統合失調症患者とタバコ、どのような影響を及ぼすのか?

提供元:ケアネット

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公開日:2013/04/15

 

 藤田保健衛生大学の岸 太郎氏らは、ニコチン依存が統合失調症の中間表現型に影響を及ぼすか否か、またニコチン依存の病態生理について遺伝学的側面から検討を行った。その結果、ニコチン依存は統合失調症患者の言語記憶および実行機能に影響を及ぼしている可能性があること、ニコチン依存に関連するニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)遺伝子における一塩基多型(SNP)の存在を示唆した。Human Psychopharmacology: Clinical and Experimental誌オンライン版2013年4月4日の掲載報告。

 本研究の目的は、日本人統合失調症患者において、ニコチン依存が統合失調症の中間表現型に影響を及ぼすか否か、また、nAChR遺伝子のα4 サブユニット(CHRNA4)およびβ2サブユニット(CHRNB2)とニコチン依存との関連を検討することであった。対象は、統合失調症患者100例、健常対照者107例であった。まず、統合失調症患者の認知機能および聴性驚愕反応を調べた。認知機能は、統合失調症認知機能簡易評価尺度(Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia:BACS)により評価した。続いて、現在喫煙中の統合失調症患者および健常対照者について、TDS(Tobacco Dependence Screener)、FTND(Fagerstrom Test for Nicotine Dependence)、ブリンクマン指数によりニコチン依存度を評価し、認知機能および聴性驚愕反応との関連を検討した。さらに、CHRNA4およびCHRNB2における12のタグSNPについて、ニコチン依存との関連を重回帰分析により検討した。

主な結果は以下のとおり。

・統合失調症患者において、ニコチン依存の存在と重症度は言語記憶および実行機能と関連していた。
・一方、ニコチン依存と聴性驚愕反応との間に関連は認められなかった。
・健常対象者において、CHRNA4のrs755203およびrs1044397はニコチン依存と関連していた。
・以上のことから、統合失調症患者におけるニコチン依存は言語記憶および実行機能のレベルに影響を及ぼしている可能性があると考えられた。さらに、日本人健常者におけるニコチン依存の病態生理に、CHRNA4のrs755203およびrs1044397が関与している可能性が示唆された。

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(ケアネット)