ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:271

プライマリ・ケア患者におけるハイリスク薬処方の割合およびパターン

イギリス・ダンディー大学のBruce Guthrie氏らは、スコットランドの一般診療所(GP)を対象に、ハイリスク薬処方の処方割合とそのパターンを調べること、また、プライマリ・ケア患者が特に薬物有害事象の影響を受けやすい不適切処方を受ける可能性について明らかにするため、横断的集団データベース分析を行った。BMJ誌2011年6月25日号(オンライン版2011年6月21日号)掲載より。

暴力事件防止のため匿名情報を医療機関、警察、自治体で共有・活用することは有効

世界保健機構(WHO)では、個人間の暴力による死者は世界中で60万人、重傷者は1,720万人に上り、15~29歳の死因の第5位、30~44歳では第6位という実情を踏まえ、「個人間の暴力は世界的な保健問題」と位置付けている。個人間の暴力事件には地域レベルでの防止戦略が有効な可能性はあるが、そうした取り組みについてこれまで科学的に検証はされていなかった。そこで、米国疾病管理予防センター暴力事件部門のCurtis Florence氏らは、イギリス・ウェールズの首都カーディフで2001年に導入された地域暴力事件防止プログラムの評価を行った。BMJ誌2011年6月25日号(オンライン版2011年6月16日号)掲載より。

保護施設のホームレスの精神疾患、死亡の実態:デンマークの調査

保護施設に居住するホームレスの多くが健康問題を抱えており、精神疾患や薬物乱用障害の罹患率が高く、死亡については特に外的要因による場合が多いことが、デンマーク・コペンハーゲン大学のSandra Feodor Nielsen氏らの検討で示された。先進国では、一般人口に比べホームレスの死亡率が上昇していることが数多くの研究で報告されており、その原因として精神疾患との関連が指摘されている。しかし、ホームレスは宿泊施設が十分でないためサンプリングやモニタリングが難しいという限界があるという。Lancet誌2011年6月25日号(オンライン版2011年6月14日号)掲載の報告。

慢性腎臓病に対するLDL-C低下療法、動脈硬化イベントを低減

シンバスタチン(商品名:リポバスなど)と小腸コレステロールトランスポーター阻害薬エゼチミブ(同:ゼチーア)の併用療法は、慢性腎臓病を有する広範な患者において、高い安全性を保持しつつ主なアテローム性動脈硬化イベントを有意に抑制することが、Colin Baigent氏らが行ったSHARP試験で示され、Lancet誌2011年6月25日号(オンライン版2011年6月9日号)で報告された。慢性腎臓病は心血管疾患のリスクを増大させるが、その予防についてはほとんど検討されていない。スタチンを用いたLDLコレステロール(LDL-C)低下療法は、非腎臓病患者では心筋梗塞、虚血性脳卒中、冠動脈血行再建術施行のリスクを低減させるが、中等度~重度の腎臓病がみられる患者に対する効果は明らかではないという。

長期的ダイエットを成功または失敗させる食事、生活習慣とは?

体重安定には摂取カロリーと消費カロリーのバランスを要することから、長期的な体重増加を予防するには、「食事量を減らし、運動量を増やす」というアドバイスが単純明快な戦略にみえる。これに対して、米国・ブリガム&ウィメンズ病院循環器部門のDariush Mozaffarian氏らは、「特定の食事や生活習慣が成功の可否に影響する可能性がある」として、食事や生活習慣の詳細と体重増加との関係を調査した。NEJM誌2011年6月23日号掲載より。

アロマターゼ阻害薬エキセメスタン、閉経後女性の浸潤性乳がん発症を有意に減少

 閉経後女性の乳がん予防に関して、アロマターゼ阻害薬のエキセメスタン(商品名:アロマシン)が、浸潤性乳がん発症を有意に減少することが示された。米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのPaul E. Goss氏ら「NCIC CTG MAP.3」試験グループが行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果による。これまで乳がん一次予防の化学療法としては、選択的エストロゲン受容体調節薬であるタモキシフェン(抗がん薬、商品名:ノルバデックスなど)やラロキシフェン(骨粗鬆症薬、同:エビスタ)が注目されてきたが、毒性効果がもたらすリスクに対する懸念からこれらの使用は広がっていないという。一方、エキセメスタンは、閉経後女性のエストロゲン抑制に優れ、実験モデルにおいて乳がん発症を減少することが認められ、また早期乳がん対象の試験において、対側原発性乳がんを、タモキシフェンよりも減少し副作用も少ないことが報告されていた。NEJM誌2011年6月23日号(オンライン版2011年6月4日号)掲載より。

前立腺がん患者、現喫煙者の再発率、死亡率、喫煙未経験者と比べ増大

前立腺がんで現喫煙者は、喫煙未経験者に比べ、再発率と死亡率(全死亡率、心血管疾患死亡率、前立腺がんによる死亡率)がいずれも増大することが明らかにされた。現喫煙者は喫煙未経験者より、前立腺がんによる死亡率は約1.6倍、心血管疾患死亡率や全死亡率は、いずれも2倍超に増大するという。米国・ハーバード大学公衆衛生校のStacey A. Kenfield氏らが、全米の男性医療従事者を対象とした前向きコホート疫学研究「Health Professionals Follow-Up Study(HPFS)」から、前立腺がんの診断を受けた5,366人超について分析を行い明らかにしたもので、JAMA誌2011年6月22・29日号で発表した。

過去20年の糖尿病患者に占める糖尿病性腎症者の割合は変化なし、背景に糖尿病治療の実施増大?

米国では1988年から2008年にかけて、糖尿病性腎症の有病率が糖尿病有病率に比して上昇し、2.2%から3.3%へと1.1ポイント増加していたが、一方で、糖尿病患者における糖尿病性腎症患者の割合には、変化はみられなかったという。また、血糖降下薬服用者が増加、特にレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)阻害薬の服用者が増加していた。米国・ワシントン大学腎研究所のIan H. de Boer氏らが、「糖尿病性腎症有病率は、糖尿病有病率の拡大により増えるだろうが、糖尿病治療の実施により減少する可能性もある」として、米国における糖尿病性腎症有病率の経時的変化を明らかにするため、全米健康栄養検査調査(NHANES)を元に調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年6月22・29日号で発表した。

英国がん生存率の低さは、レジストリの問題ではない

がんレジストリ・データから推定するがん生存率が、英国のデータは他のヨーロッパ諸国よりも低いデータが示されることに関して、London School of Hygiene and Tropical medicineのLaura M Woods氏らは、最近のBMJエディトリアルで指摘された、登録プロセスにおける2つの特異的なエラーがミスリードの原因なのかどうかを検証した。英国の低過ぎるがん生存率をめぐっては、10年以上の間、それが治療によりもたらされる違いなのかどうかが議論されているという。BMJ誌2011年6月18日号(オンライン版2011年6月9日号)掲載より。

COPD患者に対するミストタイプのチオトロピウムと死亡率との関連

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対するミストタイプのチオトロピウム(商品名:スピリーバ・レスピマット)について、米国・ジョンズホプキンス大学医学校のSonal Singh氏らは、無作為化試験のシステマティックレビュー、メタ解析を行い、死亡率との関連を検討した。ミストタイプのチオトロピウムは世界55ヵ国で承認されているが、米国では未承認。著者らは2009年12月中旬、米国食品医薬品局(FDA)のウェブサイト上に、従来製剤である粉末タイプのチオトロピウム(同:スピリーバ・ハンディへラー)の安全性への懸念から行われた同年11月19日付ヒアリング文書を見つけ、粉末タイプとミストタイプは異なった製剤と考えられるとして、ミストタイプのチオトロピウムについての安全性を行ったという。結果、「当局の安全性に対する懸念を明らかとする、ミストタイプのチオトロピウムは死亡リスクを52%増大することが示された」と報告している。BMJ誌2011年6月18日号(オンライン版2011年6月14日号)掲載より。

10~24歳の若年人口の世界疾病負担がWHOの調査で明らかに

10~24歳の若年人口は、世界的に保健医療の対象としては概して看過されてきたが、障害調整生存年数(disability-adjusted life-years; DALY)で評価した世界疾病負担(global burden of disease)は全人口の15.5%に及ぶことが、世界保健機構(WHO)のFiona M Gore氏らの調査で示された。2008年、世界の10~24歳の若年者人口は18億人を超え、全人口の27%という最大規模の集団を形成するに至った。2032年にはピークに達し約20億人にまで増加すると予測されるが、その90%は低~中所得国の住民だという。最近になって、この年齢層の壮年以降の健康問題や疾患リスク因子の重要性が浮上しているが、世界疾病負担に及ぼす影響は不明だという。Lancet誌2011年6月18日号(オンライン版2011年6月7日号)掲載の報告。

HPV 4価ワクチン導入で18歳未満女児の高度子宮頸部異形成が減少傾向に:オーストラリア

オーストラリア・ビクトリア州では、ヒトパピローマウイルス(HPV)に対する4価ワクチン(商品名:ガーダシル)導入後の18歳未満女児における高度子宮頸部異形成の発生率が、導入前に比べて減少する傾向にあることが、ビクトリア州細胞診サービス部のJulia M L Brotherton氏らの調査で示された。HPVに対する最初の予防的ワクチンが承認された2006年以降、4価ワクチンあるいは2価ワクチン(同:サーバリックス)の接種が、国の予防接種プログラムとして(28ヵ国以上)、または開発途上国でも地方レベルの寄付金(17ヵ国以上)によって実施されているという。オーストラリアでは、2007~2009年に12~26歳の全女性に対し4価ワクチンを用いたHPVワクチン接種プログラムが導入されている。Lancet誌2011年6月18日号掲載の報告。

わが子が受けたポリオ生ワクチンから感染

入院中の便検査でエンテロウイルスが陽性だった弛緩性麻痺例の調査結果について、米国ミネソタ州保健局Aaron S. DeVries氏らによるレポートが、NEJM誌2011年6月16日号で発表された。患者は、長期にわたり後天性免疫グロブリン血症で免疫グロブリン静注療法を受けていた44歳の女性で、突然、四肢および呼吸麻痺を来し入院、その後死亡に至ったというもので、症例経過、ウイルス検査結果、家族を含めた周辺調査および二次感染の結果などから、推定感染時期が、女性の2人の子どものうちの1人がポリオ生ワクチンの接種を受けた時期と一致したという。

ロタウイルス単価ワクチン「RV1」のリスク・ベネフィット

現在、WHOにより世界的に推奨使用されているロタウイルス単価ワクチン「RV1」について、米国疾病予防管理センター(CDC)のManish M. Patel氏らが、ブラジル、メキシコ両国での乳児への接種後の腸重積発症について評価した結果、短期リスクは約5.1万~6.8万人に1人の割合で認められたものの、ワクチン接種によるリスクよりもベネフィットがはるかに上回ると結論する報告をNEJM誌2011年6月16日号で発表した。ロタウイルスワクチンは、初期の「Rotashield」では初回接種後3~7日でリスクが最大に達し(約37倍)、約1万人に1人の割合で腸重積が認められたため1999年に市場から回収された。その後開発されたのが次世代ワクチン「RV1」や「RV5」(5価ウシ-ヒト組み替えワクチン)で、いずれも6万児以上を対象とした臨床試験を経て、「RV1」は接種後30日間、「RV5」は同42日間の腸重積リスクの上昇がみられなかったことから、世界的に推奨ワクチンとして使用されている。「RV1」接種は、ブラジルでは2006年3月に、メキシコでは2007年5月に、全国的な小児期予防接種プログラムに導入され、両国で600万例以上の乳児に接種されている。

急性心筋梗塞患者、救急搬送時の転送12時間以上になると死亡リスク有意に上昇

急性心筋梗塞患者の救急搬送時に、最も近い救急救命室(ER)が一時的に受け入れ不可で閉鎖され転送せざるを得ない場合、転送時間が12時間以上になると、転送時間ゼロだった人に比べ死亡リスク(30日、90日、1年)が増大することが明らかにされた。米国海軍大学院ビジネス・公共政策専門学校のYu-Chu Shen氏らが、米国高齢者向け公的医療保険(メディケア)の加入者1万4,000人弱について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年6月15日号で発表した。転送が、時間的に切迫した状況にある患者にとっては問題があるのではないかとされているが、これまで、転送がより悪い転帰と関連しているかどうかについてはエビデンス検証がほとんどされていなかったという。

医療訴訟件数、外来と入院でほぼ同等、過去5年で外来が増加:米国

米国で、医療訴訟(賠償金支払済み分)について外来と入院で比較したところ、2009年における件数は、ほぼ同等であることが明らかにされた。米国・コーネル大学医学部(Weill Cornell Medical College)公衆衛生部門のTara F. Bishop氏らが、2005~2009年のNational Practitioner Data Bankの記録を基に調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年6月15日号で発表した。外来での医療訴訟の実態を分析することで、外来で重大イベントがどれぐらい、どの程度発生しているかを知り得るとして本研究を行ったという。

発熱小児の重篤感染症の診断or除外診断に有用な臨床検査値はCRP、PCT

発熱で外来受診した小児の重篤感染症を診断するための臨床検査値について、英国・オックスフォード大学プライマリ・ヘルスケア部門のAnn Van den Bruel氏らは、システマティックレビューにてエビデンス照合を行った。結果、炎症マーカーのC反応性蛋白(CRP)とプロカルシトニン(PCT)が、診断に有用である可能性が認められた。ただしそれらのカットオフ値については、診断(rule in)と除外診断(rule out)の値が異なることが示され、また、白血球数は重篤な感染症の診断には有用でないことが示されたという。BMJ誌2011年6月11日号(オンライン版2011年6月8日号)掲載報告より。

静脈血栓塞栓症の抗凝固療法、至適な最短治療期間とは?

抗凝固療法終了後の静脈血栓塞栓症の再発リスクは、治療期間を3ヵ月以上に延長しても3ヵ月で終了した場合と同等であることが、フランス・リヨン市民病院のFlorent Boutitie氏らの検討で明らかとなった。再発リスクは近位深部静脈血栓症や肺塞栓症で高かった。一般に、静脈血栓塞栓症の治療には3ヵ月以上を要し、抗凝固療法終了後は再発リスクが増大するとされる。一方、抗凝固療法を3ヵ月以上継続すれば再発リスクが低減するかは不明で、再発抑制効果が得られる最短の治療期間も明らかではないという。BMJ誌2011年6月11日号(オンライン版2011年5月24日号)掲載の報告。

市中肺炎に対するデキサメサゾン補助療法で入院期間が短縮

免疫不全状態にない市中肺炎患者の治療では、抗菌薬に補助療法としてデキサメサゾンを追加すると、入院日数が短縮する可能性があることが、オランダ・St Antonius病院(ニューウェハイン)のSabine C A Meijvis氏らの検討で示された。追加に伴い高血糖の頻度が上昇したものの、重篤な有害事象はまれだった。市中肺炎治療の中心は早期診断に基づく適切な抗菌薬療法だが、ワクチンによる予防治療の導入や抗菌薬の進歩にもかかわらず罹患率、死亡率は高いままで、医療コストを押し上げている。補助療法の有効性が示唆されており、デキサメサゾン追加は全身性の炎症を抑制することで肺炎の早期消退をもたらす可能性があるが、抗菌薬への追加のベネフィットは不明だという。Lancet誌2011年6月11日号(オンライン版2011年6月1日号)掲載の報告。

脳卒中の2次予防におけるterutroban、アスピリンとの非劣性確認できず

虚血性脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)の既往歴のある患者に対する抗血小板薬治療として、terutrobanはアスピリンと同等の有効性を示しながらも、非劣性基準は満たさないことが、フランス・パリ-ディドロ大学のMarie-Germaine Bousser氏らが行ったPERFORM試験で示され、Lancet誌2011年6月11日号(オンライン版2011年5月25日号)で報告された。同氏は、「現在でもアスピリンがgold standard」としている。脳卒中は世界的に身体障害、認知症、死亡の主要原因であり、虚血性脳卒中やTIAの既往歴のある患者は脳卒中の再発や他の心血管イベントのリスクが高い。terutrobanは、血小板や血管壁に存在するトロンボキサン-プロスタグランジン受容体の選択的な拮抗薬で経口投与が可能であり、動物やヒトでアスピリンと同等の抗血小板活性が確認されているという。