectionを用いて書誌情報を照会し、COVID-19に関する論文を特定した。論文数は分数カウント法に基づいてカウントし、著者の国、所属機関、研究分野などを調査した。

HER2低発現乳がんへのT-DXd、32ヵ月でのOS・PFS・安全性(DESTINY-Breast04)/ESMO2023

 化学療法歴を有するHER2低発現の切除不能または転移のある乳がん患者に対して、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)と治験医師選択による化学療法(TPC)を比較した第III相DESTINY-Breast04試験において、より長い追跡期間(中央値32ヵ月)で評価した全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、安全性を、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのShanu Modi氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。

医学生のスマホ依存と睡眠との関係~メタ解析

 シンガポール・Singhealth PolyclinicsのMabel Qi He Leow氏らは、医学生におけるスマートフォン依存と睡眠の関連を評価するため、メタ解析を実施した。副次的アウトカムには、スマートフォン依存の有病率、スマートフォンの使用時間や使用目的、睡眠不足の有病率、睡眠時間と睡眠の質を含めた。その結果、医学生において睡眠不足が57%、スマートフォン依存が39%でみられ、相関指数は0.30であることが報告された。また、医学生は一般的にスマートフォンをテキストメッセージ、画像共有、ソーシャルネットワークに使用しており、1日の平均使用時間は4.9時間であることが明らかとなった。PLOS ONE誌2023年9月15日号の報告。

Uncommon EGFR変異陽性NSCLC、アファチニブがPFS改善(ACHILLES/TORG1834)/ESMO2023

 EGFR遺伝子変異は多様であり、多くのuncommon変異やcompound変異(EGFRチロシンキナーゼ部位に複数の変異を有する)が存在する。これらの多様な変異に対して、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)が有効性を示す可能性を示唆する報告はあるが、結論は得られていない。そこで、EGFR-TKIの活性が低いとされるexon20挿入変異やT790M変異を除くuncommon変異をsensitizing uncommon変異と定義し、EGFR遺伝子にsensitizing uncommon変異を有する非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象として、アファチニブと化学療法を比較する第III相試験(ACHILLES/TORG1834試験)が実施された。その結果、アファチニブは化学療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を改善した。本結果は、新潟県立がんセンター新潟病院の三浦 理氏によって欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表された。

尿路上皮がん1次治療、エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブでOSが倍増(EV-302/KEYNOTE-A39)/アステラス

 アステラス製薬は2023年10月23日付のプレスリリースにて、治療歴のない局所進行/転移尿路上皮がん(la/mUC)患者を対象とした第III相EV-302/KEYNOTE-A39試験において、エンホルツマブ ベドチンとペムブロリズマブの併用療法が、化学療法と比較して、死亡リスクを53%減少、全生存期間の中央値を15ヵ月以上延長したと発表した。本結果は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告された。  主な結果は以下のとおり。  EV-302試験で、エンホルツマブ ベドチン(商品名:パドセブ)+ペムブロリズマブ併用療法群(以下、「併用療法群」)は、白金製剤+ゲムシタビンを用いた化学療法群と比較して、OSおよび無増悪生存期間(PFS)を延長し、主要評価項目を達成した。

AYA世代ER+/HER2-乳がんの臨床学的・病理学的特徴/日本癌治療学会

 15~39歳の思春期・若年成人(adolescent and young adult:AYA)世代のがんは、ほかの世代のがんと比べて予後不良であることが多く、異なる特性を有することが指摘されている。そこで、横浜市立大学附属病院の押 正徳氏は、AYA世代のER陽性HER2陰性乳がん患者の特徴を検討し、その結果を第61回日本癌治療学会学術集会(10月19~21日)で発表した。なお、本演題は同学会の優秀演題に選定されている。  AYA世代の乳がんの特徴として、ホルモン受容体陰性やHER2陽性、トリプルネガティブの割合が高いこと、浸潤やリンパ節転移を伴っていること多いことなど挙げられている。しかし、年齢別の臨床学的・病理学的特徴については依然として不明な点が多い。そこで押氏らは、乳がん患者をAYA世代(40歳未満)、閉経期世代(40~55歳未満)、更年期世代(55~65歳未満)、高齢世代(65歳以上)の4つの年齢群に分類し、その特徴を分析した。

KRAS G12C変異大腸がん、ソトラシブ+パニツブマブが第III相試験でPFS延長(CodeBreaK 300)/ESMO2023

 KRAS G12C遺伝子変異を有する進行固形がんに対する、KRASG12C阻害薬ソトラシブの有用性をみる大規模バスケットCodeBreaK試験。第I相CodeBreaK 101試験ではKRAS G12C変異の転移大腸がん(mCRC)コホートにおいて、ソトラシブ+抗EGFR抗体パニツムマブ併用療法が30%の客観的奏効率(ORR)を示した。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)のPresidentialセッションでは、イタリアのFondazione IRCCS Istituto Nazionale dei TumoriのFilippo Pietrantonio氏が、第III相CodeBreaK 300試験の初回解析結果を発表した。

患者が油断しがちな健診結果の項目とは

 日本ベーリンガーインゲルハイムと日本イーライリリーは、各領域の専門医と連携し、健康診断で「要精密検査」や「要治療」といった異常所見があった際の二次検査の受診促進の取り組みとして、2023年10月17日に『ニジケンProject』を発足した。また、本プロジェクトの一環として二次検査に関する調査を実施したところ、3人に1人が健康診断の二次検査を「既読スルー」している現状であることが明らかになった。

PSMA標的治療薬ルテチウム-177、タキサン未治療の転移を有する去勢抵抗性前立腺がんでrPFS改善(PSMAfore)/ESMO2023

 タキサン未治療でアンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)治療歴のある、前立腺特異的膜抗原(PSMA)陽性の転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者において、ルテチウム-177[177Lu]Lu-PSMA-617は別のARPIによる治療と比較して画像上の無増悪生存期間(rPFS)を改善し、良好な安全性プロファイルを示した。米国・メイヨー・クリニックのOliver Sartor氏が第III相PSMAfore試験の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。同試験については1次解析において主要評価項目(rPFS)の達成が報告されており(ハザード比[HR]:0.41、95%信頼区間[CI]:0.29~0.56、p<0.0001)、今回は2次解析結果となる。

EGFR変異陽性NSCLCに対するオシメルチニブへのラムシルマブ上乗せは有用か?(OSIRAM-1)/ESMO2023

 第1世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)とVEGF阻害薬ラムシルマブの併用はEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)に有用であることが報告されているが、第3世代EGFR-TKIとの併用の有用性は明らかになっていない。そこで、第3世代EGFR-TKIのオシメルチニブとVEGF阻害薬ラムシルマブの併用療法の有用性を評価するOSIRAM-1試験が実施された。本試験の結果を北里大学病院/神奈川県立がんセンターの中原 善朗氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。

医療費に大きな影響を与える患者背景は?/慶應大ほか

 多疾患併存(マルチモビディティ)による経済的負担は、世界的な課題となっている。高額医療費患者における多疾患併存の寄与については不明な点が多いことから慶應義塾大学スポーツ医学研究センターの西田 優紀氏らの研究グループは、東京医科歯科大学、川崎医科大学、全国健康保険協会と共同して全国健康保険協会が提供する健康保険請求データを用いて横断研究を行い、日本人の医療費に大きな影響を与える多疾患併存パターンを解析した。その結果、上位10%の患者集団の95.6%で多疾患併存がみられたほか、高血圧症、糖尿病、脂質異常症を同時併発した患者が全集団の31.8%を占めることが判明した。PLoS One誌2023年9月28日の報告。

早期TN乳がんの術前・術後ペムブロリズマブによるEFS改善、5年後も持続(KEYNOTE-522)/ESMO2023

 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対して、術前および術後補助療法としてペムブロリズマブの追加を検討したKEYNOTE-522試験では、ペムブロリズマブ追加により病理学的完全奏効率(pCR)および無イベント生存期間(EFS)が有意かつ臨床的に意味のある改善を示したことがすでに報告されている。今回、第6回中間解析(追跡期間中央値63.1ヵ月)でのEFSを解析した結果、pCRの結果にかかわらず、術前化学療法単独と比べて臨床的に意味のあるEFS改善が持続していたことを、英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University LondonのPeter Schmid氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。全生存期間(OS)の追跡調査は進行中である。

新型コロナによる多臓器不全のメカニズム、iPS細胞由来オルガノイドで解明/阪大ほか

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染によって起きる特徴的な症状の1つとして全身の血管で血栓が形成され、多臓器不全につながることは知られていたが、そのメカニズムについては明らかではなかった。大阪大学ヒューマン・メタバース疾患研究拠点(WPI-PRIMe)の武部 貴則氏ほか、東京医科歯科大学、タケダ-CiRA共同研究プログラム(T-CiRA)、滋賀医科大学、名古屋大学の共同研究グループは、ヒトiPS細胞由来の血管オルガノイドを作成し、それを用いたin vitroおよびin vivo実験で、補体代替経路と呼ばれる分子経路群が血管炎や血栓の原因となりうることを発見した。さらに、補体代替経路を増幅するD因子に着目し、D因子を阻害する半減期延長型抗D因子抗体を用いることで、SARS-CoV-2感染モデルの血管炎症状の軽減に成功した。本研究結果は、Cell Stem Cell誌2023年10月5日号に掲載された。

高齢統合失調症患者における認知症発症の神経病理学的根拠

 統合失調症患者は、そうでない人よりも認知症発症リスクが高いことが、臨床研究で報告されている。しかし、過去の神経病理学的研究では、統合失調症患者におけるアルツハイマー病の発症率は対照群と差異がないことが示唆されている。これらの一貫性のない結果は、アルツハイマー病以外の認知症を包含したことが原因である可能性があるが、高齢統合失調症患者を対象とした現在の神経病理学的分類に基づく臨床病理学的研究は、ほとんど行われていなかった。名古屋大学の荒深 周生氏らは、高齢統合失調症患者における認知症発症の神経病理学的根拠を調査するため、本研究を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年9月14日号の報告。

ER+/HER2-乳がんの術前ニボルマブ、pCRを有意に改善(CheckMate 7FL)/ESMO2023

 高リスクのER陽性(+)/HER2陰性(-)早期乳がん患者を対象とした第III相CheckMate 7FL試験の結果、術前化学療法および術後内分泌療法にニボルマブを上乗せすることで、病理学的完全奏効(pCR)率が有意に改善し、さらにPD-L1陽性集団ではより良好であったことを、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのSherene Loi氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。 ・対象:ER+/HER2-、T1c~2 cN1~2またはT3~4 cN0~2、Grade2(かつER 1~10%)またはGrade3(かつER≧1%)の新たに診断された乳がん患者 510例 ・試験群(ニボルマブ群):ニボルマブ(3週ごと)+パクリタキセル(毎週)→ニボルマブ+AC療法(隔週または3週ごと)→手術→ニボルマブ(4週ごと)+内分泌療法 257例 ・対照群(プラセボ群):プラセボ+パクリタキセル→プラセボ+AC療法→手術→プラセボ+内分泌療法 253例

切除可能NSCLC、周術期ペムブロリズマブ上乗せでOS・EFS改善(KEYNOTE-671)/ESMO2023

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象としたKEYNOTE-671試験の第1回中間解析において、術前補助療法としてペムブロリズマブ+化学療法、術後補助療法としてペムブロリズマブを用いた場合、術前補助療法として化学療法を用いた場合と比較して、無イベント生存期間(EFS)が有意に改善したことが報告されている。今回、KEYNOTE-671試験の第2回中間解析の結果が、カナダ・McGill UniversityのJonathan Spicer氏により、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表され、EFSと全生存期間(OS)が有意に改善したことが示された。本試験の結果から、米国食品医薬品局(FDA)は2023年10月16日に切除可能なNSCLC患者に対する術前・術後補助療法としてペムブロリズマブの使用を承認したことを発表している。

死亡リスクを低下させる睡眠のとり方、睡眠時間よりも〇〇!?

 睡眠は健康と密接な関係があることが知られているが、研究の多くは睡眠時間に焦点が当てられており、睡眠の規則性と死亡リスクの関係は明らかになっていない。そこで、オーストラリア・Monash UniversityのDaniel P. Windred氏らの研究グループは、英国のUKバイオバンクの6万人超のデータを用いて、睡眠時間および睡眠の規則性と死亡リスクとの関連を検討した。その結果、睡眠時間と睡眠の規則性はいずれも全死亡リスクの予測因子であることが示されたが、睡眠の規則性のほうがより強い予測因子であった。Sleep誌オンライン版2023年9月21日号に掲載の報告。

治療抵抗性統合失調症患者に対するクロザピン治療は早期開始すべきか

 クロザピンは、治療抵抗性統合失調症患者に対して有効性が証明されている唯一の抗精神病薬である。藤田医科大学の波多野 正和氏らは、クロザピン治療開始の遅延が長期アウトカムに及ぼす影響を評価する目的で、多施設共同レトロスペクティブコホート研究を実施した。その結果、長期治療中の精神科再入院を防ぐため、治療抵抗性統合失調症患者に対するクロザピン治療は早期に開始すべきであることが示唆された。BMC Psychiatry誌2023年9月15日号の報告。  対象は、2009年7月~2018年12月にクロザピン治療を開始した患者。統合失調症の診断からクロザピン治療開始までの期間に応じて、早期開始群(9年以内)、中期開始群(10~19年)、後期開始群(20年以上)の3群に分類した。エンドポイントは、3年以内の精神科再入院およびすべての原因によるクロザピン治療中止とした。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の推定には、Fine and Gray法またはCox比例ハザードモデルを用いた。

高齢ドライバーは本当に事故を起こしやすいか/筑波大

 超高齢社会になり、わが国では高齢ドライバーによる交通加害事故の報道を目にする機会は多い。加齢による認知機能や運動機能の低下が自動車の運転に影響することは論をまたないが、実際高齢者の自動車事故は、それ以外の年代の運転者と比較して多いのだろうか。筑波大学医学医療系の市川 政雄氏らの研究グループは、高齢者の運転免許返上の政策と社会的圧力について、運転者の年齢層別に自動車衝突事故(MVC)のリスクを比較分析してこの疑問を研究した。Journal of Epidemiology誌2023年10月7日の報告。