ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:130

公共サービスが受けられない就学前児童への肥満予防介入の効果/JAMA

 十分な公共サービスが受けられない就学前児童を対象に、肥満予防のための多相的な行動変容介入を36ヵ月間行ったが、BMI値への影響はみられなかった。米国・Vanderbilt University School of MedicineのShari L. Barkin氏らによる無作為化試験の結果で、JAMA誌2018年8月7日号で発表された。十分な公共サービスが受けられない集団の小児は、肥満有病率と慢性疾患リスクが最も高く、小児期の肥満予防が重大な課題になっているという。

思春期サッカー選手の0.4%に、心臓突然死リスク/NEJM

 心血管スクリーニングを受けた思春期サッカー選手約1万1千人中、心臓突然死と関連する心疾患が0.38%に確認された。心臓突然死の発生率は1万4,794人年当たり1例、すなわち選手10万人に6.8人で、大部分はスクリーニングで検出されなかった心筋症に起因していたという。英国・ロンドン大学のAneil Malhotra氏らが、思春期のサッカー選手における心臓突然死の発生率と原因に関する調査結果を報告した。若手スポーツ選手における心臓突然死の発生率や原因は、試験参加者や調査方法によって報告が異なっており、明確に定義された集団で心血管スクリーニングを受けたことのある若手選手のデータは不足していた。NEJM誌2018年8月9日号掲載の報告。

中等症~重症の尋常性乾癬に対するrisankizumabの効果/Lancet

 中等症~重症の局面型乾癬患者において、risankizumabはプラセボおよびウステキヌマブと比較し優れた有効性を示したことが認められた。治療下で発現した有害事象(TEAE)プロファイルは、治療群間で類似しており、新たな安全上の所見はみられなかった。米国・ウィスコンシン医科大学のKenneth B. Gordon氏らが、乾癬を対象としたrisankizumabの2件の第III相無作為化二重盲検臨床試験「UltIMMa-1試験」「UltIMMa-2試験」の結果を報告した。risankizumabは、インターロイキン(IL)-23のp19サブユニットに結合するヒト化IgG1モノクローナル抗体で、乾癬性炎症に関わるIL-23を選択的に阻害する。Lancet誌オンライン版2018年8月7日号掲載の報告。

精神的危機に直面した人々へのセルフマネジメント介入は有効か/Lancet

 英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのSonia Johnson氏らは、精神的危機(mental health crisis)に直面し、在宅での集中的治療を提供する精神的危機解決チームによるサポートを終えた人々について、ピアサポート専門員の助けを借りたセルフマネジメント介入が、急性期ケアの再入院率を低下するかを検証した。精神保健サービスにとって、回復サポートに焦点を合わせ、急性期治療へ高度専門治療を提供することは課題の1つとなっている。精神的危機に直面した人々の再発は一般的となっており、そのような再発予防に対して、セルフマネジメントの介入効果を支持するエビデンスはあるが、危機を脱した人の再入院に関する効果は検証されていなかった。Lancet誌2018年8月4日号掲載の報告。

妊娠・授乳期のビタミンD投与は胎児・乳児に有益か/NEJM

 分娩前のビタミンD欠乏症や胎児・乳児の発育不全が広く認められる集団において、妊娠中期から分娩時までまたは分娩後6ヵ月まで、母体にビタミンDサプリメント投与を行っても、胎児や乳児の成長は改善されなかった。カナダ・トロント大学のDaniel E. Roth氏らが、バングラデシュで行った無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果で、NEJM誌2018年8月9日号で報告した。ビタミンD欠乏症が蔓延している地域において、妊娠中および授乳期の母体へのビタミンD投与が、胎児や乳児の成長を改善するかどうかは確認されていなかった。

結核予防にリファンピシン4ヵ月が有望/NEJM

 活動性結核の予防において、リファンピシンの4ヵ月投与の効果はイソニアジドの9ヵ月投与に対し非劣性であり、治療完遂率はリファンピシンのほうが高く、安全性も優れることが、カナダ・マギル大学のDick Menzies氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2018年8月2日号に掲載された。潜在性結核感染における活動性結核の予防では、WHOなどがイソニアジドの6ヵ月または9ヵ月投与を推奨しているが、このレジメンは肝毒性によりアドヒアランスが不良なことが知られている。リファンピシンの4ヵ月投与は、イソニアジドの9ヵ月投与に比べGrade3/4の薬剤関連有害事象が少なく、安価であり、治療完遂率が優れることが報告されている。

米国の高齢者、抗菌薬使用の最新動向は/BMJ

 米国の高齢外来患者では、近年、抗菌薬の全体的な使用およびその不適正使用にはほぼ変化がないか、わずかに減少しており、個々の薬剤使用の変化にはばらつきがみられるものの、これはガイドラインの変更とは一致しないことが、米国・ハーバード大学T.H. Chan公衆衛生大学院のScott W. Olesen氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2018年7月27日号に掲載された。米国では抗菌薬の不適正使用が拡大しており、抗菌薬使用は高齢になるほど多くなる。高所得国では、抗菌薬はほぼ安定的に使用されているが、米国では近年、下降している可能性が示唆されている。

30~50代で非飲酒でも認知症リスク上昇/BMJ

 中年期に飲酒しなかった集団および中年期以降に過度な飲酒を続けた集団は、飲酒量が適度な場合に比べ認知症のリスクが高まることが、フランス・パリ・サクレー大学のSeverine Sabia氏らが行った「Whitehall II試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2018年8月1日号に掲載された。非飲酒と過度な飲酒は、いずれも認知機能に有害な影響を及ぼすとされるが、認知症の発症予防や遅延に関する現行のガイドラインには、エビデンスが頑健ではないため、過度の飲酒は含まれていないという。また、研究の多くは、老年期のアルコール摂取を検討しているため生涯の飲酒量を反映しない可能性があり、面接評価で認知機能を検討した研究では選択バイアスが働いている可能性があるため、結果の不一致が生じている。

バレット食道に高用量PPI+アスピリンが有効/Lancet

 バレット食道の治療では、高用量プロトンポンプ阻害薬(PPI)およびアスピリンが有効であり、これらを併用すると、より高い効果が得られることが、英国・Morecambe Bay University Hospitals NHS TrustのJanusz A. Z. Jankowski氏らが行った「AspECT試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2018年7月26日号に掲載された。食道腺がんは世界で6番目に多いがん死の原因であり、バレット食道はその最も重要なリスク因子である。PPIは、バレット食道の主要な促進因子の1つと考えられる胃酸の逆流の抑制に有効とされる。

末梢静脈カテーテル、失敗率低いドレッシング材と固定法は?/Lancet

 末梢静脈カテーテル(PIVC)留置において、現在使用されているドレッシング材および固定法では、総じてPIVC留置の失敗を招き、耐久性も乏しく、さまざまな製品を同時に使用しなければならないことが多いという。オーストラリア・グリフィス大学のClaire M. Rickard氏らは、非ボーダータイプの標準的なポリウレタンドレッシング材と、他の3つの代替法の有効性と費用について比較検証したプラグマティックな無作為化優越性試験「SAVE試験」の結果を報告した。また著者は、「現状では、コストが製品を選択する主要な決定要因となっている」とも指摘し、「効果的で耐久性のあるドレッシング材による固定を成し遂げるための技術革新と、それらを評価する無作為化試験の実施が喫緊の課題である」と述べている。世界中で毎年20億個ものPIVCが使用されているが、最適なドレッシング材と固定法は十分に確立されていないという。Lancet誌オンライン版2018年7月26日号掲載の報告。

米国でのオピオイド使用、ピーク時から依然減少せず?/BMJ

 米国において2007~16年のオピオイド使用率は高く、メディケアを受給している障害者が、高齢者および民間保険受給者と比較して最も高かった。オピオイド乱用の注意喚起や危険意識の高まりにもかかわらず、オピオイド使用率および平均1日使用量は、ピーク時からほとんど減少していないという。米国・メイヨー・クリニックのMolly Moore Jeffery氏らが、診療報酬請求データの後ろ向きコホート研究の結果を報告した。米国におけるオピオイドの使用は、ピーク時の2012年以来減少してきたことが人口データにより示唆されているが、メディケア出来高払い受給者を除いた大規模な集団における、オピオイド使用率および1日使用量は明らかにされていなかった。BMJ誌2018年8月1日号掲載の報告。

腹部大動脈瘤スクリーニング、男女で異なるべき/Lancet

 英国において、女性に対する腹部大動脈瘤(AAA)スクリーニングプログラムは、男性と同様のデザインでは、費用対効果が得られそうもないという。英国・ケンブリッジ大学のMichael J. Sweeting氏らによる解析結果で、Lancet誌オンライン版2018年7月26日号で発表された。英国においてAAA死亡に占める女性の割合は3分の1。男性については、国家的スクリーニングプログラムで死亡が減少し、費用対効果が認められているが、女性に同様のプログラムを提供した場合の有益性、有害性、および費用対効果については、公式な評価は行われていなかった。

尿崩症診断、コペプチン測定が従来法を上回る精度/NEJM

 尿崩症の診断について、間接水制限試験と比べて高張食塩水負荷試験による血漿コペプチン値測定のほうが診断精度は高いことが、ドイツ・ライプチヒ大学のWiebke Fenske氏らによる検討の結果、示された。間接水制限試験は、現行参照すべき基準とされているが、技術的に扱いが難しく、結果が不正確である頻度が高い。研究グループは、尿崩症にアルギニンバソプレシンが関与していることから、アルギニンバソプレシン前駆体由来の代替マーカーである血漿コペプチンを測定する方法の有用性を検討するため、間接水制限試験と比較した。NEJM誌2018年8月2日号掲載の報告。

肩インピンジメント症候群への鏡視下肩峰下除圧術は有効か/BMJ

 鏡視下肩峰下除圧術(arthroscopic subacromial decompression:ASD)は、最も一般的に行われている肩関節手術であり、肩インピンジメント症候群の治療にも用いられる。フィンランド・ヘルシンキ大学病院のMika Paavola氏らは、肩インピンジメント症候群へのASDは、プラセボとしての外科的介入を上回るベネフィットはもたらさないことを無作為化試験(FIMPACT試験)で示し、BMJ誌2018年7月19日号で報告した。最近の3つの系統的レビューでは、肩峰下除圧術の効果は運動療法を凌駕しないと報告されているが、ASDの有効性の評価には、適切な盲検化のために、手術をプラセボとした比較が求められるという。

小児の敗血症バンドルの1時間完遂で、院内死亡リスクが低減/JAMA

 3項目から成る小児の1時間敗血症バンドル(1-hour sepsis bundle)を1時間以内に完遂すると、これを1時間で完遂しなかった場合に比べ院内死亡率が改善し、入院期間が短縮することが、米国・ピッツバーグ大学のIdris V. R. Evans氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、JAMA誌2018年7月24日号に掲載された。2013年、ニューヨーク州は、小児の敗血症治療を一括したバンドルとして、血液培養、広域抗菌薬、20mL/kg輸液静脈内ボーラス投与を1時間以内に行うよう規定したが、1時間以内の完遂がアウトカムを改善するかは不明であった。

遺伝性血管性浮腫の発作予防、新規血漿カリクレイン阻害薬が有望/NEJM

 開発中の経口血漿カリクレイン阻害薬BCX7353は、プラセボに比べて遺伝性血管性浮腫の発作の発生率が低く、良好な予防効果を発揮することが、ドイツ・フランクフルト大学のEmel Aygoren-Pursun氏らが行ったAPeX-1試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2018年7月26日号に掲載された。遺伝性血管性浮腫は、生命を脅かす疾患であり、カリクレイン-ブラジキニンカスケードの過剰な活性化をもたらすC1インヒビター(C1エステラーゼインヒビターとも呼ばれる)をコードする遺伝子変異により発症する。BCX7353は、血漿カリクレインの強力な経口小分子阻害薬で、血管性浮腫の発作の予防に有効な可能性を示す薬物動態および薬力学プロファイルを有するという。

HIV関連結核の予後改善に、尿スクリーニング検査は有効か/Lancet

 HIV関連結核の診断は不十分であり、見逃しは院内死亡率を高めるという。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のAnkur Gupta-Wright氏らは、アフリカのHIV陽性入院患者において結核の迅速尿スクリーニング検査の有効性を検討し、全体の死亡率は抑制されないが、高リスク例ではベネフィットが得られる可能性があることを示した(STAMP試験)。研究の成果は、Lancet誌2018年7月28日号に掲載された。結核は、世界的にHIV患者の主要な死因であり、2016年には37万4,000例が死亡したと推定されている。HIV陽性入院患者では、結核の尿検査は診断率が良好であることが示唆されている。

都市部救急搬送中の出血性ショックの外傷患者、血漿輸血は有効か/Lancet

 出血性ショックの外傷患者を、都市部のレベル1外傷センターへ救急車で搬送中、病院到着前に血漿輸血を行っても生命予後は改善しなかった。米国・コロラド大学デンバー校のHunter B. Moore氏らが、救急車で搬送中の血漿輸血の有用性を検証したプラグマティック無作為化試験「COMBAT(Control of Major Bleeding After Trauma Trial)試験」の結果を報告した。血漿は外傷後の止血重視輸血法(haemostatic resuscitation)に不可欠であるが、投与のタイミングについては議論が続いていた。著者は、「血液製剤は、搬送時間が長くかかるような環境においては有益かもしれないが、外傷センターまでの距離が短い都市部においては経済的負担を考慮すると妥当とはいえないだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2018年7月19日号掲載の報告。

救急ヘリ搬送中の出血性ショックの外傷患者、血漿輸血は有効か/NEJM

 外傷による出血性ショックのリスクがある患者に対し、病院到着前に解凍した血漿輸血をすることで標準蘇生処置と比較し、安全性の問題を伴うことなく病院到着時のプロトロンビン時間比が改善し、30日死亡率も低下した。米国・ピッツバーグ大学医療センターのJason L. Sperry氏らが、救急搬送中の解凍血漿輸血の有効性と安全性を検証した第III相優越性試験「PAMPer(Prehospital Air Medical Plasma)試験」の結果を報告した。外傷患者では、病院到着前に標準的な蘇生処置に加え血漿を輸血することで、出血やショックによる合併症リスクを軽減できる可能性がある。しかし、これまで大規模臨床試験による検討は行われていなかった。NEJM誌2018年7月26日号掲載の報告。

抗うつ薬治療が心血管イベントの長期的リスクを軽減/JAMA

 うつ病は急性冠症候群(ACS)の不良な転帰と関連しているが、抗うつ薬治療が長期的予後に良好な影響を及ぼすことが、韓国・全南大学校のJae-Min Kim氏らによる無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、示された。うつ病でACSを呈した患者において、24週間のエスシタロプラム治療を行った患者群ではプラセボ群と比べて、追跡期間中央値8.1年後のMACE発生リスクが有意に低かったという。これまで、抗うつ薬治療の長期的予後への影響について、ほとんどデータはなかったという。JAMA誌2018年7月24日号掲載の報告。