治療抵抗性統合失調症患者に対し、ともするとクロザピンの代替として、抗精神病薬の多剤併用療法などの推奨されない治療が行われている。米国テキサス大学のDawn I Velligan氏らは、クロザピン単独療法と抗精神病薬多剤併用による治療およびコストについて比較を行った。Psychiatric services誌オンライン版2014年10月15日号の報告。
検討にはMedicaid MarketScanのデータベースを用いた。対象は、18~64歳の統合失調症患者(ICD-9-CM診療コード295.XX)のうち、2006年7月~2009年1月の間に第二世代抗精神病薬の多剤併用またはクロザピン単独療法を開始し、治療前6ヵ月および治療後12ヵ月のデータを取得できた患者。研究アウトカムは、疾患特異的入院、すべての原因による入院、救急部門(ED)受診、コストとした。分析には、人口統計学的要因、対象期間以前の薬剤使用率、併存疾患によって調整したロジスティック回帰分析と一般化線形モデルを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・対象症例はクロザピン単独療法群479例、抗精神病薬多剤併用群2,440例。クロザピン単独療法群では、抗精神病薬多剤併用群よりも「若年、併存疾患が少ない、対象期間前の薬剤使用率が低い、非白色人種、男性」などの特徴がみられた。
・ベースラインの差をコントロール後の分析では、クロザピン単独療法において精神疾患関連のED受診(OR:0.75、95%CI:0.60~0.95)、統合失調症関連のED受診(OR:0.70、95%CI:0.54~0.90)のより低いオッズと関連していたが、入院やすべての原因によるED受診との関連は認められなかった。
・総医療費はクロザピン単独療法のほうが多剤併用よりも有意に低かった(すべての原因による医療費:-2万1,315ドル、精神疾患関連:-1万7,457ドル、統合失調症関連:-1万582ドル)。
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(ケアネット 鷹野 敦夫)