ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:331

乳幼児の予期せぬ突然死、感染症が原因の可能性は低いが…

生後1年以内の乳幼児の予期せぬ突然死(SUDI)は感染症との関連性が低いことが、London大学ユニバーシティ・カレッジGreat Ormond Street小児病院のM A Weber氏らの系統的な症例レビューで明らかとなった。乳幼児突然死[揺りかご死(cot death)]は英国における最も頻度の高い乳幼児の死亡原因であるという。生後1年以内に発生した乳幼児突然死がSUDIと定義されるが、その多くは専門医による剖検でも死因や発症機序は不明なままである。Lancet誌2008年5月31日号掲載の報告。

痛風性関節炎に対するプレドニゾロンの効果はナプロキセンと同等

痛風性関節炎の導入治療としての経口プレドニゾロンとナプロキセンの効果は同等であることが、オランダRadboud大学Nijmegen医療センター一般診療科のHein JEM Janssens氏らが実施した無作為化試験で明らかとなった。痛風性関節炎に使用されるナプロキセンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やコルヒチンには、消化管、腎、心血管系に対する有害事象が見られる。その一方で、全身コルチコステロイド療法が有用な治療選択肢となる可能性が指摘されていた。Lancet誌2008年5月31日号掲載の報告。

prucaloprideは重度の慢性便秘に有効で心血管作用も見られない

本論は、重度の慢性便秘に対し開発された選択的高親和性5-hydroxytryptamine4(5-HT4)受容体作動薬prucaloprideの有効性を検証していた、米国・メイヨー・クリニックのMichael Camilleri氏らによる第III相試験の報告。「prucaloprideは腸機能を高め、重度慢性便秘症状を軽減した。心配されていた重大な心血管への影響はなかった」としている。NEJM誌2008年5月29日号より。

オピオイド誘発性便秘にmethylnaltrexoneは有効

モルヒネなどオピオイド鎮痛薬の治療は癌など進行疾患の疼痛緩和に有効な半面、患者を苦しめる副作用として便秘を伴う。本論は、そうしたオピオイド誘発性便秘を改善するために開発されたmethylnaltrexoneの、第III相試験の報告。皮下投与の安全性と効果を検証した米国サンディエゴ・ホスピス・緩和医療研究所のJay Thomas氏らは、「methylnaltrexoneは速やかに排便を誘発し、オピオイドの鎮痛作用への影響もないようだ」としている。NEJM誌2008年5月29日号より。

脳卒中後うつ病予防の効果はescitalopram投与>問題解決療法

脳卒中経験者の半数以上がうつ病となり、それが日常生活動作の回復を妨げ、死亡率増加にも関与していることは、これまで多くの研究で示されている。米国アイオワ大学医学部のRobert G. Robinson氏らは、そうしたうつ病予防に対するSSRIの抗うつ薬escitalopramの効果を、問題解決療法(PST:problem-solving therapy)との比較で無作為化試験。どちらも効果があるが、escitalopram投与のほうが優位と報告した。JAMA誌2008年5月28日号掲載より。

費用対効果が高い糖尿病スクリーニング戦略とは?

英国レスター大学ヘルスケアサイエンス部門のClare L Gillies氏らは、2型糖尿病の4つのスクリーニング戦略について費用対効果を検証し、コストおよび臨床的な有益性に資する要素について検討した。その結果、高リスク患者(耐糖能異常)へのスクリーニング+治療介入という戦略に費用対効果が望めるようだと報告した。BMJ誌2008年5月24日号(オンライン版2008年4月21日号)掲載より。

自己血糖測定は無益であるばかりか患者のうつ病悪化をもたらす

自己血糖測定は、血糖コントロールに有益な影響を及ぼさないばかりか、うつ病を増幅する――。新規の非インスリン治療の2型糖尿病患者を対象に、セルフモニタリングが、血糖コントロール、および患者の治療に対する姿勢、満足度に及ぼす効果を検討していたMaurice J O’Kane氏らESMON studyグループは、このような調査結果を報告した。BMJ誌2008年5月24日号(オンライン版2008年4月17日号)掲載より。

積極的なライフスタイル介入が、糖尿病の発症を長期的に抑制する

6年間の積極的なライフスタイルへの介入により、その後14年間にわたり糖尿病の発症予防あるいは遅延が可能なことが、中国・中日友好病院内分泌科のGuangwei Li氏らが実施した20年に及ぶフォローアップ研究の結果から明らかとなった。ライフスタイルに対する強力な介入により、耐糖能異常が見られる患者において2型糖尿病の発症率が低下することがわかっているが、これらのベネフィットは積極的介入終了後どのくらいの期間持続するか、またこのような介入の心血管疾患や死亡リスクの低減効果については不明である。Lancet誌2008年5月24日号掲載の報告。

新たな抗酸化薬succinobucolは急性冠症候群の転帰を改善しない

 抗酸化薬succinobucol(AGI-1067)は、標準治療を受けている急性冠症候群(ACS)患者に併用投与しても心血管疾患の転帰を改善する効果はないことが、カナダMontreal大学Montreal心臓研究所のJean-Claude Tardif氏らが実施したプラセボ対照比較試験で明らかとなった。酸化ストレスおよび炎症は動脈硬化の病態生理に関与している。succinobucolは抗酸化薬プロブコールのモノコハク酸エステルであり、代謝が安定的でin vitroではプロブコールよりも細胞内の抗酸化作用が優れるという。Lancet誌2008年5月24日号掲載の報告。

遺伝子治療でレーバー先天性黒内障患者は失明から救われる?

 レーバー先天性黒内障(LCA)は幼児期に発症し重度の視力障害から青年期には失明に至る一群の遺伝性疾患。異常な眼振を主症状とし網膜電図検査と対光反射で診断が行われるが、治療は現在のところない。ペンシルベニア大学Scheie Eye InstituteのAlbert M. Maguire氏らは、同疾患のうちLCA2の患者に対して遺伝子治療を行い、正視には至らなかったが有害事象もなく視力改善に成功したことを報告した。NEJM誌2008年5月22日号(オンライン版4月27日号)に掲載されたブリーフレポートより。

PCI前提で早期にabciximabを投与しても転帰改善に寄与しない

急性のST上昇型心筋梗塞患者に対して、プライマリ経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行する直前に抗血小板薬abciximabを投与するより、もっと早い段階で、abciximabとreteplase半量を投与する「併用facilitated-PCI」、もしくはabciximabを単独投与する「abciximab facilitated-PCI」を行ったほうが、転帰が改善する可能性があるのではないか。大規模な試験が行われていたが、米国・クリーブランド・クリニックのStephen G. Ellis氏らは「PCIを前提として早期にfacilitated-PCIを行っても、臨床転帰は改善されない」との結果を報告した。NEJM誌2008年5月22日号より。

酸化LDLが高値ほどメタボ発症率上昇

実験レベルでは、酸化LDLとメタボリックシンドロームの関与説が支持されているが、ヒトレベルではどうなのか。メタボリックシンドロームと酸化LDLの関係を検証していたオランダ・ルーヴァン・カトリック大学のPaul Holvoet氏らは、「血中の酸化LDLレベルが高いとメタボリックシンドロームの発症率は上昇する」との報告を行った。JAMA誌2008年5月21日号より。

16-17歳の献血は合併症リスクが高い

米国では輸血や製剤用の血液需要増加を背景に、献血年齢の引き下げを求める動きが高まっているが、「若年」「初回献血」は合併症のリスクが高いことが知られている。このため米国赤十字社のAnne F. Eder氏らが、16-17歳の献血者の合併症リスクを調査。「献血リスクは年長者より高く、ドナーの安全に対する適切な対策が必要」と報告した。JAMA誌2008年5月21日号より。

BPLTTCから新たなメタ解析:65歳の上下で降圧薬の有用性を比較

降圧大規模試験に関する前向きメタ解析であるBlood Pressure Lowering Treatment Trialists’Collaboration(BPLTTC)から新たなデータが報告された。65歳未満の高血圧患者には「ACE阻害薬」、「より積極的な降圧」、「利尿薬またはβ遮断薬」がイベント抑制の観点からは好ましいようだ。BMJ誌2008年5月17日号(オンライン版2008年5月14日号)からの報告。

子癇前症をきたす妊婦は妊娠第1、2期の平均動脈圧が高い

妊娠第1、2期の血圧測定において、子癇前症の最も優れた予測因子は平均動脈圧であることが、オランダ・アカデミック医療センター一般医療科のJeltsje S Cnossen氏らが行ったメタ解析で明らかとなった。子癇前症は、母子ともに重篤な結果がもたらされる可能性があるため、妊娠期の重要な疾患とされる。子癇前症を呈する女性は、正常妊婦に比べ妊娠第1、2期および妊娠前の平均動脈圧が高いとする研究がある。BMJ誌2008年5月17日号(オンライン版2008年5月14日号)掲載の報告。

悪性胸膜中皮腫、化学療法のベネフィットはほとんど期待できないが…

積極的症状コントロール(ASC)に化学療法を追加しても、悪性胸膜中皮腫の生存およびQOLにベネフィットはもたらされないことが、英国Leeds総合診療所のMartin F Muers氏らが実施した多施設共同無作為化試験(MS01)で明らかとなった。悪性胸膜中皮腫はほぼ致死的な疾患であり、現状では治療選択肢はほとんどない。これまでASCが推奨されてきたが、化学療法の役割についてはコンセンサスが得られていなかったという。Lancet誌2008年5月17日号掲載の報告。

中等度~重度の乾癬に対するustekinumabの有効性と安全性を確認

中等度~重度の乾癬に対する抗インターロイキン(IL)-12/23ヒトモノクローナル抗体ustekinumab(ウステキヌマブ、CNTO 1275)の有効性が、米国Saint Louis医科大学のCraig L Leonardi氏らが行った第III相試験(PHOENIX 1)で確認された。乾癬は皮膚の慢性的な免疫介在性炎症性疾患であり、世界の人口の2~3%が罹患しているという。ustekinumabは乾癬の病態生理で重要な役割を担うヒトIL-12とIL-23の共通サブユニットp40蛋白に特異的に結合することで細胞表面上のIL12Rβ1受容体との相互作用を阻害する。同様の試験PHOENIX 2でも同様の結果が得られており、ともにLancet誌2008年5月17日号で報告された。

心筋トロポニン陽性は独立した院内死亡の予測変数

心筋トロポニンは急性冠動脈症候群の診断と予後に関する情報を提供するが、急性非代償性心不全での役割はわかっていない。クリーブランド・クリニックのW. Frank Peacock IV氏らの研究グループは、急性非代償性心不全で入院した患者の中で、心筋トロポニン濃度が高い症例を分析し、有害事象との関連を説明するためレトロスペクティブ解析を行った。NEJM誌2008年5月15日号より。

複数バイオマーカーの使用が心血管系の死亡リスク予測に有用

心血管系に起因する高齢者の死亡リスクを予測するために、スウェーデン・ウプサラ大学のBjorn Zethelius氏らは、確立したリスク因子の他に、異なる疾患経路に複数のバイオマーカーを加えることの有用性を検討。心血管だけでなく腎の異常についてのバイオマーカーも加えると、心血管系の死亡リスクの層別化が改善されると報告している。NEJM誌2008年5月15日号より。