ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:288

進行性特発性肺線維症にシルデナフィルは有効か?

ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬シルデナフィル(商品名:レバチオ、ED治療薬としてはバイアグラ・保険未適応)について、進行性特発性肺線維症(IPF)に対する有効性をプラセボとの対照で検討した追加適応を目指す臨床試験の結果が報告された。主要評価項目(6分間歩行改善)での有益性は認められなかったが、副次評価項目ではさらなる研究の必要性をうたうに相当する、肯定的な結果がみられたという。シルデナフィルは進行性特発性肺線維症患者で、肺換気の比較的良好な領域の血流量を選択的に改善し、ガス交換能を改善する可能性があると期待されていることから、IPF臨床研究ネットワークのDavid A. Zisman氏らは、シルデナフィル投与による治療で、進行性IPF患者の歩行距離、呼吸困難、そしてQOLが改善するとの仮説を立て、検証のための臨床試験「STEP-IPF」を実施した。NEJM誌2010年8月12日号(オンライン版2010年5月18日号)より。

CKD患者への透析開始を早めても生存改善に有意差認められず

慢性腎臓病(CKD)ステージ5の患者に対し、早期に維持透析開始をしても、生存率あるいは臨床転帰の改善とは関連しないことが明らかにされた。維持透析開始のタイミングには、かなりの差異がみられるものの、世界的に早期開始に向かう傾向にある。そうした中で本報告は、オーストラリアのシドニー医科大学校・王立North Shore病院腎臓病部門のBruce A. Cooper氏らの研究グループが、維持透析開始のタイミングが、CKD患者の生存に影響するかどうかを検討するため、早期開始群と晩期開始群との無作為化対照試験「IDEAL」を行った結果によるもので、NEJM誌2010年8月12日号(オンライン版2010年6月27日号)で発表された。

経口ビスホスホネート、食道がんや胃がんの発症リスク増大せず

 骨粗鬆症薬として用いられる経口ビスホスホネート製剤を長期に服用しても、食道がんや胃がんの発症リスクは増大しないようだ。英国Queen’s University Belfast公衆衛生センターのChris R. Cardwell氏らが、4万人超の治療群と同数のコントロール群について、約4年半追跡し明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月11日号で発表した。ビスホスホネートの服用による副作用として食道炎は知られるが、食道がんとの関係についての信頼性の高い研究は、これまでなかったという。

米国40歳以上糖尿病患者のうち網膜症罹患率は28.5%

米国の40歳以上糖尿病患者のうち、糖尿病性網膜症の罹患率推定値は、28.5%と高率であることが明らかになった。特に非ヒスパニック系黒人で高く、4割近くにみられたという。米国疾病対策予防センター(CDC)のXinzhi Zhang氏らが、1,000人超の糖尿病患者について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月11日号で発表した。糖尿病性網膜症の罹患率、重症度に関して、全米人口をベースとした最近の動向は存在しなかったという。

心筋梗塞のリスクがカルシウム・サプリメントで増大

 サプリメントとしてのカルシウムの使用(ビタミンDは併用しない)により、心筋梗塞のリスクが有意に増大することが、ニュージーランド・オークランド大学のMark J Bolland氏らが行ったメタ解析で判明した。カルシウムは高齢者の骨格系の健康維持を目的としたサプリメントとして一般的に用いられている。ところが、カルシウム・サプリメントは心筋梗塞や心血管イベントのリスクを増大させる可能性があることが、プラセボを対照とした無作為化試験で示唆されているという。BMJ誌2010年8月7日号(オンライン版2010年7月29日号)掲載の報告。

大脳白質病変は、脳卒中、認知症、死亡リスクの予測因子:46試験のメタ解析

MRI上の高信号域として発見される大脳白質病変は、脳卒中、認知症、死亡のリスクと有意な相関を示すため、その予測因子となり得ることが、イギリスSt George’s University of London臨床神経科学部のStephanie Debette氏らが実施したメタ解析で示された。大脳白質病変と脳の疾患や死亡との関連を評価した試験の結果は必ずしも一致していない。その原因として、試験デザインや画像法、研究施設、サンプル数、フォローアップ期間の不均一性がデータの解釈を難しくしていることが挙げられるという。BMJ誌2010年8月7日号(オンライン版2010年7月26日号)掲載の報告。

新しい糖尿病治療薬exenatide、追加薬として最適:DURATION-2試験

メトホルミンで十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病患者に対する追加薬剤としては、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体アゴニストであるexenatideが、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4) 阻害薬シタグリプチン(商品名:ジャヌビア、グラクティブ)やチアゾリジン系薬剤ピオグリタゾン(同:アクトス)よりも有用なことが、アメリカInternational Diabetes Center at Park NicolletのRichard M Bergenstal氏らが実施した無作為化試験で示された。2型糖尿病患者の薬物療法はメトホルミンで開始されることが多いが、いずれは他の薬剤の追加が必要となる。GLP-1受容体アゴニストやDPP-4 阻害薬は血糖コントロールだけでなく、肥満、高血圧、脂質異常などの2型糖尿病関連の代謝異常にも有効な可能性が示唆されている。Lancet誌2010年8月7日号(オンライン版2010年6月26日号)掲載の報告。

ACCORD試験の細小血管合併症リスク、強化療法早期中止後の追跡結果

心血管リスクの高い2型糖尿病患者に対する強化療法(HbA1c<6.0%)は、標準療法(同7.0~7.9%)に比べ細小血管合併症のリスクを低減させないものの、その発症を遅延させ、腎、眼、末梢神経の機能の一部を有意に良好に保持することが、アメリカCase Western Reserve大学のFaramarz Ismail-Beigi氏らが行ったACCORD試験の追跡結果で明らかとなった。本試験は、2008年2月、中間解析で総死亡が強化療法群で有意に多かったため一部が早期中止となり、世界中の糖尿病専門医に衝撃を与えた。研究グループは、強化療法群の患者を標準療法群へ移行したうえでフォローアップを続け、今回、事前に規定された細小血管合併症の解析結果を、Lancet誌2010年8月7日号(オンライン版2010年6月29日号)で報告した。

抗てんかん薬と自殺傾向の関連、てんかん患者では認められず

抗てんかん薬と自殺との関連について、てんかん患者においては自殺リスク増大との関連は認められなかったこと、一方で、うつ病患者、あるいはてんかん、うつ病、双極性障害のいずれでもない患者で抗てんかん薬を服用していた患者ではリスク増大が認められたことが、スペイン・Risk MR Pharmacovigilance ServicesのAlejandro Arana氏らにより明らかにされた。これまでに行われた臨床試験のメタ解析の結果では、抗てんかん薬と自殺傾向(自殺念慮、自殺行動、または両方)との関連が示されていたが、Arana氏らは、一般集団を代表する患者データベースを用い、ケースコントロール試験にて、抗てんかん薬服用の有無と自殺関連イベント(自殺未遂、自殺既遂)との関連を解析した。NEJM2010年8月5日号掲載より。

遺伝性血管性浮腫の新規C1インヒビター製剤の有効性

 遺伝性血管性浮腫(Hereditary angioedema:HAE)は、C1インヒビターの欠損により発症する常染色体優性遺伝性疾患で、「疾患を知っていれば診断は比較的容易で、診断がつけば有効な治療ができる」とされる(補体研究会HAEガイドラインより http://square.umin.ac.jp/compl/HAE/HAEGuideline.html)。一般的に四肢、腹部、外陰部、顔または中咽頭の、反復性の急性発作(一般に局所粘膜腫脹による血管性浮腫)が特徴で、腹部発作はしばしば激しい腹痛、嘔気や嘔吐を伴い、入院や不必要な手術となることがある。また咽頭部発作は、死亡リスクがかなり高い。一方で急性発作時は、C1インヒビター製剤(商品名:ベリナートP)による補充療法が効果的であることが、無作為化試験およびコンセンサスレベルでも支持されている。本論は、最近開発されたナノ濾過濃縮C1インヒビター製剤「Cinryze」(ViroPharma社)の治験報告で、急性発作の期間短縮に有効であったこと、また予防的投与で急性発作の頻度が減少したことが、米国シンシナティ大学Bruce L. Zuraw氏らにより、NEJM誌2010年8月5日号で報告された。

電話によるDV相談サポート、うつ改善にはつながらず:香港

親しいパートナーからの暴力[intimate partner violence:IPV;一般にドメスティックバイオレンス(DV)と知られる]を受けた女性に対し、暴力からの自衛手段を教えるなどのエンパワメントおよび電話カウンセリングを行っても、被害者のメンタルヘルスへの影響、うつ症状の改善にはつながらないことが報告された。IPV生存者のうつ症状に対する効果的な介入については明らかになっていないことから、アドボカシー的介入の効果を検討するため、中国・香港大学のAgnes Tiwari氏らが、200人の女性を対象に行い無作為化試験を行ったもので、JAMA誌2010年8月4日号で発表した。なお、香港におけるIPV発生率は、4.5~10%に上るという。

青少年の飲酒と暴力、救急外来受診時にカウンセリング介入で行動が改善

病院救急外来部門を受診した14~18歳の青少年で、飲酒経験および暴力行動を起こしたことがあると自己申告した者に対しカウンセリングを行うことで、それら行動が改善することが、米国ミシガン大学精神科部門のMaureen A. Walton氏らにより報告された。米国では年間約2,000万人の15~24歳の青少年が救急外来を受診し、青少年への、特に無保険・制限付き被保険者への重要な医療提供の場となっている。Walton氏らは、同部門を利用し、学校にきちんと通っていない、かかりつけ医がいない、年老いすぎた小児科医にしか診てもらっていない、定期健診を受けていない青少年への予防医療が提供可能ではないかと考え、救急外来を受診した3,000人超の青少年を対象に、無作為化試験を行った。JAMA誌2010年8月4日号掲載より。

薬物療法で改善しない2型糖尿病患者、強化食事療法で改善の可能性

最適な薬物療法を行っても糖化ヘモグロビン(HbA1c)が改善しない2型糖尿病患者は、個別化された強化食事療法アドバイスによって血糖コントロールや体重、BMI、ウエスト周囲長が改善する可能性があることが、ニュージーランドOtago大学のKirsten J Coppell氏らが行った無作為化試験(LOADD試験)で示された。ライフスタイルの改善は2型糖尿病治療の基盤であり、特に適切な食事パターンが推奨されているが、これを遵守するには困難が伴う。また、高血糖で薬物療法を受けている2型糖尿病患者に対する栄養療法のベネフィットを示すエビデンスはないという。BMJ誌2010年7月31日号(オンライン版2010年7月20日号)掲載の報告。

HPV 4価ワクチンの上皮内腫瘍低グレード病変の予防効果が明らかに

ヒトパピローマウイルス(HPV)の4価ワクチンは、HPV-6、-11、-16、-18を抑制することで上皮内腫瘍の低グレード病変を持続的に予防し、疾病負担を実質的に軽減することが、スウェーデンLund大学のJoakim Dillner氏らが実施した無作為化試験(FUTURE試験)で判明した。HPVはグレードII/IIIの子宮頸部上皮内腫瘍よりもコンジローマやグレードIの上皮内腫瘍の発症に関与しており、これらの疾患に対するHPVワクチンの予防効果に大きな期待が寄せられている。その一方で、4価ワクチンで予防可能な低グレード病変の総疾病負担は明確にされていないという。BMJ誌2010年7月31日号(オンライン版2010年7月20日号)掲載の報告。

早産児へのNO吸入療法、気管支肺異形成症なしの生存を改善せず

早産児に対し、早期の低用量一酸化窒素(NO)吸入療法を施行しても、気管支肺異形成症や脳障害なしの生存期間は改善しないことが、フランスRobert Debre病院小児救急医療部のJean-Christophe Mercier氏らが実施した無作為化試験(EUNO試験)で示された。周産期医療の進展により早産新生児(在胎期間<28週)の生存率は向上しているが、これらの新生児は気管支肺異形成症などの長期にわたる神経認知的な障害の発症リスクを抱えている。動物モデルでは、NO吸入によりガス交換や肺の構造的な発育が改善されることが報告されているが、気管支肺異形成症の発症リスクがある早産児への使用については相反する知見があるという。Lancet誌2010年7月31日号(オンライン版2010年7月22日号)掲載の報告。

HDL-C低値は、心血管疾患の治療ターゲットか?:JUPITER試験サブ解析

HDLコレステロール(HDL-C)値の測定は、初回心血管疾患のリスクの評価には有用だが、HDL-C値はスタチン治療でLDL-Cが著明に低下した患者の残存血管リスクの予測因子ではないことが、アメリカ・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul M Ridker氏らが行ったJUPITER試験のサブ解析で明らかとなった。HDL-C値は心血管イベントの発症と逆相関を示す。スタチンは心血管疾患の治療薬として確立されているが、スタチン治療を行ってもなお残存する血管リスクはHDL-C値が低いことである程度説明でき、HDL-Cの不足は治療ターゲットとなる可能性が指摘されている。Lancet誌2010年7月31日号(オンライン版2010年7月22日号)掲載の報告。

一般市民による心肺蘇生は胸骨圧迫に集中させた方がよいか?(その1)

一般市民による心肺蘇生(CPR)について、米国ワシントン大学のThomas D. Rea氏らは、「胸骨圧迫を重視させるべきとの戦略を後押しする結果を得た」とする、胸骨圧迫単独実施と胸骨圧迫+人工呼吸実施との有効性を比較した無作為化試験の結果を報告した。全体的な生存率改善に関しては両群で有意な差はみられなかったが、発作時の臨床症状別で解析した結果で、単独実施群の生存率の方が高い傾向がみられたという。NEJM誌2010年7月29日号掲載より。

一般市民による心肺蘇生は胸骨圧迫に集中させた方がよいか?(その2)

一般市民による心肺蘇生(CPR)について、スウェーデン・ストックホルム・プレホスピタルセンターのLeif Svensson氏らは、「心停止で倒れている人と遭遇した場合の一般市民によるCPRは、より簡単に学べ実行できる胸骨圧迫のみを実行すべきという仮説を、後押しする結果を得た」とする、胸骨圧迫単独実施と胸骨圧迫+人工呼吸実施との有効性を比較した前向き無作為化試験の結果を報告した。30日生存率について検討した結果、両群間で有意差が認められなかったという。NEJM誌2010年7月29日号掲載より。

34~37週未満での後期早産児、RDSなど呼吸性疾患リスク増大

妊娠34週~37週未満の後期早産では、新生児呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome:RDS)などの呼吸器疾患発生リスクが、妊娠39~40週の満期出産に比べ有意に増大することが、米国内最新の大規模データで裏付けられた。この点に関するデータはこれまで、10年以上前の、米国外データによるものしかなかったが、米国イリノイ大学シカゴ校のJudith U. Hibbard氏らが、米国内約23万件の出産データを基にして調べ明らかにした。JAMA誌2010年7月28日号掲載より。

2型糖尿病治療薬rosiglitazone vs. ピオグリタゾン

65歳以上の2型糖尿病治療薬rosiglitazone服用者は、ピオグリタゾン(商品名:アクトス)服用者と比べて、脳卒中・心不全・全死亡リスクが増大、急性心筋梗塞も加えた複合イベントリスクも増大することが明らかにされた。米国食品医薬品局(FDA)のDavid J. Graham氏らが、約23万人の米国高齢者向け公的医療保険メディケア加入者について調べ報告したもので、JAMA誌2010年7月28日号(オンライン版2010年6月28日号)で発表された。これまでの研究でも、rosiglitazoneの服用が、重篤な心血管疾患イベントの発生リスク増大につながる可能性が示唆されていた。