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Vol. 2 No. 2 心房中隔欠損症の最新治療戦略

赤木 禎治 氏岡山大学病院循環器疾患集中治療部はじめに国内におけるAMPLATZER® Septal Occluderを用いた心房中隔欠損症(atrial septal defect:ASD)に対するカテーテル治療は、治療症例数が3,500例を超え、成績も安定してきた。治療経験が増加していく中で、開始当初の小児を中心とした治療対象から、成人さらに高齢者までの幅広い年齢層が治療対象になってきた。本症は年齢によってその臨床像が大きく異なるため、特に成人期の患者では不整脈を中心とした心合併症に対する対応が重要となる。カテーテル治療に伴う合併症も報告されており、治療適応と合併症に対する知識と対応策を十分に理解しておく必要がある。カテーテル治療では経食道エコーを主体とする心エコー図の役割は極めて大きく、治療の安全な実施と確実な成功を直接左右する要素となる。心房中隔欠損症に対するカテーテル治療の歴史AMPLATZER® Septal Occluderはニッケル・チタン合金からできた形状記憶合金(Nitinol®)のメッシュで構成された円形の閉鎖栓である。金属メッシュ内部には血栓形成性を高めるポリエステル製の布製パッチが縫着されており、より速やかな完全閉鎖を導くことが可能である。閉鎖栓の末端は、ねじ状の接続部でデリバリーケーブルとつながっているため、閉鎖術中に閉鎖栓の位置を変更したり、カテーテル内に回収したりすることが可能である。日本への導入は欧米に比べ大幅に遅れたが、2005年に承認され2006年からは保険診療として収載された。2012年末までに国内での留置実績は約3,500例であり、年々症例数も増加している。国際的にはすでに10万例をはるかに超える実績があり、安定した治療成績が実証されている1)。海外にはこのほかにもゴアテックス膜とNitinol®ワイヤーから構成されるHELEX® Device、その改良型となるGORE® Septal Occluder、AMPLATZER®Septal Occluderと同じNitinol®メッシュで構成されるOcclutech®などさまざまなデバイスが存在する。カテーテル治療の適応基準AMPLATZER® Septal Occluderを用いたASDのインターベンション治療対象は、2次孔型心房中隔欠損症で、(1)欠損孔のバルーン伸展径が38 mm以下、(2)肺体血流比が1.5以上、(3)前縁を除く欠損孔周囲縁が5mm以上あるもの、または(4)肺体血流比が1.5未満であってもASDに伴う心房性不整脈や奇異性塞栓症を合併するもの、である。高度の肺高血圧を合併する例などASDの治療そのものが適応にならない場合は、インターベンション治療も適応とはならない。欠損孔の正確な部位診断と欠損孔周囲縁の評価には、経食道エコーによる評価が重要である2)。欠損孔周囲縁の評価で常に問題となるのは、大動脈周囲縁(前上縁)欠損例に対する適応判断である。経食道心エコー図で大動脈周囲縁が欠損した症例は、後述する心びらん穿孔を合併する可能性があるとして慎重な判断を要求されている。ただ、欠損孔の解剖学的特徴のみで、心びらん穿孔の発生をすべて説明することは困難である。また、大動脈周囲縁欠損は最も頻度の高いタイプであり、治療対象例の多くを占める。このような事実を踏まえ、2012年に米国FDAよりAMPLATZER® Septal Occluderの取扱説明書(instruction for use)の改訂が行われ、「前上縁欠損症例をカテーテル治療する場合には心びらん穿孔合併の発生に十分注意し、慎重なフォローアップを行うこと」という警告が表示されることになった。カテーテル治療の実際閉鎖術は、原則として全身麻酔下に施行する。サイジングバルーンを用いて欠損孔の伸展径を測定し、この径と同一もしくは1サイズ大きめの閉鎖栓を選択する。大腿静脈から左心房へ8~12 Fr(閉鎖栓の大きさで異なる)のデリバリーシースを挿入し、このデリバリーシース内に閉鎖栓を挿入し、留置部位までアプローチする。まず左心房側のディスクを開き、つづいて右心房側のディスクを開いて心房中隔の閉鎖を行う(図1)。それぞれのディスクが適切な位置で開いているかどうかを確認するためには、経食道エコーによるモニターが重要なポイントとなる。最近では、心腔内エコーによるガイド下に閉鎖術を施行する試みも行われている3)。 閉鎖栓が適切な位置に留置されたことが透視像および経食道エコーで確認されたら、デリバリーケーブルを回転させデバイスを離脱し、閉鎖術を終了する。閉鎖術後は抗血栓を目的に、アスピリンを6か月間服用する2)。心房性不整脈の合併などがなければ、ワルファリンなど抗血栓療法を用いる必要はない。図1 閉鎖術の実際画像を拡大するa. サイジングバルーンを用いて 欠損孔の伸展径の測定b. 左房側ディスクの展開c. 右房側ディスクの展開d. 留置形態が安定したのを確認して、ケーブルから離脱させる治療成績と合併症国内では、2012年末までに約3,500例のASDに対してカテーテル治療が実施されている。多くは小児期の患者であるが、80歳を超す高齢者まで幅広い年齢層で治療が実施されている。使用されたデバイスの平均径は17.5mmであり、30mmを超える閉鎖栓も数は限られるが使用されている。術中の急性期合併症として、留置術中のデバイスの脱落がある。脱落した閉鎖栓は経皮的、もしくは外科的に回収されている。また心びらん穿孔は術後72時間以内に発生する可能性の高い重要な合併症(発生率約0.2%)である。米国における外科治療との比較検討によるとカテーテル治療による重大な合併症(処置が必要な合併症)として、不整脈(心房細動や房室ブロック)、デバイスの脱落、脳血管塞栓症が報告されている4)。これら合併症の発生率は、外科手術の合併症発生率と比較し有意に低いものであったと報告されている。成人における心房中隔欠損症の特徴ASD患者の多くは、成人期までほとんど無症状に経過する。しかし、その生命予後は必ずしも良好であるとは限らない5)。未治療でも20歳までの自然歴は比較的良好であるが、30歳を過ぎると心不全死が増加し、生存率は急速に低下する。高齢者の卵円孔開存で明らかなように、欠損孔自体が加齢とともに拡大していくことも知られている。40歳以降には心房細動や心房粗動を合併する頻度が増し、それによって心不全が増強する6)。成人期ASD患者では、50代で15%、70代以降では60%以上と非常に高率に心房細動(atrial fibrillation:AF)を合併する。近年カテーテルアブレーションの技術が進歩しており、AFに対する肺静脈隔離術(pulmonary vein isolation:PVI)が一定の有効性を示している。このため、われわれはAFを合併したASD患者では、アブレーションの適応がある状態であればカテーテル閉鎖術に先立ってPVIを行い、再発がないことを確認して(通常3か月)、その後にASDのカテーテル閉鎖を実施している。一方、カテーテルアブレーションの適応とならない永続性AFの場合には、抗血栓療法を継続しながらASDのカテーテル治療を実施することができる。永続性AFを合併したASD患者においても、カテーテルによるASD閉鎖を行うことで、通常の成人症例と同様に有意な自覚症状の改善、BNP低下や心室のリモデリングが得られる7)。早期治療が重要であることに変わりはないが、AFが慢性化した病期においても、カテーテル治療は有用であり、積極的に考慮すべきである(図2)。図2 慢性心房細動患者に対するASDのカテーテル閉鎖術の効果画像を拡大する心房細動は継続しているが、ASDを閉鎖することでNYHA classは有意に改善する。肺高血圧合併例に対するアプローチ肺高血圧症はASDの約6~37%に認められ、予後、自覚症状、心房性不整脈発症に影響を及ぼす。一方でASD患者における肺高血圧の多くは非可逆性ではなく、閉鎖後にほとんどの症例において有意な肺動脈圧の低下が認められる。これまで、一般に肺血管抵抗が8~10単位以上の症例は、外科的閉鎖の禁忌とされてきた。しかしながら近年、エポプロステノール、シルデナフィル、ボセンタンなど肺高血圧に対する画期的な薬物治療が進歩しており、カテーテル治療を併用することにより、これまで治療の難しかった高度肺高血圧を合併した症例に対する治療適応の拡大が起こってくる可能性がある8)。高齢者に対するカテーテル治療の問題点高齢者ASDにおいて常に危惧される血行動態変化は、欠損孔閉鎖に伴う急性左心室容量負荷に対して、加齢のために拡張機能の低下した左心室がスムーズに対応できるかどうかである。実際にこれまでの閉鎖による急性期合併症として急性左心不全、肺水腫が懸念される。これはASD閉鎖による左室への急激な前負荷の増加に対し、左室が急性適応できないことが原因とされる。これらの疾患を有する症例や左心不全の既往がある症例において、われわれはSwan-Ganzカテーテルによる肺動脈楔入圧モニタリング下にASD閉鎖を施行している(図3)。術後術中のみならず術後急性期の管理も重要であるため、このようなハイリスク症例の術後は原則としてICU管理としている9)。図3 高齢者(82歳女性)ASDに対するカテーテル治療画像を拡大するa. 術前の胸部レントゲン像b. 左房側のディスクを開いたところ。36mmの閉鎖栓を留置している。c. 右房側のディスクを開いたところ。手技中は肺動脈楔入圧をモニターしている。d. 術後6か月の胸部レントゲン像特殊な心房中隔欠損症例(周囲縁欠損、多発性欠損)に対するカテーテル治療これまでのわれわれの検討から、従来カテーテル治療に適したと考えられていた心房中隔の中心部、あるいは欠損孔周囲縁がすべて5mm以上あるASDは治療対象全体の24%に過ぎず、多くの欠損孔は周囲縁の一部あるいは複数部の周囲縁が欠損していることがわかってきた(図4)。最も多いケースは大動脈側縁(前上縁)が欠損したタイプである。このような形態の欠損孔では、たとえ前上縁が欠損していても閉鎖栓が大動脈をまたぐように留置して閉鎖することが可能である(図5)。反対に、後縁が欠損したタイプでは、欠損した領域が小さい場合であれば閉鎖栓が心房壁を摘み上げるように留置され、閉鎖可能である。後下縁の欠損の場合も同様に、多くの場合は閉鎖栓の留置は可能であるが、広範囲な下縁欠損では留置を断念する症例も経験している。欠損孔が複数個存在する多発性欠損例では、欠損孔の位置関係、閉鎖栓の選択で慎重な判断が要求される。お互いの欠損孔が近接し(通常7mm以内)、1個の閉鎖栓で同時に覆うことが可能な場合には、1個の閉鎖栓を留置することで閉鎖可能である。しかしながら、それぞれの欠損孔が独立して存在する場合には、それぞれの欠損孔に別々の閉鎖栓を同時に留置して閉鎖する。さらにより多数の欠損孔がメッシュ状に存在する欠損孔の場合には、AMPLATZER® Cribriform Deviceを用いて、1個の閉鎖栓で同時にカバーすることも可能である。図4 カテーテル治療を実施したASD症例の欠損症周囲縁の評価(n=227)画像を拡大するすべての周囲縁が存在するのは全体の23%で、最も多い症例は大動脈周囲縁の欠損例である。図5a. 大動脈周囲縁欠損例の経食道心エコー図所見画像を拡大するb. 閉鎖栓留置後の所見。閉鎖栓が大動脈にまたがるように(Aサイン)留置されているのがわかる画像を拡大する心びらん穿孔(cardiac erosion)遠隔期合併症としては、閉鎖栓の脱落、不整脈や房室ブロックの合併などが報告されてきたが、最も注目されているのはデバイスに起因する心臓壁のびらん穿孔(erosion)の問題である10)。Aminらは、製造元のAGA Medical社に報告された合併症をもとにその成因を検討している。それによると28例中25例(89%)は大動脈側の辺縁(rim)が欠損していた症例であった。デバイスに起因するerosionで直接死亡した症例は断定されていないが、erosionそのものが全症例の0.1~ 0.2%に発生しているのは事実であり、慎重な対応が必要である。Erosion発生時期の多くは術後72時間以内である。術直後は穿孔に伴う胸痛、息苦しさなどの症状に注意し、さらに術後のエコー所見で心嚢液の貯留についての評価が重要である。Erosionを起こした症例は、欠損孔に対する使用デバイスのサイズが明らかに大きかったことが指摘されている。欠損孔に対して大きすぎるデバイスの選択・留置により(over sizing)、デバイスと心房壁の過度の圧迫、さらに大動脈壁との間の経時的な摩擦によって、心房もしくは大動脈壁の穿孔が起こるのではないかと推測されている。心房中隔欠損症に対するカテーテル治療の今後ASDに対する治療は、今後カテーテル治療が主流となることは間違いないと思われる。AMPLATZER® Septal Occluderは安全性が高くデバイスとしての完成度も高いが、今後より安定した治療効果が得られるような技術改善も期待される。カテーテル治療の場合、心腔内に金属異物を留置することが将来的な不整脈の原因となるのではないかとの危惧もあるが、これまでのわれわれの検討では、少なくとも成人期のASDでは、カテーテル治療は外科治療よりも術後の不整脈の発生率は有意に低いことが確認されている。カテーテル治療では、術後の不整脈の大きな原因である心房切開線を避けられることが大きな要因であると思われる。今後はカテーテル治療と外科治療の適応をどのように判断するかが主要なテーマになってくると思われる。成人例(特に高齢者)のカテーテル治療では、循環器内科医、心臓外科医、麻酔科医による同時に存在する併発症の管理、術後合併症の管理が重要であり、複数の領域にまたがる新しいチーム医療の構築が重要である。文献1)Akagi T. Catheter intervention of adult patients with congenital heart disease. J Cardiol 2012; 60: 151-159. 2)Oho S et al. Transcatheter closure of atrial septal defects with the Amplatzer Septal Occluder –A Japanese clinical trial–. Circ J 2002; 66: 791-794. 3)Kim NK et al . Eight-french intracardiac echocardiography: safe and effective guidance for transcatheter closure in atrial septal defects. Circ J 2012; 76: 2119-2123. 4)Du ZD et al. Comparison between transcatheter and surgical closure of secundum atrial septal defect in children and adults. J Am Coll Cardiol 2002; 39: 1836- 1844. 5)Murphy JG et al. Long-term outcome after the surgical repair of isolated atrial septal defect. N Engl J Med 1990; 323: 1645-1650. 6)Gatzoulis MA et al. Atrial arrhythmia after surgical closure of atrial septal defects in adults. N Engl J Med 1999; 340: 839-846. 7)Taniguchi M et al. Transcatheter closure of atrial septal defect in elderly patients with permanent atrial fibrillation. Catheter Cardiovasc Interv 2009; 73: 682–686. 8)Hirabayashi A et al. Continuous epoprostenol therapy and septal defect closure in a patient with severe pulmonary hypertension. Catheter Cardiovasc Interv 2009; 73: 688-691. 9)Nakagawa K et al. Transcatheter closure of atrial septal defect in a geriatric population. Catheter Cardiovasc Interv 2012; 80: 84-90. 10)Amin Z et al. Erosion of amplatzer septal occluder device after closure of secundum atrial septal defects: Review of registry of complications and recommendations to minimize future risk. Catheter Cardiovasc Interv 2004; 63: 496-502.

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河川や水道水で抗うつ薬検出:東ヨーロッパ

 抗うつ薬は低濃度曝露であっても、脊椎動物・無脊椎動物のいずれにおいても中枢系および末梢神経系を通じてホメオスタシスを妨げ、水生生物に若干の有害作用をもたらす可能性がある。これまで東ヨーロッパの河川または水道水における、抗うつ薬の存在に関する報告はなかったことから、ポーランド・ワルシャワ大学のJoanna Giebultowicz氏らは、21種の抗うつ薬の出現について、ポーランドの主要河川であるヴィスワ川の特異的地点と、ワルシャワ近郊の小さな川であるウトラタ川、そしてワルシャワの水道水について調べた。その結果、河川からは21種のうち11種が、水道水からは同5種が検出されたことなどを報告した。本調査は、東ヨーロッパの水資源中の抗うつ薬の含有状況についての最初の調査報告であった。Ecotoxicology and Environmental Safety誌オンライン版2014年3月14日号の掲載報告。 月に2回の頻度で検体を集め、固相抽出(SPE)法、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS/MS)、多重反応モニタリング(MRM)を用いて分析した。ポーランドにおける抗うつ薬の環境リスクアセスメントは、NFZ(Narodowy Fundusz Zdrowia国民保健サービス)の年報データ(医薬品の償還に関する)を基礎として推定し、ターゲット医薬品の環境中濃度(PEC)の予測値と、実測濃度(MEC)を比較した。また、抗うつ薬の環境リスクアセスメントに関するEMEA/CHMPガイドラインの適用についても考察した。 主な結果は以下のとおり。・モクロベミドやトラゾドンといった抗うつ薬が環境中に存在するかが調べられたのは本検討が初めてであった。・モクロベミド、ベンラファキシン、シタロプラムの検出濃度が最も高かった。・河川からは21種のうち11種の抗うつ薬が検出された。・最も高い濃度の抗うつ薬が観察されたのは、小さい川であるウトラタ川であった。・水道水では、シタロプラム(痕跡量:最高1.5ng/L)、ミアンセリン(最高0.9ng/L)、セルトラリン(<3.1ng/L)、モクロベミド(最高0.3ng/L)、ベンラファキシン(最高1.9ng/L)の5種の抗うつ薬だけが検出された。・一方で、このことは飲用水処理施設での不十分な除去状況を浮き彫りにした。・飲用水および水資源中における抗うつ薬の検出は、長期にわたる低曝露が起きていることを示唆するものであり、とくに、医薬品間の相互作用が起きている可能性があることを示すものであった。関連医療ニュース 難治性うつ病に対する効果的な治療は何か 双極性障害に抗うつ薬は使うべきでないのか 認知症患者の調子のよい日/ 悪い日、決め手となるのは

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内視鏡中に音楽をかけると不安が減少する【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第16回

内視鏡中に音楽をかけると不安が減少する私は呼吸器内科医なので、内視鏡といえば基本的に気管支鏡を意味します。当院では気管支鏡の手技中には音楽をかけていませんが、咽頭喉頭にリドカインを噴霧する際に音楽をかけています。いわゆる癒し系ミュージックやクラシック音楽が主体です。Triller N, et al.Music during bronchoscopic examination: the physiological effects. A randomized trial. Respiration. 2006; 73: 95-99.気管支鏡検査は事前に「咳が出る検査だ」という情報を得るため、声が出せずに息が止まってしまうのではないかと不安を覚える患者さんは少なくありません。気管支鏡中の患者さんの不安を軽減することができれば気管支鏡検査を滞りなく行うことができるのではないか、と考えた筆者らによってこの研究が報告されました。この研究は、気管支鏡中にリラクゼーション音楽をかけることで不安症状の改善が得られるかどうか、血圧や心拍数の変化を抑制できるかどうかを調べたものです。試験期間中、200人の成人患者さんが登録されました。気管支鏡後、患者さんには気管支鏡の手技について0点(問題なかった)から10点(最悪だった)のスコアリングをお願いしました。200人のうち、93人が音楽群、107人が非音楽群にランダムに割り付けられました。これら2群の患者背景に差はみられませんでした。平均手技時間もそれぞれ12.7±6.5分、11.9±6.0分と同等で、スコアリングについても4.6±2.5点、4.6±2.6点と差はありませんでした。しかしながら、手技後の平均心拍数(87.7±14.4/分 vs. 92.7±17.4/分、p = 0.03)、平均収縮期血圧(142.9±21.9 mmHg vs. 149.6±22.4 mmHg、p = 0.03)、平均拡張期血圧(77.6±12.8 mmHg vs. 82.3±12.7 mmHg、p = 0.01)は音楽群のほうが有意に低いという結果でした。確かに手技後のバイタルサインに差はあるようですが、これをもって音楽による不安症状の軽減というには少し飛躍があるような気がします。過去にも同様の研究結果が発表されたことがあるのですが、その結果は一定していません。咳嗽や不快感を軽減したという報告もあれば(Chest. 1995; 108: 129-130.)、ヘッドフォンで音楽を流しても不安症状の軽減がみられなかったとする報告もあります(Chest. 1999; 116: 819-824.)。気管支鏡ではなく消化器内視鏡ではどうかというと、上部消化管内視鏡検査でも同様に不安の軽減がメタアナリシスで報告されています(Endoscopy. 2007; 39: 507-510.)。下部消化管内視鏡にいたっては、内視鏡時の疼痛を軽減したという報告まであります(Dig Liver Dis. 2010; 42: 871-876.)。検査中に音楽を流しても決して害はありませんので(ヘビメタなどはもしかしたら好き嫌いがあるかもしれませんが)、手技の邪魔にならない程度であればリラクゼーション音楽を流してもよいのかな、とも思います。患者さんの音楽の好みも配慮できれば、なおよいですね。

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原因不明の慢性腰痛は姿勢制御の障害が原因か

 慢性腰痛は成人の12~33%にみられるが、腰痛が慢性化する原因はまだ明らかになっていない。リスク因子として、これまでにも姿勢制御の変化が可能性として示唆されていたが、決定的な研究報告はなかった。ブラジル・サンパウロ大学のRene Rogieri Caffaro氏らは、非特異的慢性腰痛患者を対象に重心動揺測定を行い評価した結果、同患者では足圧中心動揺が増加しており、姿勢制御が障害されていることを明らかにした。とくに不安定な床面での視覚遮断(閉眼)時において顕著であったという。European Spine Journal誌2014年4月号(オンライン版2014年2月26日号)の掲載報告。 研究グループは、非特異的慢性腰痛の有無による静止立位時姿勢制御の差異を検討することを目的とした。 対象は、非特異的慢性腰痛を有する患者21例および有していない対照者23例であった。 フォースプレート(Balance MasterⓇ、NeuroCom社)を用いてModified Clinical Test of Sensory Interaction and Balance(mCTSIB)を、視覚アナログスケールにより疼痛強度を、SF-36を用いてQOLを、ローランド・モリス障害質問票を用いて機能障害を評価した。 主な結果は以下のとおり。・非特異的慢性腰痛群(cLBP)と対照群(CG)とで年齢、体重、身長、BMIに差はなかった。・cLBP群はCG群と比較し、足圧中心動揺の計測パラメータより、不安定な床面での閉眼時安静立位における姿勢動揺が大きいことが認められた(p<0.05)。・cLBP群 vs CG群の計測パラメータは、足圧中心動揺は1,432.82(73.27)vs 1,187.77(60.30)、RMS矢状面は1.21(0.06)vs 1.04(0.04)、平均振動速度は12.97(0.84)vs 10.55(0.70)であった。

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BPSD治療にベンゾジアゼピン系薬物治療は支持されるか

 米国・テキサス大学サンアントニオ校のRajesh R. Tampi氏らは、認知症の行動・心理症状(BPSD)に対するベンゾジアゼピン系薬物治療の有効性と忍容性に関する、無作為化試験のシステマティックレビューを行った。その結果、現状の入手できたデータは、限定的ではあるが、BPSDへのベンゾジアゼピン系薬物治療をルーチンに行うことを支持しないものであったことを報告した。ただし特定の状況では使用される可能性があることも示唆されている。American Journal of Alzheimer's Disease and Other Dementias誌オンライン版2014年3月6日号の掲載報告。 研究グループは、ベンゾジアゼピン系薬物の使用について入手可能なデータを要約することを目的に、BPSD治療に関する無作為化試験をレビューした。5大主要データベース(PubMed、MEDLINE、PsychINFO、EMBASE、Cochrane Collaboration)をシステマティックに検索して行った。 主な結果は以下のとおり。・レビューの結果、無作為化試験5本が得られた。・ジアゼパムとチオリダジン(国内発売中止)を比較したもの1試験、オキサゼパム(国内未発売)とハロペリドールまたはジフェンヒドラミンを比較したもの1試験、アルプラゾラムとロラゼパムを比較した1試験、ロラゼパムとハロペリドールを比較した1試験、筋注(IM)ロラゼパムとIMオランザピン(国内未発売)またはプラセボと比較した1試験であった。・5試験のうち4試験のデータにおいて、BPSD治療の有効性について試験薬間の有意差は示されていなかった。・残る1試験で、チオリダジンがジアゼパムよりもBPSD治療についてより有効である可能性(better)が示唆されていた。・また1試験では、プラセボと比較した場合に試験薬の有効性がより高かった(greater)。・忍容性については、試験薬間で有意差はみられなかった。しかし5試験のうち2試験において、約3分の1の被験者が試験途中で脱落していた。・入手データの分析の結果、限定的ではあるが、BPSD治療についてベンゾジアゼピン系薬物のルーチン使用は支持されなかった。しかし、BPSDを有する人で他の向精神薬使用が安全ではない場合、もしくは特定の向精神薬についてアレルギーや忍容性の問題が顕著である場合はベンゾジアゼピン系薬物が使用される可能性があった。関連医療ニュース ベンゾジアゼピン使用は何をもたらすのか 認知症のBPSDに対する抗精神病薬のメリット、デメリット ベンゾジアゼピン系薬物による認知障害、α1GABAA受容体活性が関与の可能性

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子供はよく遊ばせておいたほうがよい

 小児および思春期の身体活動パターンと将来のうつ病との関連はほとんど知られていない。オーストラリア・Menzies Research Institute TasmaniaのCharlotte McKercher氏らは、小児期から成人期における余暇の身体活動パターンと青年期うつ病リスクとの関連についてナショナルサーベイ被験者を対象に検討した。その結果、小児期に不活発であった群に比べ、活動的であった群では青年期にうつ病を発症するリスクが少ないことを報告した。Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology誌オンライン版2014年3月14日号の掲載報告。 ナショナルサーベイの9~15歳被験者(男性759 例、女性871例)を対象に、約20年後に再び聞き取り調査を行った。余暇の身体活動について、1985年のベースライン時と2004~2006年の追跡調査時に自己申告してもらい、また両時点の間隔をつなぐため、15歳から成人までの余暇の身体活動を、追跡調査時に後ろ向きに自己申告してもらった。 身体活動を公衆衛生の観点から群別し、最も不利(持続的に不活発)なパターンを、より有利(活動性が増減および持続)なパターンと比較した。うつ病(大うつ病性障害または気分変調性障害)の評価は、統合国際診断面接(Composite International Diagnostic Interview ; CIDI)により行った。 主な結果は以下のとおり・結果は、小児期のうつ病発症例を除外し、社会人口統計学的因子および健康因子で補正を行った。・その結果、活動性が増加傾向または持続していた男性は、持続的に不活発であった群と比べ、成人期にうつ病を発症するリスクがそれぞれ69%、65%少なかった(いずれもp<0.05)。・後ろ向き解析において、活動性が持続していた女性は成人期にうつ病を発症するリスクが51%少なかった(p=0.01)。・有意差はなかったものの、女性における余暇の身体活動と男性における過去の余暇活動に同様の傾向がみられた。・前向きおよび後ろ向きの両検討結果から、小児期から日常的に自由に活動させておくことが、青年期にうつ病を発症するリスクを減少させることが示唆された。関連医療ニュース 少し歩くだけでもうつ病は予防できる 若年男性のうつ病予防、抗酸化物質が豊富な食事を取るべき 大うつ病性障害の若者へのSSRI、本当に投与すべきでないのか?  担当者へのご意見箱はこちら

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パーキンソン病患者の骨の状態は?―系統的レビューとメタ解析結果より―

 パーキンソン病患者は健常者と比較して、骨粗鬆症および骨量減少ともにリスクが高く、とくに男性よりも女性でリスクが高いことが、英・West Middlesex病院のKelli M Torsney氏らによって明らかとなった。著者らはまた、パーキンソン病の患者では骨密度(BMD)も低く、骨折リスクが高まっていると示している。Journal of neurology, neurosurgery, and psychiatry誌オンライン版2014年3月11日号掲載の報告。 パーキンソン病と骨粗鬆症は、共に加齢に伴う慢性疾患である。両疾患の関連を示したある研究結果では、骨折リスクが増加していた。この系統的レビューとメタ解析の目的は、パーキンソン病と骨粗鬆症、BMDおよび骨折リスクの関連を評価することである。 文献検索は、複数のインデックス作成データベースおよび関連する検索用語を使用して2012年9月4日に行われた。文献の妥当性をスクリーニングし、選択基準を満たし十分な水準であった研究からデータを抽出した。データは、標準的なメタ解析法を用いて統合した。 主な結果は以下のとおり:・23報の研究を対象に最終分析を行った。パーキンソン病患者は健常者に比べ、骨粗鬆症のリスクが高かった(オッズ比[OR]:2.61、95%信頼区間[CI]:1.69~4.03)。・男性患者は女性患者よりも骨粗鬆症や骨減少症のリスクが低かった(OR:0.45、95%CI:0.29~0.68)。 ・パーキンソン病患者は健常対照と比較して、股関節、腰椎および大腿骨頸部のBMDレベルが低かった。大腿骨頸部 差の平均値:-0.08、95%CI:-0.13~-0.02腰椎    差の平均値:-0.09、95%CI:-0.15~-0.03股関節   差の平均値:-0.05、95%CI:-0.07~-0.03・パーキンソン病患者は、骨折のリスクも高かった(OR:2.28、95%CI:1.83~2.83)。

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握力強い中高年は心血管・呼吸器疾患の死亡リスク低い~久山町研究

 高齢者では握力減少が全死因死亡の危険因子であることが報告されているが、中年期の握力と一般集団での全死亡および死因別死亡リスクとの関連は不明である。九州大学の岸本 裕歩氏らは、久山町研究において40歳以上の一般集団の日本人における握力の強さが全死亡および死因別死亡に与える影響を検討した。その結果、中年期以降における握力の強さは、全死亡およびがん以外の原因疾患(心血管疾患、呼吸器疾患など)による死亡リスクと逆相関していることが示唆された。Journal of epidemiology and community health誌オンライン版2014年3月12日号に掲載。 著者らは、40歳以上の久山町在住の日本人2,527人(男性1,064人、女性1,463人)を19年間、前向きに追跡した。参加者を年齢別・性別の握力の三分位(T1:最も弱い、T3:最も強い)に従って、3群に分け検討した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中に783人が死亡した(心血管疾患235人、がん249人、呼吸器疾患154人、その他の疾患145人)。・中年グループ(40~64歳)では、全死因死亡における多変量補正ハザード比(95%信頼区間)は、T1群に比べ、T2群で0.75(0.56~0.99)、T3群で0.49(0.35~0.68)であった。高齢者グループ(65歳以上)におけるそれぞれのハザード比(95%信頼区間)は、0.50(0.40~0.62)、0.41(0.32~0.51)であった。・死因別の検討では、中年、高齢者とも、握力の強さが心血管疾患、呼吸器疾患、その他の疾患による死亡リスクの低下と有意に関連していた。ただし、がん死亡リスクには握力との関連がみられなかった。

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膝OAへのDMOADs予防的投与の費用対効果

 変形性膝関節症(膝OA)の発症予防は、どのような患者にどのような薬剤を用いれば高い費用効率が得られるのだろうか。米国・Brigham and Women's病院のElena Losina氏らによる解析の結果、肥満かつ膝損傷歴のある膝OA発症リスクの高い患者では疾患修飾作用のある薬剤を用いた治療が費用対効果に優れることが示された。これはほかの一般的に認められた予防的治療に匹敵するだろう、とまとめている。Osteoarthritis and Cartilage誌2014年3月(オンライン版2014年1月31日)の掲載報告。 研究グループは、膝OAのシミュレーションモデルであるOsteoarthritis Policy(OAPol)モデルを用い、疾患修飾OA治療薬(DMOADs)による発症予防の費用効率を解析した。 コホートは膝OA発症リスク因子なし、肥満、膝損傷歴あり、高リスク(膝損傷歴を有する肥満者)の4つを用いた。 50歳からDMOADsを開始して最初の1年間の有効率は40%、以降年5%が膝OAを発症し、重大な毒性の発現率は0.22%、年間医療費は1,000ドルを基本ケースとし、標準治療と比較した。 主な結果は以下のとおり。・高リスク群では、基本ケースで質調整生存年(QALY)が0.04延長し、生涯医療費は4,600ドル増加した。・増分費用対効果比(ICER)は、11万8,000ドル/QALYであった。・膝損傷歴群では、基本ケースのICERは、15万ドル/QALY超であった。・肥満群およびリスク因子なし群では、標準治療より基本ケースの費用対効果は低かった。

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Vol. 2 No. 2 transcatheter aortic valve implantation(TAVI)現状と将来への展望

林田 健太郎 氏慶應義塾大学医学部循環器内科はじめに経カテーテル的大動脈弁留置術 (transcatheter aortic valve implantation:TAVI)は、周術期リスクが高く外科的大動脈弁置換術(surgical aortic valve replacement:SAVR)の適応とならない患者群、もしくは高リスクな患者群に対して、より低侵襲な治療として開発されてきた。2002年にフランスのRouen大学循環器内科のCribier教授によって第1例が施行されて以後1)、2007年にヨーロッパでCEマーク取得、2011年にはEdwards社のSapien valveがアメリカでFDA認可を受けている。現在までにヨーロッパ、アメリカを中心に世界中で7万例以上が治療されており、世界的に急速に進歩、普及しつつある治療法である。現在ヨーロッパでは2種類のTAVIデバイスが商業的に使用可能である(本誌p.16図を参照)。フランスでは2010年にすでにTAVIの保険償還がされており、現在では33施設がTAVI施行施設として認可を受けている。またTAVI症例はnational registryに全例登録が義務づけられている2)。TAVIにおける周術期死亡率の低下TAVIの歴史は合併症の歴史であるといっても過言ではない。2006、2007年のTAVIプログラム開始当初は多くの重篤な合併症を認め、低侵襲な経大腿動脈TAV(I TF -TAVI)においても20%を超える30日死亡率を認めていた。しかし、年月とともに術者・施設としての経験の増加、知見の蓄積、さらにデバイスの改良により徐々に合併症発生率は低下し、それに伴って死亡率は低下していった(図1)。特に最近では、transfemoral approachにおいては30日死亡率が5%以下まで低下しており、この数字が今後日本におけるTAVI導入においてわれわれが目指していく基準になっていくであろう。それではどのように合併症を減らしていくのか?図1 30日死亡率の推移(Institut Cardiovasculaire Paris Sudにおけるデータ)画像を拡大する2006年のTAVI開始当初は非常に高い周術期死亡率であったが、その後経験の蓄積やデバイスの改良により、現在では5%程度まで低下している。欧米のデータをいかに日本の患者さんに応用するか?私がヨーロッパにいる間は、日本の患者さんに対していかに安全にTAVIを導入するかということを常に考えて研究を行っていた。フランスにいながらにして体の小さな日本人におけるTAV Iの結果をいかにsimulateするかというのが課題であったが、われわれは体表面積(BSA)をフランスにおけるTAVIコホートの中央値である1.75をcutpointとし、small body size群とlarge body size群に分けて比較を行った(表1)。するとsmall body size群では有意に大動脈弁輪径が小さく(21.3±1.58 vs. 22.8±1.86mm, p< 0.01)、大腿動脈径も小さかった(7.59±1.06 vs. 8.29±1.34mm, p<0.01)。それに伴って弁輪破裂も増加する傾向があり(2.3 vs. 0.5%, p=0.11)、重大な血管合併症(major vascular complication)も増加した(13.0% vs. 4.3%, p<0.01)3)。われわれはsmall body size群で十分日本人のデータを代表できるのではと考えていたが、2012年の日本循環器学会で発表された日本人初のEdwards Sapien XTを用いたTAVIのtrialであるPREVAIL Japanのデータを見ると、われわれの想像をはるかに超え、日本人の平均BSAは1.4±0.14m2であり、われわれのコホートにおけるsmall body size群(1.59±0.11m2)よりさらに小さく、それに伴って大動脈弁輪径も小さかった(表1)。幸いPREVAIL Japanでは弁輪破裂は1例のみに認められ、また重大な血管合併症は6.3%であった。今後日本においてTAVIが普及していく過程において、体格の小さい日本人特有の合併症を予防することがたいへん重要であると考えられる。ではどのようにこのような合併症を低減していくことができるのか?表1 small body size群とlarge body size群の比較画像を拡大する大動脈弁輪径の計測の重要性まず弁輪破裂(もしくはdevice landing zone rupture)は心タンポナーデにより瞬時に血行動態の破綻をきたすため、致死率の高いたいへん重篤な合併症である(図2)4, 5)。Sapien valveでより頻度が高いが、CoreValveでも理論上は前拡張や後拡張時に起きうるため注意が必要である。TAVIにおいては外科手術と異なり直接sizerをあてて計測することができないため、事前に画像診断による詳細な弁輪径やバルサルバ洞径の計測、石灰化の評価とそれに最適なデバイス選択が必要である。この合併症を恐れるがあまり小さめのサイズの弁を選択すると、逆にparavalvular leakが生じやすくなり、30日死亡率6)、1年死亡率7)を増加させることが報告されている。さらには近年、中等度のみならず軽度(mild)のparavalvular leakも予後を悪化させる可能性が示唆されており8)、われわれも同様の結果を得ている(本誌p.19図を参照)9)。弁輪の正確な計測には、その構造の理解が重要である。弁輪ははっきりとした構造物ではなく、3枚の弁尖の最下部からなる平面における“virtual ring”で構成される部分であり(本誌p.19図を参照)、正円ではなく楕円であることが知られている(図3左)。この3次元構造の把握には2Dエコーに比べCTが適しているという報告があり10-12)、エコーに比べTAVIにおける後拡張の頻度を低下させたり13)、弁周囲逆流を減少させたりする14, 15)ことが報告されている。われわれもCT画像における弁輪面積より算出される幾何平均を平均弁輪径として使用し(図3右)、弁逆流量の低下を達成している16)。3Dエコーは3次元構造の把握には優れているものの、低い解像度、石灰化などによるアーティファクトの影響が除外しきれないため、現在のところ弁輪計測のモダリティとしてはガイドライン上勧められていないが17)、造影剤を必要としないなどのメリットもあり、今後の発展が期待される。図2 Sapien XT valve 留置後弁輪破裂を認めた1例画像を拡大する急速に進行する心タンポナーデに対し心嚢穿刺を行い、救命しえた1例。大動脈造影上左冠動脈主幹部の直下にcontrast protrusionを認め、弁輪破裂と考えられた。図3 CTにおける弁輪径の計測画像を拡大する大動脈弁輪は、ほとんどの症例において正円ではなく楕円である。この症例の場合、短径24.2mm、長径31.7mm、長径弁輪面積より幾何平均(geometric mean)は26.7mmと算出される。血管アクセスの評価TAVIにおいてmajor vascular complicationは周術期死亡リスクを増加させることが示唆されており18, 19)、特に骨動脈破裂は急速に出血性ショックをきたし致命的であるため、血管アクセスの評価もたいへん重要である。ほとんどの施設ではより低侵襲な大腿動脈アプローチ(transfemoral approach)が第一選択とされるが、腸骨大腿動脈アクセスの血管径や性状が適さない、もしくは大動脈にmobile plaqueが認められるなどの要因があると、その他のalternative approach、例えば心尖部アプローチ(transapical approach)、鎖骨下アプローチ(transsubclavian approach)などが適応となる。われわれはmajor vascular complicationの予測因子として、経験、大腿動脈の石灰化とともにシース外径と大腿動脈内径の比(sheath to femoral artery ratio:SFAR)を同定しており(本誌p.20表を参照)19)、そのSFARのcut pointは1.05であった(本誌p.20図を参照)。大腿動脈が石灰化していない場合は1.1であり、石灰化があると1.0まで低下していた。つまり、大腿動脈の石灰化がなければシース外径は大腿動脈内径より少し大きくなっても問題ないが、石灰化がある場合は、シース外径は大腿動脈内径を超えないほうがよいと考えられる。後にバンクーバーからも同様の報告がされており、われわれの知見を裏づけている20)。heart team approachの重要性以上、弁輪径の評価と血管アクセスなどの患者スクリーニングについて述べてきたが、いずれも画像診断が主であり、imaging specialistと働くことはたいへん重要である。またTAVIにおいては、デバイス自体がいまだ発展途上でサイズも大きく(18Frほど)、また治療対象となる患者群が非常に高齢・高リスクであることから、一度合併症が生じるとたいへん重篤になりやすく致命的であるため、PCI以上に外科医のバックアップが重要かつ必須である。特にearly experienceでは重篤な合併症が起きやすいため、経験の豊富な術者の指導のもと、チームとしての経験を重ねていくべきである。またエコー、CTなどイメージング専門医、外科医、麻酔科医との緊密な連携に基づいた集学的な“heart team approach”がたいへん重要である。TAVIのSAVR件数に与える影響2004年から2012年までの、MassyにおけるSAVRとTAVI件数の推移を図4に示す。TAVI導入以前は年間SAVRが180例ほどであったが、2006年に導入後急速に増加し、2011年には350例以上と倍増している。このように、TAVIは従来の外科によるSAVRを脅かすものではなく、今まで治療できなかった患者群が治療対象となる、まさに内科・外科両者にとって“win-win”の手技である。またSAVRに対するTAVI件数の割合も増加しており、2011年にはSAVRの半分ほどに達している。現時点では弁の耐用年数などまだ明らかになっていない点があるものの、TAVIの重要性は急激に増加している。TAVIは内科・外科が“heart team”として共同してあたる手技であり、冠動脈疾患の歴史を繰り返すことなく、われわれの手で両者にとっての共存の場にしていくことが重要であろう。図4 Institut Cardiovasculaire Paris SudにおけるTAVI導入後の外科的大動脈弁置換術とTAVI症例数の推移画像を拡大するTAVI導入後、外科的大動脈弁置換術の症例数は倍増している。将来への展望筆者が2009年から3年間留学していたフランスのMassyという町にあるInstitut Cardiovasculaire Paris Sud(ICPS)という心臓血管センターでは2006年よりTAVIを開始している。当初は22-24Frの大口径シースを用いた大腿動脈アクセスに対し外科的なcutdownを用いていたが、2008年からは穿刺と止血デバイス(Prostar XL)を用いた“true percutaneous approach”に完全移行している(図5)。 また2009年からは挿管せず全例局所麻酔と軽いセデーションのみでTF -TAVIを行っており、現在は“true percutaneous approach”と局所麻酔の両方を併せた“Minimally invasive TF -TAVI”として、良好な成績を収めている21)。このように局所麻酔とセデーションを用い、穿刺と止血デバイスを用いた“true percutaneous approach”は、経験を積めば安全で、高齢でリスクの高い大動脈弁狭窄症患者に対し、非常に低侵襲に大動脈弁を留置することができるたいへん有用な方法である。離床も早く、合併症がない場合の平均入院期間は1週間以下であるため、従来のSAVRに比べ大幅に入院期間を短縮でき、ADLを損なう可能性も低い。手技自体も、穿刺、止血デバイスを用いることから合併症がなければ1時間以内で終了し、通常の冠動脈インターベンション(PCI)のイメージと近くなっている。しかし、経験の初期は全TAVIチームメンバーのlearning curveを早く上げることが先決であり、無理をして最初から導入する必要はないが、次世代TAVIデバイスであるEdwards Sapien 3は14Frシースであるため、この方法が将来主流となってくる可能性が高い。筆者が2010年に参加したスイスで行われているCoreValveのtraining courseでは止血デバイスの使用法が講習に含まれており、特に超高齢者におけるメリットは大きく、今後日本でもわれわれが目指していくべき方向である。今年2013年でfirst in man1)からいまだ11年というたいへん新しい手技であり、弁の耐久性など長期成績が未確定であるものの、今後急速に普及しうる手技である。日本においてはEdwards Lifesciences社のSapien XTを用いたPREVAIL Japan trialが終了し、早ければ2013年度中にも同社のTAVIデバイスの保険償還が見込まれている。また現在、Medtronic社のCoreValveも治験が終了しようとしており、高リスクな高齢者に対するより低侵襲な大動脈弁治療のために、早期に使用可能となることが望まれる。現在ヨーロッパを中心とした海外では、Sapien、CoreValveなどの第1世代デバイスの弱点を改良した、もしくはまったく新しいコンセプトの第2世代デバイスが続々と誕生し、使用されつつある。いくつかのデバイスはすでにCEマークを取得しているか、もしくはCEマーク取得のためのトライアル中であり、今後急速に発展しうるたいへん楽しみな分野である。図5 18Fr大口径シースに対する止血デバイス(Prostar XL)を用いたtrue percutaneous approach画像を拡大するA:造影ガイド下に総大腿動脈を穿刺する。B:シース挿入前に止血デバイス(Prostar XL)を用い、糸をかける(preclosure technique)。C:弁留置後シース抜去と同時にknotを締めていく。D:非常に小さな傷しか残らず終了。おわりに本稿ではTAVIの現状と将来への展望について概説した。TAVI適応となるような高リスクの患者群ではminor mistakeがmajor problemとなりうるため、綿密なスクリーニングと経験のあるインターベンション専門医による丁寧な手技による合併症の予防がたいへん重要である。また、ヨーロッパではすでに2007年にCEマークが取得され、多くの症例が治療されているが、いまだこの分野の知識の発展は激しく日進月歩であり、解明すべき点が多く残っている。日本におけるTAVI導入はデバイスラグの問題もあり遅れているが、すでに世界で得られている知見を生かし、また日本人特有の繊細なスクリーニング、手技により必ず世界に誇る成績を発信し、リードすることができると確信している。そのためには“Team Japan”として一丸となってデータを発信していくための準備が必要であろう。文献1)Cribier A et al. Percutaneous transcatheter implantation of an aortic valve prosthesis for calcific aortic stenosis: first human case description. Circulation 2002; 106: 3006-3008. 2)Gilard M et al. Registry of transcatheter aorticvalve implantation in high-risk patients. N Engl J Med 2012; 366: 1705-1715. 3)Watanabe Y et al. Transcatheter aortic valve implantation in patients with small body size. Cathether Cardiovasc Interv (in press). 4)Pasic M et al. Rupture of the device landing zone during transcatheter aortic valve implantation: a life-threatening but treatable complication. Circ Cardiovasc Interv 2012; 5: 424-432. 5)Hayashida K et al. Successful management of annulus rupture in transcatheter aortic valve implantation. JACC Cardiovasc Interv 2013; 6: 90-91. 6)Abdel-Wahab M et al. Aortic regurgitation after transcatheter aortic valve implantation: incidence and early outcome. Results from the German transcatheter aortic valve interventions registry. Heart 2011; 97: 899-906. 7)Tamburino C et al. Incidence and predictors of early and late mortality after transcatheter aortic valve implantation in 663 patients with severe aortic stenosis. Circulation 2011; 123: 299-308. 8)Kodali SK et al. Two-year outcomes after transcatheter or surgical aortic-valve replacement. N En gl J Me d 2 012; 36 6: 1686-1695. 9)Hayashida K et al. Impact of post-procedural aortic regurgitation on mortality after transcatheter aortic valve implantation. JACC Cardiovasc Interv 2012 (in press). 10)Schultz CJ et al. Cardiac CT: necessary for precise sizing for transcatheter aortic implantation. EuroIntervention 2010; 6 Suppl G: G6-G13. 11)Messika-Zeitoun D et al. Multimodal assessment of the aortic annulus diameter: implications for transcatheter aortic valve implantation. J Am Coll Cardiol 2010; 55: 186-194. 12)Piazza N et al. Anatomy of the aortic valvar complex and its implications for transcatheter implantation of the aortic valve. Circ Cardiovasc Interv 2008; 1: 74-81. 13)Schultz C et al. Aortic annulus dimensions and leaflet calcification from contrast MSCT predict the need for balloon post-dilatation after TAVI with the Medtronic CoreValve prosthesis. EuroIntervention 2011; 7: 564-572. 14)Willson AB et al. 3-Dimensional aortic annular assessment by multidetector computed tomography predicts moderate or severe paravalvular regurgitation after transcatheter aortic valve replacement a multicenter retrospective analysis. J Am Coll Cardiol 2012; 59: 1287-1294. 15)Jilaihawi H et al. Cross-sectional computed tomographic assessment improves accuracy of aortic annular sizing for transcatheter aortic valve replacement and reduces the incidence of paravalvular aortic regurgitation. J Am Coll Cardiol 2012; 59: 1275-1286. 16)Hayashida K et al. Impact of CT-guided valve sizing on post-procedural aortic regurgitation in transcatheter aortic valve implantation. EuroIntervention 2012; 8: 546-555. 17)Zamorano JL et al. EAE/ASE recommendations for the use of echocardiography in new transcatheter interventions for valvular heart disease. Eur Heart J 2011; 32: 2189-2214. 18)Genereux P et al. Vascular complications after transcatheter aortic valve replacement: insights from the PARTNER (Placement of AoRTic TraNscathetER Valve) trial. J Am Coll Cardiol 2012; 60: 1043-1052. 19)Hayashida K et al. Transfemoral aortic valve implantation: new criteria to predict vascular complications. J Am Coll Cardiol Intv 2011; 4: 851-858. 20)Toggweiler S et al. Percutaneous aortic valve replacement: vascular outcomes with a fully percutaneous procedure. J Am Coll Cardiol 2012; 59: 113-118. 21)Hayashida K et al. True percutaneous approach for transfemoral aortic valve implantation using the Prostar XL device: impact of learning curve on vascular complications. JACC Cardiovasc Interv 2012; 5: 207-214.

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メチルフェニデートへの反応性、ADHDサブタイプで異なる

 注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、ドパミンおよびノルアドレナリン作動性神経伝達を介する前頭前皮質の変化に伴う神経発達障害である。神経ステロイド(アロプレグナノロン、デヒドロエピアンドロステロンなど) は、さまざまな神経伝達物質の分泌を調節する。スペイン・Complejo Hospitalario GranadaのAntonio Molina-Carballo氏らは、小児ADHD患者を対象とし、神経ステロイドの濃度ならびにメチルフェニデート服薬による臨床症状への効果および神経ステロイド濃度への影響を検討した。その結果、ADHDのタイプにより神経ステロイドはそれぞれ異なったベースライン濃度を示し、メチルフェニデートに対して異なる反応を呈することを報告した。Psychopharmacology誌オンライン版2014年3月6日号の掲載報告。 本研究は、小児ADHDにおけるアロプレグナノロンおよびデヒドロエピアンドロステロンのベースライン濃度と日内変動を明らかにするとともに、メチルフェニデート継続服薬による臨床症状への効果およびこれら2種類の神経ステロイドの濃度への影響を明らかにすることを目的とした。対象は、5~14歳の小児148例で、DSM-IV-TR分類でADHDと診断され、“attention deficit and hyperactivity scale”によるサブタイプと“Children's Depression Inventory”によるサブグループが明らかになっているADHD群(107例)と対照群(41例)であった。両群とも20時と9時に血液サンプルを採取し、ADHD群では治療開始4.61±2.29ヵ月後にも血液を採取しアロプレグナノロンおよびデヒドロエピアンドロステロン濃度を測定した。Stata 12.0を用いて年齢と性別で調整した因子分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・メチルフェニデートの投与により、うつ症状を伴わないinattentiveサブタイプのADHD患者においてアロプレグナノロン濃度が2倍に増加した(27.26 ± 12.90 vs. 12.67 ±6.22ng/mL、朝の測定値)。・うつ症状を伴うADHDサブタイプではデヒドロエピアンドロステロンのベースライン濃度が高く、メチルフェニデート投与後はわずかな増加を認めたが統計学的有意差はなかった (7.74 ± 11.46 vs. 6.18 ±5.99 ng/mL、朝の測定値)。・うつ症状を伴うinattentiveサブタイプのADHD患者において、デヒドロエピアンドロステロンのベースライン濃度は低かったが、メチルフェニデート投与後にはさらに減少した。・ADHDサブタイプおよびサブグループによって、神経ステロイドはその種類によりベースライン濃度が異なり、メチルフェニデートに対して異なる反応を示す。これらの異なる反応性は、ADHDサブタイプや併存症の臨床マーカーになる可能性がある。関連医療ニュース ADHDに対するメチルフェニデートの評価は 抗てんかん薬によりADHD児の行動が改善:山梨大学 自閉症、広汎性発達障害の興奮性に非定型抗精神病薬使用は有用か

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香り成分リナロールの酸化が接触皮膚炎を起こす

 スズラン、ラベンダー、ベルガモット様の芳香を持つリナロールは、香料として用いられることが多いが、酸化によって強力な感作物質が生成される。スウェーデン・イェーテボリ大学のYlva Andersch Bjorkman氏らは、先行研究において2,900例のうち7%で、6.0%酸化リナロールのパッチテスト反応で陽性反応が示されたことを踏まえて、アレルギー体質の人でのアレルギー性接触皮膚炎発症の閾値濃度を明らかにする検討を行った。 検討は、繰り返しオープンパッチテストにて、酸化リナロールによる接触皮膚炎と診断された6例を対象に行われた。 3.0%、1.0%、0.30%の酸化リナロールを含有するクリーム(それぞれ0.56%、0.19%、0.056%のリナロール・ヒドロペルオキシドに対応)と、1.0%、0.30%、0.10%の酸化リナロールを含有する“微香フレグランス”(それぞれ0.19%、0.056%、0.019%のリナロール・ヒドロペルオキシドに対応)を、1日2回、最長3週間使用してもらい、酸化リナロール希釈剤によるパッチテストにて評価した。 主な結果は以下のとおり。・6例のうち5例は、3%含有クリームに陽性反応を示した。・1%含有では、クリームで3例、微香フレグランスで4例が、陽性反応を示した。・0.3%含有では、クリームで2例、微香フレグランスで1例が、陽性反応を示した。・以上から、低濃度の酸化リナロールによる頻回曝露は、感作既往の人でアレルギー性接触皮膚炎を誘発する可能性が示唆された。

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身近にファストフード店が多いほど肥満になりやすい/BMJ

 自宅周辺、職場周辺、通勤経路別に、ピザやバーガーといったいわゆるファストフード店への曝露と、それら食品のテイクアウト消費および体重との関連について調べた結果、用量依存の有意な関連があることが明らかにされた。英国・ケンブリッジ大学医学部のThomas Burgoine氏らが、ケンブリッジシャー州で行った住民ベースの断面調査研究の結果、曝露が大きいほど消費量、体重は増加し、曝露環境別では職場周辺の関連が最も強かったことを報告した。また3つの環境曝露を複合し四分位範囲で分類して評価した結果、最大曝露環境下の人は最小曝露環境下の人と比べて、BMIが相対指数で1.21倍高く、肥満リスクは1.80倍高かったことも示されている。BMJ誌オンライン版2014年3月13日号掲載の報告。労働者対象に自宅、職場、通勤時のテイクアウト食店曝露と消費、体重の関連を評価 英国では過去10年で、外食費支出が29%増加しているという。テイクアウト食店への曝露と食事や体重への影響についてはこれまでも検討されているが、大半が住宅近隣に焦点が当てられていた。そのためエビデンスは不確かなのだが、健康ダイエットを推進する政策立案者は近年、身近なテイクアウト食利用を減らす取り組みをますます行うようになっていた。 そこで研究グループはあらためて同関連を自宅、職場、通勤経路別に調べるため、ケンブリッジシャーで行われたFenland研究に参加した成人労働者(5,442例、29~62歳)を対象に調査を行った。 参加者から自宅、職場住所と通勤経路を提示してもらい、テイクアウト食店曝露を環境要因(自宅、職場、通勤経路)別に、また3環境要因複合において算出。その程度を四分位範囲に分類し(Q1:最小曝露、Q4:最大曝露)評価した。 主要評価項目は、自己報告(摂取頻度の質問票に回答)によるテイクアウト食の消費量(g/日;ピザ、バーガー、揚げ物、チップス)、BMI測定値、WHO定義のBMI分類であった。曝露が大きいほど消費は増大し、BMI増大、肥満リスクとも強く関連 多重線形回帰分析の結果、テイクアウト食店曝露とテイクアウト食消費との関連は明確であった。環境要因別にみると、職場における関連が最も強く(Q4 vs. Q1のβ係数:5.3g/日、95%信頼区間[CI]:1.6~8.7、p<0.05)、用量依存のエビデンスが認められた。 同様に、3つの環境要因複合曝露と消費との関連も曝露用量依存のエビデンスが認められ、曝露が大きいほど消費は有意に増大した(Q4 vs. Q1のβ係数:5.7g/日、95%CI:2.6~8.8、p<0.001)。複合曝露はとくに、BMI増大(Q4 vs. Q1のBMI相対指数:1.21、同:0.68~1.74、p<0.001)、肥満リスク(Q4 vs. Q1のオッズ比:1.80、同:1.28~2.53、p<0.05)と強く関連していた。

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朝食をとる頻度が握力に相関~日本人での横断的研究

 定期的な朝食の摂取が健康上のベネフィットに関連しているという研究がいくつか報告されているが、朝食摂取頻度と筋肉機能との関連を検討した研究は数報しかない。東北大学大学院医工学研究科 永富 良一氏らのチームでは、健常な日本人(成人)の朝食摂取頻度と筋力との関連性を横断的研究により調査したところ、これらの間に正の相関が認められたとした。Nutrition, metabolism, and cardiovascular diseases誌オンライン版2014年1月21日号に掲載。 本研究は、2008~2011年に仙台市内の19~83歳の日本人従業員(男性1,069人、女性346人)が参加し、実施された。ハンドヘルドデジタル握力計によって測定された握力を、筋力の指標として用いた。前の月の朝食摂取頻度を簡単な自記式食事歴法質問票を用いて評価し、その結果を3つのカテゴリ(低頻度:週に2日以下、中頻度:週に3〜5日、高頻度:週に6日以上)に分類し分析した。主に社会人口統計、生活習慣および健康関連因子を含む共変量での共分散分析を用いて、多変量解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・潜在的交絡因子の調整後、握力が朝食摂取頻度と正相関することが示された[幾何平均(95%信頼区間):低頻度群36.2kg(35.7~36.8)、中頻度群36.7kg(36.0~37.5)、高頻度群37.0kg(36.6~37.5)、傾向のp=0.03]。・体重当たりの握力(kg/kg)も朝食摂取頻度と正相関することが示された(傾向のp=0.01)。

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早期前立腺がん、根治切除の長期生存ベネフィットが判明/NEJM

 根治的前立腺切除術は、前立腺がん患者の長期的な生存を実質的に改善することが、スウェーデン・ウプサラ大学のAnna Bill-Axelson氏らが進めるScandinavian Prostate Cancer Group Study Number 4(SPCG-4)の最長23年以上に及ぶ追跡調査で確認された。SPCG-4は前立腺特異抗原(PSA)の臨床導入以前に診断された患者を対象とし、すでに15年のフォローアップにおける根治的前立腺切除術の生存ベネフィットが示されている。一方、PSA検査導入初期に行われたProstate Cancer Intervention versus Observation Trial(PIVOT)では、手術による12年後の全死亡、前立腺がん死の改善効果は得られておらず、PSA検診の影響の大きさが示唆されている。NEJM誌2014年3月6日号掲載の報告。診断時年齢、腫瘍リスクで層別化した無作為化試験 SPCG-4は、早期前立腺がん患者に対する根治的前立腺切除術と待機療法(watchful waiting)の転帰を比較する無作為化試験である。1989~1999年に、年齢75歳未満、10年以上の余命が期待され、他のがんに罹患していない限局性前立腺がんの男性が登録された。 患者は根治的前立腺切除術または待機療法を行う群に無作為に割り付けられ、最初の2年間は6ヵ月ごとに、その後は1年ごとに、2012年までフォローアップが行われた。今回は、フォローアップ期間18年のデータの解析が行われた。 主要評価項目は全死因死亡、前立腺がん死および転移リスクであり、副次評価項目はアンドロゲン除去療法の導入などとした。診断時年齢(65歳未満、65歳以上)および腫瘍リスク(Gleasonスコア、PSA、WHO分類で低、中等度、高リスクに分けた)で層別化して解析を行った。全体および65歳未満では全主要評価項目が手術群で有意に良好 695例が登録され、根治的前立腺切除術群に347例が、待機療法群には348例が割り付けられた。ベースラインの患者背景は両群で同等であり、平均年齢はともに65歳、全体の平均PSA値は約13ng/mLであった。 2012年12月31日までに、根治的前立腺切除術群の294例が手術を受け、待機療法群の294例が根治的治療を受けなかった。フォローアップ期間中央値は13.4年(3週間~23.2年)。 フォローアップ期間中に447例(64%)が死亡し、そのうち200例が手術群、247例は待機療法群であり、フォローアップ期間18年時の累積死亡率はそれぞれ56.1%、68.9%と、手術群で全死因死亡率が有意に低かった(絶対リスク低下率:12.7%、95%信頼区間[CI]:5.1~20.3、相対リスク:0.71、95%CI:0.59~0.86、p<0.001)。1例の死亡を防ぐのに要する治療例数(NNT)は8例であった。手術群の1例が術後に死亡した。 前立腺がん死は手術群が63例(17.7%)、待機療法群は99例(28.7%)で、手術群の絶対リスク低下率は11.0%(95%CI:4.5~17.5)、相対リスクは0.56(95%CI:0.41~0.77)であり、有意な差が認められた(p=0.001)。 遠隔転移(26.1 vs 38.3%、絶対リスク低下率:12.2%、95%CI:5.1~19.3、相対リスク:0.57、95%CI:0.44~0.75、p<0.001)およびアンドロゲン除去療法導入(42.5 vs 67.4%、25.0、17.7~32.3、0.49、0.39~0.60、p<0.001)も、手術群で有意に少なかった。 前立腺がん死に関する手術のベネフィットには、診断時年齢65歳未満(相対リスク:0.45、p=0.002)および中等度リスクがん(0.38、p<0.001)では有意な差が認められた。65歳未満の患者の手術のNNTは4例であった。また、65歳以上の患者では、転移のリスクが手術群のほうが有意に低かった(0.68、p=0.04)。 著者は、「長期フォローアップにより、根治的前立腺切除術の実質的な死亡率抑制効果が確証された。また、年齢や腫瘍リスクで手術の治療効果に違いがみられ、NNTは経時的に低下した。65歳未満の患者では3つの主要評価項目はいずれも手術群で有意に良好であった。なお、待機療法群の長期生存例の大部分は緩和治療を必要としなかった」とし、「限局性前立腺がんのカウンセリングの際には、長期的な疾病負担として、生存以外に転移のリスクとそれに伴う緩和治療のQOLへの影響を考慮すべきであることがあらためて示唆された」と指摘している。

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外側への体幹傾斜歩行で内側型膝OA患者への関節負荷が減少

 カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のJudit Takacs氏らは、内側型変形性膝関節症(膝OA)の高齢者において、内側コンパートメントにかかる荷重を減少するため、体幹を外側に傾ける歩行について検討を行った。その結果、通常の歩行姿勢時と比べエネルギー消費量、心拍数および主観的運動強度は増加した一方、膝の疼痛に差はないことが示された。結果を踏まえて著者は、「外側への体幹傾斜は、膝OA進行に重要な関節負荷の生体力学的尺度を減少させることがわかった。しかしながら、エネルギー消費が増加する恐れがあることを念頭において慎重に処方すべきであろう」とまとめている。Osteoarthritis and Cartilage誌2014年2月号(オンライン版2013年12月12日号)の掲載報告。 研究グループは、高齢患者12例を対象に、普通の姿勢または体幹を外側に最大10度傾けた姿勢で、任意に指定された順に15分間トレッドミル歩行を行わせ評価を行った。体幹の傾きはリアルタイムで被験者の前に表示された。 エネルギー消費[酸素摂取量(VO2)、絶対強度(METs)]、心拍数(HR)、体幹傾斜最大角度、膝痛および主観的運動強度を測定して検討した。 主な結果は以下のとおり。・12例の被験者は、内側型膝OA高齢患者で、男性が5例、平均[SD]年齢は64.1[9.4]歳、BMI 28.3[4.9]であった。・膝痛(p=0.22)を除くすべての項目の測定値が、体幹傾斜歩行群で有意に増加した(p<0.008)。・VO2は平均9.5%(95%信頼区間[CI]:4.2~14.7)、HRは平均5.3回/分(同:1.7~9.0)増加した。

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米国で試行のメディカルホーム、その効果は?/JAMA

 米国では、チーム医療でより質の高いプライマリ・ケアを、効果的に実施することを目的とした「メディカルホーム」が試験的に行われている。米国・RAND CorporationのMark W. Friedberg氏らによる検討の結果、従来型のプライマリ・ケアに比べ、その効果は限定的であることが報告された。結果を踏まえて著者は、「メディカルホームの仕組みについて、改善する必要があるようだ」と述べている。JAMA誌2014年2月26日号で発表した。メディカルホームと従来型プライマリ・ケアの患者、それぞれ約6万人を比較 Friedberg氏らは、2008年6月~2011年5月にかけて、メディカルホームのパイロット試験「Southeastern Pennsylvania Chronic Care Initiative」に初期から参加する、32のプライマリ・ケア診療所の患者6万4,243人について検討を行った。保険請求データを基に、医療の質、医療サービスの利用率、医療費などを求め、対照群としてパイロット試験に非参加の29ヵ所のプライマリ・ケア診療所の患者5万5,959人と比較し、差分の差(difference-in-differences;DID)分析を行った。 パイロット試験に参加する診療所は、疾病登録と技術的協力を受け、全米品質保証委員会(NCQA)により患者中心のメディカルホームを達成したことに対するボーナスを得ることが可能であった。 主要アウトカムは、糖尿病、喘息、予防医療、入院率、救急室や外来の利用率、医療ケアの標準化コストに関する11項目の質評価に関する指標だった。メディカルホームで改善は11項目中1つのみ その結果、11項目のうち改善が認められたのは、糖尿病患者に対する腎障害スクリーニングの1項目についてのみであった。対照群では3年補正後実施率が71.7%だったのに対し、メディカルホーム群では82.7%と有意に改善した(p<0.001)。 その他の医療サービスの利用率やコストについて、メディカルホーム群は対照群に比べ、有意な改善が認められなかった。 なお3年間の試験期間中に、メディカルホームに参加した診療所は、プライマリ・ケア医1人当たり平均9万2,000ドルのボーナスを得た。 これらの結果を踏まえて著者は、「3年間についてみたメディカルホームは、入院、救急室、外来サービスの利用や総コストの低減に関連していなかった。メディカルホームの仕組みについて、さらなる改善の必要があるようだ」とまとめている。

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震災と精神症状、求められる「レジリエンス」の改善

 2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の生存者は、仮設住宅への避難を余儀なくされた。活水女子大学の久木原 博子氏らは、避難住民の心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病の有病率や健康状態とレジリエンス(回復力)に関して、社会・人口統計学的要因を調査した。Psychiatry and clinical neurosciences誌オンライン版2014年1月21日号の報告。 対象は福島県広野町の避難住民241人(男性:女性=125:116)。コナー・デビッドソン・レジリエンス尺度、Zungの自己評価式抑うつ尺度(SDS)、出来事インパクト・スケール改訂版(IES-R)、人口統計アンケートを実施した。 主な結果は以下のとおり。・すべての対象者のうち、53.5%はPTSDの関連症状を呈し、33.2%は臨床的なPTSD症状を示した。・さらに、66.8%はうつ病の症状が認められた。うつ症状の程度は軽症33.2%、中等症19.1%、重症14.5%であった。・レジリエンス(回復力)は、うつ病やPTSD、全体的な健康状態に対する有意な緩衝要因であった。・また、雇用状態、食生活・運動習慣や飲酒習慣はレジリエンスの予測要因であった。 本結果より、著者らは「避難住民はうつ病やPTSDの症状を呈することが多かった。しかし、このような事態に耐えることができた方も存在し、レジリエンスが重要な緩衝要因であると考えられる。そのため、レジリエンスの改善を目指し、雇用機会の提供や健康的なライフスタイルを奨励することが重要である」と述べている。関連医療ニュース 少し歩くだけでもうつ病は予防できる 1日1杯のワインがうつ病を予防 東日本大震災から1年;新たな地域連携をめざして“第27回日本老年精神医学会”

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統合失調症の陰性症状軽減へ新たな選択肢となりうるか

 最近発症の統合失調症または統合失調感情障害で、とくに気分安定薬を併用していないい患者において、神経ステロイドのプレグネノロンを追加投与することで陰性症状の重症度が軽減することが、イスラエル・Sha'ar Menashe Mental Health CenterのMichael S. Ritsner氏らによる二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果、示された。最近発症の統合失調症または統合失調感情障害の治療は、抗精神病薬への反応が不十分なことが多いが、今回の結果について著者は、「さらなる検討の根拠となるものだ」と述べている。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2014年2月18日号の掲載報告。 試験は、2008~2010年に2施設において行われた。DSM-IVの統合失調症または統合失調感情障害(SZ/SA)の診断基準を満たし、抗精神病薬に対する反応が低かった入院・外来患者60例を対象とし、無作為にプレグネノロン(50mg/日)またはプラセボの追加投与を受ける群に割り付けて8週間の治療を行い評価した。主要評価項目は、陽性・陰性症状尺度および陰性症状評価スコアであった。副次評価項目は、機能的評価や副作用などであった。線形混合モデルで分析した。 主な結果は以下のとおり。・参加は60例のうち52例(86.7%)が、試験を完了した。・プラセボ群と比較して、プレグネノロン追加群は、陽性・陰性症状尺度の陰性症状スコアが有意に低下した。エフェクトサイズは中程度であった(d=0.79)。・有意な改善は、気分安定薬の治療を受けなかった患者でプレグネノロン治療の6~8週においてみられた(arms×visit×気分安定薬、p=0.010)。・同様に陰性症状評価スコアも、とくに感情鈍麻、意欲消失、快感消失の領域スコアについて、プレグネノロン追加群はプラセボ群と比較して有意に低下した(d=0.57)。・その他の症状や、機能および副作用は、プレグネノロン追加投与による有意な影響はみられなかった。・抗精神病薬、ベンゾジアゼピン系および性別とプレグネノロン追加との関連はみられなかった。・プレグネノロンの忍容性は良好であった。関連医療ニュース 統合失調症の陰性症状に対し、抗うつ薬の有用性は示されるのか 統合失調症の陰性症状に、抗酸化物質N-アセチルシステインは有効か 統合失調症の認知機能改善に、神経ステロイド追加

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ビタミンC、Eの摂り過ぎは、むしろ変形性膝関節症リスクを増大

 先行研究により、ビタミンCとビタミンEは変形性膝関節症(膝OA)の発症を抑制することが示唆されていた。しかし、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のRamani Krishna Chaganti氏らが多施設共同変形性関節症研究(Multicenter Osteoarthritis Study:MOST)の参加者を対象にコホート内ケースコントロール研究を行った結果、ビタミンCおよびビタミンEの血中濃度高値は膝OAの発症を抑制しないどころか発症リスクの増加と関連していたことを報告した。Osteoarthritis and Cartilage誌2014年2月号(オンライン版2013年11月28日号)の掲載報告。 研究グループは、MOST研究に登録された膝OA患者またはそのリスクが高い50~79歳の男女3,026例を対象に、X線検査で確認される膝OA(X線膝OA)の発症とビタミンCおよびビタミンEの血中濃度との関連を調べた。 膝OA発症例は、研究開始時に脛骨大腿関節(TF)または膝蓋大腿関節(PF)のOA症状がなく、30ヵ月の観察期間中にTFやPF(両方もしくはどちらか)のOAを発症した症例と定義した。 研究開始時に、血漿中ビタミンC濃度および血清中ビタミンE(α-トコフェロール)濃度を測定した。 主な結果は以下のとおり。・研究開始時にX線膝OAがなくビタミンC値が最高三分位群は、同最低三分位群と比較してX線膝OAの発症率が高かった(補正後オッズ比[OR]:2.20、95%信頼区間[CI]:1.12~4.33、p=0.021)。・ビタミンE値についても、同様の結果であった(補正後OR:1.89、96%CI:1.02~3.50、p=0.042)。・ビタミンC三分位値およびビタミンE三分位値は、X線膝OAの発症と関連があることが認められた(それぞれの傾向p=0.019、0.030)。

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