ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:336

SSRI抵抗性思春期うつ病には投与薬剤変更+認知行動療法併用を

うつ病の若者のうち、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)による初期治療に反応するのは60%程度にすぎず、その後の治療法はデータに基づく指針はない。そこで米国ピッツバーグ大学のDavid Brent 氏らは、SSRI抵抗性思春期うつ病患者に対して、4つの治療法を試験。SSRIの変更と認知行動療法の併用が、より高い臨床効果を挙げると報告している。JAMA誌2008年2月27日号より。

重労働介護による背部痛は、アドバイスやトレーニングでは予防できない

重量物の持ち上げ作業に従事する労働者の背部痛の予防に、仕事技術およびリフティング設備に関するアドバイスやトレーニングは効果がないことが、フィンランド労働衛生研究所(ヘルシンキ)のKari-Pekka Martimo氏らが実施した系統的レビューによって明らかとなった。このようなアドバイスやトレーニングは、背部痛リスクの管理法として広く行われているが、その効果は疑問視されていた。BMJ誌2008年2月23日号(オンライン版2008年1月31日号)掲載の報告。

外傷性脳損傷の臨床使用可能な予後予測モデルが開発。ネットで利用可能

臨床で使用できる外傷性脳損傷の簡便な予後モデルが、Medical Research Council(MRC) CRASH(corticosteroid randomisation after significant head injury)試験の研究グループによって開発された。BMJ誌2008年2月23日号(オンライン版2008年2月12日号)で報告され、すでにインターネット上で利用可能だ(www.crash2.lshtm.ac.uk/)。毎年、世界で約150万人が外傷性脳損傷で死亡し、数百万人が緊急治療を受けているが、その90%が低~中所得国の事例という。既存のモデルは一般に方法論的な質が低く、サンプルサイズが小さく、低~中所得国を含むものは少ない。

政策評価には質の高い研究が不足、低~中所得国の医療の人的資源対策

低~中所得国の医療の人的資源に関する政策を評価するには、改善策の有効性を検討した質の高い総合的な研究が不足していることが、南アフリカ医療研究評議会(ケープタウン)医療システム研究科のMickey Chopra氏らの研究で明らかとなった。訓練された医療従事者の適切な供給と配置、そして医療サービスを提供する能力の管理は、特に低~中所得国において政策立案者が直面する喫緊の課題とされる。Lancet誌2008年2月23日号掲載の報告。

むしろ死亡率が上昇、重症急性膵炎に対するプロバイオティクス予防投与

 急性膵炎の感染合併症に対する予防治療としてのプロバイオティクス腸内投与はむしろ死亡率を高めることが、オランダUtrecht大学医療センター外科のMarc G H Besselink氏らDutch Acute Pancreatitis Study Groupの研究によって明らかとなった。急性膵炎では感染合併症とその関連死が大きな問題となるが、プロバイオティクスは細菌の過増殖を抑制することで感染合併症を予防し、消化管のバリア機能を修復して免疫系を調整する可能性が指摘され、期待を集めていた。Lancet誌2008年2月23日号(オンライン版2008年2月14日付け)掲載の報告。

脊椎管狭窄症をめぐる手術 vs 非手術の比較研究

Spine Patient Outcomes Research Trial(SPORT)は、全米11州13医療施設(脊椎専門クリニック)から集まった研修者によって立ち上げられたスタディで、脊椎診療に関する多方面からの研究を行っている。本論は同研究チームからの、脊柱管狭窄症をめぐる外科的治療 vs 非外科的治療の比較研究の報告。脊椎管狭窄症手術は広く行われているが、非外科的治療との効果の検証結果はこれまで示されていなかった。NEJM誌2008年2月21日号に掲載。

冠動脈バイパス術でのアプロチニン投与は死亡率を高める

アプロチニン(商品名:トラジロール、バイエル社)は、冠動脈バイパス術(CABG)において出血を抑えるために投与されるが、この治療によって死亡率が高まることを示唆するエビデンスが次々と寄せられた。バイエル社はすでに2007年11月5日、同製剤の一時販売停止を発表。日本国内でも同11月7日付けで商品名「トラジロール5万単位」が一時販売停止となっている。本論は、ハーバード大学医学部ブリガム&ウィメンズ病院のSebastian Schneeweiss氏らによる報告で、NEJM誌2008年2月21日号に掲載された。

甲状腺切除後の投与はレボチロキシンのみでT3投与は必要ない

甲状腺ホルモンにはトリヨードサイロニン(T3)とサイロキシン(T4)があり、細胞活性はT3が数倍強いが、血中を循環するのはおもにT4といわれる。また甲状腺を切除した患者ではT3の産生が望めず、その欠乏は避けられないとされ、切除患者には甲状腺ホルモン剤レボチロキシン(LT4)投与とT3投与の併用療法が行われる。しかしT3を併用投与することの効果は確認されていない。そこでジョージタウン大学医療センターのJacqueline Jonklaas氏らは、標準的なLT4療法を受けた患者のT3産生レベルが、甲状腺切除前より本当に下がるのかどうかを評価するプロスペクティブ研究を行った。JAMA誌2008年2月20日号より。

所得だけでなく死亡率にも格差か、構造・経済改革後のニュージーランド

ニュージーランドでは、1980年代から90年代に実施された大規模な構造・経済改革によって所得格差が拡大したが、これにともなって所得額別の死亡率にも格差が生じた可能性があることが、Otago大学(ウェリントン)健康格差研究プログラムのTony Blakely氏らの検討で明らかとなった。同氏らは、これらの死亡格差に寄与した疾患についても解析を行った。BMJ誌2008年2月16日号(オンライン版2008年1月24日号)掲載の報告。

PTSD発症率は非派遣兵の3倍、戦闘に曝露したイラク/アフガニスタン帰還兵

米軍のイラク/アフガニスタン帰還兵のうち実際に戦闘に曝露した兵士の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の発症率は非派遣兵の約3倍にも達することが、BMJ誌2008年2月16日号(オンライン版2008年1月15日号)に掲載された米国海軍健康研究所(サンディエゴ)のTyler C Smith氏らの研究結果で明らかとなった。最近の報告では帰還兵の10%にPTSDの症状が見られるとされるため、同氏らは大規模な米軍コホートにおいて自己報告によるPTSDの実態調査を行った。

服毒に対する活性炭投与は死亡率を抑制しない

開発途上の農業国では、意図的な自己服毒に毒性の強い農薬や植物を用いるため、先進国に比べ致死率が10~50倍も高いという。今回、スリランカで実施された無作為化試験により、腸血管や腸肝循環の一時的な遮断を目的に自己服毒患者に対しルーチンに施行されている活性炭の投与は死亡率を抑制しないことが明らかとなった。英国Oxford大学熱帯医学研究所のMichael Eddleston氏らがLancet誌2008年2月16日号で報告した。

やっぱりメタボは癌になりやすい!?

体重超過(過体重:BMI 25~29.9kg/m2および肥満:BMI≧30 kg/m2)は、食道癌、膵癌、結腸・直腸癌、閉経後乳癌などの一般的に見られる癌の発症と関連することが示されている。今回、英国Manchester大学癌研究部門外科のAndrew G Renehan氏らが行った28万例を超える癌患者を対象としたメタ解析により、比較的まれな癌もBMIの増加と関連しており、性差や人種差が見られる癌も存在することが明らかとなった。Lancet誌2008年2月16日号掲載の報告。

超早期産児への経鼻的持続的陽圧呼吸法で気胸は増えるが換気日数は減少

早期産児の死亡と疾患の主因である気管支肺形成異常は、人工換気と酸素療法に関係している。オーストラリア・メルボルン市Royal Women's Hospital のColin J. Morley氏らは、出生直後の超早期産児に対して、経鼻的な持続的陽圧呼吸法(CPAP)と挿管による人工換気の比較研究を行った。CPAPは挿管法と比べて、死亡率や気管支肺形成異常に有意差はなく、気胸の発病率は逆に高まったが、酸素療法を受ける児は減り、人工換気日数も減少するという結果を得ている。NEJM誌2008年2月14日号より。

下肢血管形成術でパクリタキセル・コーティング・バルーン使用は再狭窄を有意に減少

薬剤溶出ステントは冠動脈の再狭窄を減少させるものの、末梢動脈での有効性は臨床試験では証明されていなかった。そのため下肢血管形成術における、パクリタキセルでコーティングされた血管形成術用バルーンと、血管造影剤に溶解したパクリタキセルの効用について調査が、エーベルハルト・カール大学(ドイツ)Gunnar Tepe氏らによって行われた。NEJM誌2008年2月14日号より。

組織レベルの潜在的な利益相反には継続して注意が必要

医学研究は、組織レベルの利益相反に影響される可能性があるが、これまでアメリカの医科大学が、組織レベルの利益相反(ICOI)を伴う課題にどう対処してきたかに関する全国的なデータはなかった。そこで米国医科大学協会(AAMC)のSusan H. Ehringhaus氏らが全国調査を実施。「潜在的な利益相反について倫理委員会(IRB)に報告する制度に不備がある」として、医学界は継続的に注意を払う必要性を強調している。JAMA誌2008年2月13日号より。

脊椎疾患にかかる医療費は増大しているが健康状態改善には寄与していない?

臨床において背部・頸部の疾患は最もよくみられる。しかし、これら疾患に費やされる医療費の傾向および健康状態評価との関連はこれまで調査されていない。ワシントン大学のBrook I. Martin氏らのグループは、1997年から2005年までの米国内の背部・頸部疾患による入院、外来受診、救急受診、薬局関連の医療費を推計するとともに、それらと健康状態評価との関連について調査を行った。JAMA誌2008年2月13日号より。

医療サービス開発への患者の参画は、質の改善をもたらすか

医療サービスの開発に患者や地域社会が参画すれば、よりよいサービスがもたらされアウトカムが改善すると考えられているが、サービスの質や有効性に対する患者参画の効果を示すエビデンスは少ないという。今回、ロンドン市で実施された脳卒中医療サービスの近代化プログラムにおける検討で、医療サービスの開発に患者が参画しただけではサービスの質は改善しないことが示された。英国King’s College LondonのNina Fudge氏がBMJ誌2008年2月9日号(オンライン版1月29日号)で報告した。

コーラなどのソフトドリンクは男性の痛風リスクを高める

砂糖で甘味を加えたソフトドリンク(コーラ、その他の炭酸飲料など)に多く含まれる果糖は血清尿酸値を上昇させることが知られているが、これらの飲み物や果糖と、痛風リスクの関連は明らかにされていない。カナダBritish Columbia大学バンクーバー総合病院のHyon K. Choi氏らは、大規模なコホート研究によってこれらの飲料が男性の痛風リスクを増大させることを確認、BMJ誌2008年2月9日号(オンライン版1月31日号)で報告した。