心房細動のアブレーションに伴う肺静脈狭窄(PVS)は、その頻度は減っているものの、依然として重篤な病態である。肺静脈拡張やステント留置術が報告されているが、これらの治療における長期成績については知られていない。そこで、メイヨークリニックのDouglas L. Packer氏らが、高度の肺静脈狭窄が認められた患者がどのような症状を有するかを調べるとともに、バルーン単独、もしくはバルーンとステント双方を用いた侵襲的治療後における再狭窄のリスクを評価した。Circulation誌2016年12月号に掲載。
高度の肺静脈狭窄患者124例を前向きにフォロー
本研究は前向き観察研究で、2000~14年に高度の肺静脈狭窄を認めた124例を対象とした。124例すべてにおいてCTが用いられ、219の肺静脈に高度の狭窄があると診断された。102例(82%)については診断時に症状があり、頻度の高い症状として、息切れ(67%)、咳(45%)、倦怠感(45%)、そして運動耐容能の低下(45%)がみられた。また、27%が喀血を経験していた。
肺静脈狭窄の急性期治療の成功率は94%、バルーンとステントで差はみられず
92の肺静脈狭窄はバルーン拡張術で治療され、86の肺静脈狭窄にステントが用いられ、41の肺静脈狭窄は治療が行われなかった。急性期における治療の成功率は94%で、初期治療のマネジメントで成功率に違いはみられなかった。手技に伴う重篤な合併症は、侵襲的な治療を受けた113例中4例(3.5%)で認められ(肺静脈穿孔3件、心タンポナーデ2件)、軽度の合併症は15例(13.3%)で認められた。全体では42%の肺静脈狭窄で再狭窄が認められ、この内訳は、バルーン拡張術群の57%(92例中52例)と、ステント留置群の27%(86例中23例)であった。
肺静脈狭窄の再狭窄率はバルーン拡張術よりは低いものの、ステント留置術でも25%
Kaplan Meier法による3年間のフォローアップ時における全体の再狭窄率は37%であり、バルーン拡張術が49%に対し、ステント留置術では25%(ハザード比[HR]:2.77、95%信頼区間[CI]:1.72~4.45、p<0.001)であった。年齢、CHA2DS2-VASc Score、高血圧症などの因子を調整した後においても、バルーン拡張術とステント留置術では再狭窄率に有意差が認められた(HR:2.46、95%CI:1.47~4.12、p<0.001)。
肺静脈狭窄は、症状が非特異的であるため診断が難しく、肺静脈に特化した画像診断が必要である。また、介入タイプによる急性期の治療成功率には有意差が認められなかったが、ステント留置術はバルーン拡張術に比べると治療後の肺静脈狭窄を減少させた。
結論として、肺静脈狭窄の侵襲的治療は急性期の成功率が高いものの、再狭窄率も高い。このため、予後の改善に向け、新しい技術の開発を含めた研究が必要と結んでいる。
(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)