ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:321

アメリカ医療研究品質機構のノウハウを活用して患者安全指標はつくれそうだ

患者安全は国際的な問題だが、その指標づくりは容易ではない。アメリカには、医療研究品質機構(AHRQ:Agency for Healthcare Research and Quality:http://www.ahrq.gov/)が病院診療データを基に開発した患者安全の指標があり、数ヵ国がその指標を自国の患者安全指標づくりに活用しているがイギリスでも活用できないか。Healthcare Commission(ロンドン)のVeena S Raleigh氏らが、29あるAHRQの指標のうち9つについて症例対照試験を行い有用性を検証した。BMJ誌2008年11月22日号(オンライン版2008年10月17日号)掲載より。

ゲフィチニブは進行非小細胞肺癌の2nd-line治療として妥当:INTEREST試験

再発進行非小細胞肺癌(NSCLC)に対するゲフィチニブ(商品名:イレッサ)療法の有用性は標準治療であるドセタキセル療法に劣らないため、進行NSCLCの2nd-line治療として妥当であることが、国際的な第III相試験INTEREST試験で明らかとなった。米テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのEdward S Kim氏が、Lancet誌2008年11月22号で報告した。

HIV感染乳児への抗レトロウイルス療法戦略

HIV感染乳児は年長児よりも疾患の進行が早く、死亡率も高い。特にCD4リンパ球の割合(CD4パーセンテージ)が高いほどその傾向が強まる。そのため抗レトロウイルス療法の早期開始が求められるが、利用できる薬剤や毒性の問題などが解決されていなかった。本報告は、HIV感染乳児への抗レトロウイルス療法戦略を検討するChildren with HIV Early Antiretroviral Therapy(CHER)試験のフェイズIIIからの早期アウトカムの報告で、NEJM誌2008年11月20日号に掲載された。

ロスバスタチン、健康そうな人にも有益:JUPITER

高脂血症治療薬ロスバスタチン(商品名:クレストール)について、高脂血症ではない(LDL-C値が正常か低値)が高感度CRP(C反応性蛋白)が上昇している健康そうな人も、投与によって利益が得られることが報告された。高感度CRPは炎症バイオマーカーで、心血管イベントを予測できる。スタチンがコレステロールだけでなくCRPも低下することから検証されたJUPITER試験の結果で、NEJM誌2008年11月20日号(オンライン版2008年11月9日号)にて掲載された。

停留睾丸の男児に、クラインフェルター症候群などの遺伝子変調が高率

持続性または両側性の停留睾丸の男児には、クラインフェルター症候群などの遺伝子変調が、そうでない男児より高率で見られることが明らかにされた。これは、イタリアUniversity of PadovaのAlberto Ferlin氏らが、600人の停留睾丸の男児について行ったケース・コントロール試験で明らかにしたもので、JAMA誌2008年11月19日号で発表されている。

イチョウ葉エキスに認知症予防効果なし

イチョウ葉エキス(学術名:ギンコウ・ビロバ)サプリメントには、認知症の発症予防効果はないようだ。米National Center for Complementary and Alternative MedicineのSteven T. DeKosky氏らが、5ヵ所の医療施設で行った、無作為化プラセボ対照二重盲検試験で明らかにしたもので、JAMA誌2008年11月19日号で発表された。ギンコウは、認知力や記憶力の温存に効果があるとして広く使われているものの、これまで、その効果の有無を示す適切な研究は少なかった。

医学生の不節制飲酒を正すためにも

米国医学生の多飲、不節制飲酒は、同年代で広がっているほどではないものの、ごく一般的に見られること、また医学教育のルーチンな臨床トレーニングとして、飲酒に関するスクリーニングやカウンセリングを取り入れることが、ガイドラインで推奨され費用対効果に優れたカウンセリングによる患者ケアの実施率を上げ、学生および一般の多飲酒者を減らすことに結びつくとの報告が、ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)のErica Frank氏らによって報告された。BMJ誌2008年11月15日号(オンライン版2008年11月7日号)より。

カウンセリングに「満足」→消耗感軽減→労働時間短縮:ノルウェー医師

医師のメンタルヘルスに関して、バーンアウト(燃え尽き症候群)や情緒的消耗感予防のためにも早期介入が必要であるとの研究報告は多いが、介入を評価した報告はほとんどなく、あっても追跡期間が短い。Modum Bad Research Institute/オスロ大学(ノルウェー)のKarin E Isaksson Ro氏らは、ストレス下にある医師へのカウンセリング介入後1年間追跡調査を行い、バーンアウトのレベルや変化の現れを調査した。BMJ誌2008年11月15日号(オンライン版2008年11月11日号)より。

注射薬の使用状況とHIV有病率に関連はあるか?

最近10年で注射薬の使用国が増加しており、注射薬使用者はHIV有病率が高く、これは実質的に世界規模の保健課題であることが、Bradley M Mathers氏ら国連の委託によるHIVおよび注射薬使用に関する研究グループ(Reference Group to the UN on HIV and Injecting Drug Use)の系統的なレビューで明らかとなった。Lancet誌2008年11月15日号(オンライン版2008年9月24日号)掲載の報告。

rofecoxibによる心血管毒性は投与中止後も持続

シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)の選択的阻害薬であるrofecoxib(商品名:Vioxx)の大腸腺腫性ポリープに対する有効性を検討したAPPROVe(Adenomatous Polyp Prevention on Vioxx)試験の最終解析において、心血管イベントの発生リスクが約1.8倍に上昇した状態が、同薬剤の投与中止後少なくとも1年間は持続することがわかった。アメリカ・Dartmouth医科大学地域・家庭医療学のJohn A Baron氏が、Lancet誌2008年11月15日号(オンライン版2008年10月14日号)で報告した。

重度強迫性障害への視床下核電気刺激療法は副作用に注意

重度難治性の強迫性障害(obsessive-compulsive disorder:OCD)は、強迫観念や強迫行為、儀式行為などによる時間の浪費、閉じこもりなどによって生活が困難になるといった特性が見られる疾患である。このOCDの治療の選択肢として近年、行動療法や薬物治療とならんで、パーキンソン病による運動障害の治療法として有用性が確認されている視床下核への電気刺激療法が提唱されている。その有効性と安全性に関する臨床試験を行った、フランス国立衛生研究所(INSERM)のLuc Mallet氏らSTOC研究グループによる結果が、NEJM誌2008年11月13日号に掲載された。

BMIに加え腹囲、ウエスト・ヒップ比も

肥満と死亡リスクの関連を評価する際、従来の研究では主に身長と体重から算出するBMIに依り、体脂肪の分布はほとんど検討されていない。しかし臀大腿部肥満よりも腹部肥満のほうが慢性疾患リスクと密接に関連し、腹囲あるいはウエスト・ヒップ比がBMIよりも予測因子として優れている可能性が示唆されてもいる。そこで、独Institute of Human NutritionのT. Pischon氏らは、欧州における癌と栄養に関する大規模な前向き調査(EPIC)参加者を対象に、BMIに腹囲、生活習慣などを加え死亡率との関係について分析を行った。NEJM誌2008年11月13日号掲載より。

2型糖尿病日本人患者への低用量アスピリン投与:JPAD報告

2型糖尿病患者に対し低用量アスピリンを投与しても、アテローム性動脈硬化症イベントの発症予防には効果が認められない。これは熊本大学大学院循環器病態学教授の小川久雄氏らが行った、日本人2型糖尿病患者2,539人を対象とするJapanese Primary Prevention of Atherosclerosis With Aspirin for Diabetes(JPAD)の研究結果で、JAMA誌11月12日号(オンライン版2008年11月9日号)で公表された。低用量アスピリンのアテローム性動脈硬化症イベントの予防効果について、2型糖尿病患者を対象に行った研究は珍しい。

ビタミンE・Cどちらも心血管疾患予防(50歳以上男性)に効果なし

50歳以上の男性に対して、ビタミンEやビタミンCを投与しても、心血管疾患イベントの予防には効果がないようだ。米Harvard大学医学部のHoward D. Sesso氏らが、約1万5,000人の男性医師を対象にした大規模試験「Physicians’ Health Study II」で明らかにしたもので、JAMA誌2008年11月12日号(オンライン版2008年11月9日号)で発表した。これまでに、ビタミンEやCが心血管疾患予防に効果があることを示した研究はあるが、元々リスクの低い男性を対象にした長期の研究結果は珍しい。

プラセボ処方は日常的:米国の内科医、リウマチ医対象調査

アメリカの臨床現場ではプラセボ処方は日常的に行われており、処方する医師は倫理的に特に問題はないと考えている実態が、NIHのJon C Tilburt氏らによって報告された。内科医およびリウマチ医各600人ずつ計1,200人を対象に、プラセボ処方の状況と、処方する医師の意識、態度について、メールアンケートで行われた調査の結果による。BMJ誌2008年11月8日号(オンライン版2008年10月23日号)より。

緑豊かな地域の住民は健康格差が小さい?

最も緑が豊富な環境に居住する住民は、所得の差に基づく健康上の格差が最も小さいことが、イギリス・Glasgow大学公衆衛生・健康政策学のRichard Mitchell氏らの検討で判明した。緑豊かな自然環境に触れることは、健康および健康関連行動に独立の効果を及ぼすことが示されている。そこで、同氏らは「緑に触れる機会の多い環境は、社会経済的な地位の低さに起因する罹病の過程に影響を及ぼし、それゆえ所得差による健康上の不平等はその居住地域の緑が豊かであるほど目立たなくなるのではないか」との仮説のもとに調査を行った。Lancet誌2008年11月8日号掲載の報告。

社会政策の寛容性が、幼児死亡率、高齢者超過死亡率を改善

 保健医療においては、社会政策をいかに制度設計するかとともに、どの程度の寛容性をもたせるかが重要なことが、北欧で実施されたNEWS(Nordic experience of welfare states and public health)プロジェクトの解析結果により明らかとなった。保健医療に関する重要な社会的決定要因の多くは社会政策の中心をなすものでもある。高所得国はいずれも社会保障プログラムを持つが、その制度設計や寛容性には国によって明確な違いが見られ、これらの差は特に子どもや高齢者の貧困率の各国間のばらつきにおいて明らかだという。スウェーデン・Stockholm 大学/カロリンスカ研究所医療公平化研究センターのOlle Lundberg氏が、Lancet誌2008年11月8日号で報告した。