イスラエルのネゲヴ・ベン=グリオン大学のNaomy S. Yackerson氏らは、空中浮遊微粒子の濃度が自殺企図および統合失調症の増悪に及ぼす影響について検討を行った。その結果、風の方向による空中浮遊微粒子濃度の相違が、自殺企図や統合失調症の増悪に影響を及ぼすことを報告し、天候を考慮した対処が精神への有害な影響を予防あるいは緩和しうることを示唆した。International journal of biometeorology誌オンライン版2013年1月16日号の掲載報告。
本研究では、固体の空中浮遊微粒子(SSP)濃度の精神障害発生における役割を評価した。対象は、2001~2002年までの16ヵ月間に、ベン=グリオン大学のBeer-Sheva Mental Health Center(BS-MHC)に記録のあった1,871症例。内訳は、統合失調症(ICD-10:F20-F29)の増悪を理由に入院した者が1,445例、自殺企図(ICD-10:X60-X84)を理由に入院した者が426例であった。SSP濃度と精神障害発生との相関はPearson and Spearman検定により評価し、p < 0.1を統計学的に有意とした。
主な結果は以下のとおり。
・早朝の時間帯で砂漠の東風が吹いている間は、SSP濃度と自殺企図患者数との間に有意な相関が認められた(ρ>0.3、p<0.05)。
・一方、偏西風(シーブリーズ)が吹いている間は、SSP濃度と自殺企図患者数との間に相関は認められなかった(p>0.2)。
・東風が優勢な時間帯(現地時刻の午前4~9時)において、SSP濃度と精神発作として観察される統合失調症増悪患者数との間に正の相関傾向が認められた(ρ>0.2、p<0.1)。
・一方、西風が優勢な午後と夕方の時間帯(現地時刻の午後1~8時)において、SSP濃度と精神発作の間に相関は認められなかった(p>0.1)。
以上の結果を受け、著者は次のように考察した。
・SSP濃度は、精神障害の発生を含む気象学的―生物学的インパクトを決定する大気汚染の状態を反映する唯一無二のパラメータではない。しかし、その役割については、ほとんど誇張されていない。
・SSP濃度は最も簡便に測定できるパラメータの一つである。それは大気汚染が重大な問題となっている半乾燥地域、都市部および工業地域において日々の生活を快適に過ごす取り組みに役立っている。
・本研究は、閾値に達していないその他の外部要因の傾向を容認するのかという点で限界があるが、リスク増加(統計学的可能性の程度に従って)にさらされている集団を選別できる可能性がある。そして、彼らの天候への対処がフラストレーションを感じるポイントの発生に影響を及ぼし、精神への有害な影響の予防または緩和につながる可能性がある。
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