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中等症~重症アトピー性皮膚炎、ネモリズマブ追加で治療成功率が向上/Lancet

 そう痒を伴う中等症~重症のアトピー性皮膚炎を有する成人および青少年の治療において、基礎治療(局所コルチコステロイド[TCS]±局所カルシニューリン阻害薬[TCI])単独と比較して、基礎治療+ネモリズマブ(インターロイキン-31受容体サブユニットα拮抗薬)は、治療成功および皮膚症状改善の達成率の向上をもたらし、安全性プロファイルは両群でほぼ同様であることが、米国・ジョージ・ワシントン大学のJonathan I. Silverberg氏らが実施した2つの臨床試験(ARCADIA 1試験、ARCADIA 2試験)で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年8月3日号に掲載された。同じデザインの2つの無作為化プラセボ対照第III相試験 ARCADIA 1試験とARCADIA 2試験は、同じデザインの48週の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、ARCADIA 1試験は2019年8月~2021年9月に14ヵ国161施設で、ARCADIA 2試験は2019年8月~2022年11月に11ヵ国120施設で患者を登録した(Galdermaの助成を受けた)。 2つの試験とも、年齢12歳以上、そう痒を伴う中等症~重症のアトピー性皮膚炎(登録の2年以上前に診断)で、TCS±TCIによる治療で効果が不十分であった患者を対象とした。 被験者を、基礎治療(TCS±TCI)との併用で、ネモリズマブ30mg(ベースラインの負荷用量60mg)を4週に1回皮下投与する群、またはプラセボ群に、2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは2つで、16週目の時点でのInvestigator's Global Assessment(IGA)に基づく治療成功(IGAが0[皮膚病変消失]または1[同ほぼ消失]で、かつベースラインから2段階以上の改善)、およびEczema Area and Severity Index(EASI)のベースラインから75%以上の改善(EASI-75)とした。9つの主な副次エンドポイントもすべて有意に改善 2つの試験に合計1,728例を登録した。ネモリズマブ群に1,142例(ARCADIA 1試験620例[平均年齢33.5歳、女性48%]、ARCADIA 2試験522例[34.9歳、52%])、プラセボ群に586例(321例[33.3歳、45%]、265例[35.2歳、51%])を割り付けた。 両試験とも2つの主要エンドポイントを満たした。16週時のIGAに基づく治療成功の割合はプラセボ群に比べネモリズマブ群で有意に優れた(ARCADIA 1試験:36% vs.25%、補正後群間差:11.5%[97.5%信頼区間[CI]:4.7~18.3]、p=0.0003/ARCADIA 2試験:38% vs.26%、12.2%[4.6~19.8]、p=0.0006)。 また、EASI-75の達成割合も、プラセボ群に比しネモリズマブ群で有意に良好だった(ARCADIA 1試験:44% vs.29%、補正後群間差:14.9%[97.5%CI:7.8~22.0]、p<0.0001/ARCADIA 2試験:42% vs.30%、12.5%[4.6~20.3]、p=0.0006)。 9つの主な副次エンドポイント(そう痒[Peak Pruritus Numerical Rating Scale:PP-NRS]、睡眠[Sleep Disturbance Numerical Rating Scale:SD-NRS]など)はいずれも、ネモリズマブ群で有意な有益性を認めた。ネモリズマブ関連の可能性がある有害事象は1% 安全性プロファイルは両群でほぼ同様だった。少なくとも1件の試験治療下における有害事象を発現した患者は、ネモリズマブ群ではARCADIA 1試験で50%(306/616例)、ARCADIA 2試験で41%(215/519例)、プラセボ群ではそれぞれ45%(146/321例)および44%(117/263例)であった。このうち重篤な有害事象は、ネモリズマブ群ではARCADIA 1試験で1%(6例)、ARCADIA 2試験で3%(13例)、プラセボ群ではそれぞれ1%(4例)および1%(3例)であった。 ネモリズマブ関連の可能性がある治療関連有害事象は、ARCADIA 2試験で5例(1%)に10件報告された。 著者は、「アトピー性皮膚炎は多面的な病態生理を有する疾患で、臨床においてはさまざまな作用機序を有する薬剤を必要とするため、有効な治療法の探索を継続することは重要である」と述べた。

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いびきと認知症リスクとの関連

 年齢とともに増加するいびきと認知症リスクとの関連は、議論の的になっている。英国・オックスフォード大学のYaqing Gao氏らは、いびきと認知症リスクとの関連について観察的および因果関係の調査を実施し、この関連に対するBMIの影響を評価した。Sleep誌オンライン版2024年6月29日号の報告。 ベースライン時、認知症でなかった参加者45万1,250人のデータを用いて、自己申告によるいびきと認知症発症との関連を評価するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。いびきとアルツハイマー病(AD)との因果関係の調査には、双方向2サンプルメンデルランダム化(MR)分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中央値13.6年の間に認知症を発症したのは、8,325例。・いびきは、すべての原因による認知症(ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.89〜0.98)およびAD(HR:0.91、95%CI:0.84〜0.97)のリスク低下との関連が認められた。・BMIで調整するとこの関連性はわずかに弱まり、高齢者、APOE ε4対立遺伝子保有者、フォローアップ期間が短い人では関連性が強くなった。・MR分析では、いびきのADに対する因果関係は認められなかったが、ADに対する遺伝的因子がいびきリスク低下と関連していることが示唆された。・多変量MR分析では、ADがいびきに及ぼす影響は、主にBMIによるものであることが示唆された。 著者らは「いびきと認知症リスク低下との関連は、逆因果関係から生じている可能性があり、ADに対する遺伝的因子がいびきリスク低下と関連していることが示唆された。これは、前駆期アルツハイマー病(prodromal AD)における体重減少により引き起こされる可能性がある。高齢者におけるいびきの減少や体重減少は、認知症リスクの潜在的な初期の指標として、より一層注意を払う必要がある」としている。

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妊婦の睡眠体位は左側臥位じゃなくてもいい?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第261回

妊婦の睡眠体位は左側臥位じゃなくてもいい?妊娠中の仰臥位や右側臥位での睡眠は、下大静脈などを圧迫することがあるため、基本的に避けたほうがいいとされてきました。実際、左側臥位を勧める啓発を行っていた国もあります。死産の絶対リスクを推定した症例対照研究があって、左側臥位就寝する妊婦で1,000人当たり1.96、それ以外の姿勢で就寝する妊婦で1,000人当たり3.93というデータがこれを後押ししていた部分も大きかったようです1)。ただし、この研究のリミテーションとして、死産から25日程過ぎての面談であったため、「想起バイアス」がありうるということです。妊娠中の睡眠姿勢を前向きに評価した研究があります。Silver RM, et al. Prospective Evaluation of Maternal Sleep Position Through 30 Weeks of Gestation and Adverse Pregnancy Outcomes.Obstet Gynecol. 2019 Oct;134(4):667-676.対象は初産婦で単胎妊娠の女性8,706人でした。参加者は妊娠6~13週と22~29週の時点で、詳細な睡眠に関する質問票に回答しました。主要評価項目は、死産、妊娠高血圧症候群、胎児発育不全(SGA)の複合アウトカムでした。これらの転帰は、胎盤機能不全と関連があり、先行研究で非左側臥位睡眠との関連が報告されていたものです。結果、1,903人(22%)の女性が複合アウトカムを経験しました。しかし意外なことに、妊娠初期および中期のいずれにおいても、非左側臥位の就寝と複合アウトカムとの間に有意な関連はみられませんでした。それだけでなく、妊娠中期の非左側臥位は、むしろ死産リスクの低下と関連していました(調整オッズ比:0.27、95%信頼区間:0.09~0.75)。ただし、死産の症例数そのものが少なかったので、統計学的な解釈には注意が必要です。主観的ではなく、客観的に評価された(睡眠時体位を観察した)症例においても、複合アウトカムのリスクに有意差はありませんでした。では、右側臥位も大丈夫なのかというと、まだ結論は早いかもしれません。実際にこの研究、妊娠後期(30週以降)の睡眠姿勢については評価していません。後期の睡眠姿勢と妊娠転帰との関連については、まだ結論が出ていません。仰臥位そのものがしんどくなる妊婦も多いので、「横向きであれば好きなほうを向けばよい」くらいのスタンスで構わないのかもしれません。うつ伏せはさすがにやめておいたほうがよいでしょう。また、睡眠姿勢に関する過度な不安を抱かせないようにし、有害なイベントが発生した場合、母親に自責の念を抱かせないことも重要でしょう。1)Stacey T, et al. Association between maternal sleep practices and risk of late stillbirth: a case-control study. BMJ. 2011 Jun 14;342:d3403.

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尿検体の迅速検査【とことん極める!腎盂腎炎】第5回

尿検査でどこまで迫れる?【後編】Teaching point(1)尿定性検査の白血球陽性反応の細菌尿に対する感度は70〜80%程度であり、白血球反応陰性で尿路感染症を除外しない(2)硝酸塩を亜硝酸塩に変換できない(もしくは時間がかかる)微生物による尿路感染症もあり、亜硝酸塩陰性で尿路感染症を除外しない(3)尿pH>8の際にはウレアーゼ産生菌の関与を考える《今回の症例》70代女性が昨日からの悪寒戦慄を伴う発熱を主訴に救急外来を受診した。いままでも腎盂腎炎を繰り返している既往がある。また糖尿病のコントロールは不良である。腎盂腎炎を疑い尿定性検査を提出したが、白血球反応は陰性、亜硝酸塩も陰性であった。今回は腎盂腎炎ではないのだろうか…?はじめに尿検査はさまざまな要因による影響を受けるため解釈が難しく、尿検査のみで尿路感染症を診断することはできない。しかし尿検査の限界を知り、原理を深く理解すれば重要な情報を与えてくれる。そこで、あえて尿検査でどこまで診断に迫れるかにこだわってみる。前回、「尿検体の採取方法と検体の取り扱い」「細菌尿と膿尿の定義や原因」について紹介した。今回は引き続き、迅速に細菌尿を検知するための検査として有用な尿定性検査(試験紙)や尿沈渣、グラム染色などの詳細を述べる。1.白血球エステラーゼ(試験紙白血球反応)尿定性検査での白血球の検出は、好中球に存在するエステラーゼが特異基質(3-N-トルエンスルホニル-L-アラニロキシ-インドール)を分解し、生じたインドキシルがMMB(2-メトキシ-4-Nホルモリノ-ベンゼンジアゾニウム塩)とジアゾカップリング反応し、紫色を呈することを利用している。そのため顆粒球しか検出できず、リンパ球には反応しない。多少崩壊した好中球や腟分泌物で偽陽性となりうる。糖>3g/dL、タンパク>500mg/dL、高比重、酸性化物質の混入(ケトン尿)などで偽陰性となる1)。尿試験紙を保存している容器の蓋が開いた状態で2週間以上放置すると試薬が変色し、約半数で亜硝酸は偽陽性となる2)のため注意が必要である。日本で市販されている白血球反応は、(±):10〜25個/μL、(1+):25〜75個/μL、(2+):75〜250個/μL、(3+):500個/μLに相当する(尿沈渣鏡検での陽性と判定するWBC≧5/HPFは20個/μL相当)。2.亜硝酸塩尿定性検査の亜硝酸塩は、細菌の存在を間接的に評価する方法である。細菌が硝酸塩を還元し、亜硝酸塩とすることを利用して検出している。細菌の細胞質内に亜硝酸をつくる硝酸還元酵素もあるが、主にNap(periplasmic dissimilatory nitrate reductase)と呼ばれる酵素を有する細菌がperiplasmic space(細胞膜と細胞外膜の間)に亜硝酸塩を作った場合に検出できると考えられている3)。食品などから摂取した硝酸塩が尿中に存在すること、前述のような菌種が膀胱内に存在すること、尿路への貯留時間が4時間以上あることが必要である4)。腸内細菌目細菌やStaphylococcus属は硝酸塩を亜硝酸塩に還元でき、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)も還元できるが還元するのに時間がかかり、レンサ球菌や腸球菌は還元できない5)。硝酸塩を亜硝酸塩に変換できない微生物、pH<6.0、ウロビロノーゲン陽性、ビタミンC(アスコルビン酸)が存在する場合に偽陰性となる1)。血清ビリルビン値が高いときは、機序不明だが偽陽性が報告されている6)。3.尿pH意外に思われるかもしれないが、実は尿路感染症の診断において、尿定性検査での尿pHも有用である。尿pH<4.5もしくは>8.0の場合は生理的範囲では説明できない。尿路感染症の場合に酸性尿となることもあるが、臨床的意義が高いのはアルカリ尿のほうである。尿pH>8であれば、ウレアーゼ産生菌の関与を考える。細菌のもつウレアーゼが尿素を加水分解し、アンモニアが生成され尿pHが上昇する(図)7)。画像を拡大する代表的菌種はProteus mirabilis、Klebsiella pneumoniae、Morganella morganiiなど8)である。また、Corynebacterium属もウレアーゼを産生する。Escherichia coliはウレアーゼを産生することはなく、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、Enterococcus属も産生率は低い。尿路感染症での尿pHと培養結果を検討した研究では、pHが高いほどProteus mirabilisの頻度が高かったという報告もあり、実臨床でも起因菌の推定に有用である9)。また、尿pHが高いことは、リン酸マグネシウムアンモニウム結石(ストルバイトとも呼ばれる)ができやすいことにも関連する10)。グラム染色や尿沈渣でこれらを確認することで間接的に尿pHを予測することもできる。閉塞性尿路感染症+意識障害ではウレアーゼ産生菌による高アンモニア血症を鑑別する必要がある。4. 迅速検査の組み合わせから尿路感染症を診断するここまで各種検査の詳細について述べてきたが、いずれも単独で尿路感染症を診断できるものではない。しかしながら各種検査を正確に解釈し、組み合わせることで診断に迫ることができる。各種検査とその組み合わせによる診断特性についてまとめると表1~311-16)となる。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する白血球反応は膿尿検出の感度・特異度は比較的高いが、陽性であれば尿路感染症であるというわけではなく、また白血球反応が陰性で尿路感染症状がある患者では、尿沈渣や尿培養を検討する必要がある。亜硝酸塩は感度が低く、陰性でも尿路感染症を否定できないが、陽性なら尿路感染症を強く疑う根拠とはなる。逆に白血球エステラーゼと亜硝酸塩がともに陰性であれば尿路感染症の可能性を下げる。尿沈渣は簡便性に劣るが信頼性が高く、白血球数や細菌数によって尿路感染症の可能性を段階的に評価できる。尿グラム染色は迅速に施行することができ、得られる情報量も多く、診断特性が高い検査の1つである。とくに尿沈渣の検査を夜間・休日に施行できない施設では大きな武器となる。おわりに逆説的ではあるが、あくまで検査所見のみをもって尿路感染症を診断することができないことは繰り返し述べておく。検査を適切に解釈し、病歴・身体診察と組み合わせることでより正確な診断に迫れることは忘れないでほしい。本項が検査の解釈の一助となれば幸いである。《今回の症例の診断》昨日より頻尿を認めており、左CVA叩打痛も陽性であった。尿グラム染色ではレンサ状のグラム陽性球菌を認めた。尿定性での白血球反応陽性の感度が70%程度であること、腸球菌やレンサ球菌では亜硝酸塩は陰性になることを鑑みて、臨床所見とあわせて腎盂腎炎の疑いで入院加療とした。翌日、尿培養からB群溶連菌を認め、これに伴う腎盂腎炎と診断した。1)Simerville JA, et al. Am Fam Physician. 2005;71:1153-1162.2)Gallagher EJ et al. Am J Emerg Med. 1990;8:121-123.3)Morozkina EV, Zvyagilskaya RA. Biochemistry. 2007;72:1151-1160.4)Wilson ML, Gaido L. Clin Infect Dis. 2004;38:1150-1158.5)Sleigh JD. Br Med J. 1965;1:765-767.6)Watts S, et al. Am J Emerg Med. 2007;25:10-14.7)Burne RA, Chen YY. Microbes Infect. 2000;2:533-542.8)新井 豊ほか. 泌尿器科紀要 1989;35:277-281.9)Lai HC, et al. J Microbiol Immunol Infect. 2021;54:290-298.10)Daudon M, Frochot V. Clin Chem Lab Med. 2015;53:s1479-1487.11)Ramakrishnan K, Scheid DC. Am Fam Physician. 2005;71:933-942.12)Zaman Z, et al. J Clin Pathol. 1998;51:471-472.13)Williams GJ, et al. Lancet Infect Dis. 2010;10:240-250.14)Whiting P, et al. BMC Pediatr. 2005;5:4.15)Meister L, et al. Acad Emerg Med. 2013;20:631-645.16)Ducharme J, et al. CJEM. 2007;9:87-92.

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チルゼパチド、閉塞性睡眠時無呼吸の肥満者の睡眠アウトカムを改善/NEJM

 中等症~重症の閉塞性睡眠時無呼吸と肥満のある患者の治療において、プラセボと比較してチルゼパチド(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド[GIP]とグルカゴン様ペプチド1[GLP-1]の受容体作動薬)は、無呼吸低呼吸指数(AHI)の改善とともに体重減少をもたらし、良好な睡眠関連の患者報告アウトカムを示すことが、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のAtul Malhotra氏らSURMOUNT-OSA Investigatorsが実施した「SURMOUNT-OSA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年6月21日号で報告された。PAP療法の有無別の2つの試験からなる無作為化試験 SURMOUNT-OSA試験は2022年6月~2024年3月に、9ヵ国60施設で実施した52週間の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験(Eli Lillyの助成を受けた)。 中等症~重症の閉塞性睡眠時無呼吸(AHI[睡眠中の1時間当たりの無呼吸および低呼吸の回数]≧15回/時)および肥満(BMI≧30[日本は≧27])と診断された患者469例を登録した。これらの患者を、ベースラインで気道陽圧(PAP)療法を受けていない集団(234例、試験1)と受けている集団(235例、試験2)に分け、それぞれ最大耐用量のチルゼパチド(10または15mg)を週1回皮下投与する群(試験1:114例、試験2:120例)またはプラセボ群(同120例、115例)に無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、AHIのベースラインから52週までの変化量とした。PAP療法の有無を問わず、AHIが有意に低下 ベースラインにおいて試験1は平均年齢が47.9歳、男性が67.1%、白人が65.8%、平均BMIが39.1、平均AHIが51.5回/時であり、試験2はそれぞれ51.7歳、72.3%、73.1%、38.7、49.5回/時であった。 試験1では、52週時のAHIの平均変化量は、プラセボ群が-5.3回/時(95%信頼区間[CI]:-9.4~-1.1)であったのに対し、チルゼパチド群は-25.3回/時(-29.3~-21.2)であり、推定治療群間差は-20.0回/時(95%CI:-25.8~-14.2)とチルゼパチド群で有意に優れた(p<0.001)。 また、試験2のAHIの平均変化量は、プラセボ群の-5.5回/時(95%CI:-9.9~-1.2)に対し、チルゼパチド群は-29.3回/時(-33.2~-25.4)であり、推定治療群間差は-23.8回/時(95%CI:-29.6~-17.9)とチルゼパチド群で有意に良好だった(p<0.001)。体重減少、hsCRP濃度、低酸素負荷、収縮期血圧なども改善 副次エンドポイントはすべて、PAP療法の有無にかかわらずチルゼパチド群で有意に優れた。このうち主なものとして、52週時の体重の変化率(推定治療群間差は試験1:-16.1%[95%CI:-18.0~-14.2]、試験2:-17.3%[-19.3~-15.3])、高感度C反応性蛋白(hsCRP)濃度の変化量(同試験1:-0.7mg/L[-1.2~-0.2]、試験2:-17.3mg/L[-19.3~-15.3])、低酸素負荷の変化量(同試験1:-70.1%分/時[-90.9~-49.3]、試験2:-61.3%分/時[-84.7~-37.9])、48週時の収縮期血圧の変化量(同試験1:-7.6mmHg[-10.5~-4.8]、試験2:-3.7mmHg[-6.8~-0.7])が挙げられた。 また、患者報告アウトカムであるPatient-Reported Outcomes Measurement Information System(PROMIS)の短縮版Sleep-related Impairment(PROMIS-SRI)および同短縮版Sleep Disturbance(PROMIS-SD)の52週時までの試験1、2を合わせた変化量は、チルゼパチド群で良好だった(いずれもp<0.001)。 一方、チルゼパチド群では消化器系の有害事象の頻度が高く、試験1では下痢が26.3%、悪心が25.4%、嘔吐が17.5%、便秘が15.8%で発現し、試験2ではそれぞれ21.8%、21.8%、9.2%、15.1%に認めた。これらの大部分は軽度~中等度だった。また、試験2のチルゼパチド群で急性膵炎を2例確認した。甲状腺髄様がんの報告はなかった。 著者は、「2つの試験において、チルゼパチドの投与を受けた参加者では、閉塞性睡眠時無呼吸に関連する一般的な心血管リスク因子の改善とともに、睡眠呼吸障害や、主観的睡眠障害および睡眠関連障害の緩和において臨床的に意義のある変化を認めた」とまとめている。

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抗うつ薬中断後症状の発生率〜メタ解析

 抗うつ薬中断後症状は、実臨床においてさらに重要度が増しているが、その発生率は定量化されていない。抗うつ薬中断後症状の推定発生率を明らかにすることは、治療中断時に患者および臨床医、抗うつ薬治療研究者に対する有用な情報提供につながる。ドイツ・ケルン大学のJonathan Henssler氏らは、抗うつ薬とプラセボを中断した患者における抗うつ薬中断後症状の発生率を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The Lancet Psychiatry誌2024年7月号の報告。 2022年10月13日までに公表された、抗うつ薬中断後症状の発生率を評価したランダム化比較試験(RCT)、その他の比較試験、観察研究を、Medline、EMBASE、CENTRALよりシステマティックに検索した。対象研究は、精神疾患、行動障害、神経発達障害の患者を対象に、既存の抗うつ薬(抗精神病薬、リチウム、チロキシンを除く)またはプラセボの中断または漸減を調査した研究とした。新生児の研究および器質性疾患による疼痛候群などの身体症状に対して、抗うつ薬を使用した研究は除外した。研究の選択、サマリデータの抽出、バイアスリスク評価後のデータを用いて、ランダム効果メタ解析を行った。主要アウトカムは、抗うつ薬またはプラセボの中断後の症状の発生率とした。また、重度の中断後症状の発生率も分析した。方法論的変数のテストには、感度分析、メタ回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングされた論文6,095件から79件(RCT:44件、観察研究:35件)、2万1,002例(女性:72%、男性:28%、平均年齢:45歳、年齢範囲:19.6〜64.5)をメタ解析に含めた。・民族に関するデータは、一貫して報告されなかった。・1万6,532 例の患者が抗うつ薬を中止し、4,470 例の患者がプラセボを中止した。・1つ以上の抗うつ薬中断症状の発生率は、抗うつ薬中断群(研究グループ:62件)で0.31(95%信頼区間[CI]:0.27〜0.35)、プラセボ群(研究グループ:22件)で0.17(95%CI:0.14〜0.21)であった。・対象のRCTにおける抗うつ薬中断群とプラセボ群における中断後症状の発生率の差は、0.08(95%CI:0.04〜0.12)であった。・重度の抗うつ薬中断後症状の発生率は、抗うつ薬中断群で0.028(95%CI:0.014〜0.057)、プラセボ群で0.006(95%CI:0.002〜0.013)であった。・抗うつ薬中断後症状の発生率の高い薬剤は、desvenlafaxine、ベンラファキシン、イミプラミン、エスシタロプラムであり、重症度と関連していた薬剤は、イミプラミン、パロキセチン、desvenlafaxine、ベンラファキシンであった。・結果の異質性は、顕著であった。 著者らは、「プラセボ群における非特異的効果を考慮すると、抗うつ薬中断後症状の発生率は約15%であり、中断した患者の6〜7人に1人が影響を受けることが明らかとなった。サブグループおよび異質性の分析では、診断、投薬、試験関連特性では説明不能な因子を示唆しており、患者、臨床医、またはその両方の主観的因子が影響している可能性がある。結果を解釈するには、残存または再発の精神病理を考慮する必要があるが、本結果は、過度の不安を引き起こすことなく、抗うつ薬中断後症状の可能性に関する知見を患者、臨床医が得ることにつながるであろう」としている。

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第220回 1型糖尿病患者が細胞移植治療でインスリン頼りを脱却

1型糖尿病患者が細胞移植治療でインスリン頼りを脱却幹細胞から作るVertex Pharmaceuticals社の膵島細胞VX-880移植治療の有望な第I/II相FORWARD試験結果がこの週末の米国糖尿病協会(ADA)年次総会で報告されました。VX-880が投与された1型糖尿病(T1D)患者のインスリン使用が減るか不要となっており、1回きりの投与でインスリンに頼らずとも済むようになる可能性が引き続き示されています1,2)。最近の調査結果によると、先進の技術使用にもかかわらず、T1D患者の6%ほどが低血糖の自覚困難で誰かの助けを要する深刻な低血糖を繰り返し被っています3)。低血糖はT1D患者にしばしば認められます。しかしT1D患者は時と共にその自覚が困難になることがあり、その症状を感じられなくなる恐れがあります。自覚なく治療されずじまいの低血糖はやがて混乱、昏睡、発作、心血管疾患などの深刻な低血糖イベント(SHE)を招き、下手すると死に至ります。FORWARD試験は先立つ1年間のSHE回数が2回以上で、低血糖の自覚が困難なT1D患者を募って実施されています。当初の被験者数は17例でしたが、良好な結果が得られていることを受けてさらに約20例が試験に加わることになっています。当初の予定人数の17例はすでに組み入れ済みで、そのうち14例はVX-880投与に至っています。VX-880はヒト幹細胞から作られる膵島細胞を成分とし、試験では被験者の肝門脈に注入されました。VX-880が投与された14例のうち、目標用量(full dose)が1回きり投与された12例の経過は良好で、全員に膵島細胞が定着しました。投与前には生来のインスリン分泌の指標であるCペプチドが空腹時に検出できませんでしたが、VX-880投与後90日までに糖に応じたインスリン生成が確認されています。12例中11例はインスリン投与が減るか不要になりました。経過180日を過ぎた10例のうち7例はインスリン投与が不要となり、2例は日々のインスリン使用がおよそ70%少なくて済むようになりました。最終観察時点で12例全員のHbA1cは米国糖尿病協会(ADA)が掲げる目標である7%未満に落ち着いており、常時測定の糖濃度は70%超のあいだ目標範囲である70~180mg/dLに収まっていました。少なくとも1年間が経過した3例はSHEなしで90日目以降を過ごせており、インスリンに頼ることなくHbA1c 7%未満を達成しています。主だった血糖指標一揃いの大幅な改善、SHEの抑制、インスリン投与頼りの脱却の効果をみるに、VX-880はT1Dの治療を根底から変え、患者の負担を大幅に軽減しうると試験医師の1人Piotr Witkowski氏は言っています2)。玉に瑕なことにVX-880投与患者は免疫抑制治療を続ける必要があります。VX-880で備わった膵島細胞を守って免疫に排除されずに居続けられるようにするためです。そこでVertex社は免疫抑制治療不要の細胞治療VX-264の開発も進めています。VX-264はVX-880に免疫から守る覆いをつけたものであり、VX-880と同様に第I/II相試験が進行中です4)。参考1)Expanded FORWARD Trial Demonstrates Continued Potential for Stem Cell-Derived Islet Cell Therapy to Eliminate Need for Insulin for People with T1D / PRNewswire2)Vertex Announces Positive Results From Ongoing Phase 1/2 Study of VX-880 for the Treatment of Type 1 Diabetes Presented at the American Diabetes Association 84th Scientific Sessions / BUSINESS WIRE 3)Sherr JL, et al. Diabetes Care. 2024;47:941-947.4)NCT05791201(ClinicalTrials.gov)

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睡眠時無呼吸は将来の入院リスクと関連

 睡眠時無呼吸を有する50歳以上の人では症状がない人に比べて、将来、病気で入院するオッズが21%高いことが新たな研究で明らかになった。この研究を実施した米フロリダ大学医学部のChristopher Kaufmann氏は、「この結果は、過体重、健康不良、うつ病といった医療サービス利用の増加に寄与する可能性のある因子を考慮した後でも変わらなかった」と話している。この研究結果は、米国睡眠学会および睡眠研究学会の年次総会(SLEEP 2024、6月1〜5日、米ヒューストン)で発表され、要旨が「Sleep」5月増刊号1に掲載された。 睡眠時無呼吸は、睡眠中に呼吸停止が繰り返し起こることで眠りが妨げられる症状を指し、閉塞性睡眠時無呼吸と中枢性睡眠時無呼吸に大別される。症例が多いのは閉塞性睡眠時無呼吸であり、睡眠中に空気の通り道である上気道が閉塞して呼吸が停止することで発生する。睡眠時無呼吸を未治療でおくと、高血圧、冠動脈疾患、心房細動、脳卒中、2型糖尿病などの健康問題を招く恐れがあることが知られている。 Kaufmann氏らの研究では、加齢に伴い生じる健康問題に関する研究であるHealth and Retirement Studyの2016年と2018年の調査に参加した50歳以上の成人2万115人のデータが分析された。調査参加者は、2016年の調査で睡眠時無呼吸も含めた睡眠障害の有無について、2018年の調査では、その後の医療サービスの利用(入院、在宅医療、ナーシングホームの利用など)の有無について尋ねられていた。参加者の11.8%が睡眠時無呼吸を有していることを報告していた。 人口統計学的属性やBMI、健康状態、抑うつ症状の有無で調整して解析した結果、2016年の時点で睡眠時無呼吸を有していた人では有していなかった人に比べて、2018年に医療サービスの利用を報告するオッズが21%有意に高いことが明らかになった(調整オッズ比1.21、95%信頼区間1.02〜1.43)。医療サービスの中では、入院のオッズが有意に高かったが(同1.21、1.02〜1.44)、在宅医療の利用に有意差は認められなかった(同1.23、0.99〜1.54)。 Kaufmann氏は学会のニュースリリースの中で、「われわれの研究では、睡眠時無呼吸を有する50歳以上の人では有していない人に比べて、将来的に医療サービスを利用する可能性の高いことが示唆された」と述べた上で、「睡眠時無呼吸に対処することは、個人の健康状態を改善するだけでなく、医療資源への負担を軽減し、より効率的かつ効果的な医療提供につながる可能性がある」との考えを示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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進行胃・食道胃接合部がんの1次治療、tislelizumab+化学療法vs.プラセボ+化学療法/BMJ

 進行胃・食道胃接合部がんの1次治療として、抗PD-1抗体tislelizumab+化学療法は化学療法単独との比較において全生存期間(OS)の改善に優れることが示された。中国医学科学院のMiao-Zhen Qiu氏らRATIONALE-305 Investigatorsによる第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「RATIONALE-305試験」の結果で、PD-L1 TAP(tumor area positivity)スコア5%以上の患者集団および無作為化された全患者集団のいずれにおいても、OSの有意な延長が認められた。進行胃・食道胃接合部がんの1次治療として、プラチナ製剤+5-FUの併用化学療法単独では生存転帰が不良であり、抗PD-1抗体の上乗せを検討した先行研究では、一貫したOSベネフィットは示されていない。そのため、抗PD-1療法のOSベネフィットおよびPD-L1発現状況によるOSベネフィットの違いについては、なお議論の的となっていた。BMJ誌2024年5月28日号掲載の報告。PD-L1 TAPスコア5%以上の患者集団、無作為化全患者集団のOSを評価 RATIONALE-305試験は、2018年12月13日~2023年2月28日に、アジア、欧州、北米の146医療センターで行われた。 被験者は、全身療法未治療のHER2陰性、切除不能な局所進行または転移のある胃・食道胃接合部がんの18歳以上の患者で、PD-L1の発現状況は問わなかった。 研究グループは被験者を1対1の割合で、tislelizumab 200mg(3週ごと静脈内投与)+化学療法(治験担当医師の選択でオキサリプラチン+カペシタビン、またはシスプラチン+5-FU)を受ける群またはプラセボ+化学療法を受ける群に割り付けた。層別化因子は、試験地、PD-L1発現状況、腹膜転移の有無、および治験担当医師の化学療法選択とした。治療は、病勢進行または許容不能な毒性の発現まで続けられた。 主要評価項目はOSで、PD-L1 TAPスコア5%以上の患者集団および無作為化全患者集団の両方で評価が行われた。安全性は、試験治療を少なくとも1回受けた患者集団で評価した。いずれの患者集団でもOSが有意に延長 2018年12月13日~2021年2月9日に1,657例がスクリーニングを受け、うち660例が不適格(適格基準を満たしていない、同意を撤回、有害事象またはその他の理由)とされ、997例がtislelizumab+化学療法群(501例)またはプラセボ+化学療法群(496例)に無作為化された。 tislelizumab+化学療法群は化学療法群と比べて、PD-L1 TAPスコア5%以上の患者集団(中央値17.2ヵ月vs.12.6ヵ月、ハザード比[HR]:0.74[95%信頼区間[CI]:0.59~0.94]、p=0.006[中間解析時点の評価による])、無作為化全患者集団(15.0ヵ月vs.12.9ヵ月、0.80[0.70~0.92]、p=0.001[最終解析時点の評価による])の両者で、OSの統計学的に有意な延長が示された。 Grade3以上の治療関連有害事象は、tislelizumab+化学療法群では54%(268/498例)に、化学療法群では50%(246/494例)に認められた。

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週末の短時間の「寝だめ」、うつ病改善に役立つ可能性

 週末にまとまった睡眠をとる、いわゆる「寝だめ」は疲労回復や心身の健康に役立つのか。賛否が分かれる議論であったが、寝だめがうつ病の改善に一定の効果があるとする研究結果が発表された。中国・中南大学湘雅医院のZhicheng Luo氏らによる本研究はJournal of Affective Disorders誌2024年6月1日号「Research paper」に掲載された。 研究者らは、米国成人における「週末の寝だめ」(Weekend Catch-up Sleep:WCS、週末の睡眠時間から平日の睡眠時間を引いた時間/1日当たり)が米国の成人のうつ症状に与える影響を調査した。2017~20年の国民健康栄養調査(NHANES)から7,719人の参加者を登録した。睡眠時間とうつ症状に関する情報は、自己申告による質問とPHQ-9スコアで評価し、回帰分析を使用してWCSと抑うつ症状の関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・WCSのうつ症状に対するオッズ比は0.746(95%信頼区間[CI]:0.462~1.204、p=0.218)、PHQ-9スコアの変化は-0.429(95%CI:-0.900~0.042、p=0.073)であり、有意な相関性は見出せなかった。・WCSとうつ病の相関は滑らかなL字型を示し、持続時間0~2時間のWCSのみ、うつ症状やPHQ-9スコアと統計的有意に関連していた。・サブグループ分析では、WCSとうつ症状は、男性、65歳未満、および平日の睡眠時間が短い人でマイナスの関連がより強かった(相互作用のp<0.05)。 研究者らは、「本研究は適度なWCSがうつ症状の発生率の低下と関連していることを示唆しているが、この研究は横断的デザインであるため因果関係を確定することはできない。将来的には縦断的研究を通じて、より詳細な因果関係を解明する必要がある」としている。

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腕に貼る麻疹・風疹ワクチンは乳幼児に安全かつ有効

 予防接種の注射を嫌がる子どもに、痛みのないパッチを腕に貼るという新たなワクチンの接種方法を選択できるようになる日はそう遠くないかもしれない。マイクロニードルと呼ばれる微細な短針を並べたパッチ(microneedle patch;MNP)を腕に貼って経皮ワクチンを投与する方法(マイクロアレイパッチ技術)で麻疹・風疹ワクチン(measles and rubella vaccine;MRV)を単回接種したガンビアの乳幼児の90%以上が麻疹から保護され、全員が風疹から保護されたことが、第1/2相臨床試験で示された。英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の医学研究評議会ガンビアユニットで乳児免疫学の責任者を務めるEd Clarke氏らによるこの研究結果は、「The Lancet」に4月29日掲載された。 Clarke氏は、「マイクロアレイパッチ技術による麻疹・風疹ワクチン投与(MRV-MNP)はまだ開発の初期段階にあるが、今回の試験結果は非常に有望であり、多くの関心や期待を呼んでいる。本研究により、この方法で乳幼児にワクチンを安全かつ効果的に投与できることが初めて実証された」と語る。 この臨床試験では、18〜40歳の成人45人と、生後15〜18カ月の幼児と生後9〜10カ月の乳児120人ずつを対象に、MRV-MNPの安全性と有効性、忍容性が検討された。これらの3つのコホートは、MRV-MNPとプラセボの皮下注射を受ける群(MRV-MNP群)とプラセボのMNPとMRVの皮下注射(MRV皮下注群)を受ける群に、2対1(成人コホート)、または1対1(幼児・乳児コホート)の割合でランダムに割り付けられた。 その結果、ワクチン接種から14日後の時点で、MRV-MNP群に安全性の懸念は生じておらず、忍容性のあることが示された。MRV-MNPを受けた幼児の77%と乳児の65%に接種部位の硬化が認められたが、いずれも軽症で治療の必要はなかった。乳児コホートのうち、ベースライン時には抗体を保有していなかったが接種後42日時点で麻疹ウイルスと風疹ウイルスに対する抗体の出現(セロコンバージョン)が確認された対象者の割合は、MRV-MNP群でそれぞれ93%(52/56人)と100%(58/58人)、MRV皮下注群では90%(52/58人)と100%(59/59人)であった。接種後180日時点でも、MRV-MNP群では91%(52/57人)と100%(57/57人)の対象者で麻疹ウイルスと風疹ウイルスに対するセロコンバージョンを維持していた。 一方、幼児コホートで、ベースライン時には抗体を保有していなかったが、接種後42日時点で麻疹ウイルスと風疹ウイルスに対するセロコンバージョンが確認された割合は、MRV-MNP群で100%(5/5人)、MRV皮下注群で80%(4/5人)であった。風疹ウイルスに対しては、研究開始時から全ての対象児が抗体を保有していた。 こうした結果を受けてClarke氏は、「マイクロアレイパッチ技術によるワクチン接種としては麻疹ワクチンが最優先事項だが、この技術を用いて他のワクチンを投与することも今や現実的になった。今後の展開に期待してほしい」と話す。 研究グループは、マイクロアレイパッチ技術によるワクチン接種が貧困国でのワクチン接種を容易にする可能性について述べている。この形のワクチンなら、輸送が容易になるとともに冷蔵保存が不要になる可能性もあり、医療従事者による投与も必要ではなくなるからだ。論文の筆頭著者であるロンドン大学衛生熱帯医学大学院の医学研究評議会ガンビアユニットのIkechukwu Adigweme氏は、「この接種方法が、恵まれない人々の間でのワクチン接種の公平性を高めるための重要な一歩になることをわれわれは願っている」と話す。 研究グループは、今回の試験で得られた結果を確認し、さらに多くのデータを提供するために、より大規模な臨床試験を計画中であることを明かしている。

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手掌と足底の皮疹の鑑別診断【1分間で学べる感染症】第2回

画像を拡大するTake home message発熱と皮疹の鑑別診断は多岐にわたるが、手掌(palms)と足底(soles)の皮疹の有無で鑑別診断をある程度絞り込むことができる可能性がある。手掌と足底の皮疹の鑑別疾患は「MR. SMITH」で覚えよう。発熱と皮疹の鑑別疾患は感染性・非感染性と多岐にわたります。手掌と足底に皮疹を来した場合、鑑別診断をある程度絞り込むことができる可能性があります。それでは、一体どのような鑑別疾患が挙げられるのでしょうか。ここでは、なかでも感染性に焦点を当てて解説していきます。語呂合わせとして「MR. SMITH」と覚えると、手掌と足底の皮疹の感染性の鑑別疾患を網羅的に挙げることができます。MMeningococcemia (Neisseria meningitidis) 髄膜炎菌による菌血症RRickettsia リケッチア感染症(日本紅斑熱など)S(Secondary) Syphilis 二期梅毒MMeasles, Mpox 麻疹、M痘IInfective endocarditis 感染性心内膜炎TToxic shock syndrome, Travelers (Dengue/Chikungunya/Zika) トキシックショック症候群、デング熱、チクングニヤ熱、ジカ熱などの蚊媒介感染症HHand-Foot-Mouth syndrome (Coxsackievirus), HIV, HSV (erythema multiforme) 手足口病、急性HIV感染や単純ヘルペス感染による多形滲出性紅斑皆さんも積極的に、手掌と足底に皮疹を呈していないかどうかを確認してみましょう。1)Hughes KL, et al. Am Fam Physician. 2018;97:815-817.2)Giorgiutti S, et al. N Engl J Med. 2019;381:1762.3)McKinnon HD Jr, et al. Am Fam Physician. 2000;62:804-816.4)Staples JE, et al. Clin Infect Dis. 2009;49:942-948.5)Saguil A, et al. Am Fam Physician. 2023;108:78-83.6)Volpicelli FM, et al. N Engl J Med. 2023;389:1033-1039.7)Long B, et al. Am J Emerg Med. 2023;65:172-178.8)He A, et al. Am J Clin Dermatol. 2017;18:231-236.

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日本人の喘息患者に睡眠時無呼吸が多く見られる

 日本人の喘息患者を対象に、閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea;OSA)の合併および臨床転帰を検討する研究が行われた。その結果、OSAの合併率は高く、特に重症OSAを有する人ほど喘息のコントロールや症状が悪いことが明らかとなった。これは川崎医科大学呼吸器内科学の小賀徹氏らによる研究結果であり、「Allergology International」に2月9日掲載された。著者らは、「喘息とOSAの合併は過小評価されている」として、臨床転帰を改善するためのOSAのスクリーニングを推奨している。 睡眠中に気道が閉塞することにより呼吸停止が起こるOSAでは、夜間のいびきや日中の眠気など、さまざまな症状が生じる。OSAのリスク因子の1つに肥満があるが、OSAは肥満のない人でも発症する。特に日本人は欧米人と比べてBMIが低いにもかかわらず、OSAの有病率は米国と日本で同程度と報告されている。 今回の研究は、2020年7月~2022年3月に、定期的に川崎医科大学附属病院を受診している喘息外来患者97人(平均年齢56.5±13.9歳、そのうち女性66人)を対象として行われた。患者は自宅での睡眠時の検査として携帯型モニターを装着。睡眠中の1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数から算出する呼吸イベント指数(respiratory event index;REI)により、OSAの有無や重症度が評価された。さらに、患者報告アウトカムとして、胃食道逆流症、日中の眠気や睡眠の質、喘息コントロール(Asthma Control Test;ACT)、咳嗽症状(Leicester Cough Questionnaire;LCQ)、呼吸器症状(COPD Assessment Test;CAT)、喘息の健康状態〔Asthma Health Questionnaire(AHQ)-33〕が評価された。 その結果、OSAなしの患者は19人(19.6%、平均41.3±13.9歳)、軽症OSAは40人(41.2%、59.0±12.0歳)、中等症OSAは24人(24.7%、61.8±10.7歳)、重症OSAは14人(14.4%、60.8±9.8歳)だった。患者の平均BMI(kg/m2)は、中等症OSA合併群で26.5±5.2、重症OSA合併群で27.8±4.4であり、OSAなし群の22.6±5.4と比べて有意に高かった。 国際的なガイドライン(Global Initiative for Asthma)に基づく喘息の治療ステップ(1~5)は、重症OSA合併群の方がOSAなし群と比べて有意に高かった(平均4.3±1.1対3.1±1.4)。しかし、肺機能やアレルギーの指標(FeNO、血清IgE、末梢血好酸球など)には、群間で有意な差は認められなかった。重症OSA合併群では、有意に喘息コントロールが悪く、症状・咳嗽も多く、健康状態も悪かった。 重症OSAと関連する因子を単変量ロジスティック回帰分析で検討すると、BMI、治療ステップと、患者報告アウトカムのうちACT、LCQ、CAT、AHQ-33の各スコアが有意な因子だった。次に多変量ロジスティック回帰を用いて、BMIを調整して解析した結果、治療ステップ、ACT、LCQ、CAT、AHQ-33は、BMIとは独立して、重症OSAの有意な予測因子であることが明らかとなった。 以上の結論として著者らは、「日本人の喘息患者において、中等症以上のOSAは多く見られた(39.1%)」と述べている。また、OSAのある人ほどBMIは高かったものの、重症OSAと喘息コントロールや症状・咳嗽・健康状態の悪化などとの関連は、BMIとは独立して有意であり、さらに、肺機能には群間で差がなかったことを挙げた上で、肥満や肺機能にとらわれず、喘息の患者報告アウトカムが不良であれば睡眠時無呼吸の評価を積極的に行うことの重要性を指摘している。

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「心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウンセリングに関するガイドライン」13年ぶりの改訂/日本循環器学会

 日本循環器学会、日本心臓病学会、日本小児循環器学会の合同ガイドライン『心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウンセリングに関するガイドライン』が、2011年以来の13年ぶりの改訂となった。3月8~10日に開催された第88回日本循環器学会学術集会で、本ガイドラインの合同研究班班長である今井 靖氏(自治医科大学 臨床薬理学部門・循環器内科学部門 教授)が、ガイドライン改訂の要点を解説した。 本ガイドラインは2006年に初版が刊行され、2011年に改訂版が公表された。当時、遺伝子解析の大半は研究の範疇に属し、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針に沿って実施されていた。その後、2021年の「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」により、他の医学系研究指針と統合され、ヒト遺伝子情報が他の医学・生命科学の情報と同列に扱われるようになった。さらに最近では、診療として実施される遺伝学的検査が大幅に増加しており、がんなどの他の診療分野での遺伝学的検査の普及と並行し循環器疾患においても今後さらに適応が増加することは必至と考えられる。今回の改訂はこれらの状況を踏まえて行われた。 2024年改訂版では、総論において、遺伝学的検査の指針・目的、遺伝学的検査の方法・実施体制、診療・遺伝カウンセリング、周産期における対応・妊娠前のプレコンセプションケアについて追加した点が、前版と大きく異なると今井氏は述べた。 日常診療で遺伝学的検査を行う指針として、日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」や「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(2023年改訂)」に則している。また、遺伝学的検査によって得られる情報は、とくに慎重な配慮を要する個人情報であるため、個人情報保護法などの法令の趣旨に則するように記述・改訂されている。遺伝学情報の特徴 遺伝学情報には以下のような特徴があり、これらを理解したうえで患者に説明し理解を促すことが必要となる。・生涯変化しないこと。・血縁者間で一部共有されていること。・血縁関係にある親族の遺伝型や表現型が比較的正確な確率で予測できること。・非発症保因者(将来的に病的バリアント[変異]に起因する疾患を発症する可能性はほとんどないが、当該病的バリアント[変異]を有しており、次世代に伝える可能性のある者)の診断ができる場合があること。・発症する前に将来の発症の可能性についてほぼ確実に予測することができる場合があること。・出生前遺伝学的検査や着床前遺伝学的検査に利用できる場合があること。・不適切に扱われた場合には、被検者および被検者の血縁者に社会的不利益がもたらされる可能性があること。・曖昧性が内在していること(曖昧性とは、結果の病的意義の判断が変わりうること、症状、重症度などに個人差があること、調べた遺伝子が原因ではなく、未知の他の原因による可能性などがある)。遺伝学的検査の対象と目的 遺伝学的検査を行うためのワークフローとして、対象と目的の整合性を確認しておく必要がある。検査を受ける対象は、患者本人または血縁者、発症患者または非発症者の場合がある。また、遺伝学的検査を行う目的として、以下のものが挙げられている。・病因診断を目的とした原因の同定。・精微な層別化による疾患の病型分類。・分類された病型に基づく病態管理と治療法選択。・病態進展の理解と疾患予後の予測。・突然死を含む急性イベント発症の予防。・未発症者の発症予防や早期診断・早期介入。 遺伝学的検査の目的に応じた検査が重要となり、循環器診療部門と遺伝子医療部門が協同して実施する必要がある。検査を行う際の留意点として、検査対象者は通常は採血の負担しかないため身体的侵襲は少ないが、検査をしても異常が検出できないこともある。また、患者自身やその血縁者に遺伝子異常が見つかった場合、今後の病状が急激に悪化していくことなどのリスクを持ち合わせていることに対して、心理的負担を生じる可能性がある。一方で、早期の診断によって治療介入できる可能性もある。遺伝子解析の手法 遺伝子解析の手法として、次世代シーケンス(NGS)法が近年急速に進歩した。この技術により、候補となる遺伝子をまとめて解析するパネル解析や、全エクソーム解析法や全ゲノム解析法も可能となっている。また、小児を対象とした新生児マススクリーニングも先天性疾患の検出に有用なアプローチである。染色体異常については、染色体検査(G分染法)やFISH法によって確認することができる。 診療用に供する検体検査は、平成30年度改正医療法等に従い、保険診療での検査として行う場合(S006-4遺伝学的検査)は医療機関の検査部門、ブランチラボや衛生検査所で実施することとなった。これは研究所・大学の研究室などでのゲノム・遺伝子解析研究として実施されるものとは明確に区別することとなっている。保険収載されている遺伝子学的検査 現在、循環器領域で保険収載されている遺伝学的検査は、3,880点のものがFabry 病、Pompe病、家族性アミロイドーシス、5,000点のものが肥大型心筋症、家族性高コレステロール血症、CFC症候群、Costello症候群、Osler 病、先天性プロテインC欠乏症、先天性プロテインS欠乏症、先天性アンチトロンビン欠乏症、8,000点のものが先天性QT延長症候群、Noonan症候群、Marfan症候群、Loeys-Dietz症候群、家族性大動脈瘤・解離、EhlersDanlos 症候群(血管型)、Ehlers- Danlos症候群(古典型)、ミトコンドリア病となっている。遺伝カウンセリング 遺伝カウンセリングは、「疾患の遺伝学的関与について、その医学的影響、心理学的影響、および家族への影響を人々が理解し、それに適応していくことを助けるプロセス」と定義される。遺伝要因は不変であるため、自身のコントロールが及ばない。さらには、その遺伝要因によって、突然死などの重篤なものを含むさまざまな症状が、一般集団よりはるかに高い確率で起こりうるという脅威にさらされることとなる。そのような状況の患者や家族に生じうる、否認、怒り、疾患への脅威、コントロール感の喪失などのさまざまな心理的影響への対応が求められる。心理社会的課題に、患者や家族が対処する能力を身につけられるよう具体的な対処方法を提示するとともに、エンパワーメントや自己効力感の向上を目的に実施される。 遺伝カウンセリングのための専門職種である臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラー、遺伝看護認定看護師とともに循環器系の医師が協力して遺伝子検査を進め、より良い形で患者へ情報提供することが考えられる。遺伝カウンセリングについては、保険収載されている検査においてのみ診療報酬が設定されているため、未発症者の遺伝子解析や研究で行われる遺伝子解析に対してのカウンセリングは対象外となっている。このような点が今後改善されることを強く望むと今井氏は述べた。周産期の女性に対する対応 今井氏が今回のガイドラインでとくに力を入れた点として挙げたのが、周産期に対する対応である。若年の患者における先天性心疾患やQT延長症候群のような遺伝性疾患があるが、そのような女性患者の妊娠前の遺伝カウンセリングは重要で、思春期の段階から行っていく必要がある。妊娠出産に関する可能性や、次世代にどのように遺伝するかといったプレコンセプションケアも重視しなければならない。本ガイドラインでは、各疾患群の妊娠前遺伝カウンセリングをまとめている。今井氏によると、現在日本では思春期から20代の対象者について、カウンセリングが必ずしも十分にできていない状況にあるため、患者へのカウンセリングの可能性について検討してほしいと訴えた。疾患ごとに推奨事項を確認できる巻末付表 講演の後半では、疾患ごとにガイドラインに沿った解説がなされた。本ガイドラインの巻末付表に「循環器遺伝医療の実践」を設け、各疾患に関して、循環器遺伝医療における推奨事項を簡単に参照できるポケットガイドを付けている。この表では、疾患名、原因遺伝子、浸透率、推奨事項として発端者への介入や血縁者のスクリーニング・サーベイランス・介入が端的に示されている。 今井氏は最後に多遺伝子因子疾患について述べた。本ガイドラインでは単一遺伝子のみに言及してきたが、たとえば冠動脈疾患については、遺伝子の多型の組み合わせで示されるPolygenic risk score(多遺伝子リスクスコア)によって、低リスクと高リスクの集団の予測ができる。また、高遺伝リスク群であっても生活習慣リスクを低減することで、リスクを相殺する可能性も示されている。このような多遺伝子因子疾患の解析は、心房細動、血管炎、末梢動脈疾患にも応用可能とされ、今後の臨床利用が期待されるという。

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睡眠中でも心を落ち着かせる言葉は届いている

 眠っているときに他人から心を落ち着かせる言葉をかけられると、それに心が敏感に反応して心拍が遅くなることが、新たな研究で明らかになった。リエージュ大学(ベルギー)GIGAサイクロトロン研究センターのAthena Demertzi氏らによるこの研究は「Journal of Sleep Research」に2月14日掲載された。 Demertzi氏らは2021年に発表した脳波を使った研究で、睡眠中の人に心を落ち着かせる言葉をかけると、深い眠りの時間が増えて睡眠の質が向上することから、重要な意味や価値を持つ言葉が睡眠に良い影響を与えることができる可能性を示唆していた。このような結果から研究グループは、心を落ち着かせる言葉を聞くと、睡眠中でも脳は感覚情報を解釈して体をリラックスさせることができるとの仮説を立てていた。 今回の研究は、この仮説を心電図(ECG)を用いて検証したもの。具体的には、脳や体の回復に重要な役割を果たしていると考えられているノンレム睡眠中の研究参加者に心を落ち着かせる言葉をかけることで、ECGの活動(心拍間隔)がどのように変化するのかを調べた。 その結果、心を落ち着かせる言葉をかけている間は、言葉をかけていない場合と比べて心拍間隔が有意に長くなることが明らかになった。このような心拍間隔の延長は、ニュートラルな言葉をかけている間には認められなかった。また、心臓と脳の活動のマーカーを比較し、聴覚情報による睡眠の調節にそれぞれがどれだけ寄与しているかを調べたところ、心臓の活動は睡眠中でも独立して睡眠に影響を与えることが示唆された。 こうした結果を受けてDemertzi氏は、「睡眠に関する研究の大半は、睡眠中の脳の活動にばかり焦点を当てており、身体の活動について調べたものはほとんどない。それでもわれわれは、睡眠中のように相互のやりとりが完全にできない状況下でも、脳と体はつながっているとの仮説を立てていた。人間がどのように考え、環境に反応するのかを完全に理解するには、脳の情報と体の情報の両方を考慮する必要がある」とリエージュ大学のニュースリリースの中で述べている。 研究グループは、心臓の反応に焦点を当てて睡眠の研究を進めることで、睡眠機能の研究分野において、身体的な影響を考慮する、より包括的なアプローチを推進していきたいとの考えを示している。また、近年、内受容感覚が睡眠や睡眠障害の有望なアプローチとして注目されていることに触れ、心臓の活動の分析を通じて心拍などの体が発する信号が睡眠機能とその感覚刺激による変調に果たしている役割が明らかになることに期待を寄せている。

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第88回 麻疹以外でもKoplik斑が出る!?

イラストレインより使用先週も麻疹について取り上げましたが、東京都で感染者が報告されたことで、とうとう全国的にも麻疹が報道されるようになりました。私、先週からずっと言ってますからね!!「2峰目」前の診断が難しい麻疹は、症状でどこまで疑えるかがポイントになります。2峰性の経過なので、2峰目の発熱と発疹で「こりゃ麻疹やで!」ということになりますが、1峰目の発熱時にKoplikが口腔内にみられることがあり(写真1)、これが特異的な所見だと思われてきました。Koplikは、この所見が麻疹にみられることを発見した130年前の医師です(写真2)。「2峰目」前の診断が難しい麻疹は、症状でどこまで疑えるかがポイントになります。2峰性の経過なので、2峰目の発熱と発疹で「こりゃ麻疹やで!」ということになりますが、1峰目の発熱時にKoplikが口腔内にみられることがあり(写真1)、これが特異的な所見だと思われてきました。Koplikは、この所見が麻疹にみられることを発見した130年前の医師です(写真2)。       写真1. Koplik斑        写真2. Henry Koplik(1858~1927年)(Wikipediaより使用)写真1. Koplik斑写真2. Henry Koplik(1858~1927年)(Wikipediaより使用)2峰目で発見する前に麻疹らしいかどうかを判断する上で、Koplik斑は100年以上にわたって小児科医や内科医の間で「定番の所見」として君臨してきました。しかしながら、Koplik斑は感度や特異度についてまとまった報告がなく、他の感染症でも観察されるのではないかという見解もありました。Koplik斑の診断精度をみた国内3,000例以上の研究日本において、2009~14年にかけて、麻疹および麻疹が疑われる3,023例の全国調査が行われました1)。診断はPCRやRT-PCRを用いて行われ、合計3,023例が登録されました。このうち、Koplik斑が観察されたのは717例(23.7%)であり、麻疹と確定した症例の28.2%、風疹と確定した症例の17.4%、パルボウイルスB19感染症と確定した症例の2.0%にみられたのです。その他、アデノウイルス、ライノウイルス、ヘルペスウイルスでもKoplik斑が観察されました。この研究によると、麻疹の診断マーカーとしてのKoplik斑の感度は48%、特異度は80%と報告されています。つまり、風疹を含めた他のウイルス感染症でもKoplik斑が観察されるというわけです。もちろん周囲に麻疹の人がいれば事前確率は高くなりますが、一般的な発熱外来におけるKoplik斑は確実な所見とは言えないのかもしれません。参考文献・参考サイト1)Kimura H, et al. The Association Between Documentation of Koplik Spots and Laboratory Diagnosis of Measles and Other Rash Diseases in a National Measles Surveillance Program in Japan. Front Microbiol. 2019 Feb 18;10:269.

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第205回 コロナ感染で自己免疫性リウマチ性疾患が生じ易くなる

コロナ感染で自己免疫性リウマチ性疾患が生じ易くなる日本と韓国のそれぞれ1,200万例強と1,000万例強のデータを使った試験で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と自己免疫性炎症性リウマチ性疾患(AIRD)のリスク上昇が関連しました1,2)。自己抗原の許容が損なわれて生じる慢性の全身性筋骨格系炎症疾患一揃いがAIRDに属します3)。具体的には、関節リウマチ(RA)、強直性脊椎炎(AS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性硬化症(SSc)、シェーグレン症候群、特発性炎症性筋炎、全身性血管炎がAIRDに含まれます。COVID-19患者がAIRDに含まれるそれら自己免疫疾患をどうやらより生じ易いことが先立ついくつかの試験で示唆されています。それらの試験はいずれも新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者と非感染者の比較に限られ、インフルエンザなどの他のウイルス感染ではどうかは調べられていません。また、COVID-19後の長期の合併症の予防に寄与しうるワクチン接種などの影響の検討もなされていません。今回新たに発表された試験では、COVID-19後のAIRD発生率が非感染者に加えてインフルエンザ感染者とも比較されました。COVID-19後のAIRD発生率上昇がもし認められたとして、それがCOVID-19に限ったことなのか呼吸器のウイルス感染症で一般的なことなのかをインフルエンザとの比較により推し量ることができるからです。また、COVID-19ワクチンにSARS-CoV-2感染後のAIRD予防効果があるかどうかも調べられました。試験ではCOVID-19かインフルエンザの患者のそれらの診断から12ヵ月までの経過とそれらのどちらも感染していない人(非感染者)の経過を追いました。その結果、先立つ試験と同様にCOVID-19患者は非感染者に比べてAIRDをより被っていました。また、COVID-19患者のAIRD発生率はインフルエンザ患者より高いことも示されました。韓国と日本のCOVID-19患者のAIRD発生リスクは非感染者をそれぞれ25%と79%上回りました。また、インフルエンザ患者との比較ではCOVID-19患者のAIRD発生率がそれぞれ30%と14%高いという結果となっています。軽症のCOVID-19患者ではワクチン接種とAIRD発生率低下の関連が認められましたが、中等症~重症のCOVID-19患者ではワクチン接種のAIRD抑制効果は認められませんでした。また、より重症のCOVID-19患者ほどAIRDをより被っていました。COVID-19を経た患者、とくに重症だった患者の診察ではAIRDの発生に注意する必要があると著者は言っています。参考1)Kim MS, et al. Ann Intern Med. 2024 Mar 5. [Epub ahead of print]2)COVID-19 associated with increased risk for autoimmune inflammatory rheumatic diseases up to a year after infection / Eurekalert3)Kim H, et al. Semin Arthritis Rheum. 2020;50:526-533.

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【緊急寄稿】働き方改革、スタート目前!米国医師の働き方を変えた「10の仕組み」~第1回・勤務体制編~

2024年4月から、いよいよ日本では「医師の働き方改革」の新制度が施行されます。私は日本で初期研修医、そして新専門医制度下での内科専攻医を経験した後、2021年に渡米し、現在は米国で内科レジデントとして働いています。米国の内科レジデンシーは全部で3年間あり、内科に特化した研修を行います。日本で内科の専攻医を経験した後に米国での内科レジデンシーを経験したことから、日本と米国の内科研修の違いを肌で感じました。その中で最も衝撃を受けたのは「米国の働き方改革とデジタル化は、日本よりもはるかに進んでいる」という点です。この寄稿では、日米の内科研修を両方経験した立場から、どのようなツールやシステムが米国の働き方改革に貢献しているか、1)勤務体制編、2)スマホアプリ編、3)電子カルテ編の3つに分けて、10の仕組みを紹介、解説します。この寄稿が日本での働き方改革を議論するうえで、少しでも参考になればと思います。第1回の今回は、米国医師の働き方を改革した勤務体制の仕組みづくりについて、4つの具体例を挙げて説明します。仕組み1:チーム制・シフト制米国の多くの病院では、入院患者の管理は専門科医ではなく、ホスピタリスト(病院総合診療医)が担当します。専門科医はコンサルタントとして関与する形です。ホスピタリストの指導の下、3~4人の内科レジデントが患者をケアするチームをつくり、看護師同様にシフト制で勤務します。私の勤める病院では、2~3年目の先輩レジデントが1年目の新人レジデントに指導をしながら、チーム全体で約16~20人の患者を受け持ちます。シフトは早番と遅番に分かれ、早番は朝7時~夕方5時、遅番は朝7時~夜8時の勤務です。シフトの終わりには、自分が担当した患者の情報を次の担当者に引き継ぎ、ToDoリストや急変時の対応プランを確認します。シフト終了後は看護師から連絡が入ることはなく、帰宅してリラックスする時間が確保されます。チーム制・シフト制を採用することで仕事とプライベートのオンオフがはっきりします。図1仕組み2:夜勤とsick callレジデントのローテーションの中には、夜勤のみを行う期間があります。夜勤レジデントは、毎晩の当直(夜8時~翌朝7時)を6日間勤務+1日休みのサイクルで2週間勤務するスケジュールで働き、入院患者の管理や救急外来からの新規入院患者の対応を行います。この夜勤システムにより、夜勤レジデントは昼間に休息を取り、夜間に働くという生活リズムを維持できます。これにより、日勤レジデントは当直の必要がなくなり、体内時計の乱れを避けることが可能になります。また、「sick call」と呼ばれる病欠者のカバーをするシフトが存在します。ほかのレジデントが病気やその他の理由で勤務できないときに、そのシフトをカバーする担当のレジデントのことで、呼び出しがなければ自宅待機します。このように、誰かが休んでも業務が特定の人に集中することを防ぎ、全体の負担を軽減するシステムが構築されています。仕組み3:勤務上限時間の設定神戸市の病院で勤務していた若手医師が長時間労働下で自殺し、労災と認定された事件は記憶に新しいですが1)、米国ではACGME(Accreditation Council for Graduate Medical Education、米国卒後医学教育認定評議会)という団体が研修プログラムのレジデントやフェローの労働時間を規制しており、このルールにより若手医師は過剰労働や業務過多から守られています。具体的には、週に80時間までの勤務7日間に1日の割合で休日を設ける連続勤務は24時間まで24時間勤務の後は次の勤務まで14時間空けるといったルールが定められています。このルールをレジデント全員が常に守る必要があるため、綿密なスケジュール調整が必要になります。日本では働き方改革に当たり、教育や研究が「自己研鑽」の扱いになるかどうかが議論され、厚生労働省が「教育・研究に直接関連性のある研鑽は労働時間に該当する」と明示したことが話題になりました2)。米国では教育的なレクチャーは、昼食時や週に半日ある「Academic Half Day」と呼ばれる臨床業務が免除される時間に行われるケースが多く、平日の勤務時間内に組み込まれています。研究に関しては、自由に選択できるローテーションで「研究」を選択することで、臨床業務が免除され学会発表の準備や論文執筆の時間に充てることができます。十分な人員がいるからこそ実現可能なのかもしれませんが、このように自己研鑽が労働時間外にならないよう配慮されています。なお、日本の内科専門医制度では「J-OSLER」と呼ばれる症例登録制度があり、内科専門医を取得するためには160症例の症例登録と29症例の病歴要約の提出が求められています。私自身、休日や時間外を含めて多くの時間を費やすこととなり苦労しました。一方で、米国の内科レジデンシーでは症例登録や病歴要約の提出は一切必要ないものの、一緒に働いた指導医やプログラムの評価を頻繁に提出することが求められます。上記のACGMEが各プログラムや指導医の質を評価することで教育の質を担保する、というシステムです。レジデントの負担を考慮した、合理的かつ効率的な制度だと感じます。仕組み4:ACGMEによる監視システム研修プログラムが勤務時間の規則を順守しているのか、確認するシステムがあります。レジデントはオンラインで勤務時間を報告することが義務付けられており、さらにACGMEによる査察が定期的に行われます。査察はレジデントとの抜き打ちの面接や匿名のアンケートによって行われ、定められた勤務スケジュールとレジデントが報告する勤務時間に乖離がないかを確認します。ACGMEは研修プログラムの評価および認定機関でもあるので、規則に違反したことが明らかになった場合には、さまざまな罰則を科すことができ、最悪の場合には研修施設としての認定の取り消しに至ることもあります。このような監視システムがあることで、ルールの形骸化を防いでいるのです。1)“26歳医師が自殺で遺族会見 ‘極度の長時間労働’で労災認定”. NHK NEWS WEB. 2023-08-18.,(参照2024-03-04).2)“医師等の宿日直許可基準及び医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方についての運用に当たっての留意事項について”. 厚生労働省. 2024-01-15.,(参照2024-03-04).

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第87回 「そもそも麻疹を診たことがない」

フタバのフリーイラストより使用世界保健機関(WHO)から「西太平洋諸国は予防接種とサーベイランスのギャップによって麻疹発生のリスクにさらされている」という衝撃的な記事が公開されました1)。輸入リスクが高い国として、日本も麻疹の知識を身に付けておく必要があるでしょう。「西太平洋地域では2023年、世界の他の地域でみられるような大規模な麻疹の流行は発生しなかったが、この地域で360万人の子供たちが2020~22年にかけて定期予防接種を受けられなかった。世界中で麻疹が再流行しており、麻疹の輸入リスクが増大している」定期的に観測される麻疹例2月26日、奈良市保健所が、外国人観光客の20代男性が麻疹に感染していると報告しました。19日に発熱・発疹があり、同感染症と診断されました。保健所は、その行動を細かく報告しています。いつ、どこの観光都市から奈良県にやって来たのか、移動手段は何を使ったのか、など。さらに、3月1日には東大阪市でも20代男性の麻疹感染例が確認されました。なぜここまで詳細なコンタクトトレースをするかというと、麻疹の基本再生産数(R0)は12~18といわれており、1人の発症者から多くの感染者を生み出すことで知られているためです。麻疹のR0はインフルエンザウイルスの約10倍で、免疫がない人が接触すると、ほぼ100%感染するといわれています。しかし、現在はワクチンのおかげで麻疹というものは流行しなくなりました。「なぜこんなに慌てるんですか?」と感じている医療従事者もいるかもしれません。私が子供のときは、麻疹にかかる人はそれなりにいたので、いやほんとジェネレーションギャップを感じます。麻疹が全数届出になった2008年の年間届出数は約1万例で、そのあとは激減の一途をたどっており、2022年はわずか6例でした。ここまで減るかというくらい、本当に減ったのです。もはやレアな疾患ですから、複数例アウトブレイクしようものなら、報道になるのです。ワクチン接種歴の確認を医療従事者に限ったことではありませんが、自身に麻疹ワクチン接種歴があるかどうか、母子手帳がある人はご確認ください。麻疹ワクチンが定期接種になったのは1978年で、当時1回の定期接種でした。1回の接種では十分な免疫がないため、2008年に特例措置によって、追加接種が行われました。そのため、2000年以降に生まれた方は、2回の定期接種を受けている可能性が高いでしょう。私みたいなオッサン世代が一番自分自身のワクチン接種歴を把握していなかったりするので、一度皆さんご確認ください(表)。追加接種は自費ですが、たいがい1万円以内で接種できますし、成人でも接種可能です。画像を拡大する表. 麻疹のワクチン接種歴(筆者作成)麻疹の臨床経過麻疹の症状についておさらいしておきましょう。教科書で知っていても、目の前にやって来ると診断できない可能性があります。まず潜伏期間ですが、10~12日と長いです。接触感染だけでなく、空気感染する点に注意が必要です。そのため、R0がむちゃくちゃ高いのです。初発症状は、発熱、咳、鼻水、のどの痛みなど感冒症状があります。いったん治癒すると思われた矢先、高熱と発疹が同時にやって来ます(図)。この激烈な「2峰性」が麻疹の特徴です。発疹が出てくる1~2日前に口の中の頬の裏側に、やや隆起した小さな白い斑点(Koplik斑)が出現することが特徴的といわれてきましたが、風疹や他のウイルス感染症でも出現することがわかっており、必ずしも特異度が高いとは言えません。画像を拡大する図. 麻疹の典型的経過(筆者作成)成人の場合、中途半端な免疫がある場合(1回接種者など)、軽症で非典型的な「修飾麻疹」になることがあります。そうなるとさらに診断が困難となります。何よりも、いざというときに麻疹の存在を疑えることが重要といえます。参考文献・参考サイト1)WHO:Western Pacific countries at risk of measles outbreaks due to immunization and surveillance gaps. 2024 Mar 1.

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第203回 1ヵ月以上続くコロナ感染は結構多い

1ヵ月以上続くコロナ感染は結構多い英国を代表する9万人強の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)配列を解析した結果によると、少なくとも100人に1人ほどの感染は1ヵ月以上長引くようです1,2)。試験では被験者からおよそ1ヵ月ごとに採取した検体のSARS-CoV-2配列が解析され、3,603人は2回以上の検体の配列解析が可能でした。得られたウイルス配列を照らし合わせたところ、それら3,603人のうち381人に1ヵ月以上の同一ウイルス感染が認められました。381人のうち54人にいたっては2ヵ月以上同じウイルスに感染していました。その結果に基づくと、感染者100人に1~4人弱(0.7~3.5%)のその感染は1ヵ月以上、感染者1,000人に1~5人(0.1~0.5%)の感染は2ヵ月以上続くと推定されました。SARS-CoV-2持続感染者381人のうち3回以上のRT-PCR検査がなされた65人のデータによると、感染し続けているSARS-CoV-2の多くは複製できる力を失っていないようです。それら65人のほとんどのウイルスはいったん減り、その後再び増加するというリバウンドの推移を示しました。研究者によると、そのようなリバウンドは複製できるウイルスが居続けていることを示唆しています。また、SARS-CoV-2の感染持続はやはりただでは済まないようで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状(long COVID)をより招くようです。SARS-CoV-2感染が1ヵ月以上持続した人の感染後12週時点以降でのlong COVID有病率は非持続感染者を55%上回りました。SARS-CoV-2感染持続とlong COVIDの関連を示した先立つ報告や今回の研究によるとSARS-CoV-2感染持続はlong COVIDの発生にどうやら寄与しうるようです。とはいえSARS-CoV-2感染持続で必ずlong COVIDが生じるというわけではありませんし、long COVIDのすべてが感染持続のせいというわけではなさそうです。実際、long COVIDに寄与するとみられる仕組みがこれまでにいくつも示唆されており、引き続き盛んに調べられています。たとえば先月にScience誌に掲載された最近の報告では、免疫機能の一翼である補体系の活性化亢進がlong COVIDで生じる細胞/組織損傷の原因となりうることが示唆されています3,4)。参考1)Ghafari M, et al. Nature. 2024 Feb 21. [Epub ahead of print]2)Study finds high number of persistent COVID-19 infections in the general population / Eurekalert3)Cervia-Hasler C, et al. Science. 2024;383:eadg7942.4)Complement system causes cell damage in Long Covid / Eurekalert

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