循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:5

アスピリンでも安易な追加は良くない:抗凝固薬服用中の慢性冠動脈疾患の場合(解説:後藤信哉氏)

慢性冠動脈疾患一般は、アスピリンによる心血管イベントリスクの低減が期待できる患者集団である。しかし、慢性冠動脈疾患でもさまざまな理由により抗凝固療法を受ける症例がいる。抗凝固薬の使用により出血イベントリスクが増加したところにアスピリンを追加すると、出血イベントリスクがさらに増加すると想定される。本研究では、抗凝固薬を服用している慢性冠動脈疾患を対象としてアスピリンとプラセボのランダム化比較試験を施行した。慢性冠動脈疾患一般ではアスピリンによる心血管死亡リスクの低減が期待される。しかし、抗凝固薬を服用している慢性冠動脈疾患にアスピリンを追加すると、心血管死亡、心筋梗塞、脳梗塞、全身塞栓症、冠動脈再灌流療法、下肢虚血などは増加した。重篤な出血イベントリスクと出血死亡率も増加している。慢性冠動脈疾患でも抗凝固薬を服用している症例には安易にアスピリンを追加すべきでないことを示唆する結果であった。

歯肉炎の改善に亜鉛が影響?

 歯周病は心血管疾患や糖尿病、脳梗塞などの疾患リスクに影響を及ぼすことが示唆されている。今回、トルコ・Cukurova UniversityのBahar Alkaya氏らは、歯周病の初期段階とされる歯肉炎の管理において、歯科用の亜鉛含有ステント(マウスピース型器具)が機械的プラークコントロールの補助として有益であることを示唆し、歯肉炎が亜鉛によって改善したことを明らかにした。  本研究は、歯肉炎患者での歯肉の炎症、出血、歯垢の再増殖に対する亜鉛含有ステントの効果を調査したもの。Cukurova Universityにおいて、全身的に健康な18~30歳の歯肉炎患者42例を対象に、ランダム化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。参加者は試験群(亜鉛含有ステント)または対照群(プラセボステント)に割り付けられ、歯石除去後4週間、毎日12時間以上にわたって器具を装着するよう指示された。評価項目は歯肉炎指数(GI、プラーク指数(PI)、プロービング時の出血(BOP)などで、ベースライン時、2週目、4週目、8週目に評価が行われた。統計解析にはIBM SPSSおよびRStudioの統計ソフトウェアが用いられた。

がん治療関連心機能障害のリスク予測モデル、性能や外部検証が不十分/BMJ

 オランダ・アムステルダム大学のClara Gomes氏らは、がん治療関連心機能障害(CTRCD)のリスクを予測するために開発または検証されたすべての予測モデルのシステマティックレビューと、性能の定量的解析を目的としたメタ解析を行った。その結果、現存するCTRCD予測モデルは臨床応用に先立ち、さらなるエビデンスの蓄積が必要であることを報告した。現存するモデルについては、重要な性能指標に関する報告が不足し外部検証も限られていたことが正確な評価を妨げており、Heart Failure Association-International Cardio-Oncology Society(HFA-ICOS)ツールは、とくに軽度CTRCDに関する性能が不十分であった。著者は、「今後は、さまざまながん種を対象とする大規模なクラスター化データセットを用い、既存モデルの検証と更新を進め、その性能、汎用性および臨床的有用性を高めるべきである」とまとめている。BMJ誌2025年9月23日号掲載の報告。

急性心筋梗塞に対するPCI後1ヵ月でアスピリンを中止してDAPTからSAPTへ変更することは問題なし(解説:上田恭敬氏)

急性心筋梗塞に対して7日以内にPCIによる完全血行再建に成功し、1ヵ月の時点までイベントがなかった1,942症例を、アスピリン中止によってDAPTからSAPTへ変更する群(P2Y12阻害薬単剤群961症例)とDAPTを継続する群(DAPT群981症例)に無作為化し、12ヵ月までのイベントを比較した欧州40施設での多施設無作為化試験(TARGET-FIRST試験)の結果が報告された。主要評価項目である全死亡・心筋梗塞・ステント血栓症・脳卒中・BARK type3/5出血の複合エンドポイントは、P2Y12阻害薬単剤群で2.1%、DAPT群で2.2%と差がなく、非劣性が証明された(p=0.02)。さらに、BARK type2/3/5出血はDAPT群で5.6%であったのに対して、P2Y12阻害薬単剤群で2.6%と有意に少なかった(p=0.002)。ただし、PCIは全例でDESを留置しており、造影上の有意狭窄をすべて治療することを完全血行再建としている。

利尿薬による電解質異常、性別・年齢・腎機能による違いは

 高血圧や心不全の治療に広く用いられる利尿薬には、副作用として電解質異常がみられることがあり、これは生命を脅かす可能性がある。これまでの研究では、利尿薬誘発性の電解質異常は女性に多く発現することが示唆されている。電解質バランスは腎臓によって調節されており、腎機能は加齢とともに低下する傾向がある。慶應義塾大学の間井田 成美氏らは、性別、腎機能、年齢が利尿薬誘発性の電解質異常の感受性に及ぼす影響を考慮し、利尿薬の副作用リスクが高い患者を特定するため本研究を実施した。Drug Safety誌2025年10月号の報告。  日本の利尿薬服用患者6万7,135例のレセプトデータをDeSCヘルスケアから入手し、2020年4月~2021年3月のデータを分析対象とした。

マンモグラフィの画像からAIモデルが心血管リスクを評価

 定期的なマンモグラフィ検査は、乳がんの早期発見に有効であるだけでなく、女性の心臓病リスクを正確に予測するのにも役立つ可能性があるようだ。マンモグラフィの画像から心血管疾患(CVD)リスクを予測する人工知能(AI)モデルの予測性能は、米国心臓協会(AHA)や他の専門家グループが開発したCVDイベントリスク予測方程式(Predicting Risk of Cardiovascular Disease Events;PREVENT)の予測性能と同等であることが、新たな研究で示された。ジョージ国際保健研究所(オーストラリア)で心血管プログラムのグローバルディレクターを務めているClare Arnott氏らによるこの研究結果は、「Heart」に9月16日掲載された。

心不全はないが左室駆出率が軽度低下した急性心筋梗塞患者にβ遮断薬は有効(解説:佐田政隆氏)

急性心筋梗塞後の患者で、左室駆出率が40%未満の場合にβ遮断薬が有効であることは議論の余地がない。一方、左室駆出率が40%以上で心不全がない急性心筋梗塞にβ遮断薬が有効であるかどうかは、今までほとんどRCTが行われてこなかった。日本で行われて2018年にPLoS Oneに報告されたCAPITAL-RCT試験ではβ遮断薬の有効性は示されなかった。デンマークとノルウェーで行われたBETAMI-DANBLOCK試験が2025年8月30日のNEJM誌に報告されたが、β遮断薬は総死亡と主要心血管イベントを減少させた。一方、同日、同じNEJM誌にスペインとイタリアで行われたREBOOT試験の結果が報告されたが、総死亡、再梗塞、心不全入院にβ遮断薬は有効性を示さなかった。上記の4試験は、「左室駆出率が40%以上で心不全がない急性心筋梗塞」を対象に行われたが、その中の「左室駆出率が軽度低下した」サブグループの解析は、対象患者数が少なくて、個々の試験では統計的検定を行うに至らなかった。そこで、本研究では4研究のメタ解析を行った。

減塩には甘じょっぱい味は向かない/京都府立医科大

 高血圧の管理では、塩分摂取量の削減は重要である。人間は塩分を好むという前提に基づいているが、高濃度の塩分に対し、嫌悪感も認識することが大切である。近年の研究では、慢性腎臓病(CKD)患者において味覚認識だけでなく、高塩分濃度への嫌悪感も変化していることが明らかにされた一方で、さまざまな味覚を組み合わせた場合の影響は依然として不明であった。そこで、京都府立医科大学大学院医学研究科腎臓内科学の奥野-尾関 奈津子氏らの研究グループは、甘味を加えることでCKD患者の塩分嫌悪に影響を与えるかどうかを研究した。その結果、甘味は健康成人とCKD患者の双方で高塩分への嫌悪感を低減することが判明した。この結果はScientific Reports誌電子版2025年7月7日号に掲載された。

直近5年、アクセプトされた論文があると答えた医師は何割?/医師1,000人アンケート

 オンラインジャーナルやオープンアクセスジャーナルの普及に加え、生成AIを活用した検索や翻訳・要約も広まりつつあり、論文の閲覧・執筆を取り巻く状況が大きく変化している。今回CareNet.comでは会員医師約1,000人を対象に、論文閲覧・執筆の最近の状況についてアンケートを実施した(2025年8月26~27日実施)。 興味のある論文を見つけるための主な手段について、76.5%の医師がPubMedと回答し、医中誌(39.1%)、ケアネット・m3・日経メディカルなどの論文紹介記事(38.4%)、所属する学会の学会誌(19.6%)などが続いた。  年代別にみると、PubMedとの回答が最も多いのは共通していたが、20~50代では75%以上を占めたのに対し、60代では59.0%と若干低い傾向がみられた。一方、ケアネット・m3・日経メディカルなどの論文紹介記事との回答は20~50代では40%以下だったのに対し、60代では51.2%であった。そのほか、XなどのSNSからの情報との回答は全体で4.0%と低いものの、20~30代では10.9%と他世代と比較して高かった。

ICD患者のK値はいくつにすべきか―4.0mEq/Lでは低すぎる(解説:高月誠司氏)

血清Na濃度は140mEq/Lに対して、細胞内Na濃度は15mEq/L、相補的に血清K濃度は4~5mEq/Lに対して、細胞内K濃度は140mEq/Lと濃度は逆転している。心筋の静止膜電位は-90mVだが、Naチャネルが開口し、一気に細胞内にNaイオンが流入することにより、膜電位は脱分極し、心筋の活動電位が発生する。活動電位においてKは細胞外に放出され、再分極を担う。細胞外K濃度が変化すると、静止膜電位に影響する。K濃度が上昇すると、静止膜電位は脱分極し、Naチャネルの抑制方向に働く。高K血症は伝導速度の低下や伝導ブロックにつながる。一方でK濃度が低下すると静止膜電位は過分極するが、それよりもKチャネルのconductanceの低下による細胞外へのKの放出の抑制が影響する。