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重症外傷性脳損傷への頭蓋内圧モニタリング、アウトカム改善につながらず/NEJM

 重症外傷性脳損傷に対する頭蓋内圧モニタリングによる治療を行っても、アウトカムは画像・臨床診断に基づく治療を行った場合と同等であることが示された。米国・ワシントン大学のRandall M. Chesnut氏らが、300人超について行った無作為化試験の結果、明らかにした。頭蓋内圧モニタリングは、重症外傷性脳損傷への標準的治療とされ頻繁に用いられているが、アウトカムの改善については厳密な評価はされていなかったという。NEJM誌12月27日号(オンライン版2012年12月12日号)掲載より。生存期間や意識障害などを21項目で統合評価 研究グループは、ボリビアとエクアドルの医療機関で、13歳以上で重症外傷性脳損傷を受けICUで治療中の324人を対象とし無作為化試験を行った。一方の群には、頭蓋内圧モニタリングを行い、もう一方の群には、画像・臨床診断に基づく治療を行った。 主要アウトカムは、生存期間、意識障害、3・6ヵ月後の機能状態、6ヵ月後の神経心理学的状態に関する、21項目から成る統合評価指標とした。なお、神経心理学的状態の評価者は、患者の受けている治療プロトコルについて、知らされていなかった。統合アウトカム、6ヵ月死亡率、ICU滞在日数は両群で同等 結果、主要アウトカムについては、頭蓋内圧モニタリング群のスコアが56に対し、画像・臨床診断群は53と、両群で有意差はなかった(p=0.49)。 また6ヵ月死亡率も、頭蓋内圧モニタリング群39%に対し、画像・臨床診断群は41%と両群で同等だった(p=0.60)。ICUでの脳に特化した治療日数は、画像・臨床診断群が頭蓋内圧モニタリング群に比べ有意に長かったものの(4.8日対3.4日、p=0.002)、ICU滞在日数の中央値は頭蓋内圧モニタリング群が12日間、画像・臨床診断群が9日間と、有意差はなかった(p=0.25)。 重度有害事象の発症率についても、両群で同等だった。

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Qスイッチレーザーのタトゥー除去成功、セッション15回で74.8%

 Pier Luca Bencini氏らは、Qスイッチレーザーのタトゥー除去のアウトカムと後遺症への影響について前向き観察コホート研究を行った。その結果、臨床効果を減じる因子として喫煙や色(黒と赤以外)などが関連していることを明らかにした。著者によると、本検討はQスイッチレーザーによる効果的なタトゥー除去のための予後因子を評価する初の研究であるという。Archives of Dermatology誌2012年12月号(オンライン版2012年9月17日号)の掲載報告。 本研究は、Qスイッチレーザーのタトゥー除去の治療方針と予後に影響を及ぼす因子について解析することを目的とし、イタリア・ミラノのレーザー治療センターで行われた。 被験者は全員、同一の施術者によって、Q-switched 1,064/532nm Nd:YAG laserまたはQ-switched 755-nm alexandrite laserにより除去手術を受けた。レーザーセッションのスケジュールは、6週間以上の間隔が空けられた。 主要評価項目は、治療の成功(タトゥー除去が一時的な皮膚表面の低色素や黒ずみを除く有害事象を伴うことなく行われた場合)と定義した。 主な結果は以下のとおり。・1995年1月1日~2010年12月31日の間に397人の連続患者が登録された。そのうち352人(男性201人、女性151人、年齢中央値30歳)が解析に組み込まれた。・タトゥー除去に成功した患者の累積割合は、レーザーセッション10回後で47.2%(95%CI:41.8~52.5%)、15回後で74.8%(同:68.9~80.7%)であった。・治療の臨床効果の減少と関連していた因子として、喫煙、赤と黒以外の色がある場合、タトゥーが30cm2超、下肢にあるまたは36ヵ月以上前からのタトゥー、高い色密度、治療間隔が8週間未満、黒ずみの発現が認められた。・以上の結果から、著者は「タトゥー除去の治療プランでは、有効率に影響を及ぼす因子について考慮すべきである」と提言する。

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人工膝関節形成術へのドクターフィー年5%減で起きた総医療費の劇的上昇

 米国では1997年8月に財政赤字への懸念から連邦均衡予算法(Balanced Budget Act of 1997)が可決され、メディケアプログラム下の医師への診療報酬(ドクターフィー)の引き下げが命じられた。個々のドクターフィー引き下げそのものによる節減効果と、加えて報酬引き下げは労働インセンティブを低下させ、結果としてアウトプットが減り節減効果がもたらされる、という2つの支出コスト抑制効果があると考えられたためであったという。その一方で、「症例数を増やして個々の減額分の穴埋めをするようになるから、かえって支出コストの増大につながる可能性がある」との指摘もあった。米国・ペンシルベニア大学整形外科のJoseph Bernstein氏らは、個々の症例に対する報酬の引き下げは総量の増大に結びつくとの仮説を整形外科領域で検証するため、1995~2006年の間の人工膝関節形成術(TKA)数などを調べた。Orthopedics誌2012年12月号の掲載報告。 整形外科治療の総コストは一般に、ドクターフィーの何倍も大きく、大部分はインプラントのコストが占めている。そのため、労働アウトプットの増大は、とくに整形外科手術のような分野でかなりの経済的影響がみられることから、研究グループはTKAを対象に調査を行った。 手術件数は、Healthcare Cost and Utilization Project(HCUP)の全国入院患者サンプルから入手し、メディケア・メディケイドサービスセンターから65歳以上患者の数を入手し分析した。 主な結果は以下のとおり。・1996~2005年の10年間で、TKAに対するドクターフィーは年率でおよそ5%ずつ引き下げられ、2,847ドルから1,685ドルへと減額していた。・一方で同期間に、手術件数は25万3,841件から49万8,169件へと増加(年間のメディケア受給者1,000人当たりTKA件数は7.6から13.9へと増加)していたこと、また病院に対する支払いが医師への支払いを大きく上回っているため、TKAに関する総コストは劇的に増大した。・1996年のドクターフィー総計は7億2,300万ドルであったが、その後の9年間は平均6億5,400万ドルであった。10年間の総計は66億800万ドルであった。・一方、ホスピタルフィー総計は、10年間で推定71億ドル以上増えていた。10年間の総計は360億ドルであった。・以上の結果を踏まえて著者は、「ドクターフィーを引き下げ続けると、医療費コストは増大し続ける結果が示された。、全体的な医療費コストをコントロールするための最良の戦略としては、外科の報酬は低くするよりも、高くするほうがよい可能性がある」と述べている。

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神経ステロイド減量が双極性障害患者の気分安定化につながる?

 近年、臨床および前臨床研究から、GABA受容体作動性神経ステロイドの量的変動と気分障害の病態との関連性が明らかになりつつある。イタリア・カリアリ大学のMauro Giovanni Carta氏らは、これまでに報告された基礎的ならびに臨床的研究をレビューし、神経ステロイド量の減少が気分障害の悪化に関連しており、神経ステロイド量の是正/増加が気分安定化につながる可能性を示唆した。Behavioral and Brain Functions誌オンライン版2012年12月19日号の掲載報告。 神経ステロイドは脳内で合成され、脳の興奮性を調節しているが、この神経ステロイドが鎮静作用、麻酔作用、抗痙攣作用を有し、さらに気分に影響を及ぼすというエビデンスが蓄積されつつある。一般に、神経ステロイドはプレグナン系(アロプレグナノロン、アロテトラヒドロデオキシコルチコステロン)、アンドロスタン系(アンドロスタンジオール、エチオコラノン)、サルフェート系(プレグネノロンサルフェート、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート)などに分類されるが、とくにアロプレグナノロン、アロテトラヒドロデオキシコルチコステロンなどのプロゲステロン誘導体が気分障害の病態に関与し、気分安定化に重要な役割を果たしている可能性が示唆されている。  著者は、これらは、以下の主な知見によって支持されるとした。・双極性障害の気分安定化への有効性が示されているクロザピンおよびオランザピンは、ラットの海馬、大脳皮質および血清中のプレグネノロンレベルを上昇させる。・リチウム投与マウスでは、非投与マウス(コントロール)に比べ血中アロプレグナノロン、プレグネノロンレベルの上昇が認められる。・双極性障害の女性では、概して月経周期に関連して症状の悪化がみられる。出産直後はプロゲステロン誘導体レベルの低下が認められ、それに伴って気分障害が発症または再発しやすい。・一方、双極性障害の改善を認めた女性では、月経前の期間に健常人または大うつ病性障害の女性に比べて血漿アロプレグナノロン濃度の上昇が認められる。・うつ病エピソードの期間、血中アロプレグナノロンレベルは低い。・フルオキセチンは、うつ病患者における神経ステロイドレベルを正常化する傾向にある。・以上の結果、「多くの抗痙攣薬が双極性障害に対して有効である、あるいは神経ステロイドに抗痙攣作用がみられるという事実と矛盾しない」とした上で、「神経活性ステロイドの作用に関するさらなる探究は、気分障害、とくに双極性障害の病因および治療の研究において、新分野の開拓につながりうる」としている。関連医療ニュース ・夢遊病にビペリデンは有望!? ・オキシトシン鼻腔内投与は、統合失調症患者の症状を改善 ・南に住んでる日本人では発揚気質が増強される可能性あり

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世界の死因は過去20年で大きく変化、心疾患やCOPD、肺がんなどが主因に/Lancet

 1990~2010年の20年間の世界の死因別死亡率の動向について、米国・Institute for Health Metrics and EvaluationのRafael Lozano氏らがGlobal Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study 2010(GBD2010)の系統的解析を行い報告した。Lancet誌2012年12月15/22/29日合併号掲載の報告。世界の死因で感染症などは大幅に減少 GBD2010において研究グループは、世界187ヵ国から入手可能な死因に関わるあらゆるデータ(人口動態、言語剖検、死亡率サーベイランス、国勢調査、各種サーベイ、病院統計、事件・事故統計、遺体安置・埋葬記録)を集め、1980~2010年の年間死亡率を235の死因に基づき、年齢・性別に不確定区間(UI)値とともに算出し、世界の死因別死亡率の推移を評価した。 その結果、2010年に世界で死亡した人は5,280万人であった。そのうち最大の統合死因別死亡率(感染症・母体性・新生児期・栄養的)は24.9%であったが、同値は1990年の34.1%(1,590万/4,650万人)と比べると大幅に減少していた。その減少に大きく寄与したのが、下痢性疾患(250万人→140万人)、下気道感染症(340万人→280万人)、新生児障害(310万人→220万人)、麻疹(63万人→13万人)、破傷風(27万人→6万人)の死亡率の低下であった。 HIV/AIDSによる死亡は、1990年の30万人から2010年は150万人に増加していた。ピークは2006年の170万人であった。 マラリアの死亡率も1990年から推定19.9%上昇し、2010年は117万人であった。 結核による2010年の死亡は120万人であった。2010年の世界の主要死因は、虚血性心疾患、脳卒中、COPD、下気道感染症、肺がん、HIV/AIDS 非感染症による死亡は、1990年と比べて2010年は800万人弱増加した。2010年の非感染症死者は3,450万人で、死亡3例のうち2例を占めるまでになっていた。 また2010年のがん死亡者は、20年前と比べて38%増加し、800万人であった。このうち150万人(19%)は気管、気管支および肺のがんであった。 虚血性心疾患と脳卒中の2010年の死亡は1,290万人で、1990年は世界の死亡5例に1例の割合であったが、4例に1例を占めるようになっていた。なお、糖尿病による死亡は130万人で、1990年のほぼ2倍になっていた。 外傷による世界の死亡率は、2010年は9.6%(510万人)で、20年前の8.8%と比べてわずかだが増加していた。その要因は、交通事故による死亡(2010年世界で130万人)が46%増加したことと、転倒からの死亡が増加したことが大きかった。 2010年の世界の主要な死因は、虚血性心疾患、脳卒中、COPD、下気道感染症、肺がん、HIV/AIDSであった。そして2010年の世界の早期死亡による生命損失年(years of life lost:YLL)に影響した主要な死因は、虚血性心疾患、下気道感染症、脳卒中、下痢性疾患、マラリア、HIV/AIDSであった。これは、HIV/AIDSと早期分娩合併症を除き1990年とほぼ同様であった。下気道感染症と下痢性疾患のYLLは1990年から45~54%減少していた一方で、虚血性心疾患、脳卒中は17~28%増加していた。 また、主要な死因の地域における格差がかなり大きかった。サハラ以南のアフリカでは2010年においても統合死因別死亡(感染症・母体性・新生児期・栄養的)が早期死亡要因の76%を占めていた。 標準年齢の死亡率は一部の鍵となる疾患(とくにHIV/AIDS、アルツハイマー病、糖尿病、CKD)で上昇したが、大半の疾患(重大血管系疾患、COPD、大半のがん、肝硬変、母体の障害など)は20年前より減少していた。その他の疾患、とくにマラリア、前立腺がん、外傷はほとんど変化がなかった。 著者は、「世界人口の増加、世界的な平均年齢の上昇、そして年齢特異的・性特異的・死因特異的死亡率の減少が組み合わさって、世界の死因が非感染症のものへとシフトしたことが認められた。一方で、サハラ以南のアフリカでは依然として従来死亡主因(感染症・母体性・新生児期・栄養的)が優位を占めている。このような疫学的な変化の陰で、多くの局地的な変化(たとえば、個人間の暴力事件、自殺、肝がん、糖尿病、肝硬変、シャーガス病、アフリカトリパノソーマ、メラノーマなど)が起きており、定期的な世界の疫学的な死因調査の重要性が強調される」とまとめている。

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【寄稿】トピックス「舌下免疫療法」

概説花粉症を含むアレルギー性鼻炎はI型アレルギーであり、その治療の基本はアレルゲンの除去、回避である。しかし完全に行うことは不可能であり、エビデンスも少なくARIA(Allergic Rhinitis and its Impact on Asthma)ガイドラインでは推奨度Dである1)。このため、抗原特異的治療としてアレルゲン免疫療法(SCIT)が唯一、アレルギー疾患に対する根本的な治療法であり、治癒させうる治療法である。SCITは1911年にNoonが初めて行って以来2)、現在まで続いている。国際的にSCITはアレルギー専門医になくてはならない治療法であり、高い効果が示されている。しかし、アナフィラキシーをはじめとする種々の全身的副作用のため、本邦では一般的治療法にはなっていないのが現状である。このSCITの副作用を減少させるため、欧米では抗原投与ルートを変更させた代替免疫療法(局所アレルゲン免疫療法)がかなり以前より行われている。その中で最も注目を浴びているのが舌下免疫療法(SLIT)であり、1990年に初めてTariらによって報告された3)。日本では2000年より日本医科大学耳鼻咽喉科により臨床試験が行われ、2010年からスギ花粉症に対し、2012年からダニ通年性アレルギー性鼻炎、喘息に対して開発治験が始められた。理論・機序SLITの効果発現機序では局所の免疫誘導が最も考えやすいが、現在まで効果発現機序の検討は少ない。1999年のSLIT開始早期での末梢血単核細胞(PBMC)の活性化は、少なくとも舌下した抗原の免疫誘導が全身に生じたことを示している。またSCITでの報告と同じく、全身性の制御性T 細胞がその有効性を左右していると考えられている4)。現在まで千葉大学のグループのスギ花粉症に対する臨床効果もほぼ同等であるが、効果発現機序としてスギ特異的T細胞クローンの減少を報告している5)。また、日本医科大学と三重大学グループの試験では、SLITにおいても誘導性制御性T細胞Tr1が誘導され、SLITの効果発現機序の根幹であることが示唆された6)。今後、症例数を増加させた同様の検討あるいは局所リンパ節などの検討から、SLITの効果発現機序をさらに明らかにしなければならない。実際の方法・手技・対象1 SLITの方法国際的な報告を受け、日本特有のスギ花粉症に対してSLITを適応させるべく、2000年より日本医科大学倫理委員会の承認を受け、SLITをスギ花粉症患者に対して行った7)。2 投与スケジュール投与スケジュールは、1週目から4週目までは毎日、5週目では最高濃度20滴を1週間のうち2回、6週目以降は季節を通じて1週間に1回、抗原エキス2,000 JAU/mLを20滴舌下に投薬した(表1)。これは国際的に初めてSLITを開始したフランスのStallergenesの液剤プロトコールであり、当時としては標準的なものである。しかし、現在治験が行われているスギ花粉症に対するSLIT治験TO-194SLでは開始濃度は200JAU/mLであり、また投与は最後まで毎日行うスケジュールとなっている。表1 抗原エキス舌下投与スケジュール画像を拡大する成績および長期予後<スギ花粉症に対するSLITの効果>2005年には、スギ・ヒノキ花粉飛散は約12,000個/cm2/シーズンと大量飛散の年であった。今までのランダム化されていない比較研究ではなく、エビデンスの作成として56症例(実薬35症例、プラセボ21症例)でのプラセボ対照の二重盲検比較試験(RCT)を行った。今までの薬物療法との比較研究では、症状スコアではSLITは薬物療法と有意差がなかったが、症状薬物スコアではSLIT群が有意に低く、薬物療法より効果を示していた。2005年のRCTでは、国際的な評価を得ているSLITがスギ花粉症においてもプラセボより有意に症状スコア(図1)、QOLスコア(図2)を下げたことが示された8)。図1 症状スコアの推移画像を拡大する図2 QOLスコアの変化画像を拡大する長期予後はまだまだデータが少ないが、施行後3年の症状軽快を示すデータ、他の抗原感作を抑制するというSCITと同じようなデータが出つつある9)。今後、さらに長期予後のデータを収集しなければならない。注意事項副作用は少数であるが確認された。もちろん、重篤なアナフィラキシーや喘息発作はないが、抗原投与時の舌や口腔の痒み・しびれ感、鼻汁増加、皮膚の痒み、蕁麻疹が合わせて10%程度の頻度で認められた(図3)。また口腔底の腫脹は通常では認められない高度のものも存在し、その場合の施行継続/休止/停止などの決定にはアレルギー診療での対処が求められる。今回の症例数は少なく絶対的な安全性の根拠にはならないが、過去の国際的な報告も併せ、注射との実際的な関係を考えても高度な副作用は少ないことが示唆される。図3 口腔底の腫脹展望と今後の方向性欧米ではすでにこの舌下免疫療法が一般的な治療となっていて、フランスのStallergenes、デンマークのALK ABELLOなどすでに製剤としてのSLIT製品があり、その一般臨床への応用が各国で始まっている。日本における開発は、日本アレルギー学会の「アレルゲンと免疫療法専門部会」(部会長:増山敬祐)のもとで始まっている。日本での抗原製品の作成としては、先に述べたスギ花粉症に対する舌下用抗原エキスの開発が鳥居薬品により進められ、評価最終年が2012年であった。薬価収載は2013年秋以降になると予想されている(編集部注:2012年12月25日承認申請)。また、検討会でも海外での製材導入が検討されたが、StallergenesとALK ABELLOの舌下用ダニ抗原エキスが日本企業と連携し、開発を進めることが決定され、臨床試験が2012年秋から開始される予定である。日本ではまだまだ施行例が少なく、重篤な副作用はないが、施行にあたってはアレルギー学、免疫学の知識が不可欠であり、使用を試みる医師に対しての勉強会・講習会などの開催が必要だと考える。引用文献1) ARIA Workshop Group. A Allergy Clin Immunol. 2001;108:s147-s334.2)Noon L. Lancet. 1911;1:1572-1574.3)Tari MG, et al. Allergol Immunopathol (Madr). 1990;18:277-284.4)Ciprandi G, et al. Allergy Asthma Proc. 2007;28:574-577.5)Horiguchi S, et al. Int Arch Allergy Immunol. 2008;146:76-84.6)Yamanaka K, et al. J Allergy Clin Immunol. 2009;124:842-845.7)Gotoh M, et al. Allergol Int. 2005;54:167-171.8)Okubo K, et al. Allergol Int. 2008;57:265-275.9)Di Rienzo V, et al. Clin Exp Allergy. 2003;33:206-210.

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いち早く欧米化が進んだ沖縄県。今、脳卒中発生率は増加?減少?日本の未来を暗示!?:宮古島研究

 沖縄県宮古島において、2002~2005年の血圧値が1988~1991年より有意に低値であったにもかかわらず、初発脳卒中およびすべての脳卒中病型の発生率に有意な変化を認めなかったことが、琉球大学大学院 洲鎌 千賀子氏らにより報告された。また、脳梗塞発生率の上昇傾向には、代謝異常が関連していると推測した。Journal of stroke and cerebrovascular diseases誌オンライン版2012年11月2日付の報告。 沖縄では、心血管疾患リスク因子のコントロールが急速に悪化している。とくに肥満の悪化は顕著である。このことが、脳卒中を含む心血管疾患の発生率に影響を及ぼす可能性がある。 宮古島の住民を対象に、1988年から1991年を第1期、2002年から2005年を第2期として、横断的研究が実施された。対象者の心血管リスク因子は、1987年時と2001年時の健康診断データを用いて評価された。 主な結果は以下のとおり。・初発脳卒中は、第1期で257人、第2期で370人に認めた。・日本の標準人口10万人あたりの初発脳卒中の年齢調整年間発生率は、第1期で124人、第2期で144人であった。・脳梗塞の年齢調整年間発生率は上昇傾向(第1期:50、第2期:73)、脳出血は減少傾向(第1期:61、第2期:54)を認めたが、有意ではなかった。・血圧値は、全年齢層において第2期の方が低かった。・50歳以上のBMI値は、第2期の方が高かった。・30~79歳の空腹時血糖値と、50~79歳のnon-HDLコレステロール値は第2期で有意に上昇した。

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雪下ろしによる転落外傷、記録的な大雪に見舞われた2010年冬からの教訓

 2010年冬にフィンランドでは記録的な大雪に見舞われ、とくに南部地方で雪下ろしのために屋根に上った人の転落外傷が例年にない規模で発生したという。ヘルシンキ大学病院のM. Aulanko氏らは、その発生状況と大学病院で行われた処置およびコストなどについて解析した。Scandinavian Journal of Surgery誌2012年第4号12月15日号の掲載報告。 本研究は、ヘルシンキ大学病院外傷診療部門で治療を受けた、突発的な転落により外傷を負った患者の外傷パターン、院内治療、外科手術、および主要な入院総コストを調べることを目的とした。 同部門で2010年1月1日~3月31日の間に治療を受けた、雪下ろしで転落し外傷を負った患者をすべ登録した。年齢、性別、可能な限り飲酒の影響、安全ベルトの有無、転落した高さ、職業などが記録された。また、外傷発生の時間帯、場所、入院遅延、外傷状態、手術、ICU入室期間および入院期間もレトロスペクティブに調べた。 コストについては、6月末までのアフターケアも含めた分について検証した(仕事への影響、リハビリテーション治療などのコストは除外した)。 主な結果は以下のとおり。・屋根から転落したのは30例(65%)であり、12例ははしごからの転落であった。・屋根から転落したが、安全ベルトで地面への激突を免れた人は3例であった。・アルコールの影響が認められた人は2例であった。・調査期間の3ヵ月間に入院した患者は、46例であった。そのうち41例(89%)は2月に起きた事故であった。・大半は男性(43例、93%)であり、平均年齢は52.9歳(範囲:22~82歳)であった。・ICUに入院となったのは7例であった。平均入室期間は7日であった。・平均入院期間は4.7日であった。30日死亡率は0%であった。・46例の外傷総数は97件であり、そのうち骨折は65件(63%)であった。最も頻度の高い外傷は、上下肢と脊柱の骨折であった。・調査対象となった大学病院での治療コストは、総計約54万ユーロであり、患者1人当たり約1万2,300ユーロであった。・結果を踏まえて著者は、「同様の不必要な転落を防止するためには、外傷リスクを理解するとともに除雪の必要性についてプロフェッショナルの意見を求めることが重要である。必要であれば、適切な安全ベルトを着用すること、専門業者の助けを借りることが望ましい」とまとめている。

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インフルエンザ 総説

突如として発生して瞬く間に広がりすぐに消え去っていく、咳と高熱のみられる流行病はギリシャ・ローマ時代から記録があり、このような流行病は周期的に現われてくるところから、16世紀のイタリアの星占いたちは星や寒気の影響によるものと考え、influence(影響)すなわちinfluenzaと呼ぶようになったといわれている。国内では、天保6(1835)年に出版された医書「医療生始」に、インフリュエンザ(印弗魯英撤)という病名が書かれているが、その字は、インド・フランス・ロシア・イギリスなどから撒き散らされる病気、という意味のように読み取れる。インフルエンザの病原体1891年 ドイツのコッホ研究所の Pfeifferと北里柴三郎が、インフルエンザ患者の鼻咽頭から小型の桿菌を発見し、1892年インフルエンザの病原体として発表しているが、1933年インフルエンザウイルスによってインフルエンザの病原体としては否定された。しかしその業績は高く評価され、その後も、本菌の学名として「Haemophilus influenzae: ヘモフィルス・インフルエンザ 」が使用されてきている。ヒトのインフルエンザウイルスは、1933年に初めて分離されたが、そのきっかけとなったのは、1931年ブタのインフルエンザからの分離である。これらから、インフルエンザという症状からつけられた疾病は、インフルエンザウイルスによって生じる感染症であることが明らかとなった。しかし、微生物学が進歩するにつれていろいろな微生物の存在が明らかとなり、さらにその病原診断が速やかになってくると、インフルエンザという症状の病気=インフルエンザウイルスの感染 となるわけではなく、インフルエンザという病名に一致した症状を呈しながら他の病原体による感染症であったり、またインフルエンザという病名とは異なる症状でありながらインフルエンザウイルスが検出されたりすることがある、ということも明らかになってきた。また、インフルエンザウイルス感染に伴い、急性脳症およびその他の中枢神経障害・精神異常・心循環器障害・肝障害・運動器障害など、さまざまな病態像を呈することも明らかになってきた。インフルエンザウイルスはウイルス粒子内の核蛋白複合体の抗原性の違いから、A・B・Cの3型に分けられ、このうち流行的な広がりを見せるのはA型とB型である。A型ウイルス粒子表面には赤血球凝集素(HA)とノイラミニダーゼ(NA)という糖蛋白があり、HAには16の亜型が、NAには9つの亜型がある。これらはさまざまな組み合わせをして、ヒト以外にもブタやトリなどその他の宿主に広く分布している。インフルエンザとは人の病気の病名であるが、インフルエンザウイルス感染症は、広く動物界に分布しているといえる。ウイルスの表面にあるHAとNAは、同一の亜型内で 抗原性を毎年のように変化させるため、A型インフルエンザは巧みにヒトの免疫機構から逃れ、流行し続ける。これを連続抗原変異(antigenic drift)または小変異という。いわばマイナーモデルチェンジで基本的に同じ形が少しずつ姿を変えることになる。連続抗原変異によりウイルスの抗原性の変化が大きくなれば、A型インフルエンザ感染を以前に受け、免疫がある人でも、再び別のA型インフルエンザの感染を受けることになる。その抗原性に差があるほど、感染を受けやすく、また発症したときの症状も強くなる。そしてウイルスは生き延びることになる。さらにA型は数年から数10年単位で、突然別の亜型に取って代わることがある。これを不連続抗原変異(antigenic shift)または大変異という。これはいわばインフルエンザウイルスのフルモデルチェンジで、つまり「新型インフルエンザウイルスの登場」ということになる。人々は新に出現したインフルエンザウイルスに対する抗体はないため、感染は拡大し地球規模での大流行(パンデミック)となり、インフルエンザウイルスは息をふきかえしたようにさらに生き延びる。2009年新型インフルエンザ(パンデミック):1918年に始まったスペイン型インフルエンザ(A/H1N1)は39年間続き、1957年からはアジア型インフルエンザ(A/H2N2)が発生し、その流行は11年続いた。その後1968年に香港型インフルエンザ(A/H3N2) が現われ、ついで1977年ソ連型インフルエンザ (A/H1N1)が加わり、小変異を続けてきた。2009年北アメリカ固有のブタのインフルエンザA/H1N1(スペイン型由来と考えられる)に、北アメリカの鳥インフルエンザウイルス、ヒトのインフルエンザウイルス、ユーラシアのブタインフルエンザの遺伝子が北アメリカのブタ体内で集合したと考えられるインフルエンザウイルス感染者が検知され、「ブタ由来(swine lineage)インフルエンザ:A/H1N1 swl」と命名された。ウイルスの亜型はH1N1タイプなのでA/H1N1(ソ連型)が変化したもので「新型」とはいえないのではないかという考えもあったが、その遺伝子構造はこれまでのH1N1(ソ連型)とはかなり異なるものであったため、「新型」インフルエンザウイルス(novel influenza virus)とされた。現在WHOではウイルスはPandemic influenza A (H1N1) 2009 virus。疾病名は「Pandemic influenza (H1N1) 2009」と呼んでいる。国内での2010/2011インフルエンザシーズンは、A/H3N2(香港型)、A/H1N1 pdm 2009およびB型が混在した流行で、A/H1N1(ソ連型)は消失した。2011/12シーズンは、A/H3N2(香港型)、およびB型が混在した流行で、A/H1N1 pdm 2009 はほとんど見られていなかった。インフルエンザの疫学状況わが国のインフルエンザは、毎年11月下旬から12月上旬頃に発生が始まり、翌年の1~3月頃にその数が増加、4~5月にかけて減少していくというパターンであるが、流行の程度とピークの時期はその年によって異なる(図1)。2009年は、新型インフルエンザ(パンデミック2009)の登場によって、著しくそのパターンは異なっている。わが国におけるインフルエンザの状況は、以下のようなサーベイランスシステムによって行われており、その結果は国立感染症研究所感染症情報センターのホームページで見ることができる(国立感染症研究所感染症情報センター:インフルエンザ http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/index.html)1)インフルエンザ患者発生状況:インフルエンザは感染症法の第五類定点把握疾患に定められており、全国約5,000カ所のインフルエンザ定点医療機関(小児科約3,000、内科約2,000)より報告がなされている。報告のための基準は以下の通りであり、臨床診断に基づく「インフルエンザ様疾患(influenza like illness: ILI)の報告である。診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、以下の4つの基準を全て満たすもの1.突然の発症2.38℃を超える発熱3.上気道炎症状4.全身倦怠感等の全身症状定点は保健所に報告を行い、保健所は都道府県等の自治体に、自治体は国(厚生労働省)にその報告を伝達し、感染研情報センターがこれを集計・解析・還元している(図1)。図1インフルエンザ流行曲線全国5,000カ所のインフルエンザ定点医療機関からの報告http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/weeklygraph/01flu.html2)病原体(インフルエンザウイルス)サーベイランスインフルエンザ定点の約10%は検査定点として設定され、検体を各地方の衛生研究所(地研)などに送付する。地研ではウイルス分離や抗原分析を行う。分離ウイルスに関する詳細な分析については、各地研および国立感染症研究所ウイルス3部インフルエンザウイルス室で行われ、感染研情報センターがこれを集計、解析、還元している(図2)。国内で分離されたウイルスの薬剤耐性に関する情報も公開されている。図2週別インフルエンザウイルス分離・検出報告数http://www.nih.go.jp/niid/images/iasr/rapid/infl/2012_49w/sinin1_121213.gif3)感染症流行予測事業によるインフルエンザ免疫保有状況一般健康者より血液の提供を受け、地研でインフルエンザ抗体保有状況を測定し、それを感染研において全国データとして集計する。調査結果については、インフルエンザシーズン前に感染症情報センターホームページ等を通じ公表される。4)その他のインフルエンザサーベイランスシステム感染症発生動向調査を補い、インフルエンザ流行初期にその拡大やピークを把握することを目的として、1999年度よりインフルエンザ定点(5,000定点)のうち約1割を対象に、インターネットを利用した「インフルエンザによる患者数の迅速把握事業(毎日患者報告)」を実施している。また、有志の医師による「MLインフルエンザ流行前線情報データベース(ML-flu)」が行われているが、両者による流行曲線は非常に良く相関している。(MLインフルエンザ流行前線情報データベース :http://ml-flu.children.jp)インフルエンザ流行の社会へのインパクトの評価には超過死亡(インフルエンザ流行に関連して生じたであろう死亡)数を用いる。「インフルエンザ疾患関連死亡者数迅速把握」事業により、16都市が参加し、インフルエンザ・肺炎死亡の迅速把握も行われている。シーズン終了後の事後的解析に加え、シーズン中の対策に生かせるように、週単位の「インフルエンザ・肺炎死亡」による超過死亡数の迅速な把握に並行し、解析および情報還元が行われるようになっている。(http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/inf-rpd/index-rpd.html)」

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EPA/DHAはADHD様行動を改善する可能性あり?

 ノルウェー・オスロ大学のKine S Dervola氏らが行ったラット試験の結果、ADHDに対し、ω3(n-3系)多価不飽和脂肪酸(PUFA)のサプリメントを投与することにより、挙動や神経伝達物質代謝について、性特異的な変化をもたらすことが示された。先行研究において、n-3系PUFAサプリメントがADHD様行動を減じる可能性が示唆されていた。Behavioral and Brain Functions誌オンライン版2012年12月10日号の掲載報告。 本研究の目的は、ADHD動物モデルにおけるn-3系PUFA投与の影響を調べることであった。高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて、n-3系PUFA(EPAとDHA)強化飼料(n-6系 対 n-3系の割合1:2.7)を妊娠期間中、およびその産児に死亡するまで投与し続けた。SHRコントロール群とWistar Kyoto(WKY)ラットのコントロール群には、対照飼料(n-6系 対 n-3系の割合7:1)が与えられた。産児は生後25~50日の間、強化-依存的な注意力、衝動性、多動性および自発運動について検査を受けた。その後、55~60日時点で処分し、モノアミン、アミノ酸神経伝達物質に関して、高速液体クロマトグラフィーにて解析した。 主な結果は以下のとおり。・n-3系PUFA給餌により、オスのSHRでは強化-依存的な注意力の改善が認められたが、メスではみられなかった。・同一ラットでの新線条体の解析において、オスのSHRでは、ドパミンとセロトニン代謝率の有意な上昇が示されたが、メスのSHRでは、セロトニン分解代謝が上昇したことを除き、変化はみられなかった。・対照的に、オスとメスの両方のSHRで示されたのが、非強化の自発運動の低下と、グリシン値およびグルタミン代謝の性非依存的変化であった。・n-3系PUFAはADHDラットモデルにおいて、強化刺激行動において性特異的な変化をもたらし、非強化関連行動において性非依存的な変化をもたらすことが示された。それらは、シナプス前部線条体モノアミンとアミノ酸伝達シグナルとそれぞれ関連があった。・以上のことから、n-3系PUFAの摂取は、ADHD様行動(男性では強化誘発メカニズム、男女ともでは強化無反応メカニズム)をある程度改善する可能性が示された。関連医療ニュース ・うつ病予防に「脂肪酸」摂取が有効? ・統合失調症患者の脳組織喪失に関わる脂肪酸、薬剤間でも違いが ・抗てんかん薬の処方、小児神経科医はどう使っている?

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オキシトシン鼻腔内投与は、統合失調症患者の症状を改善

 統合失調症患者に対して、オキシトシンを投与することで症状改善につながるとの先行研究がある。しかし、それらは短期間の研究にとどまっており、統合失調症患者に対するオキシトシン投与について、3週間超のエビデンスは存在しなかった。イラン・テヘラン医科大学Roozbeh精神病院のAmirhossein Modabbernia氏らは、リスペリドンによる治療を受けている統合失調症患者にオキシトシン鼻腔内スプレーを8週間併用し、有効性と忍容性についてプラセボと比較検討した。その結果、オキシトシン鼻腔内投与により統合失調症患者の症状、なかでも陽性症状が著明に改善されることを報告した。CNS Drugs誌オンライン版2012年12月12日号の掲載報告。 本研究は、統合失調症患者におけるオキシトシン鼻腔内スプレーの有効性と忍容性を評価することを目的とした、8週間にわたる無作為化二重盲検プラセボ対照試験。DSM-IV-TRにて統合失調症と診断され、リスペリドン固定用量(5または6mg/日)の治療を少なくとも1ヵ月以上受けている患者40例(18~50歳男女)を対象とし、オキシトシン群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。オキシトシン鼻腔内スプレーは、最初の1週間は20 IU(5スプレー)を1日2回投与し、以降は40 IU(10スプレー)を1日2回、7週間投与した。ベースライン時、2、4、6、8週後に、陽性・陰性症状評価尺度(Positive and Negative Syndrome Scale:PANSS)により評価を行った。主要アウトカムは、治療終了時におけるPANSSスコアの2群間の差とした。主な結果は以下のとおり。・全患者がベースライン後1回以上の評価を受け、37例(オキシトシン群19例、プラセボ群18例)が試験を完了した。・反復測定分散分析によると、PANSS総スコア[F(2.291,87.065) = 22.124、p<0.001]および陽性スコア[F(1.285,48.825) = 11.655、p = 0.001]、陰性スコア[F(2.754,104.649) = 11.818、 p < 0.001]、総合精神病理[F(1.627,61.839) = 4.022、 p = 0.03]サブスケールについて、相互作用による有意な効果がみられた。・8週後までに、オキシトシン群はプラセボ群に比べ、PANSSサブスケールの陽性症状について著明かつ有意な改善を示した(Cohen's d=1.2、スコアの減少20%vs. 4%、p<0.001)。・オキシトシン群はプラセボ群に比べ、PANSSサブスケールの陰性症状(Cohen's d=1.4、スコアの減少7%vs. 2%、p<0.001)、総合精神病理(Cohen's d=0.8、スコアの減少8%vs. 2%、p=0.021)においても統計学的に有意な改善を示したが、臨床的にはその差が実感されなかった。・オキシトシン群はプラセボ群に比べ、PANSSの総スコア(Cohen's d=1.9、スコアの減少11%vs. 2%、p<0.001)において有意な改善を示した。・有害事象の発現状況は、2群間で同程度であった。・以上のことから、リスペリドン併用下のオキシトシン鼻腔内投与は、統合失調症患者のとくに陽性症状を、忍容性を保ちつつ有効に改善することが示された。・本パイロット試験で得られた興味深い知見は、より大規模な母集団を用いて再現する必要がある。関連医療ニュース ・統合失調症治療にニコチン作動薬が有効である理由とは? ・統合失調症患者の認知機能改善にフルボキサミンは有効か? ・統合失調症の遂行機能改善に有望!グルタミン酸を介した「L-カルノシン」

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中等度~重度のにきび、家族歴、BMI、食生活が影響?

 イタリアのAnna Di Landro氏らGISED Acne Study Groupは、にきびの原因には、遺伝的要因と環境的要因が関与している可能性があるとして、思春期および若年成人を対象に、それら要因と中等度~重度にきびリスクとの関係について調べた。その結果、家族歴とBMI、食事内容が中等度~重度にきびのリスクに影響を与えている可能性が示されたと報告した。Journal of the American Academy of Dermatology誌2012年12月号の掲載報告。 GISED(Gruppo Italiano Studi Epidemiologici in Dermatologia)は、中等度~重度のにきびの新規診断症例に関して、家族歴、個人の習慣、食事性因子、月経歴の影響を評価するため、イタリアの皮膚科外来診療所で症例対照研究を行った。 症例は、中等度~重度のにきびと新規診断された患者205例で、対照被験者は、にきび以外で受診した、にきびがない(あるいは、あっても軽症の)患者358例であった。 主な結果は以下のとおり。・中等度~重度のにきびは、一等親血縁者でのにきび既往歴と強い関連が認められた(オッズ比:3.41、95%CI:2.31~5.05)。・リスクは、BMIが低い人では低下し、女性よりも男性で顕著な影響が認められた。・喫煙による関連は、みられなかった。・牛乳を週に3ポーション以上消費する人では、消費量が多いほどリスクが上昇した(オッズ比:1.78、95%CI:1.22~2.59)。・その関連は、全乳よりもスキムミルクでより特徴的であった。・魚の消費は、保護作用と関連していた(オッズ比:0.68、95%CI:0.47~0.99)。・月経変数と、にきびリスクとの関連はみられなかった。・本試験は、皮膚科学的対照被験者の選択において、また対照群の軽症患者の組み込みで一部オーバーマッチングの可能性があった。・以上の結果から、家族歴、BMI、食生活は、中等度~重度にきびのリスクに影響する可能性があった。環境および食事要因による影響について、さらに調査を行う必要がある。

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統合失調症治療にニコチン作動薬が有効である理由とは?

 米国・Western New York Stem Cell Culture and Analysis CenterのM.K. Stachowiak氏らは、マウス試験の結果、FGF受容体シグナル伝達の変異が統合失調症に結びつく発達異常の中心的な役割を果たしており、統合失調症の治療についてニコチン作動薬が有効であることを示唆する知見を得た。Schizophrenia Research誌オンライン版2012年12月8日号の掲載報告。 統合失調症は、複数の神経システムの構造や結びつき、化学的作用を特徴とする神経発達障害であり、脳の発達障害は、成人期の初期に表れる臨床的な疾患症状よりずっと以前の妊娠期間中に確立されるとみられている。一方で、統合失調症には多数の遺伝子が関連しており、大半の患者に共通してみられる変異遺伝子の存在が認められていない。著者は、さまざまな変異遺伝子が統合失調症患者の脳でみられる複合的な一連の障害にどのように結びつくのかを検証した。 主な内容は以下のとおり。・著者は、さまざまな変異遺伝子からつくられるタンパク質が、共通の神経発達経路に収束し、複数の神経回路や神経伝達システムの発達に影響するのではないかと仮説を立てた。・そのような神経発達経路は、Integrative Nuclear FGFR1 Signaling(INFS)であった。・INFSには多様な神経性シグナル(直接的な遺伝子再プログラミングで、有糸分裂後に肝幹細胞や神経前駆細胞、未成熟な神経細胞の成長に直接働きかける)が集積される。・さらに、FGFR1とそのパートナータンパク質は、統合失調症と結びついた遺伝子が機能する複数の上位経路と結びつき、それらの遺伝子と直接的に影響し合う。・FGF受容体シグナル伝達の障害があるトランスジェニックマウスにより、複数の重要なヒト擬態統合失調症の特徴(神経発生的成因、出生時の解剖学的異常、行動症状の遅延発症、疾患の複数領域にわたる欠損、定型・非定型抗精神病薬とセロトニン拮抗薬およびニコチン受容体作動薬による症状の改善)が実証された。関連医療ニュース ・第一世代 vs 第二世代抗精神病薬、初回エピソード統合失調症患者に対するメタ解析 ・日本人女性の統合失調症発症に関連する遺伝子が明らかに ・統合失調症の遂行機能改善に有望!グルタミン酸を介した「L-カルノシン」

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双極性障害の再発予防に対し、認知療法は有効か?

 双極性障害患者は薬物療法を継続してもなお、再発するケースが少なくない。再発抑制を目指し、近年注目されているのがマインドフルネス認知療法(MBCT)である。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のT Perich氏らは、12ヵ月間のフォローアップを行ったランダム化比較試験により、双極性障害患者の治療におけるMBCTの有用性を検証した。Acta psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2012年12月9日号の報告。 対象はDSM-IVで双極性障害と診断された患者95例。通常療法+MBCT実施群48例と通常療法単独群47例に無作為に割り付けた。主要評価項目は、DSM-IVの大うつ病、軽躁、軽躁エピソードの再発までの期間、モントゴメリー/アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)、ヤング躁病評価尺度(YMRS)とした。副次的評価項目は再発回数、うつ病・不安ストレススケール(DASS)、特性不安尺度(STAI)とした。 主な結果は以下のとおり。・気分エピソードの最初の再発までの期間、12ヵ月間の再発合計回数は両群間で有意な差が認められなかった(ITT解析)。・MADRS、YMRSのスコアも両群間で有意な差は認められなかった。・STAIの不安状態スコアにおいては、両群間に有意な差が認められた。・DASSのアチーブメントサブスケールの治療反応時間に有意な差が認められた。・今回の試験では、MBCTは主要評価項目に対する有用性は認められなかったものの、双極性障害に併存する不安症状の軽減に対し有効である可能性が示唆された。関連医療ニュース ・アリピプラゾールが有用な双極性障害の患者像とは? ・うつ病の5人に1人が双極性障害、躁症状どう見つける? ・双極性I型障害におけるアリピプラゾールの有効性-AMAZE試験より-

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前立腺がんに対する術後放射線療法の長期結果:EORTC trial 22911/Lancet

 前立腺がんに対する根治的前立腺全摘術後の放射線療法により、10年後の生化学的無増悪生存が経過観察よりも改善したが、有害事象の発現率が高く、70歳以上では死亡率が有意に上昇したことが、フランス・A Michallon大学病院のMichel Bolla氏らが実施したEORTC trial 22911の長期追跡の結果から明らかとなった。前立腺がんは前立腺被膜を超えて進展したり、精嚢浸潤がみられる場合(pT3)は局所再発リスクが10~50%と報告されている。本試験の5年の追跡結果では、術後放射線療法により生化学的および臨床的な無増悪生存がいずれも有意に改善することが示されている。Lancet誌2012年12月8日号(オンライン版2012年10月19日号)掲載の報告。無作為化第III相試験の長期追跡結果 EORTC trial 22911は、未治療の前立腺がんに対する術後放射線療法の有用性を、経過観察(wait-and-see)との比較において検討した無作為化対照比較第III相試験。研究グループは、今回、5年追跡時の成果が10年後も維持されているかについて解析を行った。 対象は、75歳以下、cT0~3、全身状態(PS)0~1の前治療歴のない前立腺がん患者で、術後放射線療法を施行する群と経過観察群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。 放射線療法は根治的前立腺全摘術後16週以内に開始し、腫瘍床に5週間で総線量50Gyを25回分割照射した後、ブースト照射として1週間で10Gyを5回分割照射した。経過観察は、生化学的な病勢進行[2週間以上の間隔を空けた2回の検査で前立腺特異抗原(PSA)値が0.2μg/L以上上昇]が確認されるまで継続することとした。 主要評価項目は生化学的な無増悪生存のイベント発生率とした。臨床的無増悪生存は臨床検査および画像検査で評価した。70歳以上ではむしろ有害な可能性も 1992年11月~2001年12月までに欧州の37施設から1,005例が登録され、術後放射線治療群に502例(年齢中央値65歳、PS0 93.8%、短期的術前ホルモン療法10.0%、術前PSA中央値12.3μg/L)が、経過観察群には503例(同:65歳、94.0%、10.1%、12.5μg/L)が割り付けられた。追跡期間中央値は10.6年(2ヵ月~16.6年)だった。 術後放射線治療群の生化学的無増悪生存関連のイベント発生率は39.4%(198/502例)と、経過観察群の61.8%(311/503例)に比べ有意に良好であった[ハザード比(HR):0.49、95%信頼区間(CI):0.41~0.59、p<0.0001]。 晩発性の有害事象(全Grade)の10年累積発現率は、術後放射線治療群が70.8%(95%CI:66.6~75.0)と、経過観察群の59.7%(同:55.3~64.1)に比し有意に高かった(p=0.001)。 著者は、「中央値10.6年の追跡結果により、標準的な術後放射線療法は経過観察に比べ生化学的無増悪生存や局所コントロールを有意に改善し、5年追跡時の成果が10年後も維持されていたが、臨床的無増悪生存の改善効果は持続していなかった」と結論し、「探索的解析では、術後放射線療法により70歳未満および切除断端陽性例で臨床的無増悪生存が改善されたが、70歳以上の患者では死亡率が経過観察よりも有意に高く(p<0.0001)、むしろ有害な可能性が示唆された」と考察している。

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手術待機中のOA患者が心に描く期待はICFモデルと合致

 変形性膝関節症(OA)患者が心に描く疾患描写(mental representations)は、国際生活機能分類(International Classification of Functioning Disability and Health:ICF)の機能・障害・健康モデルで用いられる用語と整合性が取れており、ICFの3つの構成概念(障害度、活動度、社会参加)がOA患者にとって重要であることが明らかにされた。英国・アバディーン大学のBeth Pollard氏らが、両者の一致について検証した研究の結果、報告した。Disability and Rehabilitation誌オンライン版2012年11月21日号の掲載報告。 本研究は、OA患者が心に描く疾患描写とICFモデルとの整合性について調べることを目的とし、人工関節置換術を受けることになっているOA患者202例を対象に郵送アンケートにて行われた。 アンケートでは被験者に、人工関節置換術に期待していることを尋ね、心に描く疾患描写(心象)を測った。2人の専門家が、それらを判定して、主要なICFの構成概念[障害(I)、活動性の制限(A)、社会参加への制限(P)]の該当項目に分類した。 主な結果は以下のとおり。・2人の専門家による判定の一致度は高かった。また、各ICF構成概念に分類された被験者の心的表象数は同程度であった。・手術待機中の患者の心象と、主なICFモデルのバイオメディカルな路線とは一致していた(IからA、次いでPへなど)。・そのことは、OA患者は暗黙のうちに、バイオメディカルな障害発生モデルを適用していることを示唆した。そのモデルは、治療や介入が、障害から回復するためだけでなく、活動性の制限、さらには間接的に社会参加への制限に効果をもたらす可能性があるというものであった。・一方で、その方法は、ICFモデルの3つの構成概念の発生要因の関連を調べる新たな道筋を提供するものでもあった。

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検証!結婚できない男性の精神的健康状態

 中国は100人の女性あたり118人の男児を出産する、世界中で最も男児の出生が過剰な国であり、現在、生殖年齢に達する男性は2,000万人も過剰となっている。そのため、結婚できない男性が少なくない。これらかなりの数の結婚できない男性の精神的健康(well-being)における影響は不明である。Xudong Zhou氏らは、30~40歳の未婚男性についてうつ病の発症リスク、自尊心、攻撃性に関する検証を行った。Social psychiatry and psychiatric epidemiology誌オンライン版2012年12月12日号の報告。 男性比率の高い農村部(雲南省と貴州省)で、自己記入式アンケートを用いた横断的調査を行った。評価には、ベックのうつ病調査票、Rosenbergの自尊心尺度、Bryant-Smithの攻撃性アンケートを用いた。 主な結果は以下のとおり。・30~40歳の未婚男性1,059名、既婚男性1,066名が調査を完了した。・未婚男性は既婚男性と比較して、経済的に劣っており、教育水準が低かった。・年齢、教育、所得を調整した結果、未婚男性は既婚男性と比較して、低い自尊心のスコア、高い抑うつスコア、高い攻撃性スコアを示す傾向が有意に高く、自殺念慮や自殺願望を有する傾向が高かった(各々p

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慢性不眠症患者の中途覚醒の原因は?

 これまで、慢性不眠症患者の中途覚醒の原因調査はほとんど行われていなかった。この度、米国・Sleep and Human Health InstituteのBarry Krakow氏らが慢性不眠症患者を前向きに調査した結果、報告した。Sleep誌2012年12月1日号の掲載報告。 調査は、地域密着型の民間睡眠医療センターで、不眠症患者を対象に、中途覚醒の原因を主観的および客観的に、前向きに評価し行われた。対象は、2008年4月~2010年2月の間に登録された慢性不眠症患者(不眠症疾患診断基準を満たす)20例、これまで睡眠専門医や睡眠検査の受診歴がなく、睡眠を障害する典型的な呼吸器症状もみられなかった患者である。被験者の不眠症、眠気、機能障害、不安、うつ症状、QOLについて規定スケールで評価し、覚醒に関する主観的理由をインタビューで評価するとともに、覚醒や不眠の誘発について客観的に評価した。 主な内容は以下のとおり。・主観的および客観的データは、臨床的に認められる不眠症の存在(主に睡眠維持障害)を示した。・自己申告による覚醒理由のうち、最も頻度が高かったのは、「原因不明(50%)」であり、次いで「悪夢(45%)」「夜間頻尿(35%)」「寝室が騒がしい(20%)」「疼痛(15%)」であった。また、呼吸器症状が原因であると回答した患者はいなかった。・客観的評価では、全サンプルから531件の覚醒エピソードが観察され、478件(90%)において睡眠時の呼吸イベント(無呼吸、低呼吸、呼吸努力に関連したイベント)が認められた。その他の覚醒因子は下肢の痙攣(7例)、特発性(14例)、ラボ誘発性(32例)であった。・5分間以上の覚醒(不眠エピソードの傾向といえる)は30例で、いずれも呼吸イベントに続いてみられた。関連医療ニュース ・睡眠薬、長期使用でも効果は持続 ・夢遊病にビペリデンは有望!? ・睡眠時間が短いと脂質異常症のリスク上昇―日本の男性労働者を対象とした研究―

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ヒスタミンは皮膚バリア機能を障害する? 顆粒層や角質層が50%減少

 ヒスタミンは、表皮ケラチノサイト分化を抑制し、皮膚バリア機能を障害するという新たなメカニズムが、ドイツ・ハノーバー医科大学のM. Gschwandtner氏らが行ったヒト皮膚モデルを用いた検討により示唆された。ケラチノサイト分化や皮膚バリアの障害は、アトピー性皮膚炎のような炎症性皮膚疾患の重大な特徴である。研究グループは、マスト細胞とその主要なメディエーターであるヒスタミンが炎症を起こした皮膚細胞に豊富に認められることから、それらが病因に関与している可能性について検討した。Allergy誌2013年1月号(オンライン版2012年11月15日号)の掲載報告。 研究グループは、ヒトの主要ケラチノサイトを、ヒスタミンの有無別による分化の促進状態下で、またヒスタミン受容体作動薬と拮抗薬による分化の促進状態下で培養した。そのうえで、分化に関連する遺伝子および表皮接合タンパク質の発現を、リアルタイムPCR、ウエスタンブロット、免疫蛍光検査ラベリングにより定量化した。 ヒトの皮膚モデルのバリア機能については、ビオチンをトレーサー分子として調べた。 主な結果は以下のとおり。・ヒトケラチノサイト培養組織および器官型皮膚モデルへのヒスタミン追加により、分化関連タンパク質ケラチン1/10、フィラグリン、ロリクリンの発現が、80~95%低下した。・さらに、皮膚モデルへのヒスタミンの追加により、50%の顆粒層の減少、および表皮と角質層の希薄化がみられた。・ヒスタミン受容体H1R作動薬2-pyridylethylamineのケラチノサイト分化の抑制は、ヒスタミンと匹敵するものであった。・同様に、ヒスタミン受容体H1R拮抗薬セチリジンは、ヒスタミンの作用を実質的に排除した。・タイトジャンクションタンパク質(TJP)のzona occludens-1、occludin、claudin-1、claudin-4)、およびデスモソーム結合タンパク質のcorneodesmosin、desmoglein-1はともに、ヒスタミンによって減少した。・トレーサー分子のビオチンは、ヒスタミンの発現が大きかった培養皮膚バリアのタイトジャンクションを容易に通過した。しかし、無処置のコントロール部分では完全に遮断された。

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マンモ検診は、過剰診断を増やしただけ?/NEJM

 米国では1980年代からマンモグラフィによるスクリーニングが始まっており、その後の実施率増加とともに早期乳がん罹患率は大幅に増加したが、一方で進行期乳がん罹患率の減少は、ごくわずかであったことが報告された。また、マンモグラフィにより検出された早期乳がんの中には、その後臨床的症状を発症することがなかった、いわゆる過剰診断も多く、その数は過去30年間で130万人に上ると推定されたという。米国・Oregon Health and Science UniversityのArchie Bleyer氏らの調べで明らかになったもので、NEJM誌11月22日号で発表した。30年間で初期乳がん罹患率は10万人中122人増加 研究グループは、マンモグラフィ実施の乳がん発生率への影響を調べるため、サーベイランスや疫学調査などを元に、1976~2008年に40歳以上で乳がんの診断を受けた人について、早期乳がん(非浸潤性乳管がんと限局性がん)と進行期乳がん(局所性と遠隔転移)の罹患率を算出した。 その結果、早期乳がん罹患率は、1976年の女性10万人中112人から同234人へと、大幅に増大した(絶対増加幅:女性10万人中122人)。なかでも、1980年代から90年代初めにかけて、マンモグラフィによるスクリーニング実施率が増加するに伴い、早期乳がん罹患率も増加した。 一方で、進行期乳がんの罹患率は、女性10万人中102人から同94人へと、同期間で約8%の減少に留まった(絶対減少幅:女性10万人中8人)。乳がんの過剰診断、過去30年間で130万人 潜在的な疾病負担が変化していないと仮定すると、スクリーニングによりみつかるようになった早期乳がんのうち進行がんに進展したものの割合は、122人中8人に留まると考えられた。 ホルモン補充療法に関連した一時的な過剰罹患率などを補正した後、スクリーニングで検出されながらも、その後臨床的症状を発症しなかったであろうと考えられる、いわゆる乳がんの過剰診断を受けた人の数は、米国過去30年間で130万人に上ると見積もられた。また、2008年には、米国で乳がんの過剰診断を受けた女性は7万人で、乳がんの診断を受けた人の31%に上った。 これらの結果を踏まえて著者は「マンモグラフィ検診で早期乳がんの発見は大幅に増加したにもかかわらず、進行がんの受診率はわずかしか低下しないというアンバランスな状況が示された。どの状態の女性が影響を受けたのかは明らかではないが、新たに診断された乳がんのほぼ3分の1で大幅な過剰診断があり、マンモグラフィ検診の乳がん死亡率への影響はあったとしてもわずかであることが示唆された」と結論している。

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