ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:209

肥満で10がん腫の発症増加/Lancet

 過体重や肥満は、子宮体がんや胆嚢がんなど10のがん種の発症増加に寄与していることが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のKrishnan Bhaskaran氏らの検討で示された。前立腺がんと閉経前乳がんは肥満者では少ないこともわかった。BMIが高いと特定のがんに罹患しやすくなることが、いくつかのコホート試験やメタ解析で示されている。しかし、がんのリスクパターンの特性を、可能性のある交絡因子を補正したうえで、大規模かつ詳細に検討した試験はこれまでなかったという。Lancet誌オンライン版2014年8月14日号掲載の報告。

塩分過剰による心血管死、世界で年間165万人/NEJM

 全世界の平均ナトリウム摂取量は、基準値のおよそ2倍で、ナトリウム過剰摂取に起因する心血管疾患死は、年間165万人に上ることが明らかになった。米国・ハーバード公衆衛生大学院のDariush Mozaffarian氏らが、世界の成人の約74%について行った調査で明らかにした。ナトリウム摂取が心血管死亡率に与える影響について、世界レベルの検討はこれまで行われていなかった。NEJM誌2014年8月14日号掲載の報告より。

高齢者へのインフルワクチン、高用量で効果増/NEJM

 65歳以上高齢者への高用量3価不活化インフルエンザワクチン(IIV3-HD)接種は、標準量同ワクチン(IIV3-SD)接種に比べ、インフルエンザ様疾患の予防効果が高く、抗体反応の誘導は有意に高いことが示された。米国・ピッツバーグ大学のCarlos A. DiazGranados氏らが約3万2,000例の高齢者を対象に行った第IIIb~IV相臨床試験の結果、報告した。これまでの報告で、抗体反応が向上することは報告されていた。NEJM誌8月14日号掲載の報告より。

塩分摂取と死亡リスクの関係はJカーブ/NEJM

 心血管の健康に最適なナトリウム摂取量は3~6g/日(食塩換算量:7.5~15.0g/日)であり、これより多くても少なくても、死亡や心血管イベントのリスクが高くなることが、カナダ・マックマスター大学のMartin O’Donnell氏らが行ったPURE試験で示された。世界の心血管疾患予防ガイドラインが推奨するナトリウム摂取量は1.5~2.4g/日だが、これを達成するには、ほとんどの人が食生活の根本的な変更を迫られると考えられる。ナトリウム摂取量の減少が心血管疾患リスクの低下をもたらすことを証明した大規模無作為化試験はなく、前向きコホート試験の結果からは一致した見解は得られていないという。NEJM誌2014年8月14日号掲載の報告。

PSA検診は有用か:13年後の比較/Lancet

 前立腺がん(PSA)検診の有効性に関して評価するヨーロッパ前立腺がん検診の無作為化試験(ERSPC)のフォローアップ13年時点の成績が発表された。これまで検診9年後、11年後において、前立腺がん死亡の有意な減少が報告されていたが、今回もさらなる減少が確認され、大幅な有効性の増大が認められたという。オランダ・エラスムス大学医療センターのFritz H Schroder氏らERSPC研究チームが報告した。しかしながら著者は、「今回の結果にかかわらず、住民ベースのスクリーニング導入の前提条件として、さらなる検診の有害性の定量化と減少が検討されなければならない」とまとめている。9年、11年時に有効性が示された時も、過剰診断といった有害イベントを理由にスクリーニングの実施については論争の的となっていた。Lancet誌オンライン版2014年8月7日号掲載の報告より。

日本初のIFNフリー併用療法、海外第3相でも有用/Lancet

 慢性C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1b型感染患者に対し、開発中のNS5A複製複合体阻害薬ダクラタスビル+NS3プロテアーゼ阻害薬アスナプレビルの経口2剤併用療法(日本では今年7月承認、海外では未承認)は、82~90%と高率の持続的ウイルス消失(SVR)を達成し、忍容性も良好であったことが示された。ドイツ・ハノーバー医科大学のMichael Manns氏らが第III相の国際マルチコホート試験の結果、報告した。所見は、未治療、前治療無効および不適格・不耐容であった患者で認められた。慢性HCV感染治療については、インターフェロンやリバビリンを用いない治療が希求されているが、著者は、「今回の結果は、肝硬変患者を含むHCV遺伝子型1b型感染患者に対して、インターフェロンやリバビリン不要の完全経口療法として、ダクラタスビル+アスナプレビルの使用を支持するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年7月28日号掲載の報告。

薬物依存、1回の簡易介入では効果なし/JAMA

 薬物依存症患者に対して、電話を使った1回の動機付け面接といった簡易介入(brief intervention)では、通常のケアと比べて効果は期待できないことが、無作為化比較試験の結果、明らかにされた。米国・ワシントン大学のPeter Roy-Byrne氏らが、無保険者などへのセーフティネットとして機能する公的なプライマリ・ケア機関の利用患者868例を対象に行った試験の結果、報告した。結果を踏まえて著者は、「簡易介入を、セーフティネットを活用して大規模に行う方法には注意が必要であることを示す結果だった」とまとめている。JAMA誌8月6日号で発表した。

小児BCG接種、結核感染を2割予防/BMJ

 小児へのBCG接種の予防効果について、肺結核患者への曝露後感染を19%予防できることが明らかにされた。また、結核菌感染が認められた場合も、接種者では発症予防効果が58%あることも判明した。英国・イングランド公衆衛生サービス(PHE)のA. Roy氏らがシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。これまでの研究結果から、小児へのBCG接種が、結核の重症症状、なかでも髄膜炎に対して予防効果(60~80%)があることは明らかにされていた。BMJ誌2014年8月5日号掲載の報告より。

違法薬物使用への簡易介入は効果なし/JAMA

 プライマリ・ケアのスクリーニングで特定した不健全な薬物使用について、簡易介入(brief intervention)では効果がないことが明らかにされた。米国・ボストン大学公衆衛生大学院のRichard Saitz氏らが無作為化試験の結果、報告した。米国では、不健康なアルコール摂取への介入効果をエビデンスの1つとして、違法薬物使用および処方薬誤用についての大がかりなスクリーニングと簡易介入が行われているという。しかし有効性のエビデンスはなく、プライマリ・ケアでは一般的な予防サービスとしてそうした介入を推奨していなかった。JAMA誌2014年8月6日号掲載の報告。

血糖降下強化療法の評価―ACCORD試験続報/Lancet

 カナダ・マックマスター大学のHertzel C Gerstein氏らは、ACCORD試験データからの分析の結果、2型糖尿病やその他リスク因子を有する中高年において、血糖値上昇は、虚血性心疾患の修正可能なリスク因子であることが明らかにされたことを報告した。血糖降下強化療法vs. 標準療法を検討したACCORD試験は、死亡増により早期中止となったが、介入期間中の血糖降下療法の全ベネフィットは死亡リスクを上回ることが観察されていた。今回の検討は、試験中止後の追跡期間を含めた評価で、結果、同様の所見が得られたという。著者は、「血糖コントロール不良と虚血性心疾患の関連についてさらなる研究を行う必要性が強力に示された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年8月1日号掲載の報告より。

4.5時間以内のrt-PAが脳卒中転帰を改善/Lancet

 脳卒中発症後4.5時間以内のアルテプラーゼ(商品名:アクチバシンほか)投与は、早期の致死的頭蓋内出血リスクを増大させるが、脳卒中アウトカムの全般的な改善をもたらすことが、英国・オックスフォード大学のJonathan Emberson氏らStroke Thrombolysis Trialists’ Collaborative Groupの検討で示された。4.5時間以内であれば治療開始が早いほどベネフィットが大きいこともわかった。遺伝子組み換え組織プラスミノーゲンアクチベータ(rt-PA)であるアルテプラーゼは、急性虚血性脳卒中の治療に有効であるが、高齢者や脳卒中の重症度が高い患者への、発症から長時間経過後の使用については議論が続いている。Lancet誌オンライン版2014年8月6日号掲載の報告。

PALB2変異で乳がんリスクが5~9倍/NEJM

 PALB2遺伝子の機能喪失型変異は遺伝性乳がんの重要な原因であることが、英国・ケンブリッジ大学のAntonis C Antoniou氏らの検討で示された。生殖細胞系におけるPALB2遺伝子の機能喪失型変異は、乳がん発症の素因となることが知られているが、この変異がもたらす乳がんの生涯リスクは明らかにされていないという。NEJM誌2014年8月7日号掲載の報告。

アレムツズマブ、腎移植の拒絶反応を大幅減/Lancet

 腎移植患者に対する、リンパ球枯渇抗体アレムツズマブ(国内未承認)による導入療法は、バシリキシマブ(商品名:シムレクト)導入療法に比べ、移植後6ヵ月の急性拒絶反応発生リスクが4割近く減少することが示された。英国・オックスフォード大学のPeter Friend氏ら「3C試験」共同研究グループが報告した。結果を踏まえて著者は、「今回示された効果が、移植臓器および生存に影響をもたらすかを、長期の追跡研究で評価する必要があるだろう」と述べている。Lancet誌オンライン版2014年7月28日号掲載の報告より。

献血ドナーのHEV感染率は予想以上/Lancet

 英国の献血ドナー中の遺伝子3型E型肝炎ウイルス(HEV)感染者の割合は0.04%と、予想以上に高率で存在することが明らかになった。また、そうした感染者の献血を受けたレシピエントのうち、同ウイルスへの感染は4割以上で検出されたという。英国National Health Service Blood and TransplantのPatricia E Hewitt氏らが、同国で行われた献血後ろ向きに調査を行い報告した。Lancet誌オンライン版2014年7月28日号掲載の報告より。

消化管・頭蓋内出血リスクの新たな予測法/BMJ

 英国・ノッティンガム大学パーク大学キャンパスのJulia Hippisley-Cox氏らが開発した出血リスク予測のアルゴリズム「QBleed」は、抗凝固薬の使用・非使用患者の上部消化管出血および頭蓋内出血の絶対リスク予測に有用であることが報告された。著者は、「このアルゴリズムをプライマリ・ケアで用いるため、臨床アウトカムと費用対効果についてさらなる検討を行う必要がある」とまとめている。BMJ誌オンライン版2014年7月28日号掲載の報告より。

分娩後の急性腎不全が増加した理由/BMJ

 カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のAzar Mehrabadi氏らは、同国2003~2010年の分娩後急性腎不全について、発生率の動向や背景要因を調べた。その結果、同期間中に同国では発生率が61%増大しており、増大は高血圧症を有する妊産婦、とくに妊娠高血圧腎症を有する妊産婦に限定されたものであったことが判明したという。著者は、「なぜ妊娠高血圧症候群の妊産婦で増加したのか、原因を特定する研究が必要である」とまとめている。BMJ誌オンライン版2014年7月30日号掲載の報告より。

HCVに1日1回IFNフリーレジメンが有用/Lancet

 C型肝炎ウイルス(HCV)感染のインターフェロン(IFN)フリー治療として、シメプレビル+ソホスブビル併用療法は肝線維化の程度にかかわらず高い効果を発揮し、忍容性も良好であることが、米国・テキサス大学健康科学センターのEric Lawitz氏らが行ったCOSMOS試験で示された。HCV遺伝子型1型感染の治療は、従来のペグインターフェロン+リバビリン療法から直接作用型抗ウイルス薬を含むIFNフリーのレジメンへと進化している。シメプレビルは1日1回経口投与のNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬、ソホスブビルは1日1回経口投与のヌクレオチドアナログNS5Bポリメラーゼ阻害薬であり、いずれも未治療および既治療の遺伝子型1型感染患者の第III相試験で良好な持続的ウイルス消失(SVR)率を達成している。Lancet誌オンライン版2014年7月28日号掲載の報告。

分娩前の低分子量ヘパリン、合併症を抑制せず/Lancet

 血栓性素因を有するため合併症のリスクが高い妊婦に対する低分子量ヘパリン・ダルテパリンの分娩前予防投与は、これらの合併症の発生を抑制しないことが、カナダ・オタワ大学のMarc A Rodger氏らが行ったTIPPS試験で示された。血栓性素因は妊婦によくみられる病態で、妊娠関連静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクを増大させ、胎盤介在性妊娠合併症(重症妊娠高血圧腎症、在胎週数に比し小さい新生児、胎盤早期剥離)のリスクをも増加させる可能性がある。低分子量ヘパリンは胎盤を通過せず、大出血やヘパリン起因性の血小板減少、骨粗鬆症のリスクが低いとされるが、皮下注射の手間や費用などの問題がある。Lancet誌オンライン版2014年7月25日号掲載の報告。

SCIDの造血細胞移植にあらゆるドナーの可能性/NEJM

 重症複合免疫不全症(SCID)が、感染症の発現前に同定された幼児では、HLA適合同胞以外のドナーからの造血細胞移植であっても良好な生存率が期待できることが、米国・ボストン小児病院のSung-Yun Pai氏ら原発性免疫不全症治療コンソーシアム(PIDTC)の調査で示された。PIDTCは、SCIDおよび他の原発性免疫不全症の小児に対する造血細胞移植の成績の解析を目的に組織された。とくに出生時にSCIDと診断された小児において、より安全で有効な根治療法をデザインするためには、良好な移植のアウトカムに関連する因子の同定が求められる。NEJM誌2014年7月31日号掲載の報告。

果物・野菜の摂取量が多いほど長寿に/BMJ

 果物や野菜の摂取量が多いほど全死因死亡リスクが低下し、とくに心血管死が有意に抑制されることが、中国・山東大学のXia Wang氏らの検討で示された。がん死リスクへの影響はなく、1日5食以上になると抑制効果はなくなることも確認された。慢性疾患の予防における重要な健康食として、果物や野菜を多く摂取することが広く推奨されている。その一方で、果物や野菜の摂取と死亡リスクの関連を評価した試験は多いものの、この関連を摂取量の程度に基づいて検証したメタ解析はこれまで行われていなかったという。BMJ誌2014年7月29日号掲載の報告。