ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:273

2008年英国NICEの勧告による、歯科治療での抗菌薬予防的投与中止の影響

感染性心内膜炎のリスクが高いと思われる患者に対する抗菌薬の予防的投与は、いまだ多くの国で行われているが、英国国立医療技術評価機構(NICE)は2008年3月に、歯科の侵襲的治療に先立って行われる同抗菌薬予防的投与の完全中止を勧告した。シェフィールド大学臨床歯科学部門のMartin H Thornhill氏らは、このNICEガイドライン導入前後の同処置変化および感染性心内膜炎発生率の変化を調査した。BMJ誌2011年5月21日号(オンライン版2011年5月3日号)掲載より。

初発心筋梗塞後のアスピリン+PPI、非PPI併用と比べ心血管イベントリスク1.46倍

 抗血栓薬とプロトンポンプ阻害薬(PPI)との併用は抗血栓効果を減弱し心血管リスクを高めるとの報告に大きな注目が集まっているなか、デンマーク・コペンハーゲン大学病院循環器部門のMette Charlot氏らが、アスピリンとPPIの併用による心血管リスクについて、同国内診療データを基に後ろ向き解析を行った。初発心筋梗塞後で同併用を受けている患者について調査した結果、有害心血管イベントリスク上昇との関連が認められたと報告している。BMJ誌2011年5月21日号(オンライン版2011年5月11日号)掲載より。

ピルフェニドン、特発性肺線維症の肺機能低下の抑制効果が明らかに

ピルフェニドン(商品名:ピレスパ)は、特発性肺線維症患者の肺機能低下を抑制し、適切な治療選択肢であることを示唆するデータが、米国・デューク大学のPaul W Noble氏らが実施したCAPACITY試験で示された。特発性肺線維症は進行性、致死性の肺疾患で、肺機能の喪失は不可避的だという。抗線維化/抗炎症薬であるピルフェニドンは経口投与が可能な合成分子で、形質転換増殖因子(TGF)βや腫瘍壊死因子(TNF)αの活性を調整することがin vitroで示され、肺線維症の動物モデルでは線維芽細胞の増殖やコラーゲンの合成を阻害し、線維化の細胞組織学的マーカーを低下させることが明らかにされている。Lancet誌2011年5月21日号(オンライン版2011年5月14日号)掲載の報告。

全用量投与不適な進行大腸がんへの減量化学療法、オキサリプラチン追加で予後が改善傾向

標準治療の全用量投与が適切でないと判定された進行大腸がんに対する減量投与では、フッ化ピリミジン系薬剤へのオキサリプラチン(L-OHP、商品名:エルプラット)の追加により、フッ化ピリミジン系薬剤単独に比べ無増悪生存期間(PFS)が延長する傾向を認めたことが、イギリス・リーズ大学のMatthew T Seymour氏らが行ったFOCUS2試験で示された。イギリスでは、進行大腸がんによる死亡の年齢中央値は77歳で、75歳以上の死因の60%、80歳以上の死因の42%が大腸がんだという。一方、重要な臨床試験では通常、対象は75歳未満に限られ、75歳以上や体力が減退した患者などに対する減量投与を検討した試験はほとんどない。Lancet誌2011年5月21日号(オンライン版2011年5月12日号)掲載の報告。

軽症バセドウ病、セレン投与で進行抑制、QOL改善

 日本ではバセドウ病と称されるグレーブス病眼症(GO)の軽症患者に対する治療として、健康栄養素セレンの投与が、QOL改善、眼症減少、GO進行抑制に寄与することが報告された。欧州グレーブス病眼症グループ(EUGOGO)を代表してイタリア・ピサ大学内分泌・代謝学部門のClaudio Marcocci氏らが、同グループに参加する4ヵ国6施設の患者を対象に二重盲検無作為化プラセボ対照試験を行った結果による。軽症GO患者には症状が悪化するまで積極的な治療を行わないが、QOLの低下が問題視されていた。Marcocci氏らはGOの発症機序から、抗酸化作用を有するセレンと、抗炎症作用や種々の免疫調整作用を有するペントキシフィリンの可能性に着目。ペントキシフィリンが小規模パイロット試験でGO患者にベネフィットがあることが示唆されたことを踏まえ、本検討を行った。NEJM誌2011年5月19日号掲載報告より。

加齢黄斑変性症に対するラニビズマブvs. bevacizumab:CATT

滲出型加齢黄斑変性症(AMD)に対する、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬のラニビズマブ(商品名:ルセンティス)とbevacizumabの有効性および安全性について検討した、多施設共同単盲検非劣性無作為化試験「CATT」の結果が発表された。ラニビズマブは臨床試験により滲出型AMDに対する有効性が認められる承認薬である。一方、bevacizumab(商品名:アバスチン、抗悪性腫瘍薬としてのみ承認)はAMDに対しては未承認で大規模臨床試験データもないが、ラニビズマブ同様VEGFをターゲットとすること、また投与コストがラニビズマブよりも安価であること(1回投与につきラニビズマブ約2,000ドル、bevacizumab約50ドル)から、ラニビズマブのFDA承認待ちの間に眼科医たちが適応外使用を始め、米国ではAMD治療薬として最も一般的に用いられるようになっているという。NEJM誌2011年5月19日号(オンライン版2011年4月28日号)掲載報告より。

米国非農村部病院の救急部門、最近20年で27%が閉鎖、営利追求、競争激化が原因

最近20年間で、米国非農村部にある病院の救急部門のうち27%が閉鎖しており、営利病院や病院激戦地にある病院、セーフティネット病院で救急部門の閉鎖リスクが高いことが明らかにされた。米国・カリフォルニア大学救急医療部門のRenee Y. Hsia氏らの調査結果による。米国では1998~2008年の間、特に公的保険加入者や無保険者の患者の救急部門受診者が増大する一方、病院救急部門の減少が伝えられていたが、その閉鎖のリスク要因は明らかにされていなかった。Hsia氏らは、病院救急部門は連邦法により、患者の支払能力にかかわらず医療を必要とする者を受け入れるよう義務付けられているが、米国ヘルスケアを支配する“市場の原理”により弱体化しているのではないかと考え調査・分析を行った。JAMA誌2011年5月18日号掲載より。

胃食道逆流症への腹腔鏡下逆流防止術、esomeprazole投与と5年寛解率は同等

胃食道逆流症(GERD)に対する、腹腔鏡下逆流防止術(laparoscopic antireflux surgery;LARS)とプロトンポンプ阻害薬esomeprazole投与による治療について、5年寛解率は同等であることが示された。フランス・Nantes大学のJean-Paul Galmiche氏らが行った国際多施設共同無作為化試験「LOTUS」の結果によるもので、JAMA誌2011年5月18日号で発表された。GERDは慢性・再発性の疾患で日常生活に支障を来す。治療としては、長期薬物療法もしくは手術療法の2つのオプションがあるが、LOTUS試験は、いずれが至適であるかを目的に行われた。

甲状腺自己抗体を発現する妊婦へのレボチロキシン投与、流産/早産リスクを低減

甲状腺自己抗体の発現がみられる妊婦では、流産および早産のリスクが有意に高く、甲状腺ホルモン製剤レボチロキシン(商品名:レボチロキシンNa、チラーヂン)はこれらのリスクを50%以上も低下させることが、イギリス・ロンドン大学クイーン・メアリー校のShakila Thangaratinam氏らの検討で示唆された。妊娠可能年齢の女性で相対的に発現頻度が高いとされる甲状腺自己抗体は、妊娠の有害転帰を招く可能性があるという。一方、レボチロキシンは妊娠の転帰を改善する可能性が示唆されている。BMJ誌2011年5月14日号(オンライン版2011年5月9日号)掲載の報告。

COPDの標準治療へのβ遮断薬追加の有用性が明らかに

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療において、β遮断薬を標準的な段階的吸入薬治療に追加すると、全死因死亡、急性増悪、入院のリスクが改善されることが、イギリス・Dundee大学のPhilip M Short氏らの検討で示された。β遮断薬は、心血管疾患に対する明確なベネフィットが確立されているが、COPDを併発する患者では、気管支攣縮の誘導や吸入β2刺激薬の気管支拡張作用の阻害を理由に使用されていない。一方、β遮断薬がCOPD患者の死亡や増悪を抑制する可能性を示唆する報告があるが、標準的なCOPD治療薬との併用効果を検討した研究はないという。BMJ誌2011年5月14日号(オンライン版2011年5月10日号)掲載の報告。

デング熱媒介蚊コントロール戦略、幼虫よりも成虫標的のほうが費用対効果に優れる

都市部におけるデング熱の媒介蚊(ベクター)コントロール戦略では、高い駆除効果を有する殺虫剤の年6回散布による成虫コントロールが、費用対効果に優れる介入と考えられることが、米国・エール大学のPaula Mendes Luz氏らの検討で示された。世界で推定25億人がデング熱罹患リスクにさらされ、とくに医療資源に制約のある国で罹患率が高い。毎年約5,000万人が感染し、ベクターと人口の密度上昇により特に都市部で増加している。デング熱コントロールは、主にベクターの幼虫あるいは成虫を標的とした殺虫剤散布に依存するが、殺虫剤抵抗性の進化によりコントロール・プログラムが失敗に終わる可能性があるという。Lancet誌2011年5月14日号(オンライン版2011年5月3日号)掲載の報告。

脳動脈瘤へのヒドロゲル被覆コイル塞栓術、プラチナコイルに比べ再発率を抑制

脳動脈瘤に対するヒドロゲル被覆コイルを用いた血管内塞栓術は、瘤破裂の明らかな抑制効果や長期的な臨床アウトカムの改善効果はもたらさないものの、脳動脈瘤再発(フォローアップ画像検査で不完全な瘤塞栓)を有意に抑制することが、英国・エディンバラ大学のPhilip M White氏らが行ったHELPS試験で示された。血管内コイル塞栓術は開頭手術によるクリッピング術に比べ予後良好で低侵襲だが、残存瘤や再発、再治療率が高いとされる。被覆コイルは、再発率や再治療率の低減を目的に開発されたが、従来のベアプラチナコイルに比べ高価で、その安全性や有効性に関する強固なエビデンスが確立されないまま8~9年間、臨床使用されてきたという。Lancet誌2011年5月14日号掲載の報告。

女性の重大健康問題、骨盤臓器脱には、メッシュキット修復術か膣壁形成術か

骨盤臓器脱の修復法として近年急速に広がった、標準化されたトロカールガイド下ポリプロピレン製メッシュキットを用いた経膣的修復術について、従来の膣壁形成術と比較検討した結果、短期的な治療成功率は高かったが、手術合併症および術後の有害事象発生率も高いことが明らかにされた。スウェーデン・Danderyd病院産婦人科のDaniel Altman氏らによる多施設共同並行群無作為化試験による。骨盤臓器脱は女性を悩ます健康問題の一つとして世界的に重大視されるようになっている。米国では年間30万件以上の前膣壁形成術が行われているが再発リスクが40%以上に上り、革新的な術式への関心が高まっていた。そのような中で急速に広がったのが、従来の手法とは全く異なる、メッシュキットで膣壁を吊り上げるという術式だが、これまで無作為化試験による両者のアウトカム検討のデータがなかったという。NEJM誌2011年5月12日号掲載より。

転移性膵臓がんに対するFOLFIRINOXレジメンvs. ゲムシタビン

転移性膵臓がんに対する第一選択治療としての併用化学療法レジメンFOLFIRINOXの有効性と安全性について、ゲムシタビン単剤療法と比較した初の検討結果が示された。フランス・ナンシー大学腫瘍学部門のThierry Conroy氏らによる。FOLFIRINOXは、オキサリプラチン+イリノテカン+フルオロウラシル+ロイコボリンの4剤併用のレジメンで、ゲムシタビン併用レジメンの検討で示唆された細胞傷害性を参考に編み出された。全身状態良好な進行性膵臓がんを対象とした第1相、第2相試験で有効であることを試験成績が示され、第2-3相試験として転移性膵臓がんに対する第一選択治療としてのゲムシタビンとの比較検討が行われた。NEJM誌2011年5月12日号掲載より。

安定狭心症患者へのPCI前と退院時の至適薬物治療実施率、COURAGE試験発表後も微増にとどまる

COURAGE試験では、安定狭心症患者に対する、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施前の至適薬物治療(OMT)の妥当性を示したが、同試験発表前後のPCI前・退院時のOMT実施率を比べた結果、微増にとどまっていたことが明らかになった。米国・コーネル大学Weill Cornell医学校のWilliam B. Borden氏らが、47万人弱の安定冠動脈疾患患者を対象に行った観察研究の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年5月11日号で発表した。

浸潤性乳がん患者へのタキサン系+アントラサイクリン系ベース化学療法後の生存率の予測モデルを開発

米国Nuvera Biosciences社のChristos Hatzis氏らは、浸潤性乳がん患者へのタキサン系+アントラサイクリン系ベース化学療法に対する反応性を、遺伝子発現様式で予測するモデルを開発した。同モデルとエストロゲン受容体(ER)の陽性・陰性を組み合わせることで、生存率について8~9割の確率で予測することができたという。JAMA誌2011年5月11日号で発表した。

高齢患者におけるレボチロキシン用量と骨折リスクとの関連

甲状腺ホルモン製剤レボチロキシン(商品名:レボチロキシンナトリウム、チラーヂン)で治療中の高齢患者は、以前に使用経験のある患者よりも骨折リスクが高く、高~中用量群の患者は低用量群に比べてリスクが上昇していることが、カナダ・トロント大学のMarci R Turner氏らの調査で示された。甲状腺機能低下症で長期にレボチロキシン投与中の高齢患者の中には、過剰治療の状態にある者がおり、これらの患者は医原性の甲状腺機能亢進症を来す可能性があるという。また、高用量のレボチロキシンや無症候性甲状腺機能亢進症によって骨密度が低下し、転倒や骨折のリスクが上昇することが示唆されている。BMJ誌2011年5月7日号(オンライン版2011年4月28日号)掲載の報告。

医学論文の適格基準は、プロトコールを正しく反映しない

医学誌で公表された論文の多くは、患者を選定する適格基準(eligibility criteria)が、プロトコールで事前に規定された被験者集団の正確な定義を反映していないことが、ドイツ・フライブルグ大学医療センターのAnette Blumle氏らの調査で示された。これまでに、結果の記載に欠落がある無作為化試験の報告や、試験方法(無作為化の仕方など)に関する重要情報を欠く論文もあることが指摘されている。一方、被験者の正確な情報は、その試験結果が適用可能な同様の病態の患者を知りたいと考える読者にとって重要だが、試験参加者を選択する適格基準の記載状況についてはあまり知られていないという。BMJ誌2011年5月7日号(オンライン版2011年4月5日号)掲載の報告。

急性虫垂炎に対する抗生物質治療 vs. 切除術

単純性急性虫垂炎の治療におけるアモキシシリン+クラブラン酸による抗生物質治療の効果は、緊急虫垂切除術よりも劣っており、現在でもgold standardは虫垂切除術であることが、フランス・アントワーヌ・ベクレール病院のCorinne Vons氏らの検討で明らかとなった。急性虫垂炎は、急性の腹痛で入院した患者の中で手術を要する頻度が最も高い疾患だという。4つの無作為化試験をはじめいくつかの検討で、単純性急性虫垂炎は抗生物質治療で治癒が可能であり、1次治療となる可能性もあることが示唆されている。Lancet誌2011年5月7日号掲載の報告。

膵体尾部切除術後のステープル創閉鎖、膵液瘻の予防効果を改善せず:DISPACT試験

膵体尾部切除術後の創閉鎖にステープルを用いても、縫合糸による閉鎖に比べて膵液瘻の発生率は減少しないことが、ドイツ・ハイデルベルク大学のMarkus K Diener氏らの検討で明らかとなった。膵体尾部切除術後の膵液瘻の形成は、主な術後合併症の原因となっており(13~64%)、腹腔内膿瘍、創感染、敗血症、吸収不良、出血などの、さらなる合併症を引き起こすことが、系統的レビューによって示されている。手術手技や施術医の技能が膵液瘻のリスク因子とされ、切除や残存膵閉鎖の手技によって瘻孔形成に差があることが報告されているが、最適な膵断端閉鎖法は確立されていないという。Lancet誌2011年4月30日号(オンライン版2011年4月27日号)掲載の報告。