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テストステロン補充療法がメタボを促進?

男性ホルモンの一種であるテストステロンは、年齢とともに有意に減少することから、テストステロンの補充が老化に対してプラスに働くと考えられている。本論文は、テストステロン濃度が低下した高齢男性に対するテストステロン補充療法の効果に関する臨床試験の報告。運動機能、認知機能、骨密度、体組成、血漿脂質、QOL、安全性が調べられた。JAMA誌2008年1月2日号より。テストステロン160mg/日を60日間投与試験を行ったのはユトレヒト大学医療センター(オランダ)のMarielle H. Emmelot-Vonk氏らの研究グループ。二重盲検無作為化プラセボ対照試験で、テストステロン濃度が13.7nmol/L未満に低下した60~80歳の健常男性237例を対象に、2004年1月から2005年4月にかけて実施した。対象者は、テストステロン(アンドリオール)を1日2回(80mg/回)投与群とプラセボ投与群にランダムに割り付けられ、6ヵ月間投与を受けた。主要評価項目は、運動機能(スタンフォード式健康評価質問票、timed get up and go test、握力、脚伸筋力)、認知機能、骨密度(股関節と腰椎)、体組成、メタボリック危険因子(空腹時血漿脂質、グルコース、インスリン)、QOL(SFH36とQLSMによる)ならびに安全性指標(血清前立腺特異抗原濃度、前立腺体積、国際排尿症状スコア、血清クレアチニン濃度、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ:AST、アラニンアミノトランスフェラーゼ:ALT、γ-グルタミルトランスフェラーゼ:GGT、ヘモグロビン、ヘマトクリット)。身体機能、認知機能、QOLに有意な変化みられず解析対象となった207例のうち、テストステロン投与群はプラセボ投与群と比較して、体脂肪は減少したが除脂肪体重が増大した。しかし、除脂肪体重増によって運動機能や筋力がアップすることはなく、認知機能と骨密度にも変化はみられなかった。インスリン感受性は向上したが、HDLコレステロールは減少。試験終了時には、テストステロン投与群の47.8%、プラセボ投与群の35.5%にメタボリックシンドロームがみられた(P=0.07)。QOLに関しては、ホルモン関連のQOL指標がアップした以外は変化がなかった。前立腺の安全を脅かす因子は検出されていない。これらから研究グループは、テストステロンが低下した高齢男性へのテストステロン補充療法は、除脂肪体重の増加、代謝面の複合的な影響がみられた以外は、身体機能あるいは認知機能への影響は確認できなかったと結論づけている。(朝田哲明:医療ライター)

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活動的な両親の子は活動的に育つ?

小児期の身体活動に影響を及ぼす因子が同定されれば、より優れた介入戦略の開発に役立つ可能性がある。しかし、乳幼児期の因子が後年の身体活動にどう影響するかはほとんど知られていない。Calum Mattocks氏(イギリス、ブリストル大学社会医学)らは、5歳までの乳幼児期の因子が後年の11~12歳時の身体活動と相関するか否かについて検討。妊娠中や乳幼児期の両親の身体活動が11~12歳時の身体活動に影響を及ぼすことなどが明らかとなった。BMJ誌2008年1月5日号(オンライン版2007年11月23日号)掲載の報告。イギリスの同時出生コホート研究Avon longitudinal study of parents and children(ALSPAC)は、イギリスで実施されたプロスペクティブな同時出生コホート研究。1991年4月1日~1992年12月31日に出産予定の妊婦14,541人が登録され、14,062人の生児が誕生した。研究グループは、5歳までの乳幼児期の因子が後年の11~12歳時における身体活動と相関するか否かについて検討した。身体活動レベルはcounts per minute(cpm)で評価し、身体活動は11歳時に単軸性アクティグラフ(身体運動記録装置)加速度計を装着してもらい7日間測定することとした。妊娠中の早歩き、水泳が11~12歳時の活動性を高める5,451人の小児から、1日最低10時間の身体活動を少なくとも3日間測定したアクティグラフデータが集められた。回帰係数をカテゴリー変数が“none”のベースラインと比較したところ、「妊娠中の妊婦早歩き」「妊娠中の妊婦水泳」「生後21ヵ月時の両親の身体活動」などが11~12歳時の身体活動に関連していた。Mattocks氏は、「乳幼児期のいくつか因子が後年の11~12歳における身体活動に影響を及ぼすことがわかった」としたうえで、「妊娠中や乳幼児期の両親の身体活動が11~12歳の子どもの身体活動をわずかながら増進させたため、活動的な両親の子どもは活動的に育つ傾向が示唆された。それゆえ、両親が身体活動を増進するよう支援すれば、子どもの活動性が促進される可能性がある」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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肺塞栓症の画像診断でCTPAは本当に有用なのか?

 肺塞栓症が疑われる患者に対して、肺換気・血流シンチグラフィ (V/Q)とCT肺アンギオグラフィ(CTPA)は広く行われている画像診断法だが、多くの医療施設でCTPAが主流となりつつある。Dalhousie University(カナダ)のDavid R. Anderson氏らは、CTPAがV/Qスキャンより有用であるかを検討した。JAMA誌2007年12月19日号にて掲載。カナダ・アメリカ1,417例を対象にCTPAとV/Qを比較 V/QスキャンとCTPAについて正式に比較検討したものは少なく、またCTPAについては感受性が低い(臨床的に重要な肺塞栓見落としの可能性が高い)懸念が言われている。Anderson氏らは、急性肺塞栓症の診断を行う最初の肺画像診断として、CTPAがV/Qスキャンの安全な代替方法かどうかを確認するため、無作為単盲検臨床試験を実施した。 対象は、高度医療を担うカナダ4施設、米国1施設の医療機関で、2001年5月~2005年4月の間にWells clinical model score 4.5以上、Dダイマー検査陽性との結果に基づき急性肺塞栓症とみなされた1,417例の患者。 患者は、V/Q(701例)もしくはCTPA(716例)に無作為に振り分けられ、肺塞栓症と診断された患者は抗凝固療法を受け3ヵ月間フォロー。除外された患者についても、抗凝固療法を受けることなく3ヵ月間追跡調査が行われた。 主要評価項目は、肺塞栓症が除外された患者の症候性肺塞栓症または深在静脈血栓症の発現。CTPAはV/Qスキャンに劣っていない? 肺塞栓症と診断され抗凝固療法を受けたのは、CTPA群133例(19.2%)、V/Q群101例(14.2%)。初回検査による相違は5.0%(95%信頼区間:1.1%~8.9%)だった。肺塞栓症が除外された患者のうち、フォローアップ期間中に静脈血栓塞栓症を呈したのは、CTPA群2/561例(0.4%)、V/Q群6/611例(1.0%)。これには致死性肺塞栓症1例が含まれる。両群相違は-0.6%(95%信頼区間:1.6%~-0.3%)だった。研究者らは、「本研究においてCTPAは肺塞栓症を除外する際、V/Qスキャニングより劣ってはいなかった」としながらも、「CTPAアプローチで肺塞栓症と診断された患者が、かなり上回っていたが、CTPAで見つかった全ての肺塞栓症が抗凝固療法の対象としなければならないかどうか、さらなる調査が必要だ」とまとめている。

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新開発の着用可能な血液透析機の有用性を確認

 透析あるいは腎移植を要する慢性腎不全患者は世界で約130万人に上る。これらの患者は、より頻回の血液透析を行えば生存率およびQOLの双方が改善される可能性があるが、イギリスにはそれを可能にするcapacityがほとんどないという。そこで、Andrew Davenport氏(ロンドン大学、Royal Free and University College Hospital Medical School)らは、新たな透析手段として着用して使用する透析機を開発、その安全性および有効性を評価するパイロット試験を実施した。Lancet誌12月15日号掲載の報告。標準的透析治療を受けている末期腎不全患者が着用透析機を装着 対象は、週に3回の標準的な血液透析を受けている末期腎不全患者8例(男性5例、女性3例、平均年齢51.7歳、平均透析期間17.9年)。これらの患者が新たに開発された着用透析機(重量約5kg)を1日に4~8時間装着し、標準の透析法と同様に抗凝固薬として未分画ヘパリンを投与された。 心血管系への重大な影響や血清電解質、酸塩基のバランスの変化は認めなかった。いずれの症例でも臨床的に有意な溶血のエビデンスは得られなかった。より長時間の装着が可能となるよう改良を重ねるべき 平均血流量は58.6mL/分、透析液流量は47.1mL/分であった。また、平均血漿尿素クリアランスは22.7mL/分、クレアチニンクリアランスは20.7mL/分であった。これらのデータは従来の透析法に比べ低値であるが、透析の時間および期間を延長できれば従来法よりも改善されることが示唆された。 ヘパリン用量が低下した際に2例に血管穿刺部位の血液凝固がみられたが、2例とも部分トロンボプラスチン時間は正常域へと回復した。1例で穿刺針の脱落がみられたが安全装置により失血は防止され、穿刺針を取り換えて治療が継続された。 これらの結果により、Davenport氏は「新開発の着用して使用する透析機器は安全性および有効性ともに有望な結果が得られた」と結論している。また、「これらの知見をより多くの症例で検証する試験が必要である。今後は、有効性を高めるために、より長時間の装着が可能となるよう改良を重ねれば、末期腎不全患者の透析回数をふやす実用的な手段となる可能性がある」と指摘している。

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「グリベック」6年間投与の最新データ発表、病期の進行は見られず

「グリベック」(一般名:メシル酸イマチニブ*) の最大の臨床試験であるIRIS (International Randomized Interferon versus ST1571)で得られた最新のデータによると、「グリベック」投与6年目においても病期の進行が見られないことが米国血液学会(ASH)の第49回年次大会で発表された。IRIS試験は、慢性期のPh+CMLと新たに診断された患者さん1,106名を対象に、16カ国177施設で行なわれたオープンラベル方式の第3相臨床試験。試験結果によると、2年間の治療を経た後の年次憎悪率は年々減少を続け、6年目では0%となった。また、「グリベック」による治療を受けた患者の6年目における全生存率は約88%だった。詳細はプレスリリースへhttp://www.novartis.co.jp/news/2007/pr20071220.html

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新開発のクラミジア迅速検査により即日診断・治療が可能に

クラミジアの核酸増幅検査は、現在使用されている迅速検査よりも感度および特異度が優れるが、高価なため財源が限られた診療所は導入が困難だ。また、核酸増幅検査は結果が出るまでに1~2週間を要するため、治療の勧告やパートナーへの告知に支障が生じる。イギリス・ケンブリッジ大学診断法開発部門の研究グループは、医療財源が限定された状況を想定して非侵襲的な自己採取の膣スワブ標本を用いた新たなクラミジア迅速検査を開発した。 Diagnostics for the Real World(Europe) 社のLourdes Mahilum-Tapay氏らは、クラミジアの診断およびスクリーニングのツールとしての本法の有用性を評価し、BMJ誌12月8日号(オンライン版11月30日号)で報告した。迅速検査と2つの核酸増幅検査を比較若者の性の健康センター(施設1)、泌尿生殖器クリニック(施設2および3)に16~54歳の女性1,349人(施設1:663人、施設2:385人、施設3:301人)が登録された。試験期間は2005年11月~2006年3月。施設1では自己採取した膣スワブを2標本と初尿を提供してもらい、施設2、3では医師の採取による膣スワブ、自己採取膣スワブ、初尿および子宮頸管スワブの提供も受けた。クラミジア迅速検査と、polymerase chain reaction(PCR)アッセイおよびstrand displacement amplification(SDA)アッセイという2つの核酸増幅検査の感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率を比較した。また、迅速検査のvisual signalと病原体量の相関、膣スワブの自己採取を受容できるか否かについても評価した。持続感染や感染拡大のリスクを低下させうるPCR法によるクラミジア陽性率は、施設1が8.4%、施設2が9.4%、施設3が6.0%であった。PCR法との比較における迅速検査の感度は83.5%、特異度は98.9%、陽性的中率は86.7%、陰性的中率は98.6%であった。SDA法との比較における迅速検査の感度は81.6%、特異度は98.3%であった。これらの検出能には有意な差は認めなかった。自己採取膣スワブの病原体量はクラミジアプラスミド数換算で5.97×10の2乗~1.09×10の9乗であり、迅速検査のvisual signalと良好な相関を示した(r=0.6435、p<0.0001)。ほとんどの参加者(95.9%)が、膣スワブの自己採取について「快適」と回答した。Mahilum-Tapay氏は、「自己採取膣スワブによるクラミジア迅速検査は即日診断およびスクリーニングのツールとして有用」と結論、「30分以内に結果が得られるため即日治療や接触者の追跡が可能となり、持続感染や感染拡大のリスクを低下させうる。また、スクリーニングにおいて核酸増幅検査に代わる簡便かつ信頼性の高い検査法となる可能性がある」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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製薬会社スポンサー付きのメタ解析は解釈に疑問が

単独の製薬会社と経済的つながりを持つメタ解析では、解析結果は影響を受けないが、結論はその会社に好ましい内容になる傾向があるという。スタンフォード大学のVeronica Yank氏らによる検討で、BMJ誌オンライン版11月16日付けで早期公開、本誌12月8日号で報告されている。単独スポンサー付きメタ解析では、結果と結論の不一致が37%にYank氏らは2004年12月までに出版された降圧薬臨床試験のメタ解析から、重複を除いた124解析を抽出した。40%にあたる49解析が単独の製薬会社から資金提供を受けていた。まず製薬会社に好ましい「解析結果」をもたらす要因を単変量解析で求めると、「試験の高品質」、「バラツキ検定の実行」、「感度解析の実行」が有意な因子であり、「単独製薬会社との経済的つながり」は有意な因子となっていなかった。製薬会社に好ましい「結論」をもたらす因子は、唯一「単独製薬会社との経済的つながり」だけが有意だった。事実、単独製薬会社と経済的つながりのあるメタ解析では、当該会社製品の有用性を示す結果が得られていたのは27解析(55%)だったにもかかわらず、45解析(92%)がその薬剤が有用であると結論しており、結果と結論の不一致が18解析(37%)に認められた。スポンサーなしの場合の不一致はゼロ一方、複数製薬会社と経済的につながりのあるメタ解析14件では不一致率21%、経済的つながりの明記されていない25試験では12%、製薬会社以外と経済的つながりを持つ36解析では、結果と結論の不一致は1つもなかった。Yank氏らは結果と結論が一致していないメタ解析を掲載した編集者とピアレビュアーを指摘している。「データの解釈に問題がある」のであれば、いわゆる「総説」さらに「ガイドライン」も同様の問題を内包している可能性がある。元New England Journal of Medicine編集長だったJerome P. Kassirer氏は著書「On The Take(買収の危機)」(Oxford Press、2005)において、具体的事例を挙げながら警告を発している。(宇津貴史:医学レポーター)

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卵円孔開存と脳卒中の関連が高齢者でも

卵円孔開存の存在と原因が特定できない潜因性脳卒中との関連は明らかだが、先行研究は55歳未満の若年患者に関するもので、55歳以上の高齢患者についての関連は明らかとなっていない。 そこでフライブルグ大学病院(ドイツ)循環器科のMichael Handke氏らは、高齢患者でのエビデンスを求める検証を行った。NEJM誌11月29日号より。18~85歳までの連続症例を検討対象は、2001年1月~2002年4月の16ヵ月間にフライブルグ大学病院の脳卒中ユニットあるいは神経系ICUに入院した18~85歳までの連続症例。脳卒中を発症した509例(潜因性脳卒中227例、原因が特定された脳卒中276例)が前向きに比較検討された。全例に対して経食道心エコーを用い、卵円孔開存の有病率と心房中隔瘤を伴う卵円孔開存の有病率が調べられ、また、55歳未満患者(131例:若年患者群)と55歳以上患者(372例:高齢患者群)との比較も行われた。若年・高齢とも潜因性脳卒中患者群で有意に高い卵円孔開存の有病率は若年・高齢患者群とも同様の傾向、すなわち脳卒中の原因が特定された患者群(対照群)より潜因性脳卒中患者群のほうが有意に高いという結果が示された。若年患者群ではオッズ比4.70(43.9%対14.3%、95%信頼区間:1.89~11.68、P

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頸部上皮内癌治療後のリスク亢進は25年以上にわたる

グレードの高い形成異常症の治療を受けた女性の大半は、その時点での浸潤性子宮頸癌が予防されるが、治療後も長期にわたって子宮頸癌や膣癌のリスク亢進がみられるとの報告がある。イェーテボリ大学(スウェーデン)産婦人科Bjorn Strander氏らは、グレード3の頸部上皮内癌の治療を受けた患者の、浸潤性子宮頸癌や膣癌のリスク亢進はどれぐらいの期間にわたるのか前向きコホート研究にて調査した。BMJ誌オンライン版10月24日付け、本誌11月24日号掲載より。1958年~2002年に診断を受けたスウェーデン女性対象対象としたのは、1958年~2002年の間に重度形成異常症または頸部上皮内癌(グレード3に相当するもの)の診断を受けたと記録されているスウェーデン女性132,493例、累計2,315,724例。主要評価項目は、スウェーデンの一般女性集団での癌リスクに対する標準化発生率、および内部標準を用いた多変量ログ線形回帰モデルによる相対リスク。子宮頸癌の標準化発生率は2.34、膣癌6.82グレード3の頸部上皮内癌を有したことのある女性の侵襲性子宮頸癌の標準化発生率は2.34(95%信頼区間:2.18~2.50)だった。1970年以後に治療を受けた女性では、リスク亢進は時間とともに減少していたが、四半世紀を過ぎてもまだリスク亢進はみられる。年齢的には50歳以上女性でリスク亢進が目立ち、リスクは1958年以降着実に増大していることも明らかとなった。膣癌の標準化発生率は6.82(同5.61~8.21)であったが、25年以上経過では2.65まで減少していた。これらの結果を受けStrander氏らは、「グレード3相当の頸部上皮内癌治療経験者の、侵襲性子宮頸癌と膣癌の治療後リスク亢進は25年以上にも及ぶ。未解決な疑問点もあるが、治療経験女性に対して定期的な細胞診を年齢にかかわらず25年以上は実施すべきだ」と提言した。

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抗肥満薬rimonabantによりうつ症状が増加の可能性

米国食品医薬品局(FDA)に対し、同局の諮問委員会委員13名の全員一致で「非承認」を採択・答申した食欲抑制剤rimonabantの安全性に関し、Lancet誌11月17日号にメタ解析が掲載された。rimonabant服用例では抑うつ・不安による服薬中止がプラセボ群よりも有意に多いため「慎重な観察が必要である」と著者であるFrederiksberg Hospital(デンマーク)のRobin Christensen氏らは結論している。約4,000例を対象にメタ解析今回のメタ解析の対象としたのは、肥満例を対象にrimonabantと他剤・プラセボの体重減少作用を比較した無作為化二重盲検試験。結果としてRIO-Europe、RIO-Lipids,RIO-North America、RIO-Diabetes,の4試験が対象になった。それらの試験から、プラセボ群とrimonabant 20mg/日群の試験開始1年後のデータを抽出し、メタ解析を行った。rimonabant群2,503例、プラセボ群1,602例での比較となった。体重は有意に減少したが……その結果rimonabant群では1年間で体重が5.1kg、プラセボ群に比べ有意に低下した(95%信頼区間:3.57~7.31kg)。その一方、rimonabant群では「重篤な抑うつ」の増加が見られた。「全ての抑うつ」で比較すると発現リスクはプラセボ群と同等だが、「服薬中止を必要とする抑うつ」の発現はrimonabant群で有意にリスクが高かった(26例/2,503例 vs 5例/1,602例、オッズ比:3.03、95%信頼区間:1.09~8.42)。 一方「不安」は、服薬中止必要性の有無を問わず、rimonabant群で有意にリスクが増加していた。なお「抑うつ」・「不安」の評価に用いられていたのは 病院不安・抑うつ尺度(HADS:Hospital anxiety and depression scales)である。また「抑うつ」発現リスクと背景因子を検討したところ、「血中トリグリセライド(TG)値」と「年齢」がrimonabantによる「抑うつ」発現リスクと相関しており、高TG血症と高齢者が高リスクと考えられた。大規模試験CRESCENDOの今後の結果次第では盛り返しも「考察」において著者らも触れているとおり、冒頭のFDAの諮問委員会では開発社から提供されたデータを用い、同様のメタ解析を行っている。それによると肥満例を対象とした試験に限ればrimonabant 20mg/日による自殺傾向惹起リスクはプラセボと有意差はなく(オッズ比:1.8,95%信頼区間:0.8~3.8)、rimonabant群6,802例例中、自殺者はなく、自殺未遂が4例だった。ただしrimonabantは禁煙補助剤でもあるため、禁煙試験を含めて解析すると、自殺傾向の惹起リスクは1.9と有意に高かった(95%信頼区間:1.1~3.1)。なお、冠動脈イベント高リスク患者に対するrimonabantの1次予防作用をプラセボと比較する大規模試験CRESCENDOが現在進行中であり、結果によっては再び、rimonabantの「リスク・ベネフィット」が話題になるだろう。(宇津貴史:医学レポーター)

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ワクチン接種は疾患発現減少に功を奏したか?

アメリカにおける全国的なワクチン接種プログラムの勧告は、対象疾患発現の減少、排除または根絶を目標に行われている。その目標は果たされているのか。CDC(疾病予防管理センター)のSandra W. Roush氏らワクチン予防接種専門調査委員会(Vaccine-Preventable Disease Table Working Group)は、2005年までに行われてきた13疾患対象の予防的なワクチン接種について、勧告・実行前後の罹患率および死亡率の比較を行った。JAMA誌11月14日号掲載の報告から。ワクチン対象13疾患の死亡率、罹患率を過去と現在で比較検証された13ワクチン対象疾患は、ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、はしか、耳下腺炎、風疹(先天性風疹症候群を含む)、侵襲性のインフルエンザ桿菌b型(Hib)、急性B型肝炎、A型肝炎、水痘、肺炎球菌性肺炎と天然痘。ワクチン勧告前の基線データは、主要なデータソースからの代表的・歴史的に有名なデータとし、それらと直近の罹患率(2006年)、死亡率(2004年)とを比較した。主要評価項目は、疾患発現の症例数、死亡数と疾患による入院数。症例数は最低を記録するに至っているジフテリア、耳下腺炎、百日咳、破傷風は、1980年以前の状況よりも、ワクチン接種の勧告・実行によって、症例数は92%以上減少、死亡数は99%以上減少していた。地域流行性のポリオウイルス、はしか、風疹の伝染は、米国内では排除された。天然痘は、世界的に根絶に至っている。A型肝炎、急性B型肝炎、インフルエンザ桿菌b型、水痘を含む1980年以降にターゲットとされてきた大半のワクチン接種対象疾患については、症例数、死因数とも80%以上減少していた。侵襲性の肺炎球菌性肺炎は症例数は34%、死因数は25%減少していた。委員会は、「大部分のワクチン接種で予防可能とされる疾患の症例数は、最低を記録するに至っている。入院および死亡についても、減少は著しい」と述べ、ワクチンはバイオメディカルおよび公衆衛生の最も偉大な業績の1つであり、今後もワクチン開発・資金調達・調査・評価・配布に努力していくべきと結論づけている。(武藤まき:医療ライター)

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心血管系リスクは「妊娠中毒症」のリスク

Pre-eclampsia(妊娠高血圧症候群:PIH、旧「妊娠中毒症」)患者における心血管系リスク増悪はこれまでも報告されてきたが、このたび、妊娠前・妊娠時の心血管系リスクがPIHのリスクであるとの報告がなされた。Norwegian University of Science and Technology(ノルウェー)のElisabeth Balstad Magnussen氏らが明らかにしたもので、11月1日付けBMJホームページにて早期公開、同誌11月10日号に掲載された。地域住民女性3,500名で検討検討対象となったのは住民研究Nord Tr〓ndelangヘルス・スタディ(〓:Oの中に/、以下同じ)に参加し、出生届が確認された3,494名。Nord Tr〓ndelangヘルス・スタディには、1995~1997年に20歳以上だった全地域女性に登録を呼びかけていた。出生は22週以降の分娩とし、新生児の体重500g以上で9ヵ月以上生存した場合を検討対象とした。母体の健康状態は、Nord Tr〓ndelangヘルス・スタディにおける問診と出生届記載の情報を参照した。PIH例では代償機転が必要以上に大きく作用?3,494名中、133例(3.8%)がPIHだった。PIH群では背景因子中に心血管系リスクが多く認められた。すなわち、出産時母体年齢、妊娠期間、PIH既往と喫煙で補正後、PIHオッズ比は、収縮期血圧、拡張期血圧、総コレステロール値、LDLコレステロール値、非HDLコレステロール値──が上昇するに従い有意に増加していた。また、BMI、腹囲径の上昇もPIHオッズ比を増加させる有意な傾向が認められた。また両親いずれかの既往症との関係では、高血圧と糖尿病がPIHリスクを有意に増加させていたが、虚血性心疾患、また(これまで相関が報告されている)脳卒中とは有意な相関がなかった。Magnussen氏らは「妊娠前・妊娠時の心血管系リスクはPIH発症リスクと相関している」と結論すると同時に、正常な妊婦でもインスリン抵抗性の軽度上昇や軽度の脂質代謝異常は認められるため、PIH例ではこれらの妊娠に対する代償機転が必要以上に大きく作用しているのではないかと考察している。(宇津貴史:医学レポーター)

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健康・福祉サービスの充足は受給者の「権利」認識不足解消から

発展途上国の中でも特に社会・経済的地位の低い人々が、権利として与えられているはずの健康・福祉サービスを十分に受け取ることができていないのは、そもそもサービスを受け取れるという認識不足が原因ではないか。世界銀行(アメリカ・ワシントン)南アジア人財開発部門のPriyanka Pandey氏らは、世界でアフリカ・サハラ以南に次いで貧困層が多いインド(全人口の35%が1日1ドル未満で暮らす)を対象に、情報資源に乏しい農村部の人々に情報をもたらすことで、どれぐらいサービス送達量に変化が生じるのかを調査した。JAMA誌10月24日号掲載の報告から。インドでクラスタ無作為化試験本研究は地域ベースのクラスタ無作為化試験で、2004年5月~2005年5月の間、インド北部のUttar Pradesh州105村を対象とした。低カーストおよび中~高位カーストの世帯を含む497世帯の介入群と548世帯の対照群が、系統的サンプリング法で選択され行われている。介入群には、村単位で4~6回の公的ミーティングが開催され、権利として与えられている保健サービスおよび教育サービスと、村の自治権に関する情報が伝えられた。対照群には何も行われていない。主要評価項目は、助産師訪問の有無、妊婦が受ける権利を与えられている出生前検査と破傷風予防接種および出生前補助食品の授受、乳児が受けることができる予防接種、超過学費の請求、村議会会議の開催、そして村での発展的な動きとされた。1年後には介入群と対照群にかなりの違いが試験開始時は介入群と対象群で、健康・福祉サービスの送達状況に有意差は見られなかったが、1年後には両群間にかなりの違いが生じていた。出生前検査では30%以上の差が(P < 0.001)、破傷風予防接種27%以上(P < 0.001)、出生前補助食品24%以上(P = 0.003)、乳児予防接種25%以上(P = 0.004)が認められ、超過学費の請求は介入群で8ルピー減少した(P < 0.001)。また、村議会会議開催は21%以上の差(P = 0.01)があった。助産師訪問と村での発展的な動きについての改善は認められなかったが、前記の認められた有意な改善は、世帯のカーストの高低を問わず見られた。Pandey氏らは、「情報伝達を強化する教育的介入が、サービスの送達を改善することにつながるようだ」と結論付けている。(武藤まき:医療ライター)

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COPD――多彩な併存症を持つ全身性疾患

2007年10月23日、COPD(慢性閉塞性肺疾患)治療薬スピリーバ(販売:日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社/ファイザー株式会社)承認取得3周年記念記者会見で、日本医科大学呼吸器内科教授、同大学呼吸ケアクリニック所長の木田厚瑞氏はCOPDの多彩な併存症について講演を行った。COPDは虚血性心疾患、肺がん、骨粗鬆症、糖尿病、うつなど多彩な併存症をもつことで注目を浴びています。木田氏が以前、解剖になった4,552名の患者を対象に、COPDの主要病態である肺気腫の合併疾患の頻度を調べたところ、脳血管障害70.9%、肺炎61.0%、胃潰瘍43.9%、肺結核24.1%、肺がん21.5%が認められ、いずれも肺気腫なしの患者より有意に高かった。また、COPD患者の死因の35%は肺炎、27%は心血管疾患、21%はがんであった(*1)。COPD患者は、呼吸機能の低下に従って、骨粗鬆症の発生頻度が大幅に増加することが知られている(*2)。COPDにおける骨粗鬆症のリスクファクターとしては、喫煙、活動量の低下、体重減少と筋肉量の減少、およびステロイド治療などが考えられている(*3)。また、COPD患者の41%にうつがあり、死亡率が高いとの報告がある(*4)。一方、COPD患者の13~17%に貧血が起こり、貧血が併存する場合、運動機能が落ち、生存率も下がる(*5,6)。このように、COPDの併存症は、多彩であるため、プライマリ・ケアと専門性の高い医療機関との連携(紹介・逆紹介)が望ましいと木田氏が強調した。一方、木田氏は、併存症を治療すると同時に、COPDに対し、効果の乏しい不適切な薬物処方をやめ、適切な治療を行うことで、患者QOLの向上、医療費の抑制につながると話した。【文献】*1 Rabe KF. N Engl J Med 2007; 356: 851.*2 Bolton CE. Am J Respir Crit Care Med 2004; 170:1286.*3 lonescu AA. Eur Respir J 2003; 22(suppl 46): 64s.*4 Fan VS, et al. Gender, depression, and risk of hospitalization and mortality in COPD*5 John M, et al. Chest 2005; 127: 825-829.*6 Cote C, et al. Eur Respir J 2007; 29: 923-929.(ケアネット 呉 晨)

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「2015年までに妊産婦死亡率を1990年の1/4に」は達成できるのか

 妊産婦の死亡はほとんどが回避可能であり、それゆえ国連のミレニアム開発目標(Millennium Development Goals; MDGs、http://www.undp.or.jp/aboutundp/mdg/)のターゲットのひとつとなっている。これは、2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の1/4に減少させるというものだが、データの脆弱性のため進捗状況のモニタリングに問題が起きているという。 2006年、評価法の改善を推進するために新たなワーキンググループが設立され、2005年度の妊産婦死亡率を改めて推計し、1990年以降のトレンドの解析を行った。Harvard Center for Population and Development Studies(アメリカ、ケンブリッジ市)のKenneth Hill氏が10月13日付Lancet誌上で報告した。さまざまな方法を開発して解析Hill氏らは、対象となる国を利用可能なデータのタイプ別に8つのカテゴリーに分けて個々に解析を行うなどさまざまな方法を開発し、これらを用いて同一カテゴリーの国や地域レベル、およびグローバルなレベルで2005年度の妊産婦死亡率を算出し、1990~2005年のトレンドを評価した。妊産婦死亡のほとんどがサハラ以南のアフリカ、アジアに集中2005年度の世界の妊産婦死亡数は545,900人、妊産婦死亡率は10万出生あたり402人であった。そのほとんどが、サハラ以南のアフリカ(270,500人、約50%)およびアジア(240,600人、約45%)に集中していた。1990年から2005年にかけて妊産婦死亡率は年平均2.5%減少(p<0.0001)していたが、サハラ以南のアフリカでは有意な減少は認めなかった。MDGターゲットの達成には開発途上地域の妊娠/分娩医療の改善が急務Hill氏によれば、MDGのターゲット「2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の1/4に減少させる」の達成に要する妊産婦死亡率の低下率は年平均5.5%であり、現在の2.5%のままでは不可能という。同氏は、「1990年以降、妊産婦死亡数の減少にある程度の進展がみられた地域もあるが、サハラ以南のアフリカの死亡率は高いままであり、過去15年間に改善のエビデンスはほとんどない」と指摘し、「MDGターゲットの実現には、開発途上地域の妊娠/分娩医療の改善に重点を置いた持続的な施策が急務である」と強調している。(菅野 守:医学ライター)

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スタチン臨床試験WOSCOPSの延長追跡調査結果

スタチン(プラバスタチン)とプラセボとで比較した、英国スコットランド西部で行われた無作為化臨床試験WOSCOPS(West of Scotland Coronary Prevention Study)は、心筋梗塞の既往のない高コレステロール血症の男性6,595例を対象としたもので、平均追跡期間は約5年。冠動脈疾患および非致死性心筋梗塞の複合死亡が、スタチン群では7.9%から5.5%まで減少した(P

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メディケード加入者は医療格差に曝されている

アメリカでは近年、営利保険とは対照的に、管理医療型(マネジドケア)のHMOに加入するメディケード受益者の比率が増加し続けている。マネジドケアHMOでは、重篤あるいは高コストの合併症などを防ぐために予防とルーチンケアを一律に組み込むなど、低所得者や移民が多いメディケード加入者にとってメリットがある半面、必要な医療サービスが制限されるなど“格差”をもたらす可能性も指摘されてきた。 ハーバード・メディカル・スクールのBruce E. Landon氏らは、マネジドケアプランの3パターン間の治療の質を比較。JAMA誌10月10日号で格差の実態について報告した。383のヘルスプランの治療の質を比較治療の質を比較したのは、「メディケード・オンリー・プラン(主にメディケード加入者に供給)」と「営利保険・オンリー・プラン(主に営利保険加入者に供給)」と「メディケード/営利保険適用プラン(実質的に両方の加入者多数に供給)」の3タイプ。比較対象となったのは、2002~2003年にNational Committee for Quality Assuranceで報告された383のヘルスプラン。37が「メディケード・オンリー・プラン」、204が「営利保険・オンリー・プラン」、142が「メディケード/営利保険適用プラン」(メディケード・営利保険加入者データは別々に報告)だった。質の評価には、メディケード集団に適用可能なHEDIS(Healthcare Effectiveness Data and Information Set)の11の指標が用いられた。営利保険加入者のほうが優位メディケード加入者間での11の指標パフォーマンスは、「メディケード・オンリー・プラン」と「メディケード/営利保険適用プラン」で違いはなかった。同様に営利保険加入者間で、「営利保険・オンリー・プラン」と「メディケード/営利保険適用プラン」でパフォーマンスの違いは実質的になかった。全体的に見ると、1つを除く全ての指標で営利保険加入者のパフォーマンスがメディケード加入者より上回っていた。高血圧症コントロールでは4.9%の差(営利保険加入者58.4%対メディケード加入者53.5%、P=0.002)があり、分娩後の適切な治療に関しては24.5%(同77.2%対52.7%、P=0.001)に上る。同程度の格差は、同一のヘルスプランで治療を受けた営利保険加入者とメディケード加入者の間で観察された。Landon氏らは、「メディケード・マネジドケア加入者は、営利保険・マネジドケア加入者より質の低い治療を受けている」と結論。「国家として治療における相違を減らすことが米国ヘルスケアシステムの重要な目的とするのなら、マネジドケアは万能薬でない」と述べ、現状システムの改善を提起した。(武藤まき:医療ライター)

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植込型除細動器使用は治療指針適格患者の35.4%

JAMA誌10月3日号に寄せられた本論は、植込型除細動器(ICD)使用の性・人種差に着目した研究報告で、米国デューク医科大学クリニカルリサーチ研究所のAdrian F. Hernandez氏らによる。指針適格患者13,034例を調査本研究は、ICD治療指針で「心不全で左室駆出率30%以下」とされている治療適格患者間の、実際の使用の性差および人種差を明らかにすることを目的に行われた。解析対象となったのは、心不全・左室駆出率30%以下で退院後、米国心臓協会のGet With the Guidelines-Heart Failure質改善プログラムを受けている患者13,034例。患者は2005年1月~2007年6月の間に217の病院で治療を受けている。主要評価項目は、退院時までにICD治療を受けた、もしくは計画されていたこととした。「女性」「黒人患者」で有意に低いICD治療適格患者のうち退院までにICD治療を受けていたのは4,615例・35.4%だった。内訳は、新規ICD治療1,614例、計画527例、ICD治療既存2,474例。ICD使用率を人種・性別に見ると、黒人女性では28.2%(375/1,329)、白人女性は29.8%(754/2,531)、黒人男性33.4%(660/1,977)、白人男性43.6%(2,356/5,403)となっている(P

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重症精神疾患患者に対する個別就労支援(IPS)のヨーロッパにおける有用性を確認

個別就労支援(individual placement and support; IPS)プログラムは、アメリカで開発された重症精神疾患患者を対象とした援助付きの雇用のモデルである。従来の“train-and-place(訓練を受けてから就労する)”ではなく“place-and-train(就労後に訓練を受ける)”との考え方に基づき、患者の希望に応じて迅速に仕事を探し、精神健康サービス部門の就労専門職員が患者および雇用者を継続的にサポートする。 イギリス・オックスフォード市Warneford病院のTom Burns氏らは、ヨーロッパにおけるIPSの有用性を検証し、個々の国の労働市場および福祉制度におけるIPSの効果を評価する目的で無作為化試験を行った。9月29日付Lancet誌掲載の報告。ヨーロッパの6施設が参加、競合的職業への就労率を評価対象は、18歳以上、2年以上の病歴を有する地域居住の重症精神疾患患者で、競合的職業への就労歴がなく、それを望む者とした。2003年4月~2004年5月にヨーロッパの6施設(イギリス、ドイツ、イタリア、スイス、オランダ、ブルガリア)に312例が登録され、IPS群に156例が、対照群に156例が無作為に割り付けられた。フォローアップ期間は18ヵ月であった。主要評価項目は競合的職業への就労率とし、地域福祉制度や労働市場におけるIPSの効果を検討するためにプロスペクティブなメタ解析を行った。IPS群は就労率が高く、ドロップアウト率および入院率が低い就労率(少なくとも1日以上就労できた患者の割合)は、対照群が28%であったのに対しIPS群は55%と約2倍に達していた。ドロップアウト率は対照群45%に対しIPS群13%、入院率は対照群31%に対しIPS群20%と、いずれもIPS群で良好であった。また、地域の失業率の差がIPSの効果の不均一性と有意な相関を示したことから、社会経済状況の影響も明らかとなった。Burns氏は、「少なくともアメリカと同等の有用性がヨーロッパにおいて確認された」と結論しており、「アメリカで蓄積されてきたエビデンスに今回のヨーロッパの知見を加えれば、IPSが精神健康医療において有効なアプローチであることが確証されるだろう。IPSは出資に値し、さらなる調査が必要である」としている。(菅野 守:医学ライター)

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うつ病労働者への治療プログラムは職場アウトカムをもたらす

ガイドラインに沿ったうつ病治療の有効性は明らかだが、しばしば根拠に基づいた勧告から外れた治療が行われている。うつ病治療プログラムは有意に治療の質を向上させるが、雇用者たちは、対費用効果という点でエビデンスに乏しいとこれらプログラムの採用を後回しにしてきた。 そこで、うつ病治療プログラムの効果が職場に与える影響および雇用者の懸念を評価する無作為化対照試験が、アメリカ国立精神保健研究所(NIMH)のPhilip S. Wang氏らによって行われた。JAMA誌9月26日号より。介入6ヵ月毎にうつ重症度と作業能力を評価試験は、行動保健プランでカバーされる604例の労働者を対象に行われ、うつ病は2段階スクリーニングで同定された。患者の治療割当と、6・12ヵ月後のうつ重症度と作業能力の評価結果は公表されず、難治性の躁うつ病や薬物依存症の者、最近精神専門治療を受けた者、また自殺傾向のある労働者は除外された。電話アウトリーチとケア管理プログラムでは、労働者に外来治療(精神療法および/または薬物療法)を受診するよう促し、治療の質を連続モニターして医療提供者に忠告を与えることで、治療が向上するよう試みた。外来治療を嫌がる対象者には、電話による体系的な認知行動精神療法が提供された。主要評価項目は、うつ重症度(QIDSによる評価:Quick Inventory of Depressive Symptomatology)と作業能力(HPQによる評価:WHO Health and Productivity Questionnaire。労働継続率、労働から外れた時間、作業能力、職場で起こしたインシデントを自己評価で報告する方法)。系統的治療プラグラムで労働生産性が向上6ヵ月後と12ヵ月後の評価データを組み合わせると介入群は、QIDSの自己報告スコアは有意に低く(回復の相対確率1.4、95%信頼区間:1.1-2.0、P=0.009)、維持率は有意に高く(同1.7、1.1-3.3、P=0.02)、介入期間を通して通常ケア群より有意に多くの時間労働したことが明らかになった(β=2.0、P=0.02、年換算では2週間分の労働に等しい)。研究グループはこれらから、うつ病を同定し系統的プログラムを行うことは、臨床的な予後改善ばかりでなく職場アウトカムをも有意に改善すると報告。雇用復帰と訓練、給与コストに関する後者の財政的価値は多くの雇用者に、うつ病治療プログラムは投資収益を生むものであると認識させ、治療に前向きに取り組むようになるだろうとまとめている。(朝田哲明:医療ライター)

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