ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:285

医師の学ぶ意欲、パフォーマンス向上を刺激するのはどんな評価か?

臨床パフォーマンスの評価は重要だが、難しいテーマとされる。これまでは、評価はいわずもがなで標準化しにくい、徒弟制度モデルのような主観的な判断に基づいていた。しかし近年は、コンピテンスやパフォーマンスを評価する新しいシステムによる卒後教育が構築され、ワーク・プレイス・アセスメントも、その一つとされる。では、日々の臨床パフォーマンスを評価するのに用いられるワーク・プレイス・アセスメントが、卒後教育やパフォーマンスにどれほど影響しているのか。イギリス・ペニンシュラ医科歯科大学/プリマス大学のAlice Miller氏らがエビデンスを得るため、システマティックレビューを行った。BMJ誌2010年10月2日号(オンライン版2010年9月24日号)掲載より。

グルコサミンとコンドロイチンは単独・併用でも関節痛への効果はない

グルコサミン、コンドロイチンのサプリメントを単独または併用服用しても、股関節痛や膝関節痛を和らげることはなく、関節腔狭小化への影響もないことが、スイスのベルン大学社会・予防医療研究所のSimon Wandel氏らが行ったネットワーク・メタ解析の結果、明らかにされた。Wandel氏は、「保健衛生を担う当局および健康保健事業者は、これらの製剤コストをカバーすべきではない。そしてまだ投与を受けていない患者への新たな処方を阻止しなければならない」と提言している。BMJ誌2010年10月2日号(オンライン版2010年9月16日号)掲載より。

CA125濃度上昇を指標とした再発卵巣がんへの早期治療介入にベネフィット認められず

CA125濃度上昇を指標とした再発卵巣がんへの早期治療介入に、生存期間延長の効果は認められなかったことが、イギリス・マウントバーノンがんセンターのGordon J S Rustin氏らMRC OV05/EORTC 55955共同研究グループによる無作為化対照試験の結果、報告された。卵巣がんでは再発症状が認められる数ヵ月前に、CA125濃度の上昇がよくみられることから、研究グループは、これを指標とした早期治療介入が、再発症状の発現を基点に治療を開始することよりも有益であることを立証することを目的に試験を行った。Lancet誌2010年10月2日号掲載より。

新規抗がん剤cabazitaxel、進行性前立腺がん患者の全生存率を延長

ドセタキセル(商品名:タキソテール)ベースの治療後も病勢が進行した、転移性ホルモン治療抵抗性前立腺がん患者に対し、cabazitaxel+プレドニゾン併用療法が、ミトキサントロン(商品名:ノバントロン)+プレドニゾン併用療法に比べ、有意に全生存率を改善したことが、オープンラベル無作為化第III相試験「TROPIC」の結果、報告された。イギリス・王立マースデンNHSトラストがん研究所のJohann Sebastian de Bono氏らによる。cabazitaxelは、ドセタキセル治療後も病勢が進行した症例で抗腫瘍活性が認められた、タキサン系の新規開発薬である。Lancet誌2010年10月2日号掲載より。

ハイリスク神経芽腫、標準療法への免疫療法追加が転帰を有意に改善

15歳未満の小児がん死亡の12%を占める神経芽腫は、標準治療が10年以上前に確立されているが、患児の半数以上を占めるハイリスク神経芽腫は、大量化学療法・集学的治療を行っても、再発から転帰へと至り長期生存に乏しい。そうしたハイリスク神経芽腫患児に対し、新たに開発されたch14.18の免疫療法を追加することで、転帰が有意に改善されたことが、カリフォルニア大学のAlice L.Yu氏らの研究グループにより報告された。NEJM誌2010年9月30日号掲載より。

中等度リスク神経芽腫、低用量化学療法でも高い生存率達成

小児がんのうち脳腫瘍に次いで頻度の高い神経芽腫について、中等度リスク患児への化学療法の期間を短縮かつ用量を減量しても、非常に高い生存率が達成されたことが、オーストラリアPrincess Margaret Hospital for ChildrenのDavid L. Baker氏ら小児がん研究グループにより報告された。中等度リスク神経芽腫への大量化学療法の生存率は、良好であることが示されているが、より期間を短縮かつ用量を減じた場合の転帰については明らかになっていなかった。NEJM誌2010年9月30日号より。

ハイリスク非ST部上昇急性冠症候群患者への未分画ヘパリン低用量投与の安全性:FUTURA/OASIS-8

フォンダパリヌクス(商品名:アリクストラ)治療を受け、72時間以内に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けるハイリスク非ST部上昇型急性冠症候群(ACS)患者に対し、未分画ヘパリンを低用量投与しても、標準用量の場合と比べ、出血や穿刺部合併症リスクは減少しないことが、「FUTURA/OASIS-8」試験の結果、報告された。JAMA誌2010年9月22/29日号(オンライン版2010年8月31日号)で発表された。

米国医学生の職業意識とストレスとの関連

米国メイヨークリニック大学校のLiselotte N. Dyrbye氏らが、米国医学生を対象に、職業意識とストレス(バーンアウト)について調査した結果、バーンアウト学生には、そうでない学生に比べ、専門家としてふさわしくない行為を行っていたり、社会貢献という意識が低い傾向にあることが明らかになったという。JAMA誌2010年9月15日号掲載より。

身体能力測定で、死亡リスクの高い高齢者がわかる?

握力、歩行速度、座位からの起立、立位時間が、地域に住まう高齢者のあらゆる死亡要因の予測因子となり得るとの報告が、イギリス・ロンドン大学のRachel Cooper氏らによるメタ解析の結果、発表された。「そうした身体能力の客観的評価が、死亡リスクの高い高齢者を同定するのに役立つだろう」とまとめている。BMJ誌2010年9月25日号(オンライン版2010年9月9日号)より。

抗精神病薬は静脈血栓塞栓症リスクを増大

抗精神病薬の中には静脈血栓塞栓症リスクを高めるものがあることが知られているが、新しいタイプの非定型抗精神病薬についてのリスクは明らかになっていない。イギリス・ハックネル医療センターのChris Parker氏らの研究グループが、大規模なプライマリ・ケア集団ベースで、抗精神病薬と静脈血栓塞栓症リスク増加との関連を評価するとともに、抗精神病薬の種類、効力、投与量との関連を調査した結果、リスク関連が認められ、リスク増加は、新規服薬者、非定型抗精神病薬服用者で特徴的だったと報告した。BMJ誌2010年9月25日(オンライン版2010年9月21日号)掲載より。

無症候性頸動脈狭窄症に対する即時的頸動脈内膜剥離術、長期的な予後改善効果が明らかに

無症候性頸動脈狭窄症に対する即時的な頸動脈内膜剥離術(CEA)の施行は、遅延的にCEAを行う場合に比べその後10年間の脳卒中リスクを有意に抑制することが、イギリスJohn Radcliffe病院のAlison Halliday氏らが行った無作為化試験で示された。CEAは頸動脈の狭窄を除去するものの、脳卒中や死亡のリスクを引き起こす可能性もある。一方、直近の脳卒中症状やその他の神経学的症状がみられない無症候性の頸動脈狭窄症に対するCEAは脳卒中の発症を数年にわたり抑制することが示されているが、長期的な予後を検討した試験はないという。Lancet誌2010年9月25日号掲載の報告。

外科治療にも地域格差:WHO調査

世界の手術室の数は地域によって大きな差があり、手術室の約2割に、外科治療の医療資源の指標であるパルス酸素濃度計が装備されていないことが、アメリカ・ハーバード大学公衆衛生大学院のLuke M Funk氏らが行ったWHOの調査で明らかとなった。外科治療を要する疾患は疾病負担の多くを占め、低く見積もっても世界全体の障害調整生存年(disability-adjusted life years)の11%が手術の対象となる疾患に帰せられるという。しかし、外科治療の供給を保証する医療資源は、特に低所得国で不十分なのが現状である。Lancet誌2010年9月25日号(オンライン版2010年7月1日号)掲載の報告。

経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)、全死因死亡率が有意に減少

大動脈弁置換術が適応とされない、重度大動脈弁狭窄症および合併症を有する患者に対する、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)の、従来標準治療との転帰を比較した多施設共同無作為化比較試験「PARTNER」の結果、TAVI群の方が重大な脳卒中、重大な血管イベントの高率の発生にもかかわらず、全死因死亡率、複合エンドポイント(全死因死亡率・再入院率)が有意に低かったことが、NEJMオンライン版2010年9月22日号で発表された。報告は、米国コロンビア大学メディカルセンターのMartin B. Leon氏らによる。TAVIは、2002年に第1例が行われて以降、ハイリスクの大動脈弁狭窄症患者に対し、低侵襲医療をもたらす治療として注目されている。

下肢表在性静脈血栓症にフォンダパリヌクスが有効

深部静脈血栓症や肺動脈塞栓症を併発していない、急性の症候性下肢表在性静脈血栓症患者への、抗凝固薬治療の有効性と安全性は確立していない。フランスINSERMのHerve Decousus氏ら研究グループは、フォンダパリヌクス(商品名:アリクストラ)の有効性と安全性について、約3,000例を対象とするプラセボ対照無作為化二重盲検試験「CALISTO」を行った。結果、1日1回2.5mg、45日間投与の有効性および安全性が認められたと報告している。NEJM誌2010年9月23日号より。

外来で心血管イベントハイリスク患者を見抜くには?:REACH試験

外来で様々な初期徴候を示す安定したアテローム血栓症患者のうち、心血管イベント発生リスクは、糖尿病があると約1.4倍、前年に虚血イベントがあった場合には約1.7倍に増大することが明らかにされた。多血管病(polyvascular disease)がある場合には、同リスクは約2倍になるという。米国VA Boston Healthcare SystemのDeepak L. Bhatt氏らが、臨床所見からハイリスク群を特定する簡便な方法について検討するため行った、約4万5,000人を4年間追跡した「Reduction of Atherothrombosis for Continued Health」(REACH)試験の結果、明らかにされたもので、JAMA誌2010年9月22/29日号で発表した。

心不全患者への自己管理カウンセリング、死亡率や入院率の低下につながらず

心不全患者に対し、服薬や塩分摂取制限などに関する自己管理について、カウンセリング・プログラムを強化しても、死亡率や入院率の低下にはつながらないことが報告された。米国ラッシュ大学メディカルセンター(シカゴ)予防医療部門のLynda H. Powell氏らが、約900人の患者を対象に行った無作為化比較対照試験「HART」(Heart Failure Adherence and Retention Trial)で明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月22/29日号で発表した。

前立腺がんのルーチンスクリーニングは支持できない:メタ解析から

前立腺がんスクリーニングは、診療ガイドラインで推奨されているが、スクリーニングが全体としての死亡率や、患者にとって最も重要なアウトカムである疾患特異的な死亡率を改善するかどうか、さらにスクリーニングの有益性ががんの過剰検出や過剰診療が招く有害およびコストを上回るかどうかについては明らかにされていない。米国フロリダ大学泌尿器・前立腺センターのMia Djulbegovic氏らの研究グループは、前立腺がんスクリーニングの有益性と有害さのエビデンスを検討するため、これまでに発表されている前立腺がんスクリーニングに関する無作為化試験のシステマティックレビューとメタ解析を試みた。BMJ誌2010年9月18日号(オンライン版2010年9月14日号)より。

60歳時のPSA値で、前立腺がん死亡・転移の生涯リスクが予測できる

60歳時の前立腺特異抗原(PSA)値から、転移と前立腺がん死の生涯リスクが予測できるとの報告が、米国Sloan-Kettering記念がんセンター(ニューヨーク)のAndrew J Vickers氏らにより発表された。また、その際のPSA値が中央値(≦1 ng/mL)以下の場合、前立腺がんが潜んでいる可能性はあるものの、生命を脅かすようなことはないとも述べ、「それら男性はさらなるスクリーニングは免除されるべきで、それよりもPSA値がより高い群に照準を合わせるべき」と結論づけている。PSAスクリーニングは、前立腺がんの早期発見のため広く行われるようになっているが、過剰診断を招いていることが無作為化試験で示されたり、70歳男性の40%近くが前立腺がんを有していると推定されており、研究グループは「前立腺がんの有無ではなく、症状を引き起こすのか生命を縮めるのかが重要」として、検査値とその後の臨床転帰との関連を調べた。BMJ誌2010年9月18日号(オンライン版2010年9月14日号)より。

妊娠中の体重増加、子の出生時体重増加に関連:妊婦51万人と子116万児の解析

妊娠中の妊婦体重の増加が、遺伝素因とは無関係に子どもの出生時体重を増加させることが、アメリカ・ボストン小児病院のDavid S Ludwig氏らが行ったコホート試験で示された。近年、生活習慣病の胎生期起源に関する研究が盛んに行われ、妊娠中の低栄養状態や低出生時体重が、子どもが成人期に達した際の糖尿病や心血管疾患のリスクを増大させるとの仮説を支持する有力なエビデンスが存在する。一方、妊娠中の過度の体重増加が子どもの出生時体重や後年の肥満リスクを増大させることが観測されているが、これは遺伝素因など他の交絡因子が原因の可能性もあるという。Lancet誌2010年9月18日(オンライン版2010年8月5日号)掲載の報告。

女性への教育の増加により、子どもの死亡率が改善

過去40年間に女性の教育期間が著しく増加し、多くの国では男性を凌駕しており、子どもの死亡率の低下に大きく寄与している可能性があることが、アメリカ・ワシントン大学(シアトル)のEmmanuela Gakidou氏らが行った系統的な解析で明らかとなった。教育は、経済発展において根本的な役割を担い、健康にも強い影響を及ぼすことが示されており、母親の教育レベルと子どもの死亡率の関連を強く示唆する報告もある。これまでに、一定期間の教育の影響を評価した研究はあるものの、低所得国において性別、年齢別に、経時的に行われた検討はないという。Lancet誌2010年9月18日号掲載の報告。