ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:159

高齢の閾値下うつ病、協働ケアで改善/JAMA

 高齢の閾値下うつ病患者の治療において、協働ケア(collaborative care)は通常ケアに比べ、うつ症状を短期的に改善する可能性があることが、英国・ヨーク大学Simon Gilbody氏らが行ったCASPER試験で示された。英国では、閾値下うつ病の1次治療における抗うつ薬の有効性のエビデンスはほとんどないため推奨されておらず、心理療法は高強度の治療形態として、より重度の病態の治療として留保されるのが一般的だという。協働ケアは、メタ解析で閾値を満たすうつ病への効果が示されている。JAMA誌2017年2月21日号掲載の報告。

35ヵ国の余命予測、日本はまだ伸びるのか/Lancet

 先進工業国はいずれも余命が延長し続け、2030年までに50%以上の確率で韓国女性の寿命が90歳を超えるとの研究結果が、Lancet誌オンライン版2017年2月22日号で報告された。研究を行った英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのVasilis Kontis氏らは、「90歳の壁は、21世紀の折り返し点ではまだ破られないと考えられていたが、とくに高齢女性の寿命の延長が大きく貢献し、達成時期が早まると予測される」と指摘している。

1回の軟性S状結腸鏡検査で、大腸がん発症・死亡を抑制/Lancet

 1回の軟性S状結腸鏡検査で、大腸がんの発症や死亡が抑制され、その有効性は17年以上にわたり持続することが明らかとなった。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのWendy Atkin氏らが、55~64歳を対象とした無作為化比較試験UK Flexible Sigmoidoscopy Screening Trial(UKFSS試験)の長期追跡結果を報告した。大腸がんは世界で3番目に多いがんで、その予防や早期発見は重要な課題となっている。UKFSS試験の追跡期間約11年時の解析では、軟性S状結腸鏡検査の1回施行で、大腸がんの発生が33%、死亡率が43%減少することが示されていた。Lancet誌オンライン版2017年2月21日号掲載の報告。

フィブリノゲン濃縮製剤、ハイリスク心臓手術中の出血を減少させず/JAMA

 ハイリスク心臓手術において、術中出血に対しフィブリノゲン濃縮製剤を投与しても、術中出血量は減少しなかった。オランダ・ユトレヒト大学メディカルセンターのSuleyman Bilecen氏らが、術中出血に対するフィブリノゲン濃縮製剤の効果を検証した無作為化臨床試験の結果を報告した。フィブリノゲン濃縮製剤は、凝固障害を回復させ術中出血を減らす可能性があり、心臓手術中の出血管理に使用されている。しかし、これまで行われた心臓外科における無作為化臨床試験は2件のみで、フィブリノゲン濃縮製剤の有効性に関するエビデンスは確立されていなかった。JAMA誌2017年2月21日号掲載の報告。

HER2陽性早期乳がんへのトラスツズマブ、11年追跡の結果は?/Lancet

 HER2陽性早期乳がんに対し、補助療法としてのトラスツズマブ投与は、無病生存期間を長期とする改善効果が、中央値11年間の追跡で確認された。投与期間については、2年投与は1年投与と比べ追加ベネフィットは認められなかった。英国・エディンバラ大学がん研究センターのDavid Cameron氏らが国際共同多施設非盲検第III相無作為化試験「HERA(HERceptin Adjuvant)」の最終解析の結果、報告した。Lancet誌オンライン版2017年2月16日号掲載の報告。

ペースメーカー・ICD装着患者も安全にMRI検査が可能/NEJM

 ペースメーカーや植込み型除細動器(ICD)を装着した患者へのMRI検査の実施は、長らく禁忌とされてきたが、検査前後の動作確認と、検査前の適切な再プログラミングを行うことで、磁場強度1.5テスラのMRIは安全に実施可能なことが判明した。MRI検査中の死亡や心室性不整脈や装着機器の故障は、いずれも認められなかった。米国・スクリプス研究所のRobert J Russo氏らが、ペースメーカーやICDを装着する1,500例を対象に行った前向き試験で明らかにしたもので、NEJM誌2017年2月23日号で発表した。

2種の頭皮冷却法、乳がん化学療法の脱毛を半減/JAMA

 化学療法は、乳がんの微小転移を抑制し、再発リスクを低減して生存期間を延長するが、有害事象として、女性にとって最も大きな苦痛の1つとされる化学療法誘発性の脱毛が高頻度に発現する。対策として、頭皮冷却法の検討が進められており、2017年2月14日発行のJAMA誌に、2種のデバイスに関する米国の2つの研究論文が掲載された。2つの試験は、試験デザイン、患者選択基準、デバイスのタイプが異なるが、ほぼ同様の結果が得られており、頭皮冷却は半数以上の女性で脱毛を予防することが示された。

心房細動への低用量NOAC、ワルファリンに勝るか?/BMJ

 心房細動の治療において、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)は、臨床に導入されて以降、低用量での使用が増加しているが、低用量NOACの有効性と安全性をワルファリンと比較したエビデンスは少ない。デンマーク・オールボー大学のPeter Bronnum Nielsen氏らは、安全性の主要アウトカムである出血は、低用量ダビガトランがワルファリンに比べ有意に少ないとの研究結果を、BMJ誌2017年2月10日号で報告した。

市中肺炎の心不全リスク、高いのはむしろ若年患者/BMJ

 高齢の市中肺炎患者は、心不全のリスクが高いことが示されているが、他の年齢層や肺炎の重症度との関連は不明とされる。カナダ・アルバータ大学のDean T Eurich氏らは、高齢患者だけでなく、むしろ若年の市中肺炎患者で心不全リスクが高いとの研究結果を、BMJ誌2017年2月13日号で報告した。研究グループは、「これらの知見は、年齢にかかわらず、退院後の治療計画や予防戦略の立案時、また呼吸困難のエピソードを評価する際に考慮すべき」と指摘している。

腹部脂肪蓄積の遺伝的素因が糖尿病、心疾患発症に関与/JAMA

 観察研究では、腹部脂肪蓄積と2型糖尿病、冠動脈性心疾患(CHD)との関連が示唆されているが、因果関係は不明とされる。遺伝的素因としてBMIで補正したウエスト/ヒップ比(WHR)が高い集団は、2型糖尿病やCHDのリスクが高いとの研究結果が、JAMA誌2017年2月14日号で発表された。報告を行った米国・マサチューセッツ総合病院のConnor A Emdin氏らは、「これは、腹部脂肪蓄積と2型糖尿病、CHDとの因果関係を支持するエビデンスである」としている。

抗IL-6抗体sirukumab、治療抵抗性RAに効果/Lancet

 抗TNF製剤に治療抵抗性または不耐容の活動性関節リウマチ(RA)患者において、ヒト型抗インターロイキン(IL)-6モノクローナル抗体製剤sirukumabの50mg/4週投与または100mg/2週投与は、プラセボと比較していずれも忍容性は良好で、RAの症状を有意に改善することが示された。オーストリア・ウィーン大学のDaniel Aletaha氏らが、RAに対するsirukumabの有効性と安全性を評価した第III相試験の1つSIRROUND-T試験の結果を報告した。sirukumabは、2016年9月に欧州および米国で、10月には本邦でも、抗リウマチ薬として製造承認申請が行われている。Lancet誌オンライン版2017年2月15日号掲載の報告。

4種配合降圧薬Quadpill、初回治療で有効性示す/Lancet

 4種の降圧薬(イルベサルタン、アムロジピン、ヒドロクロロチアジド、アテノロール)を標準用量の4分の1ずつ、1つのカプセルに配合したQuadpillによる降圧療法は、降圧薬のクラスを超えて相加的な効果を発揮し、臨床的に重要な血圧の低下をもたらす可能性があることが明らかとなった。オーストラリア・シドニー大学のClara K Chow氏らが、有効性と安全性を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験(Quadpill試験)の結果を報告した。世界的に高血圧治療はほとんど単剤で行われているが、コントロール率は低く、単剤療法では平均してわずか9/5mmHg程度しか低下しない。そのため、新たな血圧コントロール戦略の開発が喫緊の課題となっている。低用量での併用療法は、副作用は少なく効果は維持されることが示唆されていたが、超低用量での有用性は不明であった。Lancet誌オンライン版2017年2月9日号掲載の報告。

糞便移植は潰瘍性大腸炎の新たな治療となるか/Lancet

 活動期潰瘍性大腸炎における強化注入法にて行うマルチドナー糞便移植は、臨床的寛解および内視鏡的寛解をもたらすことが、無作為化試験の結果、示された。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のSudarshan Paramsothy氏らによる検討で、「移植によって腸内細菌叢が多彩なものに変化し、そのことがアウトカムに関与していた。糞便移植は、潰瘍性大腸炎の新たな治療オプションとして有望であることが示された」とまとめている。これまで、潰瘍性大腸炎に対する糞便移植の効果は不明であった。Lancet誌オンライン版2017年2月14日号掲載の報告。

舌下免疫療法、継続2年では効果みられず/JAMA

 中等度~重度の季節性アレルギー性鼻炎患者に対する舌下免疫療法の継続治療期間について、2年間の効果について検討した結果、フォローアップ3年目(治療中止後1年時点)の鼻アレルギー反応の改善に関してプラセボとの有意差は示されなかった。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのGuy W Scadding氏らが、無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。舌下免疫療法および皮下免疫療法は、季節性アレルギー性鼻炎に効果的であり、3年間継続治療を行うと、治療中止後2年間は症状の改善が認められていた。研究グループは、治療期間を2年とした場合の効果について調べる検討を行った。JAMA誌2017年2月14日号掲載の報告。

閉経前の子宮摘出、卵巣温存で全死亡抑制/BMJ

 閉経前女性の子宮摘出術時に卵巣を温存すると、2つの卵巣を切除した場合に比べ、全死因死亡が抑制され、虚血性心疾患やがんによる死亡も低減するとの研究結果が、BMJ誌2017年2月6日号に掲載された。研究を行った英国・バーミンガム大学病院NHSファウンデーション・トラストのJemma Mytton氏らは、「閉経前女性には、卵巣を2つとも切除すれば卵巣がんを予防できるが、卵巣がんより発症率の高いがんを含め、これらのリスクが増加することを伝えるべきである」と指摘している。

胆汁性胆管炎の皮膚そう痒、画期的新薬が有望/Lancet

 原発性胆汁性胆管炎では、患者の最大70%に皮膚そう痒が発現する。開発中の回腸型胆汁酸トランスポータ(IBAT)阻害薬GSK2330672は、皮膚そう痒の重症度を軽減し、重篤な有害事象の発現もなく耐用可能との研究結果が、Lancet誌オンライン版2017年2月7日号に掲載された。報告を行った英国・ニューカッスル大学のVinod S Hegade氏らの研究グループは、「本薬は原発性胆汁性胆管炎患者の皮膚そう痒の治療における画期的新薬(first-in-class)であり、新たな重要な進歩となる可能性があるが、下痢の頻度が高いため、長期投与には限界があるかもしれない」と指摘している。

同じGPでの診療継続は、不要な入院を減らす/BMJ

 プライマリケアの継続性を促進することで、不必要な入院を回避し、とくに受診頻度の高い患者で医療費の抑制効果を改善する可能性があることが、英国・The Health FoundationのIsaac Barker氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2017年2月1日号に掲載された。予定外の入院を回避するために、多くのヘルスケアシステムが、プライマリケアへのアクセスの迅速性と公正性の改善に重点的に取り組んでいる。英国では、ケアの継続性が損なわれつつあるとされ、これはケアへのアクセスの促進と継続性はトレード・オフの関係にあるためと考えられている。また、ケアの継続性は、患者および医師の満足度と関連することが知られているが、入院との関連は不明だという。

少関節型若年性特発性関節炎、MTX追加で寛解期間が延長/Lancet

 少関節型若年性特発性関節炎の治療において、副腎皮質ステロイド関節内注射に経口メトトレキサート(MTX)を追加すると、寛解率はほとんど変わらないものの、再燃までの期間が延長し、毒性はさほど増加しないことが、イタリア・Istituto Giannina GasliniのAngelo Ravelli氏らイタリア小児リウマチ性疾患研究グループの検討で示された。研究の成果は、Lancetオンライン版2017年2月2日号に掲載された。若年性特発性関節炎は、国際リウマチ連盟(ILAR)によって、「16歳未満で発症し、6週間以上持続する原因不明の関節炎」と定義され、このうち少関節型は「6ヵ月間の罹患関節が1~4ヵ所の場合」とされる。本症の治療指針となるエビデンスに基づく情報はほとんどないという。

米の入院患者の死亡率、海外出身医師のほうが低い/BMJ

 米国の病院に入院した高齢のメディケア受給患者のデータから、海外医学部出身医師の治療を受けた患者の死亡率は、米国内の医学部出身医師が治療した患者より低いことが明らかとなった。ハーバード公衆衛生大学院の津川 友介氏らが、治療した一般内科医が海外医学部卒業生か米国内医学部卒業生かで患者のアウトカムに違いがあるかどうかを観察研究で検証し、報告した。これまで、小規模な検討ではさまざまな結果が示されていたが、全国的なデータを用いた研究はなかった。BMJ誌2017年2月3日号掲載の報告。

骨髄異形成症候群の予後層別化、遺伝子変異解析で可能に/NEJM

 骨髄異形成症候群(MDS)患者に同種造血幹細胞移植を行う際は、遺伝子変異を解析することで、予後を層別化するとともに、骨髄破壊的または非破壊的前処置のどちらが有用かを特定することが可能なことを、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのR Coleman Lindsley氏らが、遺伝子プロファイリングによる研究の結果、明らかにした。同種造血幹細胞移植はMDSに対する唯一の根治療法であるが、再発後の死亡や移植関連合併症による移植後死亡率が高く、どのような患者が最も移植の恩恵を受けるかを予測することは重要な課題である。遺伝子変異はMDS発症の一因であり臨床表現型と密接に関連していることから、遺伝子変異によって同種造血幹細胞移植後の臨床転帰を予測できる可能性が示唆されていた。NEJM誌2017年2月9日号掲載の報告。