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3901.

経口抗凝固療法の自己モニタリング、血栓塞栓イベントを低減

患者自身が検査や用量の調整を行う自己モニタリングによる経口抗凝固療法は、本療法が適応となる全年齢層の患者において安全な治療選択肢であることが、英国・オックスフォード大学のCarl Heneghan氏らの検討で示された。ビタミンK拮抗薬による経口抗凝固療法を受ける患者は増加し続けているが、治療域が狭いため目標とする国際標準化比(INR)を維持するには頻回の検査や適切な用量の調整などを要するという問題がある。自己モニタリングは、その有効性を示す優れたエビデンスがあるものの、臨床導入には相反する見解がみられるという。Lancet誌2012年1月28日号(オンライン版2011年12月1日号)掲載の報告。自己モニタリングの意義を検証するメタ解析研究グループは、経口抗凝固薬の患者自身による自己モニタリング(自己検査[検査は患者が行い用量は医師が決める]または自己管理[検査、用量調整とも患者が行う])の意義を検証するために、自己モニタリングと医師によるモニタリングの有効性を比較した無作為化試験のメタ解析を行った。Ovid versions of Embase(1980~2009年)とMedline(1966~2009年)を検索し、Cochrane Central Register of Controlled Trialsなどで検索結果を調整した。UK National Research Register and Trials Centralなどで未出版の試験も検索した。抽出された全試験の著者と連絡を取り、死亡までの期間、初回大出血、初回血栓塞栓イベントに関する個々の患者データの提供を求めた。機械弁置換や心房細動の患者についても解析した。年齢別、対照群のケアのタイプ(抗凝固療法専門施設とプライマリ・ケア施設)、自己検査と自己管理、性別について、事前に規定されたサブグループ解析を行った。変量効果モデルで統合ハザード比(HR)を算出した。 血栓塞栓イベントが半減、特に55歳未満と機械弁置換患者で高い効果1992~2006年に患者登録がなされ、2000~2010年に発表された11試験(6,417例、1万2,800人・年)が解析の対象となった。全体の平均年齢は65.0歳(17~94歳)、女性が22%、心房細動患者は53%、機械弁置換患者は35.0%であった。血栓塞栓イベントは、医師によるモニタリング群に比べ自己モニタリング群で有意に減少した(HR:0.51、95%信頼区間[CI]:0.31~0.85)が、大出血(同:0.88、0.74~1.06)と死亡率(同:0.82、0.62~1.09)は両群間に差はみられなかった。特に、55歳未満の患者(HR:0.33、95%CI:0.17~0.66)と機械弁置換患者(同:0.52、0.35~0.77)で血栓塞栓イベントの抑制効果が高かった。85歳以上の患者(99例)では、自己モニタリングによる合併症の増加はみられず、死亡率は有意に低下した(同:0.44、0.20~0.98)。著者は、「経口抗凝固療法の自己検査および自己管理は、本療法が適応となる全年齢層の患者において安全な治療選択肢である」と結論し、「自己管理の選択肢は、適切な医療支援による保護の元で患者に提供すべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

3902.

重大な食品汚染物質PFCは、子どものワクチン接種効果を半減

重大な食品汚染物質であることが明らかとなっているペルフルオロ化合物(PFC)は、子どもの免疫力を低下することが明らかとなった。米国・ハーバード大学公衆衛生院のPhilippe Grandjean氏らが、約600人の子どもの血中PFC値とワクチン効果との関連について行った、前向きコホート試験の結果明らかにしたもので、5歳時で同値が高い子どもは、7歳時のジフテリアや破傷風抗体レベルの低下するなどが認められたという。PFCは防水・防虫剤として食品包装材などに広く使われている。これまでの研究で、免疫応答が低下した齧歯目モデルの血中濃度と同レベルの血中濃度が米国人においても認められるが、PFC曝露の健康被害への影響については十分には解明されていなかった。JAMA誌2012年1月25日号掲載報告より。出生前後の血中PFC値と、5歳、7歳時の血中ワクチン抗体レベルとの関連を分析研究グループは、PFC曝露が幼児期のワクチン接種に対する免疫応答に影響するかを調べるため、1999~2001年にかけて、フェロー諸島で生まれた単胎児656例について追跡調査を行った。被験児の母親について妊娠32週時点で、および出生した被験児が5歳時に血中PFC値の測定をそれぞれ行った。被験児は全員、ジフテリアや破傷風などの予防接種を受けており、その血中ワクチン抗体レベルを5歳時、7歳時に調べ、PFC値との関連を分析した。被験児のうち587例が2008年まで追跡された。母親の血中PFOSレベルが2倍高い群では、5歳時のジフテリア抗体濃度は39%減少結果、PFCのうち最も血中レベルが高かったのは、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とペルフルオロオクタン酸(PFOA)だった。この結果は、以前に報告された弁国での研究結果と同じだった。母親のPFCレベルと5歳児の抗体レベルとの逆相関が最も強かったのは、PFOSレベルで、母親の同値が2倍増大すると、子どもの5歳時のジフテリア抗体レベルは、39%減少(95%信頼区間:-55~-17)した。また、子どもの5歳時の主なPFCレベルが2倍増大すると、7歳時のジフテリア・破傷風の抗体レベルは49%(同:-67~-23)減少した。5歳時点で血中PFOS濃度と血中PFOA濃度が2倍増大すると、7歳時の抗体レベルが臨床的防御値である0.1 IU/mLを下回るオッズ比は、ジフテリアについては2.38(同:0.89~6.35)、破傷風については4.20(同:1.54~11.44)だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

3903.

前立腺生検、有害事象が再生検への消極性を招く

前立腺生検の忍容性は全般に良好だが、一部では疼痛や感染などの有害事象による重大な症状をもたらし、再生検に対する消極性や、プライマリ・ケアにおける医療資源の使用を促進することが、英国Sheffield大学のDerek J Rosario氏らが行ったProBE試験で明らかとなった。前立腺がんの診断では前立腺生検が重要だが、被験者の受容性(acceptability)や有害事象の影響、その結果としての医療資源の使用状況をプロスペクティブに検討した試験はほとんどないという。BMJ誌2012年1月21日号(オンライン版2012年1月9日号)掲載の報告。無作為化試験に組み込まれた前向きコホート研究ProBE(Prostate Biopsy Effects)試験は、進行中の多施設共同無作為化対照比較試験であるProtecT(Prostate Testing for Cancer and Treatment)試験の登録患者を対象に行われたプロスペクティブなコホート研究。経直腸的超音波ガイド下生検(TRUS-Bx)から35日以内に発現した有害事象の影響の評価を目的とした。ProtecT試験では、50~69歳の地域住民男性22万7,000人が前立腺特異抗原(PSA)検査のカウンセリングを受けるよう招聘された。そのうち11万1,148人がPSA検査を受け、PSA値 3~20ng/mLの1万297人がTRUS-Bxを推奨された。このうち、2006年2月~2008年5月までに8施設で抗菌薬併用下にTRUS-Bxを受けた1,753人(平均年齢:62.1歳、平均PSA値:5.4ng/mL)がProBE試験の適格例とされ、試験参加に同意した1,147人(65%、平均年齢:62.1歳、平均PSA値:4.2ng/mL)が登録された。生検時、7日目、35日目に、質問票を用いて疼痛、感染、出血の頻度と関連症状の影響を評価した。生検直後と7日目に再生検に対する患者の受容性を調査し、35日までの医療資源の使用状況を評価した。有害事象関連症状が大きな問題になることは少ない生検後35日までに疼痛を訴えたのは43.6%、発熱の訴えは17.5%、血尿が65.8%、血便が36.8%、血性精液は92.6%であった。これらの症状が中等度~重度の問題となったと答えた患者は少なく、疼痛が7.3%、発熱は5.5%、血尿は6.2%、血便は2.5%、血性精液は26.6%であった。生検直後に、中等度~重度の問題が生じた場合は再生検を考慮すると答えた患者は10.9%で、7日後には19.6%に増加した。再生検に対する消極的な姿勢は、初回生検時の好ましくない経験、特に生検時疼痛(p<0.001)、感染関連症状(p<0.001)、出血(p<0.001)と有意な関連がみられ、明らかな施設間差が認められた(p<0.001)。10.4%が医療施設(通常は担当GP)を受診しており、最も頻度が高かったのは感染関連症状であった。有害事象の重症度は再生検に対する消極的な姿勢と有意な関連を示した(p<0.001)。著者は、「前立腺生検は全般に良好な忍容性を示したが、一部では有害事象による重大な症状をもたらし、再生検への受容性やプライマリ・ケアにおける医療資源の使用に影響を及ぼした」と結論し、「有害事象プロフィールの施設間差は、局所麻酔薬や抗菌薬をより効果的に使用すれば患者のアウトカムが改善され、医療資源の使用が抑制される可能性を示唆する」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

3904.

転移性乳がんに対する第一選択治療としてpertuzumab+トラスツズマブ+ドセタキセル併用療法

HER2陽性転移性乳がんに対する第一選択治療として、pertuzumab+トラスツズマブ+ドセタキセルの併用療法は、トラスツズマブ+ドセタキセルと比較して、心毒性作用の増加を伴うことなく有意に無増悪生存期間を延長したことが、米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのJose Baselga氏らによる第3相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「CLEOPATRA」の結果、報告された。pertuzumabは、トラスツズマブと相補的な作用機序を持つ抗HER2ヒト化モノクローナル抗体で、第2相試験で、両剤での併用療法が有望な活性作用と忍容可能な安全性プロファイルを示すことが報告されていた。NEJM誌2012年1月12日号(オンライン版2011年12月7日号)掲載報告より。pertuzumab+トラスツズマブ+ドセタキセル対プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルCLEOPATRA(Clinical Evaluation of Pertuzumab and Trastuzumab)試験は、2008年2月~2010年7月にかけて25ヵ国204施設から登録されたHER2陽性転移性乳がん患者808例を対象に行われた。pertuzumab+トラスツズマブ+ドセタキセル(pertuzumab群、402例)またはプラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセル(対照群、406例)のいずれかを第一選択治療となるよう被験者を無作為に割り付け、疾患増悪または有効的に管理できない毒性作用が発現するまで投与を継続した。主要エンドポイントは、独立に評価された無増悪生存期間とした。副次エンドポイントは、全生存期間、研究者が評価した無増悪生存、客観的奏効率、安全性とした。無増悪生存期間、プラセボ群12.4ヵ月に対しpertuzumab群18.5ヵ月に延長結果、無増悪生存期間の中央値は、対照群12.4ヵ月に対して、pertuzumab群は18.5ヵ月だった(増悪または死亡のハザード比:0.62、95%信頼区間:0.51~0.75、P<0.001)。全生存期間の中間解析の結果、pertuzumab+トラスツズマブ+ドセタキセルの優越性が強い傾向が示された。安全性プロファイルは全般的に両群で同程度であり、左室収縮期の機能障害の増加は認められなかった。また、グレード3以上の発熱性好中球減少症と下痢の発現率は、対照群よりpertuzumab群で高かった。(朝田哲明:医療ライター)

3905.

治験報告、最も質が高いのは治験総括報告書

治験報告の質について、文書タイプ[治験レジストリ報告書(registry report)、治験総括報告書(clinical study report)、学術誌投稿論文]の違いを比較した結果、治験総括報告書が最も質が高いことが明らかにされた。ドイツ・Quality and Efficiency in Health Care研究所のBeate Wieseler氏らが後ろ向き解析の結果、報告した。レジストリ報告書と投稿論文については相互に弱い部分が異なり、レジストリ報告書は、アウトカムは十分報告されていたが方法論の報告は乏しく、学術誌はその反対であったという。BMJ誌2012年1月7日号(オンライン版2012年1月3日号)掲載報告より。治験報告内容の質を文書タイプの違いで比較Wieseler氏らは、治験報告の質について、実施された治験を評価するのに十分な情報が報告されているかを、文書タイプの違いで比較する検討を行った。ドイツ・Quality and Efficiency in Health Care研究所が行っている16の創薬医療技術評価から、2006年~2011年2月の間の主要研究と、関連している文書を収集した。それら各文書の研究報告と有効性報告の質について、方法論に関して6項目、アウトカムに関して6項目で評価を行い、「報告が完全である」と「報告が不十分」の2つに分けた。文書タイプごとに、方法論とアウトカムの報告が完全であった文書の割合を、項目ごとでおよび全体的に算出して、見いだされた所見を比較した。レジストリ報告書と投稿論文は、質の優劣項目が相互に逆転268の研究が検索され、解析に有効であったのは、投稿論文192(72%)、治験総括報告書101(38%)、レジストリ報告書78(29%)だった。結果、質が最も高かったのは治験総括報告書で、方法論およびアウトカムの全項目の約90%(1,086/1,212)について「情報が完全である」と評価された。レジストリ報告書は、アウトカム項目[全体の330/468(71%)]のほうが方法論項目[同147/468(31%)]より「情報が完全である」と評価された割合が高かった。投稿論文でも同様の傾向が認められた[594/1,152(52%)vs. 458/1,152(40%)]。マッチドペア分析の結果では、レジストリ報告書の質は、方法論およびアウトカムの項目全体で、治験総括報告書よりも劣っていた(各症例P<0.001)。一方でレジストリ報告書は、投稿論文と比べて、方法論項目全体では劣っていたが(P<0.001)、アウトカム項目全体では優れていた(P=0.005)。これら所見を踏まえてWieseler氏は最後に、「報告書を改善するには、結果登録の基準順守を世界的に義務化させる必要がある」とまとめている。

3906.

プライマリ・ケア保健師の導入が非伝染性疾患の管理に有効

訓練を受けた地域保健師が、確立されたガイドラインに基づいて行うイランのプライマリ・ケア・システム(「Behvarzシステム」と呼ばれる)は、非伝染性疾患の予防や管理に有効なことが、イラン・テヘラン医科大学のFarshad Farzadfar氏らの調査で示された。イランなどの中所得国では、非伝染性疾患やそのリスク因子が疾病負担の主な要因となっている。非伝染性疾患やそのリスク因子の地域住民レベルにおけるマネジメントが、プライマリ・ケア・システムによって可能か否かに関するエビデンスはほとんどないという。Lancet誌2012年1月7日号(オンライン版2011年12月9日号)掲載の報告。Behvarzシステムの効果と地域保健師の数との関連を検討する観察試験研究グループは、イラン農村部の糖尿病および高血圧の管理におけるプライマリ・ケア・システム(Behvarzシステム)の効果を評価し、地域保健師の数との関連について検討する観察試験を行った。2005年非伝染性疾患サーベイランス調査(NCDSS)から、空腹時血糖(FPG)、収縮期血圧(SBP)、BMI、薬物の使用、社会人口学的変数のデータを得た。Behvarzの保健師数のデータは、2006年Population and Housing Censusおよび2005年Outpatient Care Centre Mapping Surveyから収集した。FPG、SBP、FPGとSBPの関連、Behvarzの保健師数を2つの統計学的手法を用いて解析した。保健師プログラムの数や範囲を拡張すべきNCDSSから25歳以上の6万5,619人(農村部地域:1万1,686人)のデータが得られた。このうちSBPのデータが6万4,694人(同:1万1,521人)から、FPGのデータは5万202人(同:9,337人)から得られた。糖尿病患者の39.2%、高血圧患者の35.7%が治療を受け、男性よりも女性で、農村部よりも都市部で受療率が高かった。治療により、平均FPGは農村部で1.34mmol/L低下し、都市部では0.21mmol/L低下した。治療を受けた都市部の高血圧患者は、治療を受けなかった患者に比べSBPが3.8mmHg低下した。成人1,000人当たりのBehvarz保健師が1人増えるごとに、地区平均でFPGが0.09mmol/L低下し(p=0.02)、SBPは0.53mmHg低下した(p=0.28)。著者は、「訓練を受けた地域保健師が、確立されたガイドラインに基づいて行うプライマリ・ケア・システムは、非伝染性疾患の予防や管理に有効である」と結論し、「イランのプライマリ・ケア・システムは、人員の少ない地域の診療能を改善するために、保健師によるプログラムの数や対象とする範囲を拡張すべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

3907.

遅延臍帯クランプにより新生児の鉄欠乏リスクが改善

遅延臍帯クランプは、早期臍帯クランプに比べ生後4ヵ月における鉄欠乏の発生を改善し、新生児貧血を抑制することが、スウェーデン・ホランド病院(ハルムスタード市)のOla Andersson氏らの検討で示された。出生時の臍帯クランプを2~3分遅らせて行うことで、胎盤から新生児への血流が増加する。鉄欠乏性貧血の発生頻度が高い国では、遅延臍帯クランプによって新生児の生後数ヵ月間の鉄の状態が改善することが示されているが、新生児黄疸や新生児心肺障害リスクの増大が示唆され、貧血には至らなくとも鉄の欠乏は幼児の発育不全を引き起こすことが知られている。BMJ誌2011年12月17日号(オンライン版2011年11月15日号)掲載の報告。遅延臍帯クランプの鉄の状態への効果を検討する無作為化試験研究グループは、ヨーロッパにおける生後4ヵ月児の鉄の状態に及ぼす遅延臍帯クランプの効果を、早期臍帯クランプと比較する無作為化対照比較試験を行った。対象は、2008年4月~2009年9月までにホランド病院において低リスク妊娠で満期出生した新生児であった。これらの幼児が、出生から180秒以上経過後に行う遅延臍帯クランプ群あるいは10秒以内に行う早期臍帯クランプ群に1対1の割合で無作為に割り付けられ、4ヵ月のフォローアップが行われた。主要評価項目は生後4ヵ月におけるヘモグロビンおよび鉄の状態(血清フェリチン値に基づく)、副次的評価項目は新生児貧血、早期呼吸器症状、赤血球増加症、光線療法の適応などであった。鉄欠乏:0.6% vs. 5.7%、新生児貧血:1.2% vs. 6.3%400人の新生児が登録され、両群に200人ずつが割り付けられた。生後4ヵ月の時点で、両群間にヘモグロビン濃度の有意な差はなかったが、遅延臍帯クランプ群で平均フェリチン濃度が45%(95%信頼区間:23~71%)高く(117μg/L vs. 81μg/L、p<0.001)、鉄欠乏の発生率は有意に低かった[0.6%(1人)vs. 5.7%(10人)、p<0.01、相対リスク低下:0.90]。生後2日における新生児貧血の発生率は遅延臍帯クランプ群で有意に低かった[1.2%(2人)vs. 6.3%(10人)]、p=0.02、相対リスク低下:0.80)。早期呼吸器症状、赤血球増加症、光線療法を要する高ビリルビン血症の発生率は両群間に有意な差はなかった。著者は、「遅延臍帯クランプは、早期臍帯クランプに比べ生後4ヵ月における鉄の状態および鉄欠乏の発生を改善し、有害事象を増加させることなく新生児貧血の発生を抑制した」と結論し、「貧血には至らなくとも、新生児の鉄欠乏は発育不全を引き起こすため、遅延臍帯クランプはヨーロッパのような鉄欠乏性貧血の発生率が相対的に低い地域でも、満期出生幼児にベネフィットをもたらすと考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

3908.

影響力のある医学雑誌の名誉著者とゴースト著者の出現率は21%

JAMA(米国医師会雑誌)サーベイ調査専門家のJoseph S Wislar氏らが2008年刊行の主要な医学専門誌6誌の掲載論文について調査した結果、21%で名誉著者およびゴースト著者の存在が認められたことを報告した。名誉著者、ゴースト著者の存在、関連した透明性やアカウンタビリティの欠如は、サイエンス誌、研究者、教育研究機関にとって大きな課題となっている。本論はWislar氏らが、1996年当時と現状とを比較することを目的に行った調査の結果で、BMJ誌2011年12月10日号(オンライン版2011年10月25日号)に掲載された。ウェブアンケートで国際的な横断調査を実施Wislar氏らは、2008年に出版された主要な総合医学専門誌6誌における名誉著者とゴースト著者の出現率を調べ、これを1996年に出版された論文の著者について報告された出現率と比較するため、ウェブアンケートによる国際的な横断調査を行った。評価の対象となったのは、2008年刊行の総合医学専門誌6誌(Annals of Internal Medicine、JAMA、Lancet、Nature Medicine、New England Journal of Medicine、PLoS Medicine)に掲載された研究論文(research article)、総説(review article)、エディトリアル/オピニオン論文(editorial/opinion article)の計896本の責任著者(corresponding author)。彼らに対し30項目にわたるアンケートを行い、その回答にみられたICMJE(International Committee of Medical Journal Editors)オーサーシップ基準へのコンプライアンスの度合いを主要評価項目とした。ゴーストは減ったが名誉著者は相変わらずアンケートに回答したのは896人中630人(70.3%)だった。結果、名誉著者、ゴースト著者、あるいは両方が認められた論文は21.0%(95%信頼区間:18.0~24.3%)で、1996年に報告された29.2%からは減少していた(P=0.004)。しかし、名誉著者に関する545件の回答から、96論文(17.6%、95%信頼区間:14.6~21.0)に名誉著者が含まれていることが明らかとなり(雑誌によって12.2~29.3%の変動)、この割合は1996年の調査時(19.3%)と比べ有意な変化は認められなかった(P=0.439)。一方でゴースト著者に関する622件の回答からは、49論文(7.9%、同:6.0~10.3)にゴースト著者が存在し(雑誌によって2.1~11.0%の変動)、1996年の調査時(11.5%)と比べ有意に低下していたことが明らかとなった(P=0.023)。名誉著者の出現率は、オリジナル研究報告で25.0%、レビュー15.0%、エディトリアル11.2%だった。一方で、ゴースト著者の出現率は11.9%、6.0%、5.3%だった。Wislar氏はこれら結果を踏まえ、「今回の結果は、オーサーシップの信頼性、アカウンタビリティ、透明性を促進するため、またサイエンスパブリケーションの健全性を維持するために、サイエンス雑誌、個々の著者、学術研究機関によるさらなる努力が欠かせないことを示唆するものである」と結論している。

3909.

腎細胞がんに対するセカンドライン治療の第III相試験、axitinib対ソラフェニブ

新規の分子標的薬であるaxitinibは、進行腎細胞がんに対するセカンドライン治療の標準的治療薬であるソラフェニブに比べ、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、新たな選択肢となる可能性があることが、米国・Cleveland Clinic Taussig Cancer InstituteのBrian I Rini氏らが行ったAXIS試験で示された。毎年、世界で約17万人が腎細胞がんと診断され、7万2,000人が死亡している。多くが切除不能な進行病変として発見され、局所病変の多くは再発し、化学療法薬やサイトカイン製剤に抵抗性を示す頻度も高い。進行腎細胞がんの治療は分子標的薬の登場によって激変したが、現在まで分子標的薬同士の効果を比較した第III相試験の報告はされていなかった。Lancet誌2011年12月3日号(オンライン版2011年11月4日号)掲載の報告。2つの分子標的薬を直接比較する無作為化第III相試験AXIS試験の研究グループは、第2世代の選択的血管内皮細胞増殖因子(VEGF)受容体阻害薬であるaxitinibと、欧米で転移性腎細胞がんのセカンドライン治療として承認されているVEGF受容体阻害薬ソラフェニブの有用性を比較する無作為化第III相試験を行った。22ヵ国175施設から、ファーストライン治療としてスニチニブ、ベバシズマブ+インターフェロンα、テムシロリムス、サイトカイン製剤を用いた治療を行っても病勢が進行した18歳以上の腎細胞がん患者が登録された。これらの患者が、axitinib(5mg、1日2回)あるいはソラフェニブ(400mg、1日2回)を経口投与する群に無作為に割り付けられた。axitinibは、高血圧やグレード2以上の有害反応が発現しなければ7mg、10mgへと増量してもよいこととした。患者および担当医には治療薬はマスクされなかった。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)であり、マスクされた独立の画像審査員によって判定され、intention-to-treat解析が行われた。PFS中央値が2ヵ月延長723例が登録され、axitinib群に361例、ソラフェニブ群には362例が割り付けられた。PFS中央値はaxitinib群が6.7ヵ月と、ソラフェニブ群の4.7ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比:0.665、95%信頼区間:0.554~0.812、p<0.0001)。有害事象による治療中止は、axitinib群で4%(14/359例)に、ソラフェニブ群は8%(29/355例)に認められた。最も高頻度にみられた有害事象は、axitinib群が下痢、高血圧、疲労感で、ソラフェニブ群は下痢、手掌・足底発赤知覚不全症候群、脱毛であった。著者は、「axitinibは、ソラフェニブに比べPFSを有意に延長したことから、進行腎細胞がんのセカンドライン治療の選択肢となる可能性がある」と結論し、「現時点では全生存期間(OS)のデータは不十分なため、さらなる追跡を行う予定である」としている。(菅野守:医学ライター)

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2型糖尿病患者への強化血糖コントロール、全死因死亡の低下を証明できず

2型糖尿病患者への強化血糖コントロールは、従来血糖コントロールと比べて、全死因死亡を低下するとは証明できなかったことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のBianca Hemmingsen氏らが検討した、システマティックレビューによる無作為化試験のメタ解析および系列分析の結果、報告された。心血管死亡、非致死的心筋梗塞、微小血管合併症の複合、網膜症についても、10%リスク減少を証明、論破するだけのデータを示すことはできなかった。一方で、強化血糖コントロールは、重度低血糖を30%増大することが実証されたという。BMJ誌2011年12月3日号(オンライン版2011年11月24日号)掲載報告より。14無作為化試験・2万8,614例のデータをメタ解析と系列分析でレビューHemmingsen氏らは、2010年12月までにアップされたCochrane Library、Medline、Embase、Science Citation Index Expanded、LILACS、CINAHLの自動探索から、また参照リストと記要の手動探索からと、著者、製薬会社、FDAからの直接入手によって、2型糖尿病患者に対する強化血糖コントロールと従来血糖コントロールを比較した無作為化試験データを収集した。対象とした試験は、言語、公表・未公表、事前特定アウトカムの有無を問わず収集され、14の無作為化試験、被験者2万8,614例(強化血糖コントロール群:1万5,269例、従来血糖コントロール群:1万3,345例)のデータが分析対象に同定された。2人の独立したレビュワーによって、研究方法、介入、結果、バイアスリスク、有害事象に関連するデータが抽出され、固定およびランダム効果モデルを用いて、95%信頼区間を算出したリスク比を推定算出して評価が行われた。系列分析で重度低血糖の30%リスク増大は支持される結果、強化血糖コントロールの全死因死亡の相対リスクに対する有意な効果(12試験2万8,359例対象で検討)は認められなかった(リスク比:1.02、95%信頼区間:0.91~1.13、P=0.74)。また、心血管死に対する効果(12試験2万8,359例対象)も有意ではなかった(同:1.11、0.92~1.35、P=0.27)。系列分析による、全死因死亡率の相対リスク10%減少は証明できず、心血管死亡に関してはデータ不十分であることが示された。 非致死的心筋梗塞についてはリスク減少の可能性は示されたが(同:0.85、0.76~0.95、P=0.004、8試験2万8,111例対象)、系列分析では証明できなかった。同様に、微小血管合併症の複合(同:0.88、0.79~0.97、P=0.01、3試験2万5,600例対象)、網膜症(同:0.80、0.67~0.94、P=0.009、7試験1万793例対象)もリスク減少は示されたが、系列分析では十分なエビデンスには達しないことが示された。腎障害リスクへの効果は、統計的に有意ではなかった(同:0.83、0.64~1.06、P=0.13、8試験2万7,769例対象)。一方で重度低血糖のリスクは、強化血糖コントロール群で有意な増大が認められ(相対リスク比:2.39、95%信頼区間:1.71~3.34、P<0.001、9試験2万7,844例対象)、系列分析で重度低血糖の30%リスク増大が支持された。

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T&A 動きながら考える救急初療 -プライマリ・ケア編- 

第1回 「動きながら考える救急初療」 第2回 「ショック」  第1回「動きながら考える救急初療」-軽症に見える重症患者を見極めろ!-病院設定と違い診療所では発症から間もない患者が典型的な症状を呈さずに来院します。まずは“救急初療ユニバーサルアルゴリズム”を3部構成で紹介します。デモンストレーションでは診療所での動き方をダイナミックに解説。T&A動きながら考える救急初療で、軽症にみえる重症患者を見極めよう!第2回「ショック」-ショックはvitalが変化する前に見極めろ!-すでに不安定な状態になっている患者をどのようにマネージメントするか、「ショック」を認識したらどうするか、などショックの分類と見分け方を確認していきます。クリニックで治療しなければ助からないショックもあります。開業医の方にぜひ身に付けていただきたい治療法を伝授します!T&A RAP  Triage and Action !

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関節リウマチ患者が求める治療とは? ~患者パネルを用いた実態調査~

関節リウマチ(RA)治療は、痛みを取ることしかできなかった“care”の時代から、メトトレキサート(MTX)と生物学的製剤の登場によって、臨床的寛解や生命予後改善を目指す“cure”の時代へとめざましい進歩を遂げている。現在は、5年後10年後を考えて治療することが重要となってきているが、現在の薬物治療の実態や患者さんの意識はどうなのか? ここでは、2011年11月24日に開催されたセミナー「リウマチ治療が抱える課題:治療が遅れ、痛みがとりきれない患者さんも ~早期診断・治療が十分でない現状が明らかに~」(主催:ファイザー株式会社)から、RA患者を対象としたインターネット調査結果に関する山中 寿氏(東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 所長)の講演をレポートする。■500名のRA患者を対象としたインターネット調査今回のインターネット調査は、電通リサーチ・ミリオネットのパネル登録者から、RA治療のために医療機関に通院中で、薬剤によるRA治療が行われているRA患者500名(RA罹患率に合わせ、男女比を1:4に調整)を対象に2011年6月に実施された。患者背景は、年齢49.8±10.6歳、JHAQスコア0.55±0.64、生物学的製剤使用患者割合24%であった。 本調査の対象患者は、自らパネルに登録していることを考慮すると、治療や情報収集におけるモチベーションはより高いと考えられる。しかしながら、山中氏によると、同氏が2000年から実施し、毎回約5,000名のRA患者の情報を集積している前向き観察研究のJ-ARAMIS(Japanese Arthritis Rheumatism and Aging Medical Information System、2006年にIORRA;Institute of Rheumatology, Rheumatoid Arthritisと改称)とほぼ同様な結果が得られたとのことである。■発症から確定診断・薬物治療までの現状自覚症状発現から確定診断までの期間は、3ヵ月以上が53.6%、4割近くが6ヵ月以上であった。自覚症状発現からMTX開始までの期間は2年以上が56.5%を占め、またMTX無効な場合に投与できる生物学的製剤使用までの期間は、78.5%が自覚症状発現から2年以上の期間を要していた。なおMTXについては、2011年2月に添付文書が改訂され、治療の最初から使用できるようになったため、今後、この期間は短くなるものと思われる。 また本調査では、RAの確定診断やMTXおよび生物学的製剤の投与は、整形外科よりも膠原病・リウマチ科で積極的に実施されている傾向が認められた。診療科におけるこれらの差は、地域の医療環境に差がある可能性が高い、と山中氏は推察している。■生物学的製剤による治療状況生物学的製剤の使用状況については、エタネルセプト(商品名:エンブレル)が45.0%ともっとも多く、次いでインフリキシマブ(商品名:レミケード)が27.5%であった。IORRAのデータ(2011年4月時点)でも、エタネルセプトが47.6%であり、同様の傾向を示していた。 RA治療に対する満足度では、生物学的製剤使用患者では72.5%、非使用患者では49.7%が「満足である」と回答し、生物学的製剤を使用している患者のほうが治療満足度が高いことが示された。しかし、生物学的製剤使用患者では、二次無効や副作用などで薬剤変更経験がある患者は31.6%存在していた。 実際の生物学的製剤の選定においては、71.7%が医師主導で薬剤を選定しており、投与方法や投与回数などの使い方はよく理解しているものの、長期にわたる効果や安全性については理解が十分ではないことが明らかとなった。その一方で、生物学的製剤使用患者は長期的な治療効果の維持を望んでいることが示されたことから、長期的な治療効果や副作用についてもしっかりと情報提供を行い、長期的な治療の必要性を伝えていくことが必要である、と山中氏は指摘した。■就労・医療費における問題RAの発症によって、仕事を辞めたり変更したりしたことのある患者は4割を超え、とくに女性は5割近くにのぼり、就労に支障を来たしていることが示された。 医療費に関する調査結果からは、医療費の問題で生物学的製剤を使用していない患者さんが存在する可能性が示唆された。現在、生物学的製剤を使用する場合の薬剤費が年間約140万円であり、3割負担でも月々4~5万円かかることが生物学的製剤使用のネックとなっていることがうかがわれる。また、世帯年収別の生物学的製剤の使用状況を調べたところ、300万円未満の世帯を除くと、年収の増加に伴って使用患者の割合が増加していた(300万円未満の世帯での使用割合は、生活保護などのサポート制度などの影響が推察される)。山中氏は薬剤選定の際には患者さんに治療費用を含めて選択肢を示しているが、ほとんどの患者さんがその場では決められないという。■RA患者が求める情報提供情報の入手度に関する質問には、半数以上のRA患者が「適切な治療や薬剤に関する情報」や「RAに関する一般疾病情報」については「得られている」と回答している。しかし、「研究成果などに関する最新診療情報」や「医療機関およびサービスの選択に関わる情報」については3割前後であり、今後はこれらについての情報提供が望まれる。■「壁抜け」まであと少し今回の調査結果について、山中氏は、「これらのRA治療における問題点を今後の診療に生かし、RA患者さんが少しでも楽な生活、楽しい人生を送るためによい方向に向けていきたい」と語り、さらにRA診療について「かなり進歩したが、まだ壁を抜けきったわけではない。半分は壁の向こうにあり、まだまだ解決すべき問題は多い。それを自覚して努力していきたい」と述べて講演を締めくくった。(ケアネット 金沢 浩子)

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英国における待機的手術施行への民間活力導入、その質的評価は?

英国待機的手術のアウトカムについて、民間治療センター(ISTC)とNHS治療センターとを比較した結果、両者はほぼ同等であることが報告された。英国では、患者が待機的手術をすみやかに、より強い選択権を有して受けられ、より良好なアウトカムを得られるようにするとの目的で、1999年より公的医療サービスであるNHS治療センターの改革プログラムが開始。そのさらなる進展のため2002年より民間活力を導入、2009年12月末までに29のISTCが開設(さらに2施設が建設中)された。しかし、治療センター増大が歓迎される中、ISTCの“民間運営”“外国人医師”に対する懸念が高まり、2006年以降、第三者機構によるISTCとNHSとを比較する質的評価の取り組みが行われているという。本論の報告は、英国保健省がRoyal College of Surgeons of Englandに質的評価の比較について委嘱したPatient Outcomes in Surgery(POiS)監査機構(2007年11月設立)による最終報告で、Royal College of Surgeons of EnglandのJ Chard氏らが、BMJ誌2011年11月12日号(オンライン版2011年10月19日号)で発表した。25のISTCおよび72のNHS治療センターの患者報告のアウトカムを収集・比較POiSは、ISTCとNHS治療センターとの待機的手術(股関節/膝関節置換術、鼡径ヘルニア修復術、静脈瘤手術)のアウトカムについて比較するため、25のISTCおよび72のNHS治療センターで、患者によって報告された術後3~6ヵ月のアウトカムをフォローアップ収集し比較した。具体的には、股関節/膝関節置換術については2008年6月~2009年9月に、ISTCで5,671例、NHS治療センターで1万4,292例を収集、鼡径ヘルニア修復術は2008年12月~2009年9月に同640例と2,023例を、静脈瘤手術は同期間に同248例と1,336例を収集した。それらの患者によって報告された症状と障害(48ポイントスケールのOxford股関節・膝スコア、Aberdeen静脈瘤調査票)、QOL(EuroQol EQ-5Dスコア)を比較の指標とした。NHSの患者のほうがアウトカム劣るが……患者特性として、ISTCの患者のほうがNHSの患者と比べ、健康で、術前重症度は小さく、より裕福であるとの傾向が認められた。補正後アウトカムは、NHSで関節置換術を受けた患者のほうが、劣っていると報告した患者が多かった。同患者のほうが、Oxford股関節スコアは-1.7(95%信頼区間:-2.5~-0.9)、Oxford膝スコアは-0.9(同:-1.6~-0.2)低かった。また、合併症の報告例がNHS患者のほうが多かった。股関節に関する合併症報告例は1.3倍(オッズ比:1.3、95%信頼区間:1.1~1.5)、膝は1.4倍(同:1.4、1.2~1.6)だった。ヘルニア手術、静脈瘤手術の術後アウトカムについては、両施設間に有意な差はみられなかったが、NHS患者のほうが、ヘルニア修復術後の結果が劣っており(オッズ比:1.4、95%信頼区間:1.0~1.9)、静脈瘤手術について追加手術が多かった(同:2.8、1.2~6.8)。Chard氏は「ISTC患者のほうが、やや健康で重症度が低かった。いくつかのアウトカムはISTCのほうがよかったが、ISTCが選択サービスの提供において持ち得る可能性があるインパクトと比べて、その差異は小さかった」と結論している。

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リピート処方の質と安全に、受付・事務スタッフの創造的判断が貢献

リピート処方(repeat prescribing)、いわゆるDo処方について、受付または事務スタッフが、質および安全性に対して重大な「隠れた」貢献を行っているとの研究結果が報告された。英国・バーツ&ロンドン医科歯科大学校のDeborah Swinglehurst氏らによる。BMJ誌2011年11月12日号(オンライン版2011年11月3日号)掲載報告より。リピート処方をめぐる質・安全への貢献および障壁について調査Swinglehurst氏らは、GP(general practice)におけるリピート処方に関して、組織業務の様子を描出、調査、比較検討することで、質および安全に対する貢献者および障壁を特定する研究を行った。研究対象となったのは、電子患者記録を使用しており、患者への処方が準オートメーション化されている英国4都市の組織形態が多様なGP。395時間にわたって民族誌学的事例研究の手法でスタッフ(医師25人、看護師16人、ヘルスアシスタント4人、マネジャー6人、受付・事務スタッフ56人)を観察し、28の文書と、リピート処方に関わる部分的、全体的な人為的な現象について調べた。主要評価項目は、患者安全や良好な診療の特徴に対する潜在的な脅威とした。研究グループは、医師、受付・事務スタッフがリピート処方について、どのような貢献をしているか、また協同しているかを観察し、処方作業をマッピングすること、組織的実践を描出すること、それらを一緒に話し合って描画しているかなどについて解析した。これらは社会的モデルとして知られるもので、ICT(information and communications technologies)により形成化されているものであった。これからの患者安全の研究は、テクノロジーサポートを研究することが大切調査・解析の結果、リピート処方は複雑で、患者安全に重大な影響を有し、医師とスタッフの協働が求められるテクノロジーサポート・ソーシャルプラクティスであることが明らかになった。リピート処方の半数以上が、受付スタッフによって“例外”と判断されていた。大半は、電子リスト上にあったものと異なる薬、投与量、タイミングなどの理由によるものであった。形式的な処方プロトコルと、リピート処方を書くことにはギャップが存在する。そのギャップを埋める作業として、医師が知らないうちに、受付・事務スタッフの創造的な判断が貢献していた。Swinglehurst氏は、「一見、平凡で、標準的で、自動化されていると見られるテクノロジーサポート・ルーチンワークは、実際には高度な部分的な調整や判断が最前線のスタッフによって求められる。それらを研究することが、患者安全研究の新たなアジェンダになっていくだろう」と結論している。

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専門病棟での集学的管理プロトコールが急性期脳卒中の予後を改善

急性期脳卒中専門病棟における看護師による発熱、高血糖、嚥下障害の集学的な管理プロトコールの実践により、退院後の良好な患者アウトカムがもたらされることが、オーストラリア・カソリック大学看護学研究所のSandy Middleton氏らが行ったQASC試験で示された。組織化された脳卒中専門病棟は脳血管イベントによる死亡や身体機能障害を低減するが、長期的な患者の回復に重要なことが知られているにもかかわらず十分な管理が行われていない因子として、発熱、高血糖、嚥下障害が挙げられるという。同氏らは、これら3つの因子のエビデンスに基づく集学的な管理プロトコールを専門病棟で遂行するための標準化された教育プログラムを開発した。Lancet誌2011年11月12日号(オンライン版2011年10月12日号)掲載の報告。ASUにおけるFeSS管理プロトコールの有用性を評価するクラスター無作為化試験QASC(Quality in Acute Stroke Care)試験の研究グループは、急性期脳卒中の専門病棟(acute stroke unit: ASU)に入院中の患者において、エビデンスに基づく発熱(fever)、高血糖(hyperglycaemia=sugar)、嚥下障害(swallowing dysfunction)(FeSS)の管理が、退院後のアウトカムに及ぼす影響を評価する単盲検クラスター無作為化対照比較試験を実施した。対象は、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州のCTとhigh dependency unit(HDU)を備えたASUに入院した発症後48時間以内の虚血性脳卒中または脳出血患者で、英語を話す18歳以上の者とした。FeSS群には、集学的チームによるFeSS管理のための治療プロトコール(ASU入院後72時間内に行う看護師による管理が中心)が施行され、対照群は既存のガイドラインの簡易版に基づく治療を受けた。介入前(無作為割り付け前)と、介入後の患者コホートを登録し、90日後の死亡または要介助[修正Rankinスケール(mRS)≧2]、機能評価[Barthelインデックス(BI)]、QOL(SF-36の「身体機能」と「心の健康」)を比較した。研究助手、統計解析担当、患者には割り付け情報はマスクされた。脳卒中専門病棟の拡充につながる知見19のASUがクラスターとして登録され、FeSS群に10施設、対照群には9施設が割り付けられた。介入前(2005年7月30日~2007年10月30日)のデータは687例から、介入後(2009年2月4日~2010年8月25日)のデータは1,009例(FeSS群:558例、対照群:451例)から得られた。介入前データの解析結果はすでに報告されており、90日後の死亡、死亡または要介助、機能評価などはFeSS群と対照群で同等であった。介入後は、脳卒中の重症度にかかわらず、90日後における死亡またはmRS≧2の割合はFeSS群が42%(236/558例)と、対照群の58%(259/449例)に比べ有意に低かった(p=0.002)。SF-36の「身体機能」の平均スコアはFeSS群[45.6(SD 10.2)]が対照群[42.5(SD 10.5)]よりも有意に良好だった(p=0.002)が、死亡率[4%(21/558例)vs. 5%(24/451例)、p=0.36]やSF-36の「心の健康」[49.5(SD 10.9)vs. 49.4(SD 10.6)、p=0.69]に差はなく、機能評価[BI≧60:92%(487/532例)vs. 90%(380/423例)、p=0.44]も両群で同等であった。著者は、「エビデンスに基づく看護師による発熱、高血糖、嚥下障害の集学的な管理プロトコールは、脳卒中専門病棟退院後の患者において良好なアウトカムをもたらす」と結論し、「これらの知見は脳卒中専門病棟の拡充の可能性を示すものだ」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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ダビガトラン、非弁膜症性心房細動患者で良好なbenefit-harmバランス示す

 トロンビン阻害薬ダビガトラン(商品名:プラザキサ)は非弁膜症性心房細動患者においてワルファリンに比べ有益性(benefit)と有害性(harm)のバランスが優れることが示唆されている。今回、これを裏付ける知見が、イギリスBangor大学のJoshua Pink氏らが実施した定量的なbenefit-harm解析および経済的解析によって示された。ダビガトランは、非弁膜症性心房細動患者においてワルファリンと代替可能な血栓予防薬とされるが、適正用量、benefit-harmバランス、費用対効果は明確にされておらず、費用対効果については相反する結果が報告されているという。BMJ誌2011年11月5日号(オンライン版2011年10月31日号)掲載の報告。高用量と低用量の費用対効果を検討 研究グループは、非弁膜症性心房細動患者におけるダビガトラン110mgまたは150mg(1日2回)と、ワルファリンの有益性を評価し、ダビガトランの費用対効果ついて検討を行った。 離散的事象シミュレーションモデルにRE-LY(Randomized Evaluation of Long-Term Anticoagulation Therapy)試験で得られた知見を外挿して、定量的な経済的解析を行った。脳卒中リスクが中~高で、ベースラインのCHADS2[うっ血性心不全(CHF)、高血圧(HT)、年齢(Age)75歳以上、糖尿病(DM)、脳卒中(Stroke)/一過性脳虚血発作の既往でスコア化して脳塞栓症リスクを低、中、高に分類]の平均スコアが2.1の5万人の患者を想定し、シミュレーションを実施した。主要評価項目は、質調整生存年(QALY)およびQALY当たりの増分コストとした。INRの管理が良好な施設では費用対効果が低い ワルファリンに比べ、ダビガトランはnet benefitが0.094増加し、QALYは0.146延長した。高用量ダビガトラン(150mg×2回/日)のnet benefitは、ワルファリンに比べ94%増加し、低用量ダビガトラン(110mg×2回/日)よりも76%増加した。経済的解析では、ワルファリンとの比較における高用量ダビガトランの費用対効果比は低用量よりも優れ、延長したQALY当たりの費用は高用量の2万3,082ポンド(約2万6,700ユーロ、3万5,800ドルに相当)に対し、低用量は4万3,074ポンドと高価であった。また、ベースラインのCHADS2スコアが3以上の患者で高用量の費用対効果が優れた。 一方、国際標準化比(INR、検体と標準正常血漿のプロトロンビン時間の比)が良好にコントロールされている施設では、高用量ダビガトランによって延長したQALY当たりの費用は4万2,386ポンドに達し、費用対効果が低かった。 著者は、「ダビガトランは、ワルファリンに比べbenefitとharmのバランスが優れるとの知見を支持する結果が得られた」と結論し、「臨床的にも経済的にも、高用量よりも低用量のほうが高い利益をもたらすサブグループは認めなかった。高用量ダビガトランは、脳卒中リスクの高い患者やINRのコントロールが比較的不良な場合に費用対効果が優れる」と指摘している。

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OKI、「救急医療搬送支援システム」の販売を開始

OKIは16日、救急患者の疾患情報と病院の受け入れ状況をリアルタイムで情報収集し、最適な医療機関への搬送支援を行う「救急医療搬送支援システム」を開発したと発表した。同システムは2012年3月より販売開始される予定。救急搬送における医療機関の受け入れ困難は社会問題になっているが、この問題の解消には、救急患者の処置ができる専門医の受け入れ可能状況を把握し、救急車が適切な医療機関への搬送を行う仕組みづくりが重要となる。救急医療体制支援システム構築の「GEMITS」プロジェクト(注1)は、2009年度から経済産業省の委託事業として岐阜大学が取り組み、2010年度からはNPO岐阜救急災害研究開発機構が総務省の委託事業としても実施している。同社はこれまで「GEMITS」プロジェクトに参画し、救急患者の疾患情報の共有や最適な医療機関への搬送を支援するシステムを構築、実証実験に参加してきた。また、企業や関係団体と連携して「GEMITS」の普及・推進を図るために設立されたGEMITSアライアンスパートナーズ(GEMAP〔注2〕)の設立発起人の一員として、「GEMITS」の普及に努めているという。今回、同社はGEMITSプロジェクト参画の経験をいかし、また、これまで様々な分野で培ってきた通信技術やシステム開発力を組み合わせ「救急医療搬送支援システム」を開発した。コンセプトは、救急患者に「最適な病院に、最適の時間で搬送し、最適な処置ができる」こと。同システムは、エンジン機能にあたる「統合エージェント」を中核に7つのシステムから構成されている。中心となる機能は、医師がICタグを装備することで病院での位置情報などから繁忙度を判断する機能。また、救急隊員が所持するタッチパネル式の専門端末(Android搭載)を使って患者の疾患情報や搬送状況を送信することもできる。リアルタイムで収集した医師の繁忙度と患者の疾患および搬送状況をもとに「統合エージェント」が、受け入れ病院の候補を選定する。これらの機能のほかに、受け入れ病院の医療スタッフを支援する機能や、テレビ会議で救急隊員と病院が患者情報を共有できる機能を備えている。注1:GEMITS(Global Emergency Medical supporting Intelligent Transport System)岐阜大学を中心とした産学連携事業体が国の事業との連携を図り、救急医療体制支援システムを構築するプロジェクト。現在、困難な状況にある救急医療体制を医療資源の育成、最適化利用を図ることで、再生できることを実証し、救急医療体制のロールモデルとして全国に展開することを目的に活動を行っている。注2:GEMAP:GEMITSアライアンスパートナーズ(GEMITS Alliance Partners)2011年6月に設立された幅広い分野の企業や関係団体と連携して、「GEMITS」の普及・推進を図るために設立されたコンソーシアム形式の機関。詳細はプレスリリースへhttp://www.oki.com/jp/press/2011/11/z11074.html

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婦人科がんのNCCNガイドライン日本語版を公開

先端医療振興財団 臨床研究情報センターは11月4日、NCCN(National Comprehensive Cancer Network)婦人科がんガイドライン 日本語版を公開。 本ガイドラインは、 日本婦人科腫瘍学会に監訳・監修、および日本の治療との相違点等に関するコメントも掲載している。日本語版は大腸がん、泌尿器がん、肺がんに引き続き第四弾。婦人科がんガイドラインの内容は ・子宮頸がん (Cervical Cancer)・子宮体がん(Uterine Neoplasms)・卵巣がん(Ovarian Cancer)・子宮頸がんのスクリーニング(Cervical Cancer Screening)・乳がんおよび卵巣がんにおける遺伝的 / 家族性リスク評価 (Genetic/Familial High-Risk Assessment: Breast and Ovarian) は近日公開予定詳しくはこちらhttp://www.tri-kobe.org/nccn/guideline/gynecological/index.html

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プライマリ・ケアにおける腰背部痛治療、予後リスクによる層別化管理法が有効

プライマリ・ケアにおける腰背部痛の治療では、予後のスクリーニングに基づく層別化管理法(http://www.keele.ac.uk/sbst/)が現在の最良の治療法よりも有効な可能性があることが、イギリス・キール大学のJonathan C Hill氏らの検討で示された。腰背部痛は、現在も世界中でプライマリ・ケアにおける大きな課題となっており、最近では、従来のすべての患者を一律に管理する戦略は患者の不均一性を無視しているため最適な治療とはいえないと考えられている。著者らが開発した予後のリスクで層別化(低、中、高リスク)した管理モデルは、画一的な治療アプローチを超えて、プライマリ・ケアにおいて臨床的、経済的なベネフィットをもたらすものと期待されていた。Lancet誌2011年10月29日号(オンライン版2011年9月29日号)掲載の報告。プライマリ・ケアでの有効性を評価する無作為化対照比較試験研究グループは、プライマリ・ケアでの腰背部痛の治療における層別化管理法(介入群)と、層別化を行わない現時点での最良の治療法(対照群)の臨床的有効性と費用対効果を評価する無作為化対照比較試験を行った。イングランドの10ヵ所のプライマリ・ケア施設で腰背部痛の診察を受けた18歳以上の1,573人が、試験への参加依頼に応じた。これらの患者が介入群と対照群に2対1の割合で割り付けられた。主要評価項目は、治療12ヵ月後のRoland Morris機能障害質問票(RMDQ)スコア(値が高いほど障害の程度が高い)による治療効果とした。質調整生存年(QALY)の増分および腰背部痛関連の医療費についても評価を行った。RMDQスコア、QALY、コストが改善解析の対象となった851例のうち、568例が介入群に、283例は対照群に割り付けられた。RMDQスコアの調整平均変化は、介入群が対照群に比べ治療4ヵ月(4.7 vs. 3.0、群間差:1.81、95%信頼区間:1.06~2.57)および12ヵ月(4.3 vs. 3.3、群間差:1.06、95%信頼区間:0.25~1.86)の時点で有意に大きかった。治療12ヵ月の時点で、介入群は対照群に比べQALYが平均で0.039延長し、コストが34.39ポンド削減(240.01 vs 274.40ポンド)された。著者は、「腰背部痛の予後スクリーニングに基づく層別化管理法は、プライマリ・ケアにおける将来の管理法として大きな意義を持つと考えられる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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2004年のCONSORT拡張版発表後も、臨床試験報告の方法論基準に改善認められず

臨床試験報告に関する統合基準「CONSORT」(consolidated standards of reporting trials)の拡張版が2004年に発表されて以降、クラスター無作為化試験の報告基準には多少の改善がみられたものの、方法論基準には改善が認められないことが報告された。カナダ・Women’s College Hospital(トロント)のN M Ivers氏らが、300のクラスター無作為化試験について調べ明らかにしたもので、BMJ誌2011年10月15日号(オンライン版2011年9月26日号)で発表した。クラスター無作為化試験300のCONSORT遵守について、04年以前と05年以降を比較CONSORTの初版は1996年に作成されたが、その初版発表の影響についての調査では、1997~2000年に発表されたクラスター無作為化試験において、その大部分がCONSORTで推奨する方法論基準に遵守していないことが明らかになった。そのため2004年、方法論基準と報告基準に関する項目を強化した拡張版が作成された。Ivers氏らは、2000~2008年に英語雑誌にて発表された300のクラスター無作為化試験について、報告基準の14項目と方法論基準の4項目のCONSORT拡張版遵守の状況について調査を行い、2000~2004年に発表されたものと2005~2008年に発表されたものを比較した。報告基準14項目のうち5項目は改善、方法論基準4項目はいずれも改善認められず結果、報告基準14項目のうち5項目については、2005年以降に発表されたものに有意な改善が認められた。具体的には、無作為化されたクラスターについての説明、クラスターのデザインの正当性、アウトカムの評価はブラインドだったか否か、無作為化されたクラスターの数、追跡を失ったクラスターの数の5項目だった。一方で、方法論基準の4項目については、いずれも有意な改善は認められなかった。また全体的に、臨床的環境下の試験は非臨床的環境下の試験よりも、また医学雑誌に発表された試験結果はそうでないものよりも、報告基準や方法論基準がより遵守されている傾向が認められた。研究グループは、「クラスター無作為化試験におけるCONSORTの報告基準と方法論基準の遵守を促すには、さらなる改善のための働きかけが必要だ」と結論している。(當麻 あづさ:医療ジャーナリスト)

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