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妊婦へのDHAサプリメント、産後うつや子どもの発達に効果みられず

妊婦に対し、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含むサプリメントを投与しても、産後うつ病の改善や、子どもの認知・言語能力の発達には効果がみられないことが明らかにされた。オーストラリアWomen’s and Children’s Health Research InstituteのMaria Makrides氏らが、約2,400人の妊婦を対象に行った、無作為化二重盲検試験「DHA to Optimize Mother Infant Outcome」(DOMInO)の結果によるもので、JAMA誌2010年10月20日号で発表されている。産後6ヵ月までの母親のうつ状態と、生後18ヵ月の子どもの発育状態を評価研究グループは、2005年10月31日~2008年1月11日にかけて、オーストラリア国内5ヵ所の医療機関で、単体児妊娠21週未満の妊婦2,399人について試験を開始した。また、生まれた子ども726人についても、2009年12月16日まで追跡した。被験者妊婦は無作為に2群に分けられ、一方にはDHA 800mg/日を含む魚油サプリメントを、もう一方にはDHAを含まない野菜油カプセルを投与した。産後6週目と6ヵ月後に、エジンバラ産後うつ病評価スケール(EPDS)で、うつ状態を評価。生まれた子どもについては、ベイレイ乳幼児発達スケール(Bayley Scales of Infant and Toddler Development)で、生後18ヵ月に認知・言語能力を評価した。登録された妊婦は、96.7%が試験を完了した。産後のうつ病リスクや子どもの認知・言語能力スケールに、両群で有意差なし結果、産後6ヵ月にEPDSスコアが12超だった人の割合は、DHA群9.67%、対照群11.19%で、両群に有意差はみられなかった(相対リスク:0.85、95%信頼区間:0.70~1.02、p=0.09)。子どもの認知能力スケール総合スコアについても、両群間の補正後平均値格差は、0.01(95%信頼区間:-1.36~1.37、p=0.99)と有意差がなかった。言語能力スケール総合スコアの両群間の補正後平均値格差も、-1.42(同:-3.07~0.22、p=0.09)で有意差がなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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グルコサミンとコンドロイチンは単独・併用でも関節痛への効果はない

グルコサミン、コンドロイチンのサプリメントを単独または併用服用しても、股関節痛や膝関節痛を和らげることはなく、関節腔狭小化への影響もないことが、スイスのベルン大学社会・予防医療研究所のSimon Wandel氏らが行ったネットワーク・メタ解析の結果、明らかにされた。Wandel氏は、「保健衛生を担う当局および健康保健事業者は、これらの製剤コストをカバーすべきではない。そしてまだ投与を受けていない患者への新たな処方を阻止しなければならない」と提言している。BMJ誌2010年10月2日号(オンライン版2010年9月16日号)掲載より。プラセボとの比較で、グルコサミン、コンドロイチン単独・併用の関節痛への効果を判定Wandel氏らは、関節痛とX線診断で股関節炎や膝関節炎の病勢進行が認められた症例に対し、グルコサミン、コンドロイチンを単独または併用の効果を判定することを目的に、ネットワーク・メタ解析を行った。Cochrane、Medline、Embaseなどの電子データベースを検索、および専門家へのヒアリング、関連ウェブサイトから適格試験を選定し、試験内直接比較を、異なるタイムポイントの統合を可能とするベイズモデルを使って、他の試験の間接エビデンスと結びつけた。主要アウトカムは疼痛強度とし、副次アウトカムは関節腔狭小化とした。製剤とプラセボとの臨床的に意義ある差異を示す最小値は、10cmビジュアル・アナログ・スケールで-0.9cmと事前特定された。疼痛強度、関節腔狭小化とも臨床的意義ある差異は認められず解析には、10試験・3,803例が含まれた。結果、10cmビジュアル・アナログ・スケールで、プラセボと比較して、疼痛強度の差異は、グルコサミン群は-0.4cm(95%信頼区間:-0.7~-0.1 cm)、コンドロイチン群は-0.3cm(同:-0.7~0.0 cm)、併用群は-0.5cm(同:-0.9~0.0 cm)だった。95%信頼区間値が、臨床的意義ある差異を示す最小値(-0.9)を越えたものはなかった。企業から資金提供を受けて行われた試験結果に比べて、独立して行われた試験では、より小さい効果量が示されていた(相互作用のP=0.02)。また副次アウトカムの関節腔狭小化の差異も、95%信頼区間値が0値に重なり合うほどわずかだった。(武藤まき:医療ライター)

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医師の学ぶ意欲、パフォーマンス向上を刺激するのはどんな評価か?

臨床パフォーマンスの評価は重要だが、難しいテーマとされる。これまでは、評価はいわずもがなで標準化しにくい、徒弟制度モデルのような主観的な判断に基づいていた。しかし近年は、コンピテンスやパフォーマンスを評価する新しいシステムによる卒後教育が構築され、ワーク・プレイス・アセスメントも、その一つとされる。では、日々の臨床パフォーマンスを評価するのに用いられるワーク・プレイス・アセスメントが、卒後教育やパフォーマンスにどれほど影響しているのか。イギリス・ペニンシュラ医科歯科大学/プリマス大学のAlice Miller氏らがエビデンスを得るため、システマティックレビューを行った。BMJ誌2010年10月2日号(オンライン版2010年9月24日号)掲載より。ワーク・プレイス・アセスメントの効果を検討した研究をシステマティックレビュー主要なデータソースは、雑誌データベース(Ovid、Medline、Embase、CINAHL、PsycINFO、ERIC)を用い行われた。また、エビデンス・レビューは、Bandolier、Cochrane Library、DARE、HTA Database、NHS EEDおよびHealth Information Resourcesのウェブサイトを活用し行われた。関連研究の参照リストとレビュー記事の文献も当たり、ワーク・プレイス・アセスメントの教育的効果、または医師のパフォーマンスに与えた効果の評価を試みた研究のいずれもが対象に含まれた。対象集団が非メディカルまたは医学生よって行われた研究は除外され、論評記事、解説、レターも同様に除外された。最終的に、実際の臨床経験ではなく模擬患者やモデル利用の研究も除外基準に含まれた。結果、16件の研究が選定された。15件は、非比較の記述・観察研究で、残りは無作為化試験だった。研究の質は混合された。マルチソース・フィードバックがパフォーマンス改善に結びつく8件の研究が、マルチソース・フィードバック(多面的評価)を検討しており、大半の医師が、マルチソース・フィードバックは教育的価値はあるが、実践を変えるほどのエビデンスはないと感じていた。ただし一部のジュニアドクターおよび外科医に、マルチソース・フィードバックに応じて変化することを喜んで受け入れる意思を示す者がいた。家庭医は、より変化に意欲的である可能性が示された。パフォーマンスへの変化が起きやすかったのは、フィードバックが正確で信頼できるものだったり、また自分たちの強みあるいは弱点を特定するのに役立つ指導がもたらされるものである時にみられた。4件の研究は、ミニ臨床評価エクササイズを検討したもので、1件の研究は、技術手順を直接観察したものであり、3件の研究は、手順を多面的に評価したものだった。そして4件とも、ワーク・プレイス・アセスメント・ツールの教育的影響をポジティブに報告していたが、これらのツールによりパフォーマンスが改善されたかを観察したものはなかった。Miller氏は、「パフォーマンス評価の手法としてワーク・プレイス・アセスメントの重要性が強調はされていても、医師の教育やパフォーマンスに与える影響を調査している論文はほとんどない」と述べたうえで、「今回のレビューで、マルチソース・フィードバックは、フィードバックの詳細、内容、促進を促す内容が盛り込まれているかで、パフォーマンス改善に重大な効果があることが明らかになった。それ以外のワーク・プレイス・アセスメント・ツール(ミニ臨床評価エクササイズなど)は、教育に与える影響があることを主観的に報告はしていたが、パフォーマンス改善に結びつくエビデンスは認められなかった」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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心不全患者への自己管理カウンセリング、死亡率や入院率の低下につながらず

心不全患者に対し、服薬や塩分摂取制限などに関する自己管理について、カウンセリング・プログラムを強化しても、死亡率や入院率の低下にはつながらないことが報告された。米国ラッシュ大学メディカルセンター(シカゴ)予防医療部門のLynda H. Powell氏らが、約900人の患者を対象に行った無作為化比較対照試験「HART」(Heart Failure Adherence and Retention Trial)で明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月22/29日号で発表した。2時間のグループセッションを1年間に18回実施単一施設複数病院一部盲検で行われたHARTでは、2001年10月~2004年10月にかけて、軽度~中等度の心不全患者902人について試験を開始した。被験者の心臓収縮機能は、減少・維持の両者が含まれた。研究グループは、被験者を無作為に2群に分け、一方の群には、服薬遵守や塩分摂取制限、適度な運動やストレス管理といった自己管理について、1回2時間、約10人でのグループカウンセリングを、1年間にわたり18回行った。その際、心不全の自己管理に関するパンフレット(18シートからなるものを毎回1シートずつ)も配布した。もう一方の群には、同様の18シートからなるパンフレットを郵送し、電話によるフォローアップを行った。被験者の平均年齢は63.6歳、うち女性は47%で、人種/民族を申告した人が40%、年間世帯所得が3万ドル未満が52%を占めた。収縮機能の維持が認められたのは23%だった。追跡期間の中央値は2.56年。主要評価項目は、追跡期間中央値2.56年間の死亡および心不全による入院とした。死亡または心不全による入院の発生率は低下せず結果、追跡期間の死亡または心不全による入院は、自己管理介入群の163件(40.1%)に対し、対照群171件(41.2%)と、両群に有意差はみられなかった(オッズ比:0.95、95%信頼区間:0.72~1.26)。また、副次エンドポイントとした、死亡、心不全による入院、理由を問わない入院、QOLのいずれについても、両群で有意差は認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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60歳時のPSA値で、前立腺がん死亡・転移の生涯リスクが予測できる

60歳時の前立腺特異抗原(PSA)値から、転移と前立腺がん死の生涯リスクが予測できるとの報告が、米国Sloan-Kettering記念がんセンター(ニューヨーク)のAndrew J Vickers氏らにより発表された。また、その際のPSA値が中央値(≦1 ng/mL)以下の場合、前立腺がんが潜んでいる可能性はあるものの、生命を脅かすようなことはないとも述べ、「それら男性はさらなるスクリーニングは免除されるべきで、それよりもPSA値がより高い群に照準を合わせるべき」と結論づけている。PSAスクリーニングは、前立腺がんの早期発見のため広く行われるようになっているが、過剰診断を招いていることが無作為化試験で示されたり、70歳男性の40%近くが前立腺がんを有していると推定されており、研究グループは「前立腺がんの有無ではなく、症状を引き起こすのか生命を縮めるのかが重要」として、検査値とその後の臨床転帰との関連を調べた。BMJ誌2010年9月18日号(オンライン版2010年9月14日号)より。スクリーニングと化学的予防のリスク層別化が課題研究グループは、60歳時にPSAスクリーニングを受けその後はスクリーニングを受けていない集団で、PSA値とその後の前立腺がん臨床症状との関連を評価すること、スクリーニングと前立腺がんに対する化学的予防療法がリスク層別化をできたのかどうかを評価するため、ケースコントロール研究を行った。本研究は、一般集団をベースに症例1対対照3の割合でマッチングを図ったネステッドケースコントロール研究で、Malmo Preventive Projectに参加するスウェーデン人男性を対象とした。1981年の60歳時に血液サンプルを採取され、National Board of Health and Welfareにがん登録された1,167例で、85歳まで追跡された。主要評価項目は、転移または前立腺がんによる死亡とした。>2ng/mL群が前立腺がん死の90%を占める本研究期間中のスクリーニング実施率は低かった。転移は43例、前立腺がん死は35例だった。60歳時点のPSA濃度は、前立腺がん転移(曲線下面積0.86、95%信頼区間:0.79~0.92、P

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MCATスコアが低いほど、医師資格試験は初回不合格の確率大

米国で医学部を卒業しながら医師資格試験に初回受験で不合格である確率は、「MCAT(Medical College Admission Test)スコアが低い」「白人に比べ非白人の方が」「学費の借金が5万ドル以上ある」で、増大する傾向があるという。米国ワシントン大学のDorothy A. Andriole氏らが、医学部に入学した10万人弱について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月15日号で発表した。卒業生の88.7%が初回で医師試験に合格、成績理由で退学は入学生の1.2%Andriole氏らは、1994~1999年にかけて米国の医学部に入学した9万7,445人について、2009年3月まで、後ろ向きに追跡調査を行った。その結果、データが得られた8万4,018人(86.2%)のうち、医学部を卒業したのは、96.7%にあたる8万1,237人で、成績が理由で医学部を退学したのは1,049人(1.2%)、成績以外の理由による退学は1,732人(2.1%)だった。卒業生のうち、初回受験で米国医師資格試験(ステップ1・2)に合格したのは7万4,494人(88.7%)で、不合格は6,743人(8.0%)だった。MCATスコアが18~20だと、初回不合格の確率13倍、成績不振で退学の確率11倍米国医科大学入学のための共通テスト「MCAT」のスコアと、初回受験で米国医師資格試験に不合格となる補正後オッズ比についてみたところ、同スコアが18~20(被験者の2.9%)の群では、同スコア29超の群に比べ、補正後オッズ比は13.06(95%信頼区間:11.56~14.76)だった。また、同スコアが21~23(5.6%)の同オッズ比は7.52(同:6.79~8.33)、24~26(13.9%)の同オッズ比は4.27(同:3.92~4.65)だった。MCATスコアと、成績理由による退学との関係は、同スコアが18~20の群では、29超の群に比べ、補正後オッズ比が11.08であり、同スコアが21~23の同オッズ比は5.97、24~26の同オッズ比は3.56だった。人種別では、アジア・環太平洋人の、白人に対する初回受験で米国医師資格試験に不合格となる補正後オッズ比は2.15、成績理由による退学に関する補正後オッズ比は1.69だった。また医学部進学のための借金が5万ドル以上ある場合も、同補正後オッズ比はそれぞれ1.68、2.33と高かった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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心拍数は慢性心不全の治療ターゲットか?:SHIFT試験

 心拍数高値は心不全のリスク因子であり、ivabradineによる選択的な心拍数低下療法は心血管アウトカムを改善することが、ドイツUniversitatsklinikum des SaarlandesのMichael Bohm氏らによる無作為化試験(SHIFT試験)で判明した。心拍数の上昇は心血管リスクの強力なマーカーとされる。SHIFT試験では、すでにivabradine投与による心拍数の低下が、症候性心不全患者における不良な臨床予後を低減することが示されており、これは心拍数がリスクのマーカーのみならずリスク因子でもあることを示唆するという。Lancet誌2010年9月11日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載の報告。ベースラインと治療28日の心拍数でそれぞれ5群に分けて解析 SHIFT試験は慢性心不全に対する選択的洞結節抑制薬ivabradineの効果を検討するプラセボ対照無作為化試験。研究グループは、今回、心拍数上昇は心不全における心血管イベントのリスク因子であるとの仮説を立て、その検証を行った。 慢性心不全の症状がみられ左室駆出率≦35%、心拍数≧70bpmの洞調律が保持された患者6,505例(ivabradine群:3,241例、プラセボ群:3,264例)が登録された。ベースラインの心拍数で70~71bpm(987例)、72~74bpm(1,364例)、75~79bpm(1,545例)、80~86bpm(1,287例)、≧87bpm(1,318例)の5群に分けた。 主要評価項目は、心血管死および心不全の増悪による入院の複合エンドポイントとした。ivabradine群では、治療28日の心拍数と予後の関連について解析した。ivabradineの直接的なリスク低下の作用機序としての心拍数について検討するために、心拍数の変化に基づく補正解析を行った。1bpmの上昇でリスクが3%増大、治療後の最低心拍数群でリスクが最低 プラセボ群の複合エンドポイントのイベント発生数は、最も心拍数が高い群(≧87bpm、682例)が286件と、最も低い群(70~71bpm、461例)の92件の2倍以上に達した(ハザード比:2.34、95%信頼区間:1.84~2.98、p<0.0001)。 プラセボ群では、ベースラインの心拍数が1bpm上昇するごとに複合エンドポイントのリスクが3%ずつ増大し、5bpmの上昇ごとに16%増大した。 ivabradine群では、治療28日の心拍数と心臓アウトカムの間に直接的な関連が認められた。すなわち、治療28日の心拍数が<60bpmに低下した患者(1,192例)の複合エンドポイントのイベント発生率は17.4%(95%信頼区間:15.3~19.6%)であり、60~64bpmの23.8%、65~69bpmの23.0%、70~74bpmの26.5%、≧75bpmの32.4%に比べ低かった(p<0.0001)。 治療28日までの心拍数の変化で補正を行ったところ治療効果が中和されたことから(ハザード比:0.95、95%信頼区間:0.85~1.06、p=0.352)、ivabradineの効果は心拍数の低下で説明できることが示された。 著者は、「心拍数が高いことは心不全のリスク因子であり、ivabradineによる選択的な心拍数低下療法は心血管アウトカムを改善する」と結論し、「心拍数は心不全の重要な治療ターゲットである」と指摘する。

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医師の力量評価スコア、無保険者や英語が話せない患者が多いと低スコア傾向に

医師のクリニカルパフォーマンス・スコアは、患者の中に無保険者や英語が話せない人の割合が多いと、低スコアになる傾向があることが明らかにされた。米国マサチューセッツ総合病院総合診療部門のClemens S. Hong氏らが、同一の医師グループに帰属するプライマリ・ケア医162人と、その患者約12万5,000人について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月8日号で発表した。高スコア群医師の患者は低スコア群より、高齢で合併症も多い傾向研究グループは、2003年1月1日~2005年12月31日にかけて、同一の医師グループ(9つの病院診療所と4つの地域保健センター)に属するプライマリ・ケア医162人のパフォーマンス・スコア「Health Plan Employer and Data Information Set」(HEDIS)と、その患者12万5,303人の属性との関連について、調査を行った。患者のカルテは、共通の電子カルテシステムで管理されていた。結果、スコアが低い方から三分位の医師の患者の平均年齢は46.6歳だったのに対し、高い方から三分位の医師の患者は51.1歳と、より高齢だった(p

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麻酔による合併症リスクが高い患児をいかに同定するか?

手術時の麻酔施行前に、International Study Group for Asthma and Allergies in Childhood(ISAAC)の改訂質問票で評価を行えば、周術期の呼吸器合併症のリスクが高い患児を同定可能なことが、オーストラリア、プリンセス・マーガレット小児病院(パース)麻酔科のBritta S von Ungern-Sternberg氏らが行ったコホート研究で示された。小児における麻酔に起因する疾患や死亡の主要な原因として、周術期の呼吸器系の合併症が挙げられる。これまでに合併症のリスク因子の報告はあるが、臨床における高リスク患児の同定法は確立されていないという。Lancet誌2010年9月4日号掲載の報告。単一施設における前向きコホート研究研究グループは、家族歴、麻酔法と周術期呼吸器合併症の関連を評価するプロスペクティブなコホート研究を実施した。2007年2月1日~2008年1月31日までにプリンセス・マーガレット小児病院で外科的あるいは内科的介入、待機的あるいは緊急処置として全身麻酔を施行された全患児を前向きに登録した。手術当日に、担当麻酔医がISAACの改訂質問票を用いて喘息、アトピー、上気道感染症、受動喫煙などの既往について調査した。麻酔法および周術期にみられたすべての呼吸器合併症が記録された。呼吸器疾患の既往歴、上気道感染症などがあると合併症リスクが増大12ヵ月後までに1万496人の患児から得られた9,297の質問票が解析の対象となった。患児の平均年齢は6.21(SD 4.8)歳であった。周術期の呼吸器合併症として気管支攣縮、喉頭痙攣、咳嗽/酸素飽和度低下/気道閉塞について解析した。呼吸器疾患の既往歴(夜間乾性咳嗽、運動時喘鳴、過去12ヵ月で3回以上の喘鳴、現在あるいは過去の湿疹の病歴)は、気管支攣縮(相対リスク:8.46、95%信頼区間:6.18~11.59、p<0.0001)、喉頭痙攣(同:4.13、同:3.37~5.08、p<0.0001)、周術期の咳嗽、酸素飽和度低下、気道閉塞(同:3.05、同:2.76~3.37、p<0.0001)の発現と有意な関連が認められた。上気道感染症は、症状がみられる場合には周術期の呼吸器合併症のリスクを増大させた(相対リスク:2.05、95%信頼区間:1.82~2.31、p<0.0001)。上気道感染症が手術前の2週間以内にみられた場合は周術期呼吸器合併症のリスクが有意に増大した(同:2.34、同:2.07~2.66、p<0.0001)のに対し、感染が手術前2~4週の場合は有意に低下していた(同:0.66、同:0.53~0.81、p<0.0001)。家族の2人以上に喘息、アトピー、喫煙の既往歴があると、周術期の呼吸器合併症のリスクが増大した(いずれも、p<0.0001)。麻酔の導入は吸入薬よりも静注薬の方が合併症のリスクが低く(いずれも、p<0.0001)、麻酔の維持は静注薬に比べ吸入薬が低リスクであった(いずれも、p<0.0001)。気道の確保は、研修医に比べ小児麻酔専門医が行う方が合併症リスクは低く(いずれもp<0.0001)、気管内挿管よりもマスクを使用する方が低リスクであった(いずれもp<0.0001)。著者は、「手術時の麻酔施行前の評価により、周術期の呼吸器合併症のリスクが高い患児を系統的に同定することが可能であり、それゆえターゲットを定めた特異的な麻酔法がベネフィットをもたらす可能性がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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世界一の長寿国日本、長生きに希望持っておらず

株式会社 フィリップス エレクトロニクス ジャパンは9月8日、「Philips Index(フィリップス インデックス)日本人の健康および精神的充足度に関する報告書2010」を発表した。報告書によると、日本人は他国に比較して、健康および精神的充足度が低く、長生きに関しても希望を持っていないことが明らかになった。「あなたは総合的にみて自分の健康および精神的充足度をどう思いますか?」という質問に対し、「とても良い」「良い」と答えた人の割合は、約38%という低い結果になった。また、「あなたは何歳まで生きると思いますか?」という質問に対して最も多かった回答は、「71歳から80歳(36.3%)」となり、「91歳以上」は3.9%にとどまった。フィリップス代表取締役社長ダニー・リスバーグは、「フィリップスは、世界中の人々に健康とやすらぎを提供する企業として、こうした調査結果から得られるグローバルな知見を活用して、超高齢社会を迎えた日本市場に貢献する製品やサービスについて、しっかりと検討をしていきたいと考えています」と述べている。詳細はプレスリリースへhttp://www.newscenter.philips.com/jp_ja/standard/about/news/others/100908_philips_index_2010.wpd

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降圧療法を強化してもCKD進行に影響は認められず:AASK試験

黒人CKD合併高血圧患者を対象に行われた、降圧療法の強化のCKD進展に対する影響を検討した試験の結果、130/80mmHg未満目標の強化血圧コントロールを行っても、腎疾患進行に与える影響は認められなかったことが報告された。ただし、基線での蛋白尿があるかないかで、効果に差がある可能性が示されたとも結論している。報告は、「AASK(African American Study of Kidney Disease and Hypertension)」共同研究グループによるもので、NEJM誌2010年9月2日号で掲載された。1,094例を130/80mmHg未満目標群か標準群かに無作為し追跡試験は、試験相(trial phase)期間に強化血圧コントロールか標準血圧コントロールを受けた1,094例のCKD合併高血圧の黒人患者を、無作為化し行われた。試験相(trial phase)期間を完了した被験者は、コホート相(cohort phase)への登録を促され、強化血圧コントロール群(130/80mmHg未満目標)か標準血圧コントロール群(140/90mmHg目標)に割り付けられ、血清クレアチニン値の倍増、末期腎不全診断、死亡を含むCKDの進行を主要臨床転帰とし追跡された。追跡期間は、8.8~12.2年にわたった。基線で蛋白/クレアチニン比が0.22超の患者にはベネフィットあり?試験相(trial phase)期間の被験者の平均血圧は、強化血圧コントロール群130/78mmHg、標準血圧コントロール群141/86mmHgだった。コホート相(cohort phase)期間の平均血圧は、強化血圧コントロール群131/78mmHg、標準血圧コントロール群134/78mmHgだった。両相の期間とも、群間で、主要臨床転帰リスクの有意差は認められなかった(強化血圧コントロール群のハザード比:0.91、P=0.27)。しかし、蛋白尿の基線値によって効果は異なり(相互作用のP=0.02)、蛋白/クレアチニン比が0.22超の患者にはベネフィットがある可能性が示された(ハザード比:0.73、P=0.01)。(武藤まき:医療ライター)

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新規糖尿病患者への集団教育プログラム実施の費用対効果:英国DESMONDプログラム

糖尿病新規診断患者に対する糖尿病教育・自己管理指導(DESMOND)プログラムの、長期的な臨床効果と費用対効果に関する調査結果が、英国シェフィールド大学Health and Related Research校のM Gillett氏らによって報告された。服薬治療だけの通常ケアと比較して、DESMONDプログラム導入の費用対効果は高く、体重減少、禁煙実現といった利点があることが明らかになったという。BMJ誌2010年8月28日号(オンライン版2010年8月20日号)掲載より。費用対効果の検証は初めてDESMONDプログラムは、認定講習を受けたヘルスケア専門家が6時間にわたる集団教育を1日もしくは半日ずつ2回で提供するもので、カリキュラムは生活習慣(食習慣、運動)と心血管リスク因子に焦点を合わせた内容となっている。臨床への効果を検討するため2004年に始められた「DESMOND試験」の短期的(1年)結果を踏まえ(http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=2994)、2008年からは英国糖尿病ガイドラインで、PCT(primary care trust)での実施が明記されるようになっており、現在、イングランドとスコットランドの80以上のPCTで導入されている。これまで費用対効果に関する検討は行われていなかったことから、Gillett氏らは、費用効果分析を実施した。DESMOND試験(13診療所・824例が12ヵ月間追跡された)データを用い、治療の有用性、合併症発生率、死亡率に関する長期アウトカムを、シェフィールド2型糖尿病モデルを使って解析すると同時に、コストおよび健康関連QOL(QALYs)について検討した。さらに、プログラムを取り巻く最近の実態コストを反映した「リアルワールド」コストを用いた分析も行った。主要評価項目は、増大コストとQALYs獲得とした。増大コストに比しQALYs獲得に優れるDESMOND試験データに基づく解析から、プログラムを受けた患者1人当たりの生涯コストの増大は、平均209ポンド(326ドル)と推計された。QALYs増大は0.0392で、QALYs増大にかかるコスト増は平均5,387ポンドと推計された。リアルワールドコストを用いた解析では、プログラムを受けた患者1人当たりの生涯コストの増大は、平均82ポンドと推計され、QALYs増大にかかるコスト増は平均2,092ポンドと推計された。確率的感度解析から、QALYs増大コストの許容額20,000ポンドに対し、試験データベースでは66%、リアルワールドベースでは70%の費用対効果がある可能性が示された。また一方向感受性解析から、プログラムによる介入効果は1年を過ぎると減じると仮定しても、費用対効果に優れることが示唆された。

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隠された代替アウトカムが、誤った結論を誘導する?

無作為化臨床試験のうち主要アウトカムとして代替アウトカム(surrogate outcome)を用いたものは17%に及ぶが、その使用を明記し、妥当性につき考察を加えた試験は約3分の1にすぎないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のJeppe Lerche la Cour氏が行ったコホート研究で示された。代替アウトカムは、無作為化試験において主要アウトカムの代わりに使用可能な場合があるが、不用意に用いると誤解を招いたり、有害な介入が実施されてしまう可能性があるという。欧米では、代替アウトカムに基づいて新薬の市販承認が行われる場合があり、その危険性を指摘する声もある。BMJ誌2010年8月21日号(オンライン版2010年8月18日号)掲載の報告。主要6誌掲載の代替アウトカムを用いた無作為化臨床試験を評価研究グループは、無作為化臨床試験に関する論文の著者が代替アウトカムの使用を告げているか、およびその妥当性を考察しているかについて検討するコホート研究を実施した。2005~2006年に発行された主要な医学ジャーナル6誌(JAMA、New England Journal of Medicine、Lancet、BMJ、Annals of Internal Medicine、PLoS Medicine)に掲載された無作為化臨床試験のうち、主要アウトカムとして代替アウトカムを用いた試験を抽出した。代替アウトカム使用試験:17%、使用報告:57%、妥当性解析:35%この2年間に6誌に掲載された無作為化臨床試験の論文の総数は626編であった。そのうち、109編(17%)が主要アウトカムとして代替アウトカムを使用していた。109編中、代替アウトカムの使用を明確に記載していたのは62編(57%、95%信頼区間:47~67%)のみであった。さらに、代替アウトカム使用の妥当性について考察を加えていたのは38編(35%、95%信頼区間:26~45%)にすぎなかった。著者は、「代替アウトカムを用いた無作為化臨床試験は多いが、その使用を妥当性の考察とともに明記した試験は約1/3にすぎなかった」と結論し、「誤った結論を誘導したり、新たな治療法を不用意に容認しないためには、代替アウトカムの使用につき、より適切に報告すべきである」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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肺がん患者への早期緩和ケア導入はQOL、精神症状、余命を改善

転移性の非小細胞肺がん患者には、早期緩和ケア導入のベネフィットが大きいことが明らかにされた。QOL、精神症状を有意に改善し、標準的ながん治療を受けた患者と比較して積極的治療は少ないにもかかわらず、生存期間がより長かったという。米国マサチューセッツ総合病院のJennifer S. Temel氏らの報告によるもので、NEJM誌2010年8月19日号に掲載された。転移性非小細胞肺がんはつらい症状に苦しむ上に、末期でも積極的治療を受ける場合がある。早期緩和ケア群と標準治療群に無作為化しQOL、精神症状を評価研究グループは、新たに転移性非小細胞肺がんと診断された患者を、標準的ながん治療と併せて早期緩和ケアを行う群(77例)と、標準的ながん治療のみを行う群(74例)に無作為に割り付け、ベースラインから12週までのQOLと精神症状の変化について追跡評価した。各評価には、QOLにはFACT-L(Functional Assessment of Cancer Therapy-Lung)スケール(スコア:0~136、より高いスコアほどQOLが良好であることを示す)が、精神症状にはHADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)が用いられた。主要評価項目は、12週時点におけるQOLの変化とした。末期医療に関するデータは電子カルテから集められた。QOL、精神症状、余命とも早期緩和ケア群が良好被験者151例のうち、12週までに27例が死亡に至り、評価が完遂されたのは12週時点で生存していた患者124例の86%に当たる107例だった。早期緩和ケア群のQOLは、標準的治療群より良好だった(FACT-Lスケールの平均スコア98.0対91.5、P=0.03)。加えて、早期緩和ケア群は標準的治療群より、抑うつ症状がより少なかった(16%対38%、P=0.01)。積極的な末期医療を受けた患者の割合は、早期緩和ケア群より標準的治療群が多かった(33%対54%、P=0.05)にもかかわらず、生存期間の中央値は早期緩和ケア群が、より長かった(11.6ヵ月対8.9ヵ月、P=0.02)。(朝田哲明:医療ライター)

3995.

20年前と比べ、米国青少年の聴覚障害が増大、約2割に

米国の12~19歳の聴覚障害罹患率が、20年前と比べて増加傾向にあることが明らかになった。1988~1994年調査時の罹患率は約15%だったが、2005~2006年調査時は約20%になっていたという。米国ブリガム&ウィメンズ病院Channing LaboratoryのJosef Shargorodsky氏らが、全米健康・栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey: NHANES)のデータを分析し明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月18日号で発表した。著者らは、「増加の要因と、回避・防止し得るリスクファクターを特定することが必要」と提言している。5,000人弱について、聴覚障害の種類や程度、リスク因子を調査Shargorodsky氏らは、NHANESの1988~1994年時の12~19歳被験者2,928人のデータと、2005~2006年時の同1,771人のデータについて検討した。被験者は、聴力測定器によって聴覚障害の有無を調べられ、聴覚障害の程度について、片耳もしくは両耳、低周波(0.5、1、2kHz)または高周波(3、4、6、8kHz)、軽度(15超~25未満dB)か中等度~重度(25以上dB)に分類された。また、聴覚障害とそのリスク因子についての相互関係についても分析調査された。近年の聴覚障害は片耳、高周波が高率結果、1988~1994年の聴覚障害罹患率は14.9%(95%信頼区間:13.0~16.9)だったのに対し、2005~2006年の同率は19.5%(同:15.2~23.8)と、有意に増加していた(p=0.02)。05~06年の聴覚障害は片耳が多く、その罹患率は14.0%(同:10.4~17.6)で、88~94年の同11.1%(同:9.5~12.8)に比べ高率だった(p=0.005)。また05~06年は、高周波聴覚障害の罹患率が16.4%(同:13.2~19.7)と、88~94年の同12.8%(同:11.1~14.5)に比べ高率だった(p=0.02)。聴覚障害のリスクは、連邦政府が定める貧困層の子どもで有意に高く、罹患率は23.6%(同:18.5~28.7)であり、そうでない場合の18.4%(同:13.6~23.2)に比べ有意に高率だった(補正後オッズ比:1.60、95%信頼区間:1.10~2.32)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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大動脈弁疾患の弁移植術、長期予後は自家移植が同種移植よりも優れる

大動脈弁疾患に対する弁移植術では、患者自身の肺動脈弁を大動脈弁として移植する自家大動脈起始部移植の方が、ドナーの提供による同種大動脈起始部移植よりも長期予後が優れることが、イギリスRoyal Brompton and Harefield NHS Trust心臓外科学のIsmail El-Hamamsy氏らが行った無作為化試験で示された。世界人口の増加や医療への近接性の改善に伴い、大動脈弁の手術数は今後30年以内に3倍に増大すると予想される。大動脈弁移植術は重篤な症状を呈する大動脈弁疾患患者の予後を改善するが、術後の生存率は一般人口に比べて低く、改善の程度は使用された移植片の種類に依存する可能性があるという。Lancet誌2010年8月14日号(オンライン版2010年8月3日号)掲載の報告。単一施設の1名の術者による2種類の移植術の10年生存率を評価研究グループは、大動脈弁疾患患者においては、患者自身の肺動脈弁を大動脈弁として移植する方法が、ドナーから提供された肺動脈弁を移植する方法よりも長期予後の改善効果が優れるとの仮説を検証するために、自家大動脈起始部移植(Ross procedure)と同種大動脈起始部移植の予後を比較する無作為化対照比較試験を実施した。大動脈弁移植を要する69歳未満の患者が登録され、イギリスの単一施設で自家大動脈起始部移植あるいは同種大動脈起始部移植を受ける群に無作為に割り付けられた。すべての移植術が一人の術者(Dr. Magdi H Yacoub)によって施行された。治療割り付け情報は試験関係者および患者に知らされていた。主要評価項目は、移植術後10年における生存率とした。同種移植群の死亡率は自家移植群の4倍以上、自家移植群の生存率は一般人口に匹敵228例が登録されたが、12例は18歳以下のため除外された。両群ともに108例ずつが割り付けられた。周術期死亡率は、自家移植群が1%未満、同種移植群は3%であったが、有意差は認められなかった(p=0.621)。移植術後10年の時点で、自家移植群の4例、同種移植群の15例が死亡した。10年生存率は自家移植群が97%(SD 2)、同種移植群は83%(SD 4)であった。同種移植群の死亡ハザード比は4.61であり、有意差がみられた(95%信頼区間:1.71~16.03、p=0.0060)。同種移植群の生存率(97%)は、年齢および性別で補正したイギリスの一般人口の生存率(96%)と同等であった。著者は、「これらの知見は、患者自身の肺動脈弁を大動脈弁として移植する自家大動脈起始部移植は、大動脈弁疾患患者の長期予後を改善するという仮説を支持する」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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CKD患者への透析開始を早めても生存改善に有意差認められず

慢性腎臓病(CKD)ステージ5の患者に対し、早期に維持透析開始をしても、生存率あるいは臨床転帰の改善とは関連しないことが明らかにされた。維持透析開始のタイミングには、かなりの差異がみられるものの、世界的に早期開始に向かう傾向にある。そうした中で本報告は、オーストラリアのシドニー医科大学校・王立North Shore病院腎臓病部門のBruce A. Cooper氏らの研究グループが、維持透析開始のタイミングが、CKD患者の生存に影響するかどうかを検討するため、早期開始群と晩期開始群との無作為化対照試験「IDEAL」を行った結果によるもので、NEJM誌2010年8月12日号(オンライン版2010年6月27日号)で発表された。eGFR10~14 mL/分を早期、5~7 mL/分を晩期に割り付けIDEAL(Initiating Dialysis Early and Late)試験は、オーストラリアとニュージーランドの計32施設で実施された。18歳以上の進行性のCKD患者で、推定糸球体濾過量(eGFR)が体表面積(コッククロフト・ゴールト式を用いて算出)1.73m2当たり10.0~15.0mL/分の患者の中から、eGFRが10.0~14.0mL/分の患者を早期に透析開始する群(早期開始群)に、eGFRが5.0~7.0mL/分の患者を遅く開始する群(晩期開始群)に無作為に割り付けた。試験参加者は、2000年7月~2008年11月の間に合計828例(平均年齢60.4歳、男性542例、女性286例、糖尿病患者355例を含む)が、早期開始群404例、晩期開始群424例に割り付けられ、2009年11月まで追跡された。主要評価項目は、全死因死亡とした。死亡率、有害事象とも有意差は認められず透析開始までの期間の中央値は、早期開始群1.8ヵ月(95%信頼区間:1.60~2.23)、晩期開始群は7.4ヵ月(同:6.23~8.27)だった。なお晩期開始群のうち75.9%は、開始指標としたeGFRは7.0mL/分より高値だったが、臨床症状が発現したため透析開始となった。追跡調査期間の中央値3.59年の間に、早期開始群404例中152例(37.6%)、晩期開始群424例中155例(36.6%)が死亡した(早期開始群のハザード比:1.04、95%信頼区間:0.83~1.30)、P=0.75)。有害事象(心血管イベント、感染症、透析合併症)の頻度においても、有意な群間差は認められなかった。(朝田哲明:医療ライター)

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米国40歳以上糖尿病患者のうち網膜症罹患率は28.5%

米国の40歳以上糖尿病患者のうち、糖尿病性網膜症の罹患率推定値は、28.5%と高率であることが明らかになった。特に非ヒスパニック系黒人で高く、4割近くにみられたという。米国疾病対策予防センター(CDC)のXinzhi Zhang氏らが、1,000人超の糖尿病患者について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月11日号で発表した。糖尿病性網膜症の罹患率、重症度に関して、全米人口をベースとした最近の動向は存在しなかったという。糖尿病1,006人について蛍光眼底撮影を実施同研究グループは、全米の断面調査「National Health and Nutrition Examination Survey」2005~2008年を基に分析を行った。サンプル数は1,006人だった。糖尿病の定義については、自己申告による糖尿病診断歴あり(妊娠糖尿病除く)、またはHbA1cが6.5%以上とした。両眼について2回の蛍光眼底撮影を行い、その程度についてAirlie House分類スキーム、Early Treatment Diabetic Retinopathy Study重症度スケールにて分類した。サンプルから求めた罹患率を基に、全米の40歳以上に関する罹患率推定値を算出した。40歳以上糖尿病の、男性の31.6%、女性の25.7%が糖尿病性網膜症全米40歳以上糖尿病患者における糖尿病性網膜症の罹患率推定値は、28.5%(95%信頼区間:24.9~32.5)だった。そのうち、治療をせずに放っておくと間もなく失明するほどの重症度の同罹患率推定値は、4.4%(同:3.5~5.7)だった。男女別では、同推定値は、男性が31.6%と、女性の25.7%に比べ有意に高かった(p=0.04)。人種別では、非ヒスパニック系黒人で同推定値が38.8%、また治療をせずに放っておくと間もなく失明する程の重症度の同推定値は9.3%と、非ヒスパニック系白人の各値26.4%、3.2%に比べ、いずれも有意に高かった(p=0.01)。なお、糖尿病性網膜症に関する独立危険因子は、男性(オッズ比:2.07)、HbA1c高値(同:1.45)、長期糖尿病歴(同:1.06)、インスリン使用(同:3.23)、収縮期血圧高値(1mmHg上昇につきオッズ比:1.03)だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

3999.

心筋梗塞のリスクがカルシウム・サプリメントで増大

 サプリメントとしてのカルシウムの使用(ビタミンDは併用しない)により、心筋梗塞のリスクが有意に増大することが、ニュージーランド・オークランド大学のMark J Bolland氏らが行ったメタ解析で判明した。カルシウムは高齢者の骨格系の健康維持を目的としたサプリメントとして一般的に用いられている。ところが、カルシウム・サプリメントは心筋梗塞や心血管イベントのリスクを増大させる可能性があることが、プラセボを対照とした無作為化試験で示唆されているという。BMJ誌2010年8月7日号(オンライン版2010年7月29日号)掲載の報告。カルシウム・サプリメントと心筋梗塞などの心血管イベントの関連をメタ解析 研究グループは、カルシウム・サプリメントと心血管イベントのリスク増大の関連の評価を目的に、患者レベルおよび試験レベルのデータに関してメタ解析を行った。 1966年~2010年3月までのデータベース(Medline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials)などを用いて、100例以上、平均年齢40歳以上、試験期間1年以上のカルシウム・サプリメント(≧500mg/日)に関するプラセボ対照無作為化試験を抽出した。 これらの試験の筆頭著者からデータの提供を受け、心筋梗塞などの心血管アウトカムは患者自身の報告、入院記録、死亡診断書で確認した。心筋梗塞リスクがカルシウム・サプリメント群で約30%増大 15試験が適格基準を満たした。患者レベルのデータは5試験[8,151例、フォローアップ期間中央値3.6年(四分位範囲2.7~4.3年)]で得られ、試験レベルのデータは11試験(1万1,921例、平均試験期間4.0年)から得られた。 5試験の患者レベルのデータの解析では、心筋梗塞の発症はカルシウム・サプリメント群が143例と、プラセボ群の111例に比べリスクが有意に31%増加していた(ハザード比:1.31、95%信頼区間:1.02~1.67、p=0.035)。 脳卒中(ハザード比:1.20、95%信頼区間:0.96~1.50、p=0.11)、心筋梗塞/脳卒中/突然死の複合エンドポイント(同:1.18、同:1.00~1.39、p=0.057)、死亡(同:1.09、同:0.96~1.23、p=0.18)については有意なリスクの増大を認めなかった。 試験レベルのデータの解析でも同様の結果が示された。すなわち、心筋梗塞を発症した296例のうち、166例がカルシウム・サプリメント群で、プラセボ群は130例であり、リスクはサプリメント群で有意に27%増加していた(ハザード比:1.27、95%信頼区間:1.01~1.59、p=0.038)。 著者は、「カルシウム・サプリメント(ビタミンDの併用なし)は心筋梗塞のリスクを有意に増大させることが明らかとなった」と結論し、「この大きいとは言えない心筋梗塞のリスク増大も、カルシウム・サプリメントの使用の拡大に伴って、膨大な疾病負担をもたらす可能性がある。骨粗鬆症の治療におけるカルシウム・サプリメントの役割の再評価が急務である」と指摘する。

4000.

抗てんかん薬と自殺傾向の関連、てんかん患者では認められず

抗てんかん薬と自殺との関連について、てんかん患者においては自殺リスク増大との関連は認められなかったこと、一方で、うつ病患者、あるいはてんかん、うつ病、双極性障害のいずれでもない患者で抗てんかん薬を服用していた患者ではリスク増大が認められたことが、スペイン・Risk MR Pharmacovigilance ServicesのAlejandro Arana氏らにより明らかにされた。これまでに行われた臨床試験のメタ解析の結果では、抗てんかん薬と自殺傾向(自殺念慮、自殺行動、または両方)との関連が示されていたが、Arana氏らは、一般集団を代表する患者データベースを用い、ケースコントロール試験にて、抗てんかん薬服用の有無と自殺関連イベント(自殺未遂、自殺既遂)との関連を解析した。NEJM2010年8月5日号掲載より。英国民の患者データベースで服薬有無と自殺との関連を解析Arana氏らが解析コホートとしたのは、英国の一般集団を代表する患者データベース「The Health Improvement Network(THIN)」(診療所医師による日々の臨床記録が集約、患者670万人以上を含む)で、そのうちてんかん、うつ病、双極性障害患者の治療データ(1988年7月1日~2008年3月31日に6ヵ月以上治療)を取得し、抗てんかん薬治療の有無を調べ追跡した。また、同コホートから、各症例患者にマッチ(年齢、性、治療内容)する5例ずつを選定しコントロール(対照)群とした。そのうえで抗てんかん薬使用の有無と自殺関連イベント発生率を調べ、交絡因子を補正し、ロジスティック回帰分析法でオッズ比を算出した。うつ病での服用者、疾患を有さない服用者ではリスク増大解析コホートは合計513万795例だった。このうち、いずれの疾患も有さず抗てんかん薬も未服用だったコホート(基準群:451万4,366例)の自殺関連イベント発生率は、10万人・年につき15.0(95%信頼区間:14.6~15.5)だった。これに対し同服用していたコホート(7万7,319例)の同発生率は39.4(32.6~47.1)だった。一方、てんかん患者では、未服用者(1万6,120例)は38.2(同:26.3~53.7)、服用者(3万9,325例)は48.2(同:39.4~58.5)だった。補正後解析の結果、抗てんかん薬の服用と自殺関連イベントのリスク増大との関連は、てんかん患者(オッズ比:0.59、95%信頼区間:0.35~0.98)、双極性障害患者(同:1.13、0.35~3.61)では認められなかったが、うつ病患者(同:1.65、1.24~2.19)と、いずれの疾患も有さないが服薬していた患者(同:2.57、1.78~3.71)では有意な関連が認められた。(武藤まき:医療ライター)

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