ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:260

ARDSに対するサルブタモール治療により死亡率が増加

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対する早期のサルブタモール静脈内投与による治療は、プラセボに比べ28日死亡率が有意に高く、転帰を悪化させると考えられることが、英国・Warwick大学のFang Gao Smith氏らが行ったBALTI-2試験で示された。人工呼吸器装着患者の約14%にARDSがみられ、その死亡率は40~60%に達し、生存例もQOLが大きく損なわれることが報告されている。ARDSの治療では、短時間作用性β2アドレナリン受容体刺激薬であるサルブタモールの最大7日間の静脈内投与により、肺血管外水分量やプラトー気道内圧が低下することが、無作為化対照比較第II相試験で示されている。Lancet誌2012年1月21日号(オンライン版2011年12月12日号)掲載の報告。

高齢女性の最適な骨粗鬆症スクリーニングの実施間隔は?

 65歳以上の女性に対し、骨塩量(BMD)測定による骨粗鬆症スクリーニング(BMD Tスコアが-2.50以下は骨粗鬆症)の実施が推奨されているが、スクリーニングを何年間隔で行えばよいかについての指針を示したデータはほとんどない。米国・ノースカロライナ大学のMargaret L. Gourlay氏らは、基線でBMDを測定し、正常、骨減少症(軽度、中等度、進行)に分類した高齢女性を最長15年間追跡し、それぞれの群の骨粗鬆症発症率10%未満の期間について調べた。NEJM誌2012年1月19日号掲載報告より。

慢性C型肝炎標準療法無効例への直接作用型抗ウイルス薬のベネフィット

慢性C型肝炎の標準療法であるインターフェロン併用療法(ペグインターフェロン+リバビリン)が無効であった患者に対し、直接作用型抗ウイルス薬を追加投与することのベネフィットについて検討された予備的試験の結果、2つの抗ウイルス薬のみ投与でもウイルス持続陰性化(SVR)が得られることが示され、追加併用投与では高率のSVRが得られることが示された。米国・ミシガン大学医療センターのAnna S. Lok氏らによるオープンラベル第2a相無作為試験の予備的試験報告で、NEJM誌2012年1月19日号で発表された。

超早産児無呼吸へのカフェイン療法、長期5年での無障害生存に有意な改善を示さず

超早産児無呼吸に対するカフェイン投与は、生後18ヵ月における脳性麻痺や認知機能遅延リスクを低下する効果があるが、生後5年時点では、死亡と機能障害を合わせた発生率はプラセボ群と同等で、同療法が長期的には障害のない生存率の改善にはつながらないことが報告された。運動障害や認知障害などの個別の発症率についても、カフェイン投与による低下は認められなかった。米国・ペンシルベニア大学のBarbara Schmidt氏らが、約1,600例を対象とした無作為化プラセボ対照試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2012年1月18日号で発表した。

P2Y12阻害薬cangrelor、待機的CABG患者の橋渡し使用の有効性と安全性

チエノピリジン系抗血小板薬を服用する待機的冠動脈バイパス術(CABG)患者について、術前に同薬服用を中止後、代わりにP2Y12阻害薬cangrelorを投与することで、何も服用しない場合に比べて治療期間中の血小板反応性は低く維持できることが報告された。また同薬投与群のCABG関連の有意な出血リスク増大が認められなかったことも報告された。米国・フロリダ大学のDominick J. Angiolillo氏らによる試験の結果、明らかにされたもので、JAMA誌2012年1月18日号で発表された。診療ガイドラインでは、出血リスク増大のため、CABG実施前5~7日のチエノピリジン系抗血小板薬の服用中止が勧告されている。

80歳以上高血圧患者への積極的降圧治療、早期から長期にが支持される

収縮期血圧が160mmHg以上の80歳以上の超高齢高血圧患者に対する降圧治療は、効果が開始直後から認められ、長期的には全死亡と心血管死亡の有意な低下をもたらすことが明らかにされた。超高齢高血圧に対する降圧治療については、無作為化対照試験HYVETでベネフィットがあることが認められているが、早期からベネフィットが得られるかどうかを調べるため、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのN.Beckett氏らがオープンラベルでの延長試験を1年間行った。結果を受けて、「超高齢高血圧患者への、早期から、かつ長期にわたる降圧治療が必要であることが支持された」と結論している。BMJ誌2012年1月14日号(オンライン版2012年1月4日号)より。

マンモグラフィ検診、開始10年は有害性が勝る可能性

マンモグラフィによる乳がんのスクリーニング検診の導入により、検診開始から10年間は有害性が勝る可能性があることが、英国・Southampton大学のJames Raftery氏らの検討で示された。マンモグラフィによるスクリーニング検診は、人命を救う一方で、偽陽性によりQOLを損ない、不要な治療を強いる場合もある。有害性(harm)が有益性(benefit)を上回ることも示唆されているが、これを定量的に評価した試験はないという。BMJ誌2012年1月14日号(オンライン版2011年12月8日号)掲載の報告。

死後画像検査による死因判定、CTがMRIよりも良好

従来の剖検との比較では、死後画像検査としてのCTはMRIよりも死因の同定の正確度(accuracy)が優れることが、英国・オックスフォード大学付属John Radcliffe病院のIan S D Roberts氏らの検討で示された。剖検に反対する世論の高まりにより、侵襲性が最小限の死因判定法の確立を目指し検討が進められている。画像検査による判定法が有望視されているが、その正確度は明らかでないという。Lancet誌2012年1月14日号(オンライン版2011年11月22日号)掲載の報告。

子宮内容除去術後のhCG高値持続例は経過観察で

胞状奇胎妊娠女性に対する子宮内容除去術から6ヵ月以降もヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)高値が持続する場合、化学療法を行わなくとも、一定の指針に基づいて経過を観察すれば、hCG値は自然に低下する可能性が高いことが、英国Imperial College LondonのRoshan Agarwal氏らの検討で示された。イギリスでは妊娠1,000件当たり1~3件の頻度で全胞状奇胎または部分胞状奇胎がみられ、奇胎妊娠女性には妊娠第1期の膣出血や、血清あるいは尿中hCG値の上昇が認められる。胞状奇胎に対する子宮内容除去術から6ヵ月後もhCG値の上昇がみられる場合は、その価値は下落しつつあるとはいえ、妊娠性絨毛性疾患として化学療法が適応されるという。Lancet誌2012年1月14日号(オンライン版2011年11月29日号)掲載の報告。

前立腺がんの発症機序に新たな洞察をもたらす新たな遺伝子変異体を特定

遺伝性前立腺がんリスクの有意な上昇と関連する、新たな遺伝子変異の存在が明らかになった。前立腺がんにとって家族歴は有意なリスク因子だが、これまで、その決定要因として関連深い遺伝子基盤の解明は十分にはなされていなかった。この知見は、米国・ジョンズ・ホプキンス大学のCharles M. Ewing氏らが報告したもので、「見つかった変異体は、すべての前立腺がん発症からみればごくわずかを占めるに過ぎないが、家族歴の評価など現行の前立腺がんのリスク評価に影響を及ぼすもので、頻度の高い前立腺がんという疾病メカニズムに対して新たな洞察をもたらす可能性がある」と結論している。NEJM誌2012年1月12日号掲載報告より。

転移性乳がんに対する第一選択治療としてpertuzumab+トラスツズマブ+ドセタキセル併用療法

HER2陽性転移性乳がんに対する第一選択治療として、pertuzumab+トラスツズマブ+ドセタキセルの併用療法は、トラスツズマブ+ドセタキセルと比較して、心毒性作用の増加を伴うことなく有意に無増悪生存期間を延長したことが、米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのJose Baselga氏らによる第3相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「CLEOPATRA」の結果、報告された。pertuzumabは、トラスツズマブと相補的な作用機序を持つ抗HER2ヒト化モノクローナル抗体で、第2相試験で、両剤での併用療法が有望な活性作用と忍容可能な安全性プロファイルを示すことが報告されていた。NEJM誌2012年1月12日号(オンライン版2011年12月7日号)掲載報告より。

認知症高齢者、入院率は1.4倍に増大

高齢者において、認知症は入院を有意に増大するリスク因子であることが米国・ワシントン大学のElizabeth A. Phelan氏らによる調査の結果、報告された。認知症高齢者の入院率はそうでない高齢者の約1.4倍に上り、なかでも細菌性肺炎や尿路感染症のような外来治療可能な疾患での入院率が、約1.8倍多かったという。同氏らが3,000人超の高齢者について調べた結果で、JAMA誌2012年1月11日号で発表した。

急性心筋梗塞発症後の血清カリウム値と院内死亡率とにUカーブの関連

急性心筋梗塞発症後の血清カリウム値と院内死亡率の間には、3.5~4.0mEq/L未満群を最小値としたUカーブの関連が認められることが明らかにされた。米国Emory大学のAbhinav Goyal氏らが、4万人弱の急性心筋梗塞の患者について行った、後ろ向きコホート試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2012年1月11日号で発表した。現行の臨床ガイドラインでは、急性心筋梗塞患者の血清カリウム値は、4.0~5.0mEq/Lに保つよう勧告されている。

治験報告、最も質が高いのは治験総括報告書

治験報告の質について、文書タイプ[治験レジストリ報告書(registry report)、治験総括報告書(clinical study report)、学術誌投稿論文]の違いを比較した結果、治験総括報告書が最も質が高いことが明らかにされた。ドイツ・Quality and Efficiency in Health Care研究所のBeate Wieseler氏らが後ろ向き解析の結果、報告した。レジストリ報告書と投稿論文については相互に弱い部分が異なり、レジストリ報告書は、アウトカムは十分報告されていたが方法論の報告は乏しく、学術誌はその反対であったという。BMJ誌2012年1月7日号(オンライン版2012年1月3日号)掲載報告より。

NIH助成の臨床試験、終了後30ヵ月以内の発表は半数以下

米国国立衛生研究所(NIH)の助成を受けた臨床試験が、試験終了後の適切な時期(30ヵ月以内)に査読審査のある生物医学雑誌に発表される割合は46%に過ぎず、試験終了後の追跡期間中央値である51ヵ月が経過しても32%が未発表のままであることが、米国・エール大学のJoseph S Ross氏らの調査で明らかとなった。企業がスポンサーの研究に関する大規模な調査では、臨床試験終了後、数年が経過しても25~50%が未発表のままであることが報告されている。一方、公的基金の出資による試験の公表パターンについてはほとんど知られていないという。BMJ誌2012年1月7日号(オンライン版2012年1月3日号)掲載の報告。

プライマリ・ケア保健師の導入が非伝染性疾患の管理に有効

訓練を受けた地域保健師が、確立されたガイドラインに基づいて行うイランのプライマリ・ケア・システム(「Behvarzシステム」と呼ばれる)は、非伝染性疾患の予防や管理に有効なことが、イラン・テヘラン医科大学のFarshad Farzadfar氏らの調査で示された。イランなどの中所得国では、非伝染性疾患やそのリスク因子が疾病負担の主な要因となっている。非伝染性疾患やそのリスク因子の地域住民レベルにおけるマネジメントが、プライマリ・ケア・システムによって可能か否かに関するエビデンスはほとんどないという。Lancet誌2012年1月7日号(オンライン版2011年12月9日号)掲載の報告。

DVTに対するカテーテル血栓溶解療法、血栓後症候群を抑制

腸骨大腿静脈の急性深部静脈血栓症(DVT)の治療では、低分子量ヘパリンやワルファリンによる標準的な抗凝固療法に血栓溶解薬を用いたカテーテル血栓溶解療法(CDT)を併用すると、標準治療単独に比べ血栓後症候群(PTS)の発生率や開存率が有意に改善することが、ノルウェー・オスロ大学病院のTone Enden氏が行ったCaVenT試験で示された。DVTに対する従来の抗凝固療法は、血栓の拡大や再発の予防には有効だが、血栓そのものは溶解させず、多くの患者がPTSを発症するという。Lancet誌2012年1月7日号(オンライン版2011年12月13日号)掲載の報告。

単純ヘルペスワクチン、HSV-1型とHSV-2型で有効性に違い

単純ヘルペスウイルス(HSV)ワクチンの有効性について、HSV-1型とHSV-2型への有効性に違いがあることが報告された。米国・セントルイス大学のRobert B. Belshe氏らが、両タイプ血清陰性の一般女性8,300例超を対象に、糖蛋白Dを含有するHSV-2サブユニットワクチンの有効性を検討した試験の結果で、HSV-1型の予防には効果が認められたが、HSV-2型の予防に対する有効性は認められなかったという。同ワクチンについての2つの先行研究(HSV抗体陽性と陰性の男女カップル対象、どちらが陽性かは問わない)では、抗体陰性の女性では、性器ヘルペス予防に関してタイプを問わず有効性が認められていた(HSV-1型73%、HSV-2型74%)。一方で、男性と、HSV-1型血清陽性の女性では有効性が認められていなかった。NEJM誌2012年1月5日号掲載報告より。

術後輸血戦略は制限的輸血が妥当

術後輸血戦略について、非制限的に行う輸血(自由輸血)が制限的輸血と比較して、術後の死亡率を低下したり回復を促進はしないことが、股関節手術を受けた心血管リスクの高い高齢患者を対象とした無作為化試験の結果、明らかにされた。また被験者の特性の一つでもあった心血管疾患の院内発生率も抑制できなかったことも示された。術後輸血については、ヘモグロビン閾値が論争の的となっている。そこで米国・ニュージャージー医科歯科大学のJeffrey L. Carson氏らは、より閾値の高い輸血者のほうが術後回復が促進されるかどうかについて検証した。NEJM誌2011年12月29日号(オンライン版2011年12月14日号)掲載報告より。

STEMIの再入院リスク、米国は他の国のおよそ1.5倍

ST上昇型心筋梗塞(STEMI)による再入院率は米国が最も高く、血行再建術実施のための再入院を除いても、オーストラリアや欧州などに比べ、およそ1.5倍に上ることが明らかにされた。退院30日以内の再入院のリスク因子としては、多枝病変であることが2倍と最も高かった。米国・デューク大学医療センター臨床研究所のRobb D. Kociol氏らが、約5,700人のSTEMI患者について行った事後比較の結果で、JAMA誌2012年1月4日号で発表した。