ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:39

北京では22年11月以降、新たな変異株は認められず/Lancet

 中国・北京市で2022年11月14日以降に流行している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、その大部分がBA.5.2とBF.7で、新たな変異株出現のエビデンスはないことを、中国・Beijing Center for Disease Prevention and Control(北京市疾病予防管理センター)のYang Pan氏らが報告した。約3,000件のSARS-CoV-2について完全ゲノムシークエンスを行い明らかにした。著者は、「今回のデータは北京市のみのものだが、人流の頻度および伝染力が強い系統が循環していたことから、結果は“中国の現状”とみなすことができる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年2月8日号掲載の報告。

2cm以下末梢型NSCLC、縮小手術vs.肺葉切除術/NEJM

 腫瘍径2cm以下で病理学的に肺門・リンパ節転移陰性が確認された末梢型非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する縮小手術は、無病生存に関し、肺葉切除術に対し非劣性であることが示された。全生存は同等だった。腫瘍径が小さなNSCLCの検出率の上昇に伴い、肺葉切除から縮小手術へと再び関心が移っている中、米国・New York-Presbyterian病院のNasser Altorki氏らが、697例を対象に行った第III相多施設共同非劣性試験の結果で、NEJM誌2023年2月9日号で発表された。  研究グループは、2007年6月~2017年3月にかけて、臨床病期T1aN0(腫瘍径2cm以下)のNSCLC患者について、術中にリンパ節転移陰性を確認したうえで無作為に2群に割り付け、縮小手術または肺葉切除術をそれぞれ実施した。

疼痛に有効な抗うつ薬は?/BMJ

 オーストラリア・シドニー大学のGiovanni E. Ferreira氏らは、成人の疼痛において抗うつ薬とプラセボを比較した試験に関する26件の系統的レビューのデータの統合解析を行った。抗うつ薬の有効性を示す確実性が「高」のエビデンスは得られなかったが、4種の疼痛において、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)の有効性を示す確実性が「中」のエビデンスが確認された。研究の成果は、BMJ誌2023年2月1日号に掲載された。  研究グループは、病態別の疼痛に対する抗うつ薬の有効性、安全性、忍容性に関して、包括的な概要を提示する目的で、系統的レビューのデータを統合して要約した(特定の研究助成は受けていない)。

B群髄膜炎菌ワクチン、侵襲性髄膜炎菌感染症で高い予防効果/NEJM

 スペインでは2015年9月、4成分の蛋白ベースのB群髄膜炎菌ワクチン(4CMenB、Bexsero)が自費接種できるようになった。スペイン・Instituto de Investigacion Sanitaria de NavarraのJesus Castilla氏らは、生後60ヵ月未満の小児における4CMenBの有効性の評価を行い、完全接種(2回以上)した集団では、すべての血清群による侵襲性髄膜炎菌感染症に対する有効率が76%に達し、部分接種(1回)でも54%であることを示した。研究の成果は、NEJM誌2023年2月2日号で報告された。  本研究は、小児における4CMenBによる侵襲性髄膜炎菌感染症の予防効果の評価を目的とするスペインの全国的なマッチド症例対照研究であり、2015年10月5日~2019年10月6日に検査で侵襲性髄膜炎菌感染症が確認された生後60ヵ月未満の小児が解析の対象となった。

ドナーの低体温療法は移植腎の機能回復遅延に有用か/NEJM

 腎移植患者(レシピエント)における移植腎の機能回復遅延のリスクは、脳死腎提供者(ドナー)への低体温療法によって低減することが示唆されており、この方法が機械灌流保存に劣らないことが示されれば、かなりの費用の削減とロジスティクスの合理化につながると考えられている。米国・オレゴン健康科学大学のDarren Malinoski氏らがこの仮説の検証を試みたが、ドナーに対する低体温療法は腎臓の機械灌流保存と比較して、移植腎の機能回復遅延の軽減に関して劣っており、低体温療法と機械灌流保存を併用しても、付加的な防御効果はみられないことが示された。研究の詳細は、NEJM誌2023年2月2日号に掲載された。  本研究は、米国の6つの臓器提供施設が参加した実践的な適応的前向き無作為化試験であり、2017年8月~2020年5月の期間に実施された(Arnold Venturesの助成を受けた)。

有害な妊娠アウトカム、母親の虚血性心疾患リスクが長期的に上昇/BMJ

 5つの有害な妊娠アウトカム(早産、在胎不当過小、妊娠高血圧腎症、妊娠高血圧腎症以外の妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病)のいずれかを経験した女性は、出産後の虚血性心疾患のリスクが高く、このリスク上昇は最長で46年持続していることが、米国・マウントサイナイ・アイカーン医科大学のCasey Crump氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年2月1日号で報告された。  研究グループは、5つの有害な妊娠アウトカムと母親の虚血性心疾患の長期的なリスクとの関連の評価を目的に、スウェーデンにおいて全国的なコホート研究を行った(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成を受けた)。

子宮外妊娠、MTXへのゲフィチニブ上乗せ効果は?/Lancet

 卵管異所性妊娠(子宮外妊娠)の女性において、MTX(メトトレキサート)筋肉内投与にゲフィチニブ経口投与を上乗せしても、メトトレキサートを超える臨床的有用性は認められない一方、軽度の副作用が増加した。英国・エディンバラ大学のAndrew W. Horne氏らが、英国の病院50施設において実施した無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Gefitinib for Ectopic pregnancy Management:GEM3」試験の結果を報告した。卵管異所性妊娠は、重大な病的状態の原因となる可能性があり、死に至ることさえある。現在の治療法はメトトレキサートまたは手術であるが、メトトレキサートの治療では約30%が失敗し、その後レスキュー手術が必要となる。EGFRチロシンキナーゼ阻害薬ゲフィチニブは、メトトレキサートの有効性を改善させる可能性が示唆されていた。Lancet誌オンライン版2023年2月1日号掲載の報告。

6つの“健康的な生活習慣”で高齢者の記憶力低下が遅延/BMJ

 健康的な生活習慣(喫煙をしない、飲酒をしない、健康的な食事、定期的な運動、活発な認知活動と社会的接触を組み合わせた)は、アポリポ蛋白E(APOE)ε4遺伝子型保有者においても、記憶力低下の進行を遅らせることを、中国・首都医科大学のJianping Jia氏らが地域住民を対象とした10年間の前向きコホート研究「China Cognition and Ageing Study(COAST)」の結果、報告した。健康的な生活習慣が認知機能に及ぼす影響に関する研究は増えているが、記憶力への影響に目を向けた研究は少なく、長期にわたる健康的な生活習慣と記憶力低下との関係を評価するには不十分なものであり、また遺伝的リスクとの相互作用は考慮されていなかった。著者は、「今回の研究は、記憶力の低下から高齢者を守るための重要な情報を提供するだろう」とまとめている。BMJ誌2023年1月25日号掲載の報告。

骨髄線維症の症状改善、新規クラスJAK阻害薬の有用性は?/Lancet

 新規クラスのJAK阻害薬momelotinibは、ダナゾールとの比較において、骨髄線維症関連の症状、貧血および脾臓の症状を有意に改善し、安全性は良好であることが示された。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのSrdan Verstovsek氏らが、195例の患者を対象に行った第III相の国際二重盲検無作為化試験「MOMENTUM試験」の結果を報告した。著者は、「今回の所見は、骨髄線維症患者、とくに貧血患者への効果的な治療法としてmomelotinibの今後の使用を支持するものである」と述べている。Lancet誌2023年1月28日号掲載の報告。骨髄線維症に対して承認されたJAK阻害薬は、脾臓および関連症状を改善するが貧血の改善は有意ではない。momelotinibは、新規クラスのACVR1ならびにJAK1およびJAK2の阻害薬で、貧血に対しても効果があることが示されていた。

インフル家庭内感染率、コロナ流行前の2.31倍に/JAMA

 米国5州のコホート試験で、2021-2022インフルエンザシーズン中のインフルエンザA(H3N2)ウイルス家庭内感染率は50.0%と、2017~20年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック前のシーズン(2017-2018、2018-2019)の同感染率20.1%に比べ、家庭内感染リスクは有意に上昇(2.31倍)していたことが報告された。米国疾病予防管理センター(CDC)のMelissa A. Rolfes氏らによる検討で、著者は「さらなる検討を行い、関連性の要因を明らかにする必要がある」と述べている。

CKDを抑制、植物油よりも魚油/BMJ

 魚介由来の3種のオメガ3系多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)の総量の値が高いほど、慢性腎臓病(CKD)発症のリスクが低いのに対し、植物由来のn-3 PUFAにはこのような作用はなく、魚介由来n-3 PUFA値が最も高い集団は最も低い集団に比べ、推算糸球体濾過量(eGFR)の≧40%の低下のリスクが低いことが、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のKwok Leung Ong氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2023年1月18日号に掲載された。

心血管疾患リスク予測式は、がん生存者に有用か/Lancet

 がん患者は心血管疾患のリスクが高いという。ニュージーランド・オークランド大学のEssa Tawfiq氏らは、がん生存者を対象に、同国で開発された心血管疾患リスク予測式の性能の評価を行った。その結果、この予測式は、リスクの予測が臨床的に適切と考えられるがん生存者において、5年心血管疾患リスクを高い精度で予測した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年1月23日号で報告された。  研究グループは、がん生存者における心血管疾患リスクの予測式の性能を、プライマリケアで評価する目的で、妥当性の検証研究を行った(オークランド医学研究財団などの助成を受けた)。

血友病Aの新規治療薬、既治療重症例の出血を低減/NEJM

 既治療の重症血友病A患者の治療において、efanesoctocog alfa(エフアネソクトコグ アルファ、国内で承認申請中)の週1回投与は、試験開始前の第VIII因子製剤による定期補充療法と比較して、出血の予防効果が優れ、正常~ほぼ正常の第VIII因子活性と、身体的健康や疼痛・関節の健康の改善をもたらすことが、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のAnnette von Drygalski氏らが実施した「XTEND-1試験」で示された。同薬は、von Willebrand因子(VWF)による半減期の上限を克服し、第VIII因子活性を高い状態で維持するよう設計された新たなクラスの第VIII因子補充療法薬。研究の成果は、NEJM誌2023年1月26日号に掲載された。

胆道がん、S-1による術後化学療法でOS延長/Lancet

 胆道がんの術後補助療法において、経口フッ化ピリミジン系薬剤S-1(テガフール・ギメラシル・オテラシル カリウム)は、経過観察と比較して、全生存期間(OS)を延長し忍容性も良好であることが、栃木県立がんセンターの仲地 耕平氏ら日本臨床腫瘍研究グループの肝胆膵腫瘍グループ(JCOG-HBPOG)が実施した「ASCOT試験(JCOG1202試験)」で示された。研究の成果は、Lancet誌2023年1月21日号で報告された。  ASCOT試験は、日本の38施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2013年9月~2018年6月の期間に患者の登録が行われた(国立がん研究センターと厚生労働省の助成を受けた)。

シスタチンCに基づくeGFRcys式の精度、eGFRcr式と同等/NEJM

 糸球体濾過量(GFR)の推算方法として、欧州腎機能コンソーシアム(European Kidney Function Consortium:EKFC)が開発した、血清クレアチニンを用いる「EKFC eGFRcr式」がある。これは、年齢、性別、人種の差異に関連したばらつきをコントロールするため、健康な人の血清クレアチニン値の中央値で割った「調整血清クレアチニン値」を用いるものだが、血清クレアチニン値の正確な調整には課題があることから、ベルギー・KU Leuven Campus Kulak KortrijkのHans Pottel氏らは、調整血清クレアチニン値を、性別や人種による変動が少ないシスタチンC値に置き換えることができるかどうかを検証した。結果、調整シスタチンC値に置き換えた「EKFC eGFRcys式」は、欧州、米国、アフリカのコホートにおいて一般的に用いられている推算式より、GFRの評価精度を向上させたことが示されたという。NEJM誌2023年1月26日号掲載の報告。

思春期の認知能力、早産児ほど低い/BMJ

 在胎40週出生児と比較して、在胎34~39週出生児に差はみられなかったものの、在胎34週未満児では、思春期における認知能力が実質的に劣ることが示唆されたという。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAnders Husby氏らが、デンマークの住民を対象とした完全同胞のコホート研究の結果を報告した。検討では、国語と数学の試験、知能指数(IQ)検査の結果を評価したが、在胎34週未満児ではいずれも低く、在胎週が短いほど低下が認められた。著者は、「所見は、こうした早産の悪影響をどのように防ぐことができるかについて、さらなる研究が必要であることを強調するものである」との見解を示し、「認知能力は出生時に定まっているものではなく、社会環境や養育に大きく影響されることから、早産児に対する早期介入が必要である」と述べている。BMJ誌2023年1月18日号掲載の報告。

人工呼吸器装着患者に高用量タンパク質は有効か/Lancet

 人工呼吸器を装着している重症患者にタンパク質を高用量投与しても、通常用量投与と比較して入院から生存退院までの期間は改善されず、急性腎障害や臓器不全スコアの高い患者に関してはアウトカムを悪化させる可能性があることが明らかとなった。カナダ・クイーンズ大学のDaren K. Heyland氏らが、日本を含む16ヵ国85施設の集中治療室(ICU)で実施した医師主導によるプラグマティックな単盲検無作為化試験「EFFORT Protein試験」の結果を報告した。国際的な重症患者の栄養ガイドラインでは、質の低いエビデンスに基づき広範なタンパク質投与量が推奨されているが、重症患者に高用量のタンパク質を投与したときの有効性は不明であった。著者は、「1日1.2g/kg(米国静脈経腸栄養学会2022年版ガイドラインの下限、もしくは、欧州静脈経腸栄養学会2019年版ガイドライン準拠の1日1.3g/kg)を処方し、処方量の80%達成に努めることがすべての重症患者にとって合理的かつ安全な方法と思われる。タンパク質の高用量投与のベネフィットが得られる重症患者のサブグループ(たとえば、熱傷、外傷、肥満、術後回復期の患者)を明らかにするためには、投与の最適な量とタイミングを定義するためのさらなる研究が必要である」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年1月25日号掲載の報告。

難治性院外心停止、体外循環式心肺蘇生法vs.従来法/NEJM

 難治性院外心停止患者において、体外循環式心肺蘇生(ECPR)と従来のCPRは、神経学的アウトカム良好での生存に関して有効性が同等であることが、オランダ・マーストリヒト大学医療センターのMartje M. Suverein氏らによる多施設共同無作為化比較試験「INCEPTION(Early Initiation of Extracorporeal Life Support in Re-fractory Out-of-Hospital Cardiac Arrest)試験」の結果、報告された。ECPRは自発循環のない患者において灌流と酸素供給を回復させるが、難治性院外心停止患者における良好な神経学的アウトカムを伴う生存に対する有効性に関するエビデンスは、結論が得られていなかった。NEJM誌2023年1月26日号掲載の報告。

Long COVID、軽症であれば1年以内にほぼ解消/BMJ

 軽症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者では、いくつかのlong COVID(COVID-19の罹患後症状、いわゆる後遺症)のリスクが高いが、その多くは診断から1年以内に解消されており、小児は成人に比べ症状が少なく、性別は後遺症のリスクにほとんど影響していないことが、イスラエル・KI Research InstituteのBarak Mizrahi氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年1月11日号で報告された。  研究グループは、軽症SARS-CoV-2感染者における感染から1年間のlong COVIDによる臨床的な罹患後症状(後遺症)の発現状況を明らかにし、年齢や性別、変異株、ワクチン接種状況との関連を評価する目的で、後ろ向きコホート研究を行った(特定の研究助成は受けていない)。

futibatinib、既治療のFGFR2融合/再構成陽性肝内胆管がんに有望/NEJM

 既治療のFGFR2融合または再構成陽性の肝内胆管がん患者の治療において、次世代共有結合型FGFR1~4阻害薬であるfutibatinibは、測定可能な臨床的有用性をもたらし、奏効や生存が過去の化学療法のデータより優れ、QOLも良好であることが、米国・スタンフォード大学医学大学院のLipika Goyal氏らが実施した「FOENIX-CCA2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年1月19日号に掲載された。  FOENIX-CCA2は、日本を含む13ヵ国47施設が参加した非盲検単群第II相試験であり、2018年4月~2019年11月の期間に患者登録が行われた(Taiho OncologyとTaiho Pharmaceuticalの助成を受けた)。