ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:270

喘息患者への気管支拡張薬vs. プラセボvs. 無治療

喘息患者を対象とした前向き実験的試験で報告されるプラセボ効果の客観的および主観的効果結果への影響について、気管支拡張薬とプラセボ(2種類)と無治療とを比較して検討した二重盲検クロスオーバーパイロット試験の結果、客観的なFEV1を指標とした結果ではプラセボ群に改善は認められなかったが、主観的な患者評価では気管支拡張薬とプラセボに有意差は認められなかったことが報告された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院/ハーバードメディカルスクールのMichael E. Wechsler氏らが米国国立補完代替医療センターから助成を受け行った試験報告で、NEJM誌2011年7月14日号で発表された。

早期限局性前立腺がん、放射線療法+短期ADTが全生存率上昇、死因別死亡率低下

 早期の限局性前立腺がんに対する、放射線療法+4ヵ月の短期アンドロゲン遮断療法(ADT)の併用療法について、有意な死亡率(死因別)の低下および全生存率の上昇が認められたことが明らかにされた。米国・Radiological Associates of SacramentoのChristopher U. Jones氏らが、米国とカナダの212施設から被験者約2,000例を募り行った無作為化試験の結果による。これまで同併用療法の効果については明らかにされていなかった。NEJM誌2011年7月14日号掲載報告より。

米国ナーシングホーム入所者の褥瘡リスク、減少傾向にあるものの人種間格差続く

米国ナーシングホーム入所者の褥瘡罹患率は、2003年から2008年にかけて減少傾向にあるものの、白人入所者よりも黒人入所者で高率の状態が続いていることが明らかになった。米国・アイオア大学一般総合内科のYue Li氏らが、米国内の約1万2,500ヵ所のナーシングホームと、その入所者約250万人について観察研究を行った結果によるもので、JAMA誌2011年7月13日号で発表した。

がん検診に影響与える家族歴は30~50歳で変化が大きい、医師は5~10年ごとに問診を

がん検診の開始年齢や方法などに影響を与える家族歴は、30~50歳の間で変化が大きいことが明らかにされた。米国・カリフォルニア大学アーバイン校のArgyrios Ziogas氏らが、米国民ベースのがんレジストリ「Cancer Genetics Network」(CGN)を基に、約2万7,000人の登録被験者とその家族について行った追跡試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年7月13日号で発表した。

高血圧の薬物療法開始前にABPMを:診察室血圧、家庭血圧より治療ターゲットが適切に

診察室血圧と家庭血圧は、いずれも高血圧の診断に推奨される単体検査としての十分な精度を有していないことが、英国・バーミンガム大学プライマリ・ケア臨床サイエンスのJ Hodgkinson氏らによるシステマティックレビューの結果、報告された。各測定を24時間自由行動下血圧測定(ABPM)と比較した結果による。従来、高血圧の治療導入は診察室血圧を診断ベースとしガイドラインでもその値が参照基準として採用されているが、ABPMのほうがより正確に真の平均血圧を推定でき、心血管アウトカムや末端器官傷害との相関性も良好であることが示されている。また、家庭血圧のほうが診察室血圧よりも末端器官傷害との相関性が良好であることも明らかになっており、Hodgkinson氏らは、診察室血圧、家庭血圧の精度をABPMと照らし合わせて検証することは重要かつ必要なこととしてレビューを行った。BMJ誌2011年7月9日号(オンライン版2011年6月24日号)掲載報告より。

非選択的NSAID、選択的COX-2阻害薬が、心房細動/粗動リスクを増大

非選択的NSAIDの使用によって心房細動/粗動のリスクが増大することが、デンマーク・Aarhus大学病院のMorten Schmidt氏らの検討で示され、BMJ誌2011年7月9日号(オンライン版2011年7月4日号)で報告された。NSAIDは世界で最も広範に使用されている薬剤の1つであり、新世代の選択的COX-2阻害薬は消化管毒性を改善したNSAIDとして開発された。一方、心房細動は一般診療で最も高頻度にみられる持続性の心調律障害だが、NSAIDは腎臓への有害作用を介して心房細動のリスクを増大させる可能性が示唆されている。NSAIDの使用や心房細動の発生率は加齢とともに増加するため、その関連性は特に高齢者の治療で大きな関心事となっているという。

2型糖尿病に対する早期強化療法により心血管イベントがわずかに低下傾向に:ADDITION-Europe試験

2型糖尿病に対する早期の多元的な強化療法によって、5年後の心血管イベントや死亡が有意ではないがわずかに減少することが、イギリス・代謝科学研究所のSimon J Griffin氏らが行ったADDITION-Europe試験で示され、Lancet誌2011年7月9日号(オンライン版2011年6月25日号)で報告された。2型糖尿病では、複数の心血管リスク因子に対する多元的な強化療法によって死亡率が半減する可能性が指摘されているが、血圧、脂質、血糖などの個々のリスク因子の治療を診断直後から開始した場合の有効性は不明だという。

2型糖尿病に対する診断直後からの強化食事療法が血糖値を改善:Early ACTID試験

 2型糖尿病患者に対する診断直後からの強化食事療法は、通常治療に比べ血糖値や体重減少、インスリン抵抗性を改善し、糖尿病治療薬の使用量を低減するが、これに運動療法を追加しても新たなベネフィットは得られないことが、イギリス・ブリストル大学のR C Andrews氏らが行ったEarly ACTID試験で示され、Lancet誌2011年7月9日号(オンライン版6月25日号)で報告された。血圧の改善効果は得られなかった。2型糖尿病の管理では、診断直後からライフスタイルの変容を導入すれば予後が改善する可能性があるが、介入の有無で予後の比較を行った大規模試験はないという。

急性心不全へのnesiritideの有効性と安全性

急性心不全へのnesiritideについて、死亡や再入院の増減との関連は認められなかったが、標準治療への上乗せ効果についても呼吸困難への効果は小さく有意差は認められないことが、無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ASCEND-HF」の結果、報告された。米国・デューク大学メディカルセンターのC.M. O’Connor氏らがNEJM誌2011年7月7日号で発表した。組み換え型B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)製剤nesiritideは、急性心不全患者の呼吸困難を早期に緩和する治療薬として2001年に米国で承認されたが、その後の小規模無作為化試験データのプール解析で、プラセボとの比較で腎機能悪化が1.5倍、早期死亡が1.8倍に上ることが示され、独立委員会からnesiritideの有効性と安全性に関する大規模臨床試験の実施が勧告されていた。

イソニアジドの結核一次予防的投与、未発症、未感染を改善せず:南アフリカHIV曝露児対象試験

結核治療薬イソニアジド(商品名:イスコチンなど)の乳児への一次予防的投与について、南アフリカで行われた試験の結果、結核の未発症や未感染を改善しなかったことが報告された。試験対象児は、結核感染リスクの高いHIV感染児あるいは周産期にHIVに曝露された乳児で、いずれも生後30日までにBCGワクチンは摂取されていた。サハラ以南では結核が蔓延しており、特にHIV感染成人が多い地域での感染率の高さが問題となっており、イソニアジドによる結核予防戦略が提唱されているという。南アフリカ共和国・ヴィトヴァーテルスラント大学のShabir A. Madhi氏らは、イソニアジドは感染者からの感染が明らかな患児での治療効果は示されているが、サハラ以南のような結核感染リスクが高い環境下にいる乳児を対象とした試験は行われていないとして、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。NEJM誌2011年7月7日号掲載報告より。

非喫煙、1日30分以上の運動など、健康的な生活習慣が多い女性ほど心臓突然死リスク低下

女性における非喫煙、1日30分以上の運動、BMI<25といった健康的な生活習慣について、実行項目が多い人ほど心臓突然死リスクが低下することが、大規模前向きコホート試験の結果、示された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院不整脈予防センターのStephanie E. Chiuve氏らが、8万人超の女性看護師を対象とするNurses’ Health Studyのデータを分析し明らかにしたもので、JAMA誌2011年7月6日号で発表した。

米国農村部の拠点病院、医療設備劣り、心筋梗塞やうっ血性心不全などの死亡リスク増大

米国農村部の病院は、それ以外の病院に比べ医療設備が劣り、急性心筋梗塞やうっ血性心不全などの死亡率も高いことが明らかにされた。米国・ハーバード大学公衆衛生校のKaren E. Joynt氏らが、全米約4,700の病院について調査した結果による。農村部の病院は、その地域の医療を担う、クリティカル・アクセス・ホスピタル(CAH)として重要視されているものの、その医療の質や患者のアウトカムについては、あまり知られていないという。JAMA誌2011年7月6日号掲載報告より。

QFractureScoresの高い骨折リスク予測能を確認

イギリスで開発された骨折リスクの予測スコア法であるQFractureScores(http://www.qfracture.org/)は、骨粗鬆症性骨折および大腿骨近位部骨折の10年リスクを予測するツールとして有用なことが、イギリス・オックスフォード大学のGary S Collins氏らが行った外的妥当性の検証試験で確認された。国際的ガイドラインは、骨折リスクが高く、介入によってベネフィットがもたらされる可能性がある患者を同定するために、10年絶対リスクに基づいて高リスク例を絞り込むアプローチを提唱している。QFractureScoresは、イギリスの大規模な患者コホートの解析に基づいて開発された骨折リスクの予測モデルであり、内的妥当性の検証結果は2009年に報告されている。BMJ誌2011年7月2日号(オンライン版2011年6月22日号)掲載の報告。

足痛を有する高齢者への多面的足治療が転倒リスクを低減

 足痛のある高齢者に対する足装具、靴の助言、自宅での足運動プログラム、転倒予防教育用の小冊子などから成る介入が転倒率を有意に低下させることが、オーストラリアLa Trobe大学のMartin J Spink氏らの検討で示された。高齢者の転倒は重大な公衆衛生学的な問題であり、毎年65歳以上の3人に1人が転倒を経験しているという。高齢者の転倒の原因として、視力障害、筋力低下、反応時間の遅延などが挙げられるが、最近、プライマリ・ケアでの診療機会も多い足の障害との関連が確認されている。足の障害に加え、不適切な履き物も身体バランスや歩行を損ない、転倒のリスクを増大させるという。BMJ誌2011年7月2日号(オンライン版2011年6月16日号)掲載の報告。

携帯電話メールへの禁煙支援メッセージ自動送信は禁煙の継続に有効

携帯電話メールへの禁煙支援メッセージの自動送信による禁煙支援プログラムは6ヵ月後の禁煙継続率を有意に改善することが、イギリス・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のCaroline Free氏らが実施したtxt2stop試験で示された。タバコは予防可能な死亡の主要原因であり、喫煙が原因の死亡は毎年、世界で500万人以上に上ると推算されている。イギリスでは喫煙者の3分の2が禁煙の意思を表明しており、禁煙支援の効果的な介入法の確立が急務とされる。携帯電話のメッセージ送信機能を利用した禁煙支援は、短期的には自己申告による禁煙を増加させることが示されている。Lancet誌2011年7月2日号(オンライン版2011年6月30日号)掲載の報告。

低リスク肺塞栓症の低分子量ヘパリンによる外来治療は入院治療に劣らない

低リスクの急性肺塞栓症に対する低分子量ヘパリンを用いた外来治療は、入院治療に劣らない有効性と安全性を有することが、スイス・ベルン大学病院のDrahomir Aujesky氏らの検討で示された。欧米では、症候性の深部静脈血栓症の治療では低分子量ヘパリンによる外来治療が通常治療とされる。肺塞栓症の診療ガイドラインでは、血行動態が安定した患者には外来治療が推奨されているが、現行の症候性肺塞栓症の治療の多くは入院患者を想定したものだという。Lancet誌2011年7月2日号(オンライン版2011年6月23日号)掲載の報告。

BRAF V600E変異メラノーマに対するvemurafenib vs. ダカルバジン

 BRAF V600E変異を有するメラノーマで無治療の患者を対象とする、BRAFキナーゼ阻害薬vemurafenib(PLX4032)とダカルバジン(商品名:ダカルバジン注)を比較する第3相試験「BRIM-3」の結果、vemurafenibがダカルバジンと比べて全生存率および無増悪生存率を改善したことが報告された。米国・Sloan-Kettering記念がんセンターのPaul B. Chapman氏らによる。メラノーマ患者では、約40~60%にBRAF変異が認められ、その90%がBRAF V600Eという。vemurafenibは、BRAF V600E変異に顕著な抗腫瘍効果を有し、第2相試験で、治療歴のあるBRAF V600E変異進行性メラノーマ患者において奏効期間中央値6.7ヵ月、奏効率53%が示されていた。NEJM誌2011年6月30日号(オンライン版2011年6月5日号)掲載より。

重症感染症児への輸液ボーラス投与、48時間死亡率を上昇

 ショック患者への急速早期の輸液蘇生術は、救急治療ガイドラインに示されており、小児科における生命維持訓練プログラムでも支持されている。しかし、処置法、用量、輸液の種類に留意したエビデンスはなく、集中ケア施設がまず利用できないアフリカのような、医療資源が限られた環境下でのショック患児や生命に関わるような重症感染症児への治療に対する輸液蘇生の役割は確立されていない。そこでケニア中央医学研究所(KEMRI)のKathryn Maitland氏らは、アフリカ東部3ヵ国で輸液蘇生の効果を調べる無作為化試験を行った。NEJM誌2011年6月30日号(オンライン版2011年5月26日号)掲載より。

STEMI患者でDIDO時間が30分超は、30分以下に比べ院内死亡率が約1.6倍に

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)のために、別の病院に転送されたST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者で、最初の病院に着いてから他院に向けて出発するまでの時間(door-in to door-out:DIDO)が30分以下の人は、全体の1割強にとどまるが、そうした人のPCI実施までの所要時間は短く、院内死亡率は低率であることが明らかにされた。米国・デューク大学のTracy Y. Wang氏らが、1万5,000人弱について行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2011年6月22・29日号で発表した。米国病院の約75%は、緊急PCIに対応できないため、STEMI患者の多くが、最初に訪れた病院から他の病院へ転送されているのが現状という。DIDOは新たな臨床パフォーマンスの指標とされ、適切な再灌流治療のためには、DIDO時間30分以下が推奨されている。

ハイリスク中高年男性への肥満手術、死亡リスク減少せず

ハイリスク中高年男性に対して肥満手術を行っても、死亡リスクは減少しないことが明らかにされた。米国・ダラム退役軍人病院のMatthew L. Maciejewski氏らが、退役軍人向け病院のデータベースを用い、肥満手術を受けた850人とそのコントロール群について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年6月15日号で発表した。これまで、主に若い女性を対象とした、肥満手術と死亡リスクに関するコホート試験はあるが、より高齢の男性に関する研究はほとんど知られていない。